ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

姫殿下からの第一指令 土くれのフーケを捕縛せよ その②

最終更新:

familiar_spirit

- view
だれでも歓迎! 編集
姫殿下からの第一指令 土くれのフーケを捕縛せよ その②

魔法学院から三時間の道のりを経て、目的のトリステイン城下町にたどり着く。

「ちょっと、早く来なさい!」
「なんでテメーはそんなに元気なんだよ…」

長時間の乗馬で引きつった足を伸ばしつつ、周囲を見回す。
道幅は5メートルほどで、雑多な印象を受ける。
大きな城下町と聞いていたミスタはすこし拍子抜けした。

「なんだか映画の中に入り込んだみてーだな…
しかし、ここが大通りか?いやにせめーとこだな」
キョロキョロとしながら言う。
「狭い?トリステインの中でも一番の通りよ?あんたのいたところって
どれだけ広いのよ。そういえば異世界から来たとか言ってたけど…」
胡散臭そうに見てくるルイズ。ミスタの言ったことを
ほとんど信じていないのは明らかだ。

「そーだ。別に信じてもらう必要はねーがな。
ホレ、おめーの財布だ」
話を打ち切って、預かっていた財布を放る。

「投げるんじゃないわよ!結構入ってるんだから!」
そのことで、報酬の前金を貰ったことを思い出し、
この世界のカネの価値がまったく分からないことに気づく。

「そーいや、俺が貰ったカネって、どれぐらいなんだ?」
財布と一緒にしまっていた皮袋を取り出すミスタ。
皮袋には結構な量の金貨が詰まっており、ジャラジャラと鳴っている。

「えーっと、…新金貨で300!?私の所持金よりぜんぜん多いじゃない!」
300といわれても全く実感のわかないミスタだが、ルイズの反応からして
かなり多い金額だということは分かった。

「貴族のお嬢様のおめーより多いってことは、結構な額っつーことだな。
なかなか気前がいいじゃあねーか」
ルイズは「主人としての威厳が…」とか呟いている。

「なにブツブツいってんだルイズ?とりあえず武器屋に行こうぜ」
「わ、わかったわよ!…こっちよ」
路地裏に向かう。かなり薄汚く、ゴミや汚物が散らかされ、
見ていて気持ちのいい場所ではない。

「あったわ。ここよ」
ルイズがさび付いた銅の看板のかかった店を見つける。
ミスタはその店の羽扉を押し開け入っていく。

店内には店長が一人いただけだった。中は薄暗く、
剣や槍、鎧といった武具が積まれ、倉庫のような雰囲気だった。

「何の御用で?うちは貴族様にお目をつけられるようなことは
しておりやせんが」
店長がルイズの紐タイ留めの五芒星をあざとく見つつ言う。

「客だ。銃を一式頼む。」
「これは失礼を。すぐお持ちしやす」
店長が店の奥に引っ込んでいるあいだ、店内を眺める。

「しっかし、辛気くせーとこだぜ。置いてある武器も
なんだか錆びてねーか?」
「しょうがないでしょ。この街にある武器屋といったら、
ここぐらいのもんなんだから」
「へー。案外トリステイン王国とかもたいしたことねーな」
「だから、そういう発言は慎みなさいよ!…まったく、
なんでこんなヤツが姫様に登用されるのよ」
ルイズがブツブツ言っていると店の奥から店主が出てきた。

「お持ちいたしやした」
「こ…これかよッ!」
店主の持ってきた火縄銃を見て、予想はしていたものの
落胆するミスタ。
全長は1.5mほどもあり、取り回しはかなり悪そうだ。


「もうちょっとマシなもんはねーのか!?」
「へい、うちでは銃はそこまで広くはとりあつかってませんで。
これがうちにある最新式でさあ」
店主がぶっきらぼうに答える。

(くそ…もう少しましなもんがあると思ったが…これじゃあ
弾込め直すのにどんだけかかるるかわからねーぜ…)
「まーいい…それをくれ。あと、弾もありったけだ」
「へい、エキュー金貨なら45、新金貨なら30でさあ」
皮袋から金貨を取り出し、銃と大量のペーパーカートリッジ、
そしてさく杖に口薬の入った筒という装備一式を受け取る。
すると、ルーンが輝きだし、この銃の情報が流れ込んでくる。

