ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サブ・ゼロの使い魔-39

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軽い自己紹介を終えてから、ルイズとワルド、それにギアッチョはウェールズの
先導で「イーグル」号の船長室にやってきた。ウェールズの対面にルイズと
ワルドが腰掛け、ギアッチョは少し離れて壁に背を預ける。キュルケ達が同席
出来ないことに若干の罪悪感を感じながら、ルイズはまずアンリエッタが
自分に預けたウェールズへの手紙を取り出した。しかしウェールズに手紙を
差し出そうとして、ルイズはピタリと動きを止める。
「・・・あ、あの」
「なんだね?」
「・・・無礼を承知でお尋ねしますが、その・・・本当に皇太子様でしょうか」
恐る恐る尋ねるルイズに、ウェールズは笑って答えた。
「その疑問はもっともだ 僕は正真正銘、本物のウェールズ・テューダーだよ
・・・そうだね ラ・ヴァリエール嬢、右手を出してごらん」
言われるままに、ルイズは右手を差し出す。その指に光る指輪は、忠誠に
報いる為にアンリエッタがルイズに与えた「水のルビー」であった。ウェールズは
己の右手に嵌る指輪を外すと、そっとルイズの手を持って指輪同士を近づける。
その瞬間、ウェールズの指輪を飾る宝石と水のルビーの宝石が共鳴を始めた。
二つの宝石から放たれた二色の光は、互いと緩やかに絡み合って世にも美しい
虹色の光を振りまいた。
「・・・・・綺麗・・・」
「この指輪は、我がアルビオン王家に伝わる『風のルビー』だ 君のそれは、
アンリエッタが持っていた『水のルビー』だね?」
柔らかいまなざしで水のルビーを見つめるウェールズに、ルイズはこくりと頷いた。
「水と風は、虹を作る 王家の――そして国家の間に架かる虹さ」
ウェールズはにこりと微笑んで言うと、疑った非礼を詫びるルイズを手で制する。
「いいんだラ・ヴァリエール嬢 このような状況であれば、疑ってかかるのは
大使として当然のことだよ それに、僕達は最後の客人に気を使って欲しくなど
ないんだ ラ・ヴァリエール嬢、ワルド子爵・・・そして使い魔の青年、ギアッチョ
どうか楽にして欲しい それが――我々への、一番の手向けでもある」

――戦況が悪いだとかそんなレベルじゃあねーらしいな
壁にもたれたギアッチョは、腕を組んでウェールズを観察する。しかし彼に
怯えた様子は微塵も見当たらなかった。ただのボンボンではないらしい、と
ギアッチョは考える。
「姫様からの密書にございます」
ルイズは一礼して、アンリエッタからの手紙をウェールズに渡す。
ウェールズはルイズから手紙を受け取ると、愛おしそうに花押に口づけした。
折り目一つつけないように丁寧に封を開き、便箋を静かに取り出す。
真剣な眼で文字を追って、ウェールズは顔を上げた。
「・・・結婚するのか アンリエッタは・・・私の可愛らしい、従妹は」
その口調にどこか寂しげなものが感じられ、ルイズは何も言えずに頭を
下げた。
最後の一行まで手紙を読み終えて、ウェールズは微笑んだ。
「委細了解した 姫はとある手紙を返して欲しいと従兄の私に告げている
何より大切なアンリエッタからの手紙だが――彼女の望みは私の望みだ
喜んでそのようにさせてもらうよ」
ルイズはほっとしたようなどこか物悲しいような、複雑な表情で顔を上げた。
「しかしながら、あれは今手元にはない ニューカッスルの・・・我ら王国軍の
最後の牙城にあるんだ 姫の手紙を、空賊船などに『連れて来る』わけには
いかぬのでね」
ウェールズはそう言って笑うと、手紙にすっと指を滑らせた。
「足労をかけてすまないが、ニューカッスルまで同乗してくれたまえ
何、明日の戦が始まるまでには君達を帰すことが出来るだろう」

