ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サーヴァント・スミス-20

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匿名ユーザー

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珍しくコルベールがきょろきょろしている。
何かを探しているようだが、ルイズには全く関係のないことだった。
暫く無視していたが、ナランチャに話しかけているのを見て、少し興味が湧く。
しかし話しかけない。
続いてナランチャ、コルベール、シエスタが話し始める。どうも妙な面子だ。
ルイズは隠れて様子見をすることにした。いつの間にか隣にはタバサとキュルケまでいる。

「で、その竜、ってヤツを見に行くと」

「いや、飛ばせたいんだよね、やはり!」

コルベールはハイテンションだ。口調がいつもと違っている。
よく言えば研究熱心な人、悪く言えば壊れている人。

「じゃあ、私についてくるって言うことで、いいですか?」

「おーう」

「何やってんの?ついてくるって何?」

「あ、ルイズか。……ルイズ?え?お前も来たいの?タルブ村」

タルブ、という頻繁には聞かないものの、知っている地名が出てルイズはさらに事情を問いただす。
事の発端は、異世界の『車』などの話をしてくれたナランチャと一緒に、コルベールがタルブ村の『竜』を見に行くという。
コルベールはまだナランチャが東方から来たと思っているので、やはりその『竜』のことについても聞きたいのだろう。
実際は、ナランチャにそんな知識などないとも知らずに。
当のナランチャは即答で承諾していた。
その後シエスタが休暇に実家――タルブ村に行くというので、さらにシエスタも加えて一緒に行こう、ということになったのだが。

「シエスタ、4人追加」

「ええええええ!?」

ルイズ、タバサ、キュルケ。おまけのギーシュ。
まさかこれだけ大人数になると思っていなかったシエスタは、嬉しいやら悲しいやら。
移動はもちろんシルフィード。
内心ガクブルでシエスタも乗り込む。

ルイズはまた震えている。下を見るなとあれほど……、ナランチャは学習能力のなさに呆れている(お前もだよ)
ギーシュも下を見ている。
身を乗り出している様を見て……ナランチャの野心が目覚めた。

「落ちろ!カトンボ!」

「うわあああああ!?」

某・何故動かん!?MSに乗ってた人の声で叫ぶナランチャ。
その所為で途中ギーシュが落下した。誰も気づく事はなかった。(コルベールさえ)
徒歩でボロボロのギーシュと、傷一つないシルフィード組。
なんと言ういじめ。これは間違いなく学園全体の問題。

「そういや、竜ってさぁ……見た目はどんな感じなんだ?」

「ええと……とても羽ばたけないような翼と、鉄で作られてるって事ぐらいならわかります。『竜の羽衣』って言うんですよ」

その証言からでも十分分かる。直感だが――恐らく『飛行機』だろう。
それが自分の世界の物かどうかは分からなかったが。

「元々、二匹竜は居たそうです。一匹はどこかへ消えちゃったらしいんですけど、もう一匹はおじいちゃんが乗ってました」

「飛べるか?」

「いえ、もう飛べなくて……それなのに、前は飛べたっておじいちゃんが言うものですから、変人だとか言われた時も。それ以外じゃ至って真面目だったんですけどね」

苦笑しながら、シエスタは言う。
コルベールは「絶対に飛ばせて見せますぞ!」と意気込んでいるが。

「もう一匹はどうなったんだ?」

「日食の中に消えたとか……はっきりはしません」

――日食。
それがナランチャの頭に記憶された。
もしかしたら、それが元の世界へ戻るヒントかもしれない。
僅かな希望を見出せた事と、もし帰れた時のことを考えると、心臓の鼓動が早くなってくる。迷いもあるのだろうが。
これは――そうだ。
ミスタとジョルノがアッー!しているところを見て以来だ。(誤解)
未だにトラウマである。

その隣にはここまで祈祷書持ってきて、『考える』『頭をオーバーヒートさせる』を同時にやっている『ゼロ』が居た。
覚悟?そんなものありませんよ、ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから。

「着いた」

「あ、あんた……まったく味気なかったこととギーシュのことは気にしてないのね」

その頃にはやっと皆が落ちたギーシュに気づいていた。
まだ壊れたポンコツロボットみたいに喋るルイズだが、言語は普通である。
問題はその棒読みとも言える発音であった。

