ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

影の中の使い魔-12

最終更新:

familiar_spirit

- view
だれでも歓迎! 編集
最近のシエスタは朝ブラック・サバスと一緒に洗濯をすることが日課となっていた。
ブラック・サバスは影の中しか移動できないため、誰かが水汲み場まで一緒に移動してやらないといけないのだ。
別にシエスタがやることではないし、誰に頼まれたわけではないのだが
決闘の日以来、ルイズとブラック・サバスには何かお礼をしなければならないと考えていたので
シエスタは自分から進んでこの役目を買って出た。
それでも最初は緊張しっぱなしであったが、さすがに毎朝毎朝いっしょに肩を並べていると慣れてくる。
今では、軽い世間話などしながら作業を進めている。

と言ってもブラック・サバスは何も話さないし、相槌すら打たないのだが。
シエスタの話が一段落するまでその場を離れないところをみると、一応話は聞いてるらしかった。
そういうわけで、今日も日陰になる場所でブラック・サバスを待っていると、背後に気配を感じる。
後ろを向くと、いつも通りの格好で、いつも通り神出鬼没の使い魔がそこに立っていた。

「おはようございます。サバスさん。今日もいい天気ですね」
笑顔でまずは朝の挨拶。いつもならこのまま二人で水汲み場まで歩いていくのだが、その日は違った。
「おでれーた!相棒!おめー朝から人間の娘っ子とデートかよ!」
……………………しゃべった!!!
シエスタはまさに目が点状態でブラック・サバスを見つめる。
しゃべりましたよね!?今なにかフレンドリーに話しかけてきましたよね!?
混乱中のシエスタに助け舟を出したつもりかどうかは分からないが、ブラック・サバスは半開き気味だった口をさらに開ける。
暗闇の中から何か棒状のものが、にゅるにゅると伸びてきて、シエスタの顔の前で止まった。

「落ち着けって!しゃべったのは俺だよ!」
なるほどしゃべったのはブラック・サバスではなくて、剣だったのか。
……………………剣がしゃべってるーー!!?
さらなる混乱におちいるシエスタに、デルフが意気揚々と語りかける。

「誰だ?って聞きた……な表情してるんで自己……させてもらうがよ。俺ぁ……かい焼き……フリンガー
 城下町の………からピンクの………の娘っこに買われて…………オーイ」
ブラック・サバスの口から、剣が出たり引っ込んだりしながら話しかけてくる。
剣が口の奥に行ったとき声がくぐもって聞き取りづらい。
…………シエスタはすでに逃げていたので関係なかったが。
「おかしいな相棒。掴みはばっちりだと思ってたんだが、何がいけなかったんだろうな」
デルフは相変わらずピストン運動をしながらブラック・サバスに尋ねた。

(ちくしょう!あのエロジジィ!)
ミス・ロングビルはその清楚な顔を怒りで歪ませ、廊下を早歩きで歩いている。
彼女の怒りの理由はもはや常習的になっている、オールド・オスマンからのセクハラ行為に対してだ。
元々彼女がこの由緒正しい名門トリステイン魔法学院の院長秘書というポストに着けたのは、オスマンからのセクハラが原因だ。
学院の宝物庫にあるという「破壊の杖」を頂くために、まず色仕掛けを使ってでも院長に近づくことが先決と考えていが
こっちが色仕掛けをする前に、向こうから尻を触ってきたのは誤算だった。

秘書になってからというもの、毎日毎日尻を触られ、胸を揉まれ、部屋を覗かれ、下着を覗かれetcetc……
さすがに我慢の限界だった。
すでに宝物庫の壁が物理的な衝撃に弱いという情報は、ハゲから得ている。
後は実行に移すだけだが、ここで焦っては元も子もない。
せっかくここまで屈辱に耐えてきたのだ、絶対に成功させなくてはならない……!
そんなことを考えながら歩いていると、前方から声が聞こえてくる。

「どうした相棒?なんで止まるんだ?……あぁ影が途切れてんのか。
 ……そうか、いつもはあのメイドの娘っ子に連れて行ってもらってたんだな」
最初ロングビルは前にいる存在を、黒いマントをしているので2年生のメイジかと思った。
しかし妙だ。マントの色が黒すぎる。似ているが正規のマントではないようだ。
それにさっきから誰としゃべっているのだろうか。それとも独り言か?
どちらにしろロングビルは関わりにならないほうがいいと判断する。
遠回りになるが、行きたい場所へはこの道を通らなくても行ける。さっきまで歩いていた道を戻ろうときびすを返し……

「きゃあ!!!」
悲鳴をあげ、尻餅をつく。
きびすを返した先。さっきまで誰もいなかったはずのそこには、人っぽいなにかが立っていた。
後ろを振り返ると、さっきまでいた黒マントが消えている。あの一瞬で回り込まれたとでもいうのか!?