少し話があるらしくウェールズと二人で船長室に残ったワルドを置いて、
ルイズとギアッチョは退出した。とりあえずすべきことが終わって、ルイズは
甲板へ向かう通路を歩きながらほっと溜息をつく。大使としての緊張感が
解けて素の自分に戻ったルイズは、そこではっと思い当たった。状況が
状況だったのでさっきの騒動以来ギアッチョと口をきいていなかったが、
ひょっとしてギアッチョは怒っているのではないだろうか。自分達の命も
顧みず、空賊にまるで喧嘩を売るような――というか完全に売っていた
――真似をしてしまったのだ。フーケと戦った時にギアッチョに言われた
ことを何一つ理解していないと言われても仕方がないだろう。そして、
ならばギアッチョはきっと自分に説教をするはずだ。今までは空気を
読んで黙っていたのだとすると、ひょっとしてそろそろ――
「・・・おい」
「は、はいっ!?」
来た。やっぱり来た。思わず敬語が出てしまい、ルイズは軽く自分が
情けなくなった。つーっと冷や汗が流れる。ギアッチョに怒られるのは
やっぱり少し・・・いや、かなり恐い。「しっかりしなさいルイズ」と彼女は
心中自分に言い聞かせる。ギアッチョが人間だろうと自分より年上で
あろうと、自分は彼の主人なのだ。身分だとか上下関係だといった
ものを主張する気など毛頭ないが、しかし主人であるからには使い魔に
対しては毅然とあらねばならないとルイズは思う。魔法を使えない自分
だからこそ、せめて振る舞いだけは堂々としていなければならない。
そうでなくては、自分などに召喚されてしまったギアッチョにも申し訳が
立たない。
己の心に棲みつくどうしようもない劣等感に蓋をして、ルイズは堂々たる
所作でギアッチョを見上げた。例え怒りを受ける身であろうとも、毅然と
してそれを迎え入れるべきだとルイズは考える。コホンと一つ咳をして、
「・・・何かしら?」
彼女は極力余裕を持たせてそう言った。

ギアッチョはルイズを見て何かを考え込んでいるようだった。声を掛けて
おきながら何も言おうとしないギアッチョにルイズの不安は加速度的に
重さを増してゆく。しかしルイズはギアッチョから眼を離さなかった。
内心の不安を押し隠すべく無理に表情をなくそうとして逆に殆ど睨む
ような形になってはいるが、ともかくルイズは退かなかった。「来るなら
来なさいよ!」と、心中まるで戦でもするかのように呟く。こうであると
決めたルイズの意志は、時として鋼よりも固かった。
思考を止めたものか纏めたものか、やがてギアッチョは何だかよく
分からない顔でルイズに向き直った。
――来た・・・ッ!
ルイズはかかってきなさいと言わんばかりにギアッチョを睨む。
ギアッチョはいつも以上に読めない表情でスッと右手を上げると、

わしわしと、ルイズの頭を乱暴に撫でた。

「ふええぇっ!?」
ギアッチョの有り得ない行動に、鋼鉄のはずのルイズの意志はあっさりと
砕け散った。厳然たる言葉を紡ぐはずの口から生まれて初めて出した
のではないかというほどに情けない声が飛び出て、頭上の手と己の声の
相乗効果でルイズの顔は湯気が立たんばかりに茹で上がった。
「なッ、な、な、ななな――!?」
動揺ここに極まれり。せめて言葉の一つも出ればまだなんとか取り繕う
ことも出来たかもしれないが、現実は非情であった。ルイズはギアッチョに
錯乱でもしたのかと問いたかったが、今この場で一番錯乱しているのは
誰がどう見てもルイズ自身である。ギアッチョはルイズを差し置いて
よく分からんといった表情をすると、彼女を見下ろして声を掛けた。
「よくやった」
「・・・へ?」

怒らないどころか自分を褒めるギアッチョに、ルイズは赤くなった顔の
ままきょとんとする。ルイズの頭に無造作に手を置いたまま、ギアッチョは
全く褒めているとは思えない顔で続けた。
「言っても解らんガキかと思ってたがよォォ~~ 上出来だぜルイズ
己の命が奪われようと・・・オレやワルドが死ぬことになろうともてめーの
心を貫くという『意志』・・・それが『覚悟』だ」
「え」
「状況に流されたり強制されたりした結果の行動・・・そいつは『覚悟』
なんかじゃあねえ 追い詰められたりどうでもよくなったりしてなりふり
構わずヤケになって突っ込むなんてのは、ただ諦めてるだけだ」
「・・・ギ、ギアッチョ あの・・・わたしさっき空賊のことで頭が一杯で
あんたやワルドのことなんてすっかり忘れてて・・・だから」
ギアッチョが言ってるようなことじゃないと否定するルイズを、ギアッチョは
言葉で遮った。
「――『覚悟』は・・・確固たる己の『意志』から生まれる オレ達のことを
覚えていたか忘れていたか、そんなもんはどうだっていいことだ
何がどうであれ、さっきのおめーには間違いなく『覚悟』があった
祝福するぜルイズ 無意識だろーとなんだろーとおめーには覚悟の心が
ある 重要なのはそれだけだ」
ギアッチョは抑揚に乏しい、一見無感動に思える口調で、はっきりと
そう言った。
「・・・・・・・・・『覚悟』・・・」
心で反芻するように呟いて、ルイズはギアッチョを見上げる。彼は
相変わらず読めない顔でルイズを見ていた。だが、だからこそ、ルイズは
彼を信じることに躊躇はなかった。この無愛想な男が言うのなら、きっと
そうなのだと。だからルイズは、ただ一言だけ言葉を返す。
「・・・・・・うん」
それで十分だった。

「・・・・・・ところで、あの」
置き忘れられたかのようにルイズの頭に乗っているギアッチョの手を
指差して、ルイズは疑問をぶつける。
「こ、これ・・・どうしたの?いきなり・・・なんかギアッチョらしくないわよ」
「あー・・・なんだ 一つプロシュートに倣ってみよーと思ったんだがな」
やっぱりこれはオレのキャラじゃあねーな、とギアッチョは両手を上げて
首をすくめた。
「そ、そんなこと・・・」
頭からどけられた手が何故か名残惜しくてルイズは思わずそう言い
かけるが、
「あーいたいた おっそいわよあなた達!」
続く言葉は、やってきたキュルケの呼びかけに遮られた。
「キュ、キュルケ!」
「何やってるのよ二人共 もうすぐニューカッスルに着くらしいわよ?
甲板に行きましょうよ」
催促しながら歩いてくるキュルケに眼を向けて、ギアッチョは口を開く。
「あいつらは甲板か」
「ええ、ギーシュは船酔いでフラフラしてるけどね タバサは相変わらず
本を読んでるわ」
そう言って笑うと、キュルケはルイズに眼を向けた。
「あらルイズ?あなた顔が真っ赤だけど何をやってたのかしら?ん?」
「なっ、何もしてないわよ!あんたじゃないんだから!」
楽しそうに笑って顔を近づけるキュルケから眼を逸らしてルイズは
怒鳴る。しかしキュルケは綺麗な笑みを崩さずに、デルフリンガーを見た。
「ねぇデルフ 今二人は何をしてたのかしら?」
「いや、てーしたことじゃねーんだけどよー」
答えようとした魔剣を睨んで、ルイズは「余計なこと言ったら船から投げる
わよ!」と凄む。
「・・・てーしたことじゃなさすぎて忘れたわ」
いくらなんでもここから落とされたくはないらしい。デルフはあっさり従った。