(やっぱり再装填の手間がハンパねーな…
ピストルズにやらせても10秒程度はかかるみてーだな…
どうしたもんだろーかねー)
ミスタが思案していると、今度はルイズが店主と話し始める。
「何か見栄えのする武器は無い?」
「それなら剣が一番でさあ。ちょっとお待ち下せえ」
いったん店の奥にひっこむ店主。

「これなんかいかがですかい?かのジュペー卿が鍛えた
大業物、エキュー金貨なら3000、新金貨なら2000で結構で」
「庭付きの立派な家が買えるじゃない!新金貨で100ぐらいのはないの?」
「貴族様、いまどき剣を買おうってのなら、最低でも200は必要でさあ」
店主が金づるを見つけたとばかりに下卑た笑いを浮かべる。

「やいやい、この糞オヤジ、あくどい商売しようとしてんじゃねーぞ!」
突然の声に飛び退ったミスタだが、声がした方向には剣の山しかない。

「デル公!商売の邪魔をするんじゃねえ!」
「うるせえ、そんなナマクラを高値で売りつけようとしやがって!」
見ると、一本の剣が震えている。どうやら声はそこから聞こえるようだ。

「あら、それインテリジェンスソード?」
「へえ、大昔からあるんですが、口が悪くて煩いってんで、誰にも
買われず残ってる始末でして。商売の邪魔で仕方ありやせん」

ミスタは剣の山の中からその一本を取り出す。
「へええ、しゃべる剣?なんだかおもしれーのがあるじゃねーか」
「やいやい、火薬くせー手で触るんじゃねーぜ!銃なんか買いやがって!
おめーみてーなヤツに誰が使われるもんか…って?」
剣の罵声が止まる。

「おでれーた。おまえ『使い手』か。なら話は別だ。俺を買え」
「『使い手』?なんだそれは」
「『使い手』は『使い手』だよ。いいからこのデルフリンガー様を買え」
剣をしばらく眺めていると、左手のルーンが光っていることに気づく。

(おやおや、この『ナゾの強化能力』は銃だけじゃあなく、剣にも
適用されるのか。…どーやら、『武器を持つ』っつーことが
発動条件になってるみてーだな。銃弾をこめる時間稼ぎぐれーは
できるようになるだろ。何か知ってるみてーだしな)

「おい、この剣はいくらで買える?」
「ちょっと、やめなさいよそんな剣。錆が浮いてるじゃない。
私がもうちょっとマシなのかってあげるわよ」
「おめー、カネがねーっていってたじゃねーか」
うぐ、と言葉に詰まるルイズ。

「で、これはいくらで買えるんだ?」
「へい、厄介払いの意味もありますんで、新金貨100で結構でさあ。
やかましいときは鞘にいれれば黙りますんで」
ミスタが料金を払おうとすると、その前にルイズが財布を取り出す。

「おいおめー、なにやってんだ」
「言ったでしょ?武器を買ってあげるって。感謝しなさい」
「でもオメーそれ払っちまったら一文無しなんじゃねーのか。
ベツに俺が買うからいいぜ」
「うるさいわね!アンタは使い魔なんだから、ありがたく
うけとればいいのよ!」
金を払いつつ言うルイズ。


「まー、くれるってんならもらっておくがな」
「毎度あり!…しかし、貴族様が剣や銃をお買い上げになるなんて、
やっぱり怪盗土くれのフーケの噂を聞いておいでですかい?」
フーケの名を聞いて表情が変わるミスタ。

「…そんなに有名なのか?そのフーケってヤツは」
「ええ、高名なメイジ様も何人も出し抜かれてるって噂で。
王宮のかたがたも血眼になって探してるって話でさあ」
「なるほどね…」
顔も本名もわからない標的のことを考えると、手元の古めかしい武器が
いっそう貧弱に見えてくる。
最初の任務から厄介なことになりそうだ、と考えつつ、錆び付いた大剣と
長すぎる銃を持って、ミスタたちは店を後にした。

← To Be Continued....

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー