ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

空条承太郎!貴族のルイズと会う ――(1)

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
どうも、こんにちは。
え、僕の名前ですか?それは多分、どうでもいい事だと思いますよ。
何しろ、僕の出番はここだけですから、名前を知る必要はないんです。

……名乗る必要があるなら、こっちの方でしょう。
見えますか?僕の周りを飛んでる4匹のカブトムシ。
見えるんなら結構。これはね、僕の『スタンド』です。
その名前は『ビートルズ』。好きなミュージシャングループから名前を取ったんですよ。
いいですよねぇ、ジャン=レノンって。

っと、失礼。話したいのはそう言う事じゃないんです。
話したいのは『スタンド』のことなんですよね、これが。
『スタンド』と言うのは、まあ平たく言えば超能力みたいなものです。
ここに来ている人達ならば『魔法』のお仲間だと思ってもらえればいいと思います。

違いがあるとすれば、この『スタンド』は、完全に個人の才能であり、1人1人形が違う事、
そして能力もたった一つである事、また、人型や霧、僕のような昆虫型など、様々なヴィジョンを持って具現化する事が挙げられます。
他にもややっこしいルール――スタンド使いにしかスタンドは見えないとか、傷つけられるのもスタンドだけとか、スタンドが傷つくと本体も傷つくとか――
色々あるんですが、どうでもいいんでここでは語りません。


僕のスタンドの能力。それは時間と次元を自由に移動出来る事。
このスタンド能力を使えば、別の次元、未来や過去を好きなだけ知る事が出来るんですよ。
もっとも、知る事が出来るだけで、他に何も出来ない非力なスタンドですけれどもね。

これからお話しするのは、僕が見たある平行世界の過去の話。
この世界において、娘を庇って壮絶に散った男の一つの可能性。
どうか、最後までつきあってください。

――ああ、そうそう、一番肝心なルールを伝えるのを忘れていました。
『スタンド使いはスタンド使いと引かれ合う』。
これに例外はありません。たとえ……異世界に召喚されたとしても、ね。

   ■----------------------------------------------■


1989年、東京、空条邸。
この東京の真ん中にどんと鎮座するこの大きな日本屋敷。
ここは世界的に有名なロック・ミュージシャン『空条貞夫』の自宅である。

この家には、今はたった1人しか住んでいない。
主、空条貞夫は世界を巡るライブツアーに、その妻、空条ホリィは療養の為、祖母スージーQの家へ出かけている。
ここにいるのはたった1人。二人の息子、そして、『最強のスタンド使い』。
その名を『空条承太郎』と言う。


承太郎は自宅の長い廊下を1人歩いていた。
背丈はおおよそ2メートルほど。がっちりとした体格で、その瞳は何処までも鋭い。
服装は学ランと学帽。かつての『旅』の時ですら崩さなかったおきまりのスタイルだ。

彼は自室に入り、鞄の整理を始めた。
彼は、所謂『不良』のレッテルを貼られた男であるが、基本的には真面目な男だ。
特に、ここ半年ほど学校に行く事が出来なかったので、なおさら行かなければと言う意識は強い。
―― 一月前、空条承太郎は世界を救った。
これは比喩でもなんでもなく、ただ事実である。

敵の名は『DIO』!
百年以上前に不老不死の吸血鬼となった邪悪なる存在ッ!
彼は現代に蘇り、無敵のスタンド『世界』と沢山のスタンド使いの部下によって、世界を支配しようと目論んだのだッ!

しかし、その野望は承太郎とその仲間達によって阻止された。
『DIO』の影響によって倒れた母を救う為、そして、先祖からの因縁がある邪悪、『DIO』を倒す為、彼らは『DIO』に敢然と戦いを挑んだのだ。
そし、半年以上の長い旅を経て、一月前、承太郎はエジプトでDIOを滅ぼす事に成功したのだ。
もっとも、その戦いにおいて『けして戻っては来ないもの』を幾つもDIOに奪われたのであるが。

(花京院、アブドゥル、イギー――)
承太郎は静かに、散っていった仲間の事を思う。
彼らの葬儀は、ついこの前済ませた。
半年も空けていた学校は、追試を受けて何とか進級を認められた。
DIOの手下の残党と戦う必要もあるとは言え、そろそろ日常に戻っても良い頃合いだろう。

承太郎は鞄の整理を終え、振り向きながら立ち上がり――そこで、硬直した。
(鏡、だと?!)

目の前に、鏡があった。
中空にぽっかり浮かぶ、枠のない姿見だ。
さっきまで何処にもなかったはずの、鏡。

「新手のスタンド使い…!」

承太郎はそう判断した。
あるはずのない存在、それが自分の前に現れるのがどんな時か、彼はよく知っている。
それは敵と出会ったとき、新手のスタンド使いが襲い来るその時だ。


承太郎は冷静に判断する。現在、身体に異常はない。
襲ってくるのは誰だ?DIOの残党か?
この鏡の『能力』は?本体であるスタンド使いは何処にいる?

承太郎は拳を握りしめながら考える。
この鏡の能力は触れる事で発現するのか?
否、それならば積極的に当ててくるか、逆に気づきにくいところに仕込む方が早い。
ブービートラップである事は否定出来ないが、確実性には欠ける手だ。
この鏡に即効性はあるか?
否、自分はまだ無事だ。

ならば、答えは『一つ』!
何かアクションを起こされる前に『破壊』するッ!

「オラァッ!」

承太郎が拳を振るう。
拳が白金に輝き、ずるり、と拳の中から『何か』が現れたように見えて――

鏡と承太郎はこの世から消失した。


   ■----------------------------------------------■


どうんっ!

トリスティン魔法学院を今日何十度目かの大爆発が揺るがした。
ある程度離れた距離で起こった爆発にもかかわらず、校舎の窓ガラスがびりびりと振動し、耳が痛くなる。

「また失敗かよ」

誰かが呟いた。
使い魔召喚の儀式『サモン・サーヴァント』。
二年生に進級するときに行われる、通りいっぺんの儀式。
失敗なんかするはずがない。実際みんな成功した。たった1人の例外を除いて。
ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール!『ゼロのルイズ』!おちこぼれのルイズ!
彼女だけはただ1人、一度も成功してはいない。

それでもルイズは諦めない。
杖を振るい、爆発に巻き込まれ、汚れ、時には傷つき、それでもまた杖を振るう。
そんな貴族にあるまじき泥臭い行いを、成功した同級生達は冷ややかに、あるいは笑い混じりに見つめる。
彼女の行いを真剣に見つめるのは、教師ミスタ・コルベールと友人のキュルケのみ。
笑わぬ、と言う点で言えば同級生のタバサも同一ではあった。
そして、時間は夕暮れ時。何十度目かの失敗の爆煙が儀式の広場を覆ったとき、
絶え間なき嘲笑の真ん中で、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは、勝利を確信した!

(『掴んだ』わッ!今の手応えは確実に強力な使い魔を『掴んだ』ッ!
  そう、ワインを飲んだら酔いが回るって位確実よッ!)

ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド


これまでの失敗とは違う、確かに強大な何かを掴んだその手応えに、ルイズは小さくガッツポーズを取った。
確かに掴んだ!あの、『黄金』にも似た白い輝きの感覚!
ルイズは期待に目を輝かせて煙の向こうを凝視し、そして落胆した。

そこにあるシルエット。それは間違いなく『人間』のものだったのだ。

人間?!まさか、『サモン・サーヴァント』で人間を?
そんなの、冗談じゃあない。普通じゃあない。また――失敗なの?!

そして煙が完全に晴れたとき、彼女の『使い魔』の姿はその場にいる全員に晒された!

人間だった。完膚無きまでに人間だった。
僅かに色の入った瞳、黒い髪、不必要にがっちりとした体格。
それは貴族ではない、平民の体格だと皆が思った。
服装は黒いローブ。それもあまりゆったりとしたものではない、変わった上着だった。
色は黒、ズボンも、被っている帽子も同じ色。使っている生地も同じなようだった。
顔つきは、鋼鉄を『風』の魔法の鋭い刃で削りだしたかのように精悍で力強く、
その瞳は僅かに翡翠の色を讃えているだけの黒い目にもかかわらず、まるで『黄金』のように光り輝く『決意』の光が燃えていた。

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …


皆、ルイズを馬鹿にしようと思った。
やっと成功したかと思ったら、出てきたのは人間。
それも下賤な平民のようじゃあないか!

だが、嗤えなかった。
あいつを笑う事が出来ない。あの使い魔を嗤えない。
ヤツには、そんな嘲笑を退ける『スゴ味』があるっ!

そいつは、僅かに動揺しながら周りを観察している。
じっくりと、何事も見逃さぬよう観察する。
そんな沈黙が長く続いたので――見物していた生徒が1人、ようやく嘲る事が出来るくらいに我を取り戻した。

「は、ははは、へ、平民じゃあないか――」
「それも身体ばっかりでっかいな、炭鉱労働者かなにかか?」
「さっすが『ゼロのルイズ』だ、失敗のスケールが違う!全く痺れぬ憧れぬぅ!」
「ド低能……おっと、クサレ脳味噌なルイズらしい話だなぁ!」

小さな嗤い声は、伝播し、広がり、爆発する。
僅かな例外を除いた、その場にいる全員が、ルイズを嗤い、嘲り、罵る。
ルイズは唇を噛みちぎり、絶え間なく血を流しながら、その心ない罵倒に、耐える、耐える、耐える――

「やかましいっ!うっとおしいぞッ!」

どぉん!と声以外の音すら伴って、召喚された平民が吼えた。
広がった嗤い声はその一言でかき消され、押さえつけられ、霧散する。
生徒達に一瞬ですくみ上がり、ミスタ・コルベールは驚きに思わず身構え、キュルケは何故か思わず顔を赤くし、何事にも動じぬタバサまでもが思わず読んでいた本をぱたりと締めた。


   ■----------------------------------------------■

承太郎は混乱していた。
一瞬の光と共に現れた煙が晴れてみれば、そこに家はなく、奇妙な格好をしたガキ共に囲まれていて、そして……。

承太郎は僅かに空を見上げる。
夕暮れ時の、空。そこには彼が知るよりもずっと大きい月が、二つ並んでいる。

以前見た『太陽そっくりなスタンド』の亜種である事を疑うが、却下した。
あの距離感を見まがうはずもない。
あの月は確かに、二つとも大気圏の外にある。

(ここはどこだ?)

考える。ひたすら考える。黙り込み、周りを観察しながら考える。
周りが騒がしくなってくる。自分に向けて、なにやら罵倒を浴びせているようだが――。
と、そこで気づいた。罵倒を向けられているのは自分ではない。
自分の目の前にいる人物に向けられているのだと、全員の視線を見て理解する。

目の前、遠巻きにしているガキ共と同じ格好の子供が1人。
桃色の髪に、気が強そうな顔をしている。
そいつは、耐えていた。唇をかみしめ、手を握りしめ、血を流しながら、必死に、泣かぬように。

とたんに、ムカムカしてくる。
彼はこういう、陰湿な光景を好む人間ではない。むしろ、嫌悪する。
彼は世間から『不良』のレッテルを貼られた人間ではあっても、その心は全く歪まぬ、『黄金の精神』の持ち主なのである。
だから、彼は。

「やかましいっ!うっとおしいぞッ!」

一喝して、黙らせた。

目の前の女に視線を戻せば、そいつはぽかんとこちらを見ている。
そいつに敵対の意思はないように見えたので、取りあえず注意から外す。
周りからも、殺気の類は感じないし、不自然な動きを見せるヤツも居なかった。
取りあえず警戒は続けながらも、承太郎はタバコを一本懐から取り出して、愛用のジッポで火を付けた。
煙を肺いっぱいに吸い込んで、吐く。タバコを吸いながらも、思考は止めない。
この状況はなんだ?スタンド攻撃の結果なのか?

「あの!もう一回召喚させてください!」
「それは駄目だ、ミス・ヴァリエール。
 二年生になった生徒は『使い魔』を召喚し、それによって専門課程を定める。
 それに変更は認められない。
 何故ならッ!この儀式は、『神聖な伝統』に基づいた儀式だからだッ!」
「でも、あれは平民です!」
「『伝統』を敬えッ!ミス・ヴァリエールッ!
 『平民』だとか……『人間』だとかッ!そんな事は、どうでもいいのだァーッ!」

目の前の女と、周りの人混みの中にいる男と言い争いをしている。
使い魔、召喚、儀式、平民。
いずれも、知ってはいるが聞き慣れないフレーズだ。
スタンドの発動条件に絡む――と言う訳でもないようだ。
何もかもが奇妙だった。二つの月、見知らぬ地、見知らぬ人間達。
全く訳が分からないが……承太郎は一つ、直感的に感じた。これは多分――。

目の前の女が、つかつかとこちらに歩み寄ってくる。
小さい女だ。歳は12、3歳か?
幼い顔を精一杯怒らせて、彼女はこちらの前に立った。
女は承太郎のタバコをつまみ取ると、そこらに投げ捨て踏みつぶす。

「ヤニ臭いのは嫌いよ。今後は吸わないで」

女はそう言う事を言うと、承太郎の肩を掴んで自分の身体を持ち上げて、顔を承太郎の顔に近づけた。
そして口の中でなにやら小さく呪文のような言葉を呟いて、そのまま――口づけるッ!

ズ ギ ュ ウ ゥ ゥ ゥ ゥ ゥ ン !


慣れぬ仕草で口づけをしてきた少女を見ながら、承太郎は心の中で一つため息をついた。

(やれやれだぜ)

――承太郎は一つ、直感的に感じた。これは多分――
自分を、あのDIOとの戦いと同じような、『奇妙な冒険』に巻き込む、その第一歩なのだろうと。



 /l_______ _ _   
< To Be continued | |_| |_|
 \l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                                  ――――ジョジョの奇妙な冒険 第3.5部
                                              『ゼロサーヴァント・クルセイダーズ』――

『空条承太郎!貴族のルイズと会う ――(1)』 終わり


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