ルイズは謝りたかった。何事もなかったかのように甲板上で歓談している
三人に。それが出来ないならば、せめてありがとうと言いたかった。
しかし、どうしても言葉が出ない。喉まで言葉が来ているのに、どうしても
それを吐き出すことが出来ない。礼の一つも言えない自分を、ルイズは
ブン殴ってやりたかった。打ち沈んだ彼女の心境を知ってか知らずか、
キュルケはルイズに何かを言わせる暇もなく話題を繋ぐ。
「そんなわけでフーケを逃がしちゃったのよ どう思う?ギアッチョ」
「・・・ま、いいんじゃあねーのか てめーの意志で決めたってんならな」
ギアッチョはギーシュに眼を遣って答えた。その言葉に、ギーシュは
青白い顔のまま満面の笑みを浮かべる。
「ほら言った通りじゃないか!ギアッチョなら分かってくれるってさ・・・うぷっ」
「はいはい聞こえたわよ それも『覚悟』ってわけ?さっぱり解らないわ」
キュルケはやれやれといった感じに首を振った。舷側の欄干に背を
預けて、ギアッチョははしゃぐギーシュから眼を外して言う。
「安心しろ てめーの決意で奴を逃がしたってことは責任を取る『覚悟』も
当然出来てるってわけだからな・・・なあオイ」
「えっ!?あ・・・ああ も、勿論さ!当たり前だろう?」
青白い顔を一層青くして答えるギーシュに、キュルケは一つ溜息をつく。
「・・・そっちは?」
話の間隙を縫うようにして、タバサが本から眼を上げて問うた。
珍しく自分から声を掛けるタバサにギアッチョは意外そうに眉を上げる。
「仮面の野郎が追ってきたな」
「本当?あの傭兵達の自白は事実だったわけね・・・怪我は?」
三人を代表したキュルケの質問に、ギアッチョは左手を上げることで
答えた。隙間なく巻かれた包帯に、キュルケ達は息を呑む。
「ちょっ・・・それ大丈夫なのかい!?」
思わず叫ぶギーシュに、ギアッチョはどうでもいいように右手を振って
みせた。
「大した怪我じゃあねー こいつが持ってきた軟膏もあるしな」
ギアッチョはそう言って、浮かない顔をしているルイズを見る。

「へぇ あなたもそういう気配りが出来たのねー」
キュルケはわざと皮肉っぽい口調で言うが、ルイズは沈んだ顔のまま
何の反応も返さない。少し唇をとがらせて、キュルケはルイズの顔を
覗き込む。
「ちょっとールイズ!あなた少しは明るい顔を――」
と、キュルケがルイズを叱咤しようとした時、フッと影が彼女達を覆った。
「何・・・?」
彼女達は一斉に空を見上げる。雲の切れ間から、巨大な軍艦がその
姿を覗かせていた。
「うっぷ・・・あ、あれはひょっとして・・・」
ギーシュが眼を見開いて呻く。
「そう」
空を振り仰ぐキュルケ達の後ろから、突然声が投げかけられた。
ワルドと共に船室から出てきたウェールズが、形のいい眉を忌々しげに
ひそめて言う。
「叛徒共の、船だ」
巨大な、全く巨大な――禍々しき戦艦であった。優に『イーグル』号の
二倍はある艦体に同じく巨大な帆を何本もはためかせている。かと
思うと、巨艦は無数に並んだその砲門を一斉に開き、大陸に向けて
斉射を開始した。どこに着弾しているのかは大陸を半ば見上げる形で
航行している『イーグル』号からは分からなかったが、ドゴドゴッ!という
砲撃の音と振動はびりびりと伝わってきた。
「かつての我らが旗艦・・・『ロイヤル・ソヴリン』号だ 奴らの手に落ちて
からは、『レキシントン』号と名前を変えている 初めて我々から勝利を
もぎとった戦地の名だ・・・よほど名誉に感じているらしいね」
ふっと皮肉な笑いを浮かべるウェールズの横で、ギアッチョは
『レキシントン』号を観察する。舷側に並んだ無数の大砲と対を成す
ように、艦の周囲ではドラゴンに乗った数多の竜騎士達が哨戒を行って
いた。ウェールズ達王党派にとっては、まさに絶望の象徴に他ならない
だろうと思われた。

