ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サーヴァント・スミス-23

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終章 前編『ヴェネツィアに舞う風』

2002年 2月14日。

やけに露出の多い服を着た男、パンナコッタ・フーゴは、ヴェネツィアのレストランを歩いていた。
フーゴは、ブチャラティたちについていかなかった。
それが自分の意思であったし、ボスには勝てるわけがない、追い掛け回されて、逃げ場を失うだけだと思って。
しかし、犠牲を出しながらも、彼らは勝った。自分の居場所に危機感を持ち始めるのは、この頃だ。

ジョルノが組織のボスになり、麻薬などは取り締まられた。
治安もある程度は良くなったし、組織の人間にとっては、別に悪い事ではない。
下手にいざこざを起こされても面倒だし、平和は悪い事じゃない。
一部は闘争を望む変わり者や、ジョルノの若さに少し不満を抱く者も居るが、それでもジョルノはきちんと仕事をこなし。
今のところは何もなく、普通に組織の一人としてフーゴは生活していた。

とはいえ、やはりジョルノやミスタ、トリッシュには、顔を見せにくいのだ。
避けているようになるが、彼らも気遣っているのか、特に接触のないまま、他の仲間にそのことを不思議がられつつ2002年。
2月14日、バレンタインデーらしく、恋人達がレストランで食事を取っていたり、こんな真昼間からチョコを渡している女性も居る。
フーゴの機嫌はいいものではなかった。

(バレンタインデーてすか……気楽ですね、こちとらただのギャングですよ……なんですか?この差……)

相変わらず自分のスタンド『パープル・ヘイズ』は使っていない。
これじゃあ宝の持ち腐れだ。
せめて自分ぐらいは死なないように成長して欲しい。とは思うものの。
もちろん戦闘で使うことが全くない上(しかも戦闘自体減っている)、成長しても仲間を巻き添えにする可能性大なので、何でこんなスタンドが目覚めたのか、自問自答することも多々あった。

「……ここでウイルスばら撒いたら、どうなるでしょうね」

と、危ない思考に走ることもあったりする。今がそうだ。
この頃任務もなく暇なので、軽く見回ったりするだけである。

「ふぅ。ちょっと寄りますか」

金に困っているわけではない。
一応財布を確認。
昼食を取ろうと、レストランに寄った。
何故自分は組織があるにもかかわらず、こんな勝手なことをしているのであろうと、自嘲気味になりつつ、メニューを見つめる。

「スパゲティ……そういえば」

ボスとの戦いで死んだのは、アバッキオ、ナランチャ、ブチャラティ。
彼らもこの場所に寄ったのだろうか。
懐かしいながら、悲しい思い出。
自分がついていっても、足手まといにしかならなかったのかもしれないが。
何故か後悔している自分が居る事。それがもっとも気にかかっている。

「うぅん……これにしますか」

衝動的にマルガリータにボルチーニ茸をトッピングしたピザを注文してみる。

ピザを一人で食べる。途端に寂しさが押し寄せた。
しかもいざ出来上がって、運ばれてくるとなると大きい。一人で食えるのだろうか。

しかし、これをやけ食いと言わずして何をやけ食いと言うのか、と言う勢いでフーゴは食べ進む。
早食いをしてはいない。
ゆっくりだが、今の自分はいくらでも食べられそうな気がした。

「はぁ……虚しいですねェ」

3分の1ほど食べきると、虚しさを感じて少し手を止めた。
窓の外は、未だに人の波があった。
レストランに新たに入ってくる客も居た。関心を示そうともしないフーゴは、また一口ピザを口に運んで、僅かに目を開いた。

「……見間違い、ですよね」

目を凝らして見なければ、人が居るとも分からないような遠い所に、少年の姿が見えた。



「いってェ……。ここは?」

ナランチャは、周りを見渡す。ゼロ戦はどこかへ消えていた。
まずゼロ戦がどこに行ったか探そうとも思ったが、やめた。
今はこの、懐かしいイタリアの風景を見つめていたかったのだ。
風を感じる。
ヴェネツィアだと、すぐ分かった。

「ルイズ……は、いねーな」

そうだ。あの時突き飛ばしたのだから居るはずがない。
ちょっとした感傷に浸る。
今度は、あのルイズたちと過ごした日々が懐かしく感じられた。
周りはバレンタインデーらしく、チョコを売っている店なんかは繁盛するのではないだろうか。
異次元を飛んだ影響で時間のズレがあったのかどうかは分からないが、本当にバレンタインになるまであっちに居たか?という疑問も浮き上がる。

だが、金はない。
こうなるんならルイズに渡したルビーを返してもらって、ここで売ればよかった、と何も知らないナランチャは嘆く。
しかし、思い出したように走る。
ジョルノたちに会いたかった。

しかし、途中レストランがあったので、足止めを喰らう。
眺めるが、もちろん喰えないのでため息をついてまた歩き出そうとした。

ドン、と人にぶつかってしまった。しかも正面から。
ちょっと驚きつつ顔を挙げ、「うわ、どうしよ」とか対策を考えようとした瞬間。

思考が、完全に停止する。

「フ……フーゴ?」

「……そういうそっちは実体のある幽霊ですか?」

現実を飲み込めないフーゴは、そうとだけ返した。


「店から出てきた途端に……運命ってヤツですかね」

「知らねーよ。それよりフーゴ……」

「なんですか?」

「服、まだそれなのかよ」

「………」

ファッションだ、とは言い返さない。
目の前でボルチーニ茸の乗ったマルガリータをむさぼり食っているナランチャ。フーゴのおごりだ。
もう二度と見れない光景だと思っていたから、実は嬉しかった。

「なあ……フーゴ。戦いとか終わったんだろ?ジョルノにさ。学校に通いたい、って言っといてくれよ」

「……一応、ジョルノは年下ですよ。頼るのに迷いはないんですね」

「いや、もうね……あんな経験しちゃうと、一層普通の学校に行きたくなってさあ……」

『あんな経験』とは、トリステインの魔法についての授業ラッシュである。
しかも異世界の言葉なので、覚えてもこっちじゃ役に立たない。
もう、情けない事だが、どんな手を使ってでも普通の学校に行きたかったのだ。
パッショーネなら金ぐらい回してくれるだろうとか、そんな考えだった。結構甘いのである。

「いやいや、学校なんて……っと、そうですね、そういえばぴったりの任務があります」

「え!?マジ?教えろ!コラ、教えろッ!教えてくださいッ!」

「焦らないでくださいよ、ジョルノに連絡取りますから……」

嫌々ながらも、フーゴは携帯電話でジョルノと話し込む。
その間、ナランチャは蟻の巣を見ている。
中に砂を詰めたりして遊んでいると、フーゴに後頭部を叩かれた。

「ほら、ジョルノからです」

携帯電話を手渡される。
いよいよ緊張の瞬間、ルイズに抱きついた時ほどではないが、額に汗が流れる。

「ノ……ノックしてもしもーし……」

『ナランチャか!ナランチャなんだな!』

「なんだミスタかよ。引っ込め」

『うげ!?うわ、ちょっと待てジョルノ、もうちょっと話させてくれたって……ヤッダバッ』

と、暫く静寂。

『……ナランチャですね(何で生きてるんですかね?)』

「おー、ピンピンしてるぞ」

『おかしいですね……(確かに死んだと思ったんですが)』

「何がだよ」

『いえ、いいです。(仕方ないですね。面倒で殆ど意味ない任務ですし、押し付けましょう)』

「なあ、ジョルノ……さっきから小声で何か言ってねーか?」

『気のせいですよ(何で変な所だけ鋭いんですか?)』

ジョルノは内心毒舌っぷりを発揮しつつも、素直に喜んでも居た。
トリッシュもジョルノの隣でその会話を聞いていたのだが、笑顔と裏腹に小さく聞こえるその毒舌に固い笑顔、というか苦笑を浮かべている。

勝手に電話を取ったミスタは肘打ちを喰らってのびていた。

『で、その任務って言うのは、日本のある町に居るスタンド使いたちの調査です(日本語覚えなきゃいけないし面倒ですよね)』

「へえ、で?」

『まあ、それだけですよ(だからあんまり意味ないんですよね、行っても。学校に通いたいナランチャの思考を利用すれば喜んで行くでしょう)」

「ん、おっけー。学校の費用は出せよ?しかも俺、もう18になるんだし、高校だぜ、高校」

『分かってますよ、そのぐらいは(そういえば費用がありましたね……ミスタの給料を2分の1引きますか)」

トリッシュはミスタに同情した。
反面、電話からは喜ぶナランチャの声が聞こえる。彼にも同情した。

(ジョルノ……なんか楽しそうね。Sっぽいのかしら?)

『あ、そうそう。フーゴも同行させます(こっちに居ても気まずいでしょうし)」

「なッ、えぇ!?ジョルノ、そんな!」

『ナランチャの『教育』はあなたに任せますよ、フーゴ(流石にそこまで費用は出せないんで。っていうか今のままナランチャが高校行ったら留年に加えて退学しかねませんし)』

そして、ヴェネツィア。喜色満面のナランチャ。今にも海に飛び込んでブチャラティ俺も逝くんだよォォォと叫びそうなフーゴ。
対照的な2人の姿にちょっとした視線が集まっていたりする。

「え、えっと、ですね。じゃあ、これから日本語とか教えますから……」

「おー、頼むぜフーゴ」

2時間後。

「このド低能がァーッ!!」

フォークで刺されて机にたたきつけられるナランチャであった。




そして、ジョルノたちとの久し振りの対面、そして数千回の『ド低能がァーッ』を経て、約2ヶ月が経過。
タバサと本を読みあって、今まで読まなかった本&文字と言うものに慣れたナランチャはギリギリ生活できる程度には日本語を習得。
その間、一切の外出は許されない地獄であった。
ちなみに頭を何回も掴まれたので髪の毛がぼさぼさになってしまうハプニングも。

「ナランチャ、本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ。進研ゼミに入る」

「本当ですかね……勉強意欲は認めますけど」

いよいよ旅立ちという事で、2人は空港に来ていた。
パッショーネの手回しでマンションに入ることになる。寮?なんですかそれは?
その代わり、ミスタの給料が激減。
財布に大打撃を受けたミスタは三日三晩ジョルノに説得を試みたものの、拳銃を1日カエルへと変えられてしまった。
そんな尊い犠牲を受け、俄然やる気になるナランチャ。

「よし、行くぜ!いざ、杜王町!」



と言うわけで、大波乱の予感。


次回、終章 後編『杜王町に舞う風』



To Be continued ...?

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