「仕方ないだろ、シルフィードが馬より速いし……後腹減ったからさっさといくぞ」

「あんたそれ、理由とは言わないと思うんだけど……」

「きゅいきゅい!(ちょ、ちょっと嬉しいのね!)」

シルフィードも、空腹だからこそ急いだという事をタバサ以外は知らない。それでも重すぎて一日かかったが。
おかげでここに来るまでに持ってきた食料は全て食い尽くした。殆どタバサとナランチャの胃袋の中である。
一方、森を抜け、何とかここまでたどり着いたギーシュは、異常に逞しくなっていた。

「あ、あの、ギーシュ?」

キュルケが凄く語尾を上げて問う。

「ガンホー!ガンホー!ガンホー!」

「や……やりすぎたぜウォークライ……ッ!」

ナランチャは嘆いていた。元ネタ?「やりすぎのウォークライ」で検索してちょんまげbyアンリエッタ
ああ、我らのギーシュは、シルフィードから過酷な森に突き落とされる(主犯ナランチャ共犯タバサ)ことによって、死をも恐れない最強の戦士に変貌してしまったのです。
こんなのギーシュじゃない。ということで蜂の巣の刑に決定しました。
今、全ての元凶は草原に寝っ転がっています。

コルベールは、着くなりシエスタに『竜』の場所への案内を求め、それをシエスタも快く承諾した。
せっかくなので全員で行く事に。
見て損はないだろうと考えたからであるが。

「何コレ」

目の前にあるのは、まさしく飛行機であった。
が、この世界の住人には、確かに理解されないだろう。

「こ、コレが飛ぶの?ナランチャ……」

「あ、ああ。ま、間違いねぇけど」

「『固定化』をかけられているようだね。劣化はほぼ見られないな」

ぺたぺたと表面の質感を確かめるように触るコルベール。
なんとなくナランチャも触る。
ひんやりした、いかにも金属っぽい感触の後に、脳に流れ込んでくる『情報』。

(ああ、これか……『ゼロ戦』?……ガソリンがないのか)

ガンダールヴのルーンの効果であろう。
対して驚く事もなく、その竜の羽衣――『ゼロ戦』を考えるような瞳で見つめた後、燃料タンクを開ける。
予想通り、燃料は殆ど残っていないが、かすかに残ったガソリンが、独特の匂いを醸しだしていた。

「……コルベール」

「なんだね?」

「飛ぶかも知れねー」

「な、なんと!?本当かねそれはァァッ!」

耳をつんざく様な叫び声を上げるコルベール。興奮しすぎである。後頭部に飛び膝蹴りを一撃入れると暫く黙った。
見たところ、それほどの損傷はない。
なら、燃料と少しの修理で飛ぶはずだと、ガンダールヴのルーンを通して入る情報は語っている。

「石油……が、必要かな。採れるかどうかは分からねーし、ガソリン作れるかどうかもわかんねーけど、ほれ」

「これは?」

「そのガソリン、だ。それを手本にして、そうだな、この燃料タンクいっぱいに入れれば完全なんだけど」

タンクは結構大きい。
もし、これいっぱいにガソリンを作って入れるとしたら、この世界ではかなりの手間がかかるはずだ。
言い留まって、結局、『半分でもいいや』とは言わなかった。

元の世界へ帰るために、どれだけ必要かがわからなかったから。
そう言っても、差し支えはない。

「シエスタの話じゃ、日食に飛べば帰れるかもしれない、らしいな」

ルイズの時が止まった。ドーンッ。

なんと言う、運命の悪戯であろうか。
日食が起きるのは――実は数日後。ナランチャはもちろん知らない。
つまり、その時が最後だ。

脳裏に駆け巡るのは、召喚してからの一日一日の風景だった。
しかし、自分に止める勇気があるのか?
最初の頃の、帰りたがっていたナランチャの姿を思い出し、少し胸を痛めた。

思えば、最初の落胆っぷりは凄かった。
平民を召喚など、前代未聞。
やはり自分はゼロなのか、そう思ったときもあった。
しかし、その少年は強かったのだ。体調不良から最初は苦戦したが、最後はギーシュを『得体の知れない力』――スタンドで打ちのめした。

その後も彼は快進撃を続けている。
土くれのフーケの撃破、ワルドを撃破。どちらも上位ランクのメイジであった。
いつしか、信頼を抱いていた。

だが、それ以上の何か。
自分にも分からない意思が、自身の片隅に眠っている気がする。
だから、迷った。彼も、ルイズも。



数時間後、竜の羽衣は、金と引き換えに竜騎士隊によって運ばれる事になったが、そのための出費は結構痛かったという。
コルベールはさっさと帰ってしまった。研究したくてたまらないようだ。

その日の夕暮れ時。シエスタの手によって作られた「ヨシェナヴェ」が振舞われた。
村名物のシチューと言うことらしい。
くれぐれも某料理人のスタンドが入っているとか思わないように。

「美味いッ、ディ・モールト美味いぞッ!」

「うんまあァー―いッ!ハーモニーっつーぐぼっ!?」

「黙んなさいよ」

ギーシュはコメントの途中で爆発を喰らった為再起不能。
全員が絶賛していた為、シエスタも素直に喜んでいた。
はしばみ草も入っていたが、特に気にならない。

(タバサのイデ料理とは大違いだぜ)

それを口に出していたら、タバサは1ヶ月の間失踪している所だった。
とは言え、あのタバサのはしばみ料理。
口の中に広がる小宇宙の神秘は、ヤバイ。本当に。

「それより、ナランチャ……」

「んー?」

「本当に、帰るのかい?」

「………」

復活したギーシュの一言で、全員が押し黙る。
タバサが何かを堪えているが、隣のキュルケが机に突っ伏してぷるぷる震えていたため、インパクトのスケールで負けて気づかれなかった。

「帰るな」

「君君ィ。日食が数日後なのは知ってるかい?」

「ハァ!?マジかよッ!」

ナランチャはショックと同時に喜びを感じていたが、罪悪感が後から押し寄せていく。
ルイズが無言のまま食事をしているのは、恐らく自分の所為だ。
日食がほんの数日後だという事を知らずに、軽く言っちゃった自分が悪いのだ。
大体ナランチャは日食と言うものがどういうものか知らず、何時起きるかなど全く知らなかった。
まあ、その時になったら何とかなるだろう、と言う感じだった。

「あー、そ、その、ルイズ?き……聞こえてる……かな?」

「……聞こえて、るわ」

この瞬間――ナランチャは確信した。
今の自分は……
蛇に睨まれた蛙
地雷原に迷い込んだ人間
網に引っかかった魚
腹をすかせたライオンの目前に縄で縛られて放置された人間
波紋を打ち込まれた吸血鬼
ビグザムと対峙するボール
零距離でツインサテライトキャノンを撃たれるコルレル
タバサVSギーシュ
ルイズVSギーシュ
キュルケVSギーシュ
ナランチャVSギーシュ

これら全てに当てはまるのだと。

今夜は泊まる事になっている為、夕食の後は各個自由行動を取ることに。
また女性を誘惑しようとしていたギーシュは、キュルケに燃やされていた。
ナランチャは叫ぶ。

「燃えるゴミは月・水・金ッ!」

そして蜂の巣へ……


何事もなかったようにギーシュをシルフィードの尻尾にくくりつけて飛ばせ、果てしなく続く草原に、ナランチャは座り込む。
その向こうに見える太陽をボーっと見つめ、ため息を吐いた。
再度、自身に確認をする。
自分は、死んだのだと。
その自分が帰ってもいいのか、と。

この世界で出来た仲間を置いて、本当に行ってもいいのか、と。

だが、帰りたいのもまた真意。
帰りたい、帰りたくない。その狭間に、ナランチャはいた。

「………何してるの?」

「ルイズ……か」

不意に掛けられた声に反応して、振り向く。
いつものように桃色の髪をなびかせて、ルイズは現れた。
その顔からは怒りは見られない、自分と同じ迷いが感じられた。
黙って隣に座らせてやる。
偉く、自分が憎たらしくなった。
無知なのにもかかわらず、なんの気遣いもなくあんなことを言ったことを悔いた。それなのに、今はこうやって、2人でただいることしか出来ないのだろうか。

「……帰るの?本当に」

こんなことも、聞かれてしまうと言うのに。
答えたくない。
しかし、包み隠せるとも到底思えない。

「……そう、だな」

言い切ってから、心臓が跳ね上がる感触を味わう

「そう」

「………」

気まずすぎる。ルイズの顔は思いっきり沈んでいた。
ナランチャも沈黙するしかない。
ここまで重い雰囲気は、この世界に着てから一回も味わったことのないほどの、重圧。

「じゃあ、私も連れて行ってくれる?」

ナランチャはずっこけた。
そのド低能な頭で考える。え?え?とか混乱しつつも。
そして、結論はといえば、『拒否』であった。
そうなれば、ルイズは親友にも会えなくなるし、故郷に二度と帰れなくなるかもしれない。
それを気遣っての事だったのだが、やはり言いにくい。