「備砲は両舷合わせて百八門、その上竜騎士まで積んでいる
あの戦艦の反乱から、全てが始まった・・・因縁の艦だよ
さて、我々はあんな化け物に対抗し得るはずもない そこで雲中を通り、
大陸の下からニューカッスルに近づくというわけさ そこに我々しか
知らない秘密の港があるんだ」
ウェールズはそう言って大陸を見上げた。

大陸の下へと潜り込み、陽の届かないそこを慎重に航行する。
そうするうちに頭上に見えてきた三百メイル程の穴を、『イーグル』号は
ゆるゆると上昇してゆく。頭上に薄っすらと見える光は船の上昇につれて
徐々に明るくなってゆき、やがて眩い程に大きくなったかと思うと、船は
静かに停止した。
ウェールズに促されて、ワルドはグリフォンと共にひらりと地面に飛び
降りる。辺りを見渡して、彼はほう、と感嘆の声を上げた。
「これは――素晴らしい」
「驚いたかい?子爵」
いたずらっぽく笑うウェールズを振り返って、ワルドは両手を広げてみせる。
「それはもう ここまでの旅路もさることながら、これ程までに美しい光景は
様々な場所を旅した私にも滅多に御眼にかかれませぬ」
そこは巨大な、そして実に見事な鍾乳洞であった。見事な円錐形の鍾乳
石が大小様々に垂れ下がり、それを覆う発光性のコケが周囲を幻想的に
照らし出している。ルイズ達もまた、息を呑んで立ち尽くしていた。
背の高いメイジの老人がウェールズに近寄り、彼の労をねぎらう。
「おやおや、これはまた大した戦果でございますな 殿下」
老境にあって尚かくしゃくたる彼は、『イーグル』号に続いて鍾乳洞に現れた
船を見て、顔を綻ばせた。
「喜べ、パリー」
ウェールズは手を上げて、洞窟中に響く声で戦利品を報告する。
「積荷は硫黄だ!硫黄を手に入れたぞ!」
その言葉に、主人の帰還を待っていた兵達が一斉に歓声を上げた。

「おお!硫黄ですとな!火の秘薬ではござらぬか!いやはや・・・これぞ
まさしく天の配剤と言うべきかも知れませぬな 最後の最後に、我々の
名誉を守る機会を下さるとは!」
パリーは男泣きに泣き始めた。
「先の陛下より御仕えして六十年・・・これほどに嬉しい日はありませぬぞ
彼奴らが反乱を起こしてからというもの、苦渋を舐めっぱなしでありましたが
――何、これほどの硫黄があれば!」
ウェールズは、ニヤリと一つ勇ましく微笑んで後を継いだ。
「ああ、そうだ 我らアルビオン王家の誇りと名誉を、散華のその瞬間まで
叛徒共に示し続けることが出来るだろう」
「おお、おお!この老骨、武者震いがいたしまするぞ!」
ウェールズ達は、心底楽しそうに笑いあった。
「して陛下 御報告なのですが、叛徒共は明日の正午に攻撃を開始する
との旨、伝えて参りましたぞ」
「ついに来たか・・・それではやはり、明日こそ我ら王家の最期になると
いうわけだな」
怯えた様子一つ見せずに、ウェールズはあっさり言ってのける。その
言葉に動揺を見せる兵士もまた、居りはしなかった。
――最期って・・・この人達怖くないって言うの?
キュルケはルイズ達に困惑した顔を向ける。皆思い思いの表情を
浮かべていたが、その表情はどれも自分とは違うような気がして、
彼女はますます困惑を深めた。
「さて、こちらはトリステインからの客人だ 重要な用件で我が国に
参られた大使殿だよ 丁重にもてなしてさしあげてくれ」
「ほほう、これはこれは大使殿 殿下の侍従をおおせつかって
おりまする、パリーでございます このような沈みゆく国へ、ようこそ
いらっしゃいました 大したもてなしも出来ませぬが、今夜は
ささやかな祝宴が催されます 是非とも御出席くだされ」
老いたメイジは、気品溢れる仕草で一礼した。


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