「う……あ」

「……どうなの?」

どんどん詰め寄られる。
ナランチャの顔を覗き込むルイズ。

「や……そ、そりゃあさ……お前も友達が居るだろ?ここから恋人とか作ったりするのに、俺んとこ来たら……じ、自分で決めるべきだと思う……ぜ?」

「……ふぅん。誤魔化している様にしか聞こえないわね」

図星であった。

「で、でもさ……流石にあっちで友達恋人作れるわけは……」

「つ……作れるわよ、両方」

「……もしかして、お前……」

「べ、別にアンタが好きってわけじゃ……」

「いや、もしかして当初の頃のわがままを発揮して無理やり友達とか作るのか、って言いたかったんだが」

ルイズ レベル16
精神 1/1
→自爆 消費SP1
 奇跡
 愛
 激怒
 誘爆
 戦慄

「あぎッ……」

「ほほう……って、嘘だよ嘘ーッ。お前のことだから、別に気にしねーよ。勢いで言っちまったんだろ?」

「う、ううう、うんうん」

ルイズは誤魔化せたと思って安堵する。このときばかりはド低能に感謝した。
この後、暫く談笑する余裕も見せたので、いつの間にか先までの雰囲気はなくなっていた。

その数分後、空からギーシュが降ってきた。シルフィードが、尻尾につけたギーシュが鬱陶しくなったので強引に叩き落としたのである。
星になったギーシュ。君の事は2日間忘れない。

しばらくのあいだタルブの村に在住するシエスタの見送りを受け、彼らはあっという間の旅を終える。
軽くなってご機嫌のシルフィードは飛ばしに飛ばし、行きより早く帰ることが出来た。
まだ居たいなどと言う意見を無視して、タバサとキュルケの独断による帰宅(?)であるが……。
ルイズは詔も考えなければならないので必死である。
ちなみにまだ一文字も思いついていない。

「んぐ……む……ぼんっ」

「またか」

祈祷書に書き込む前に、ルイズは既にバイツァ・ダストの術中である。1時間ごとに爆発していた。
いや、手首を狙われたりはしないのだが、決まって一時間たつと爆発する。
そして20分ベッドに寝転び。
また考え始め、一文字も思いつかずに爆死。指にはまった水のルビーに破片が飛び散りそうで恐い。
(『アンリエッタから貰った』byナランチャ 本当に売るつもりであったが、帰れる希望が出てきた為譲る)

何をしているのやら、というナランチャの哀れみの目をものともせず、考え続ける。
その内、幻覚として文字が見え始めたが、また爆散。

「……ルイズ、お前はよくやったよ。俺が誇りに思うほど立派によ」

「ぷすぷす……ぼんっ」


次の日の授業は、全く頭に入らなかった。
今までもこんな事が会ったが、最大級。もう、何があったかさえ忘れた。
いつものようにルイズの先をナランチャが行く。
コルベールのガソリンを錬金することについては、石炭などを利用してそれなりには進んでいるようである。

そう、いつものことだ。
コルベールが研究に打ち込み、ギーシュがまた二股をして、キュルケがからかって来て、タバサが無言で本を読んでいる。
いつまでも続くような光景から、もうすぐナランチャが消えるのだろうか。

それでいいかと問われれば、良くないと答えるだろう。
止めたい。だが、あれは確かに彼の意思だ。
本来、余程の事でなければ、人が人を強制するなど、やることではない。
これはルイズにとって『余程の事』に当たる。だが、ナランチャを止められるとはどうも思えなかった。
彼は「普通の学校に行って、普通に過ごすのもいい」と言ったこともある。
故郷の料理を食べたいとも言っていた。

人の生き方を否定する事が、ルイズには出来なかった。
そうだ、死んでいたところを救う事になったとは言え、『こちらが勝手に』召喚したのだ。
帰るのなら、せめて、綺麗さっぱり、未練も残さずに帰らせたいと思った。

気づけば夜になり、ナランチャは隣の床で寝ている。
自分のベッドが、自分の涙で濡れているのに気づくまでは、それほど時間を要さなかった。

年が近くて、気が会う面もあった。
バカな事をやっていたが、それでも、功を奏してムードメーカーとなっていた。


そろそろ、別れ時なのか。

祈祷書を握りしめ、ルイズは眠りに着いた。



To Be continued ...

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