「チャンスをやろう!」
そう言って手を伸ばしてくるこの存在を、ロングビルは変態だと認識した。
「いや!」
思わず後ずさる。それを見た変態の口が開き、中から棒状の物……正確には剣の柄の部分が出てくる。

「バカ!相棒!そんな言い方じゃあ変態と思われるだろーが!おいねーちゃん頼みがあんだけど…あれ?」
ロングビルは全てを聞く前に行動を開始していた。
盗賊『土くれ』のフーケの最後の切り札。それは『逃げる』!!
ロングビルは窓を突き破り、外へと飛び出した。この廊下は2階だったのだが、メイジにとってそれは関係ない。
「レビテーション」を唱え安全に地面に着地するやいなや、一目散に走りだす。
どこでもいい、もうここにはいたくない。こんな学院からさっさと離れてやる!
『土くれ』は今日中にでも破壊の杖を盗み出すことを決意した。

ルイズは中庭で一人作業に没頭していた。
木の棒を十字に組んで、地面に刺す。
横棒の端にシエスタから借りたボロボロの作業用の手袋をはめ
縦棒の先には、布袋に藁を詰めて丸めた物を紐で縛って取り付ける。
そして布袋に簡単な似顔絵を描く。いわゆるカカシという奴だ。
少しマヌケ面になってしまったが、良しとしよう。初めて作った割にはなかなかいい出来だと自画自賛する。
後は使い魔とうるさい剣が来るのを待つだけだ。

ルイズは胸元にある『再点火装置』を握った。
紐を通す穴を錬金で作ってもらい、ネックレスのようにしたのだ。
ついでに固定化もしてもらったので強度も少しあがっている(ギーシュにやらせた)。

「まったく……主人を手伝わないで、またどこかほっつき歩いてんのかしら」
ブツブツと文句を呟く。
最近は言うこと聞くようになったと思ったら、このザマだ。最もあれらがいたとしても、この作業を手伝えると思えないが。
「いたいた。ルイズ!」
聞き覚えのある声。ルイズが後ろを振り向くとキュルケとタバサがこちらに近づいてくる。
「キュルケ……とタバサ……あんたたちなんでここにいるのよ」
心底嫌そうな顔で二人を見る。
この二人とは決闘以来よく会うようになっていた。といってもキュルケとはいつも口喧嘩だし、タバサは何もしゃべらずそこにいるだけだったが。
しかし今は会いたくなかった。というか見られたくなかった。
使い魔と一緒に秘密特訓をする所を見られるなんて誰だって嫌だろう。私だって嫌だ。
というわけでルイズはこの二人になんとか帰ってもらおうと考えていたのだが。

「秘密特訓するんだって?精が出るわね~」
「努力するのはいいこと」
「な!なんであんたたちがそのこと知ってんのよ!!」
思わず声が大きくなる。
キュルケは何でもないような顔をして答えた。
「聞いたの。あんたの使い魔の剣から」
それを聞いたルイズはしばらく固まった後、嘆息をひとつしてうめいた。

「サバス、デルフ……いるんでしょ……出てきなさい」
その言葉に従いキュルケの影からニュッとブラック・サバスが現れる。
「…………まずはあんたたちの言い分を聞きましょうか」
「ここまで来るのに手間取ってたらよー。このねーちゃんが影貸してくれるっていうからホイホイ付いてきてもらったんだわ」
デルフが口の中からカタカタと答える。
「なんでキュルケが特訓のこと知ってんの?」
「それは相棒が」
「サバスがしゃべるわけないでしょ!この馬鹿剣!やっぱあんたなんか買わなかったらよかった!」

剣に怒鳴りつけるルイズに、ブラック・サバスが手を上げる。
まるで、まぁまぁ落ち着いてというジェスチャーのように見えた。偶然だろうが。
「あんたもなんでよりによってキュルケの影に入るのよ!」
使い魔&魔剣のコンビをしかり付ける親友を見ながら、キュルケは苦笑する。
「言ったら手伝ってあげたのに。こんな不細工なカカシまで作っちゃって」
「不細工とはなによ!」
今度はキュルケと始める。タバサはまた長くなりそうだと空を見上げた。二つの月が綺麗に輝いている。
「!!」
経験が生きたのかどうかは分からないが、その気配に最初に気づいたのはタバサだった。

慌てて後ろを振り向く。
それに釣られた残りのメンバーも振り向き……巨大なゴーレムの姿を確認した。
唖然とするこちらの存在に気づかないゴーレムは、塔の壁を派手な音を出しながら殴り始めた。
「な、なにしてんの」
声の震えるルイズに対して、冷静にタバサが答える。
「宝物庫。あれだけ巨大なゴーレムを操れるのはトライアングルクラス」
「泥棒…………で巨大ゴーレムってもしかして………『土くれ』のフーケ!?」
「サバス!」

ルイズはブラック・サバスの口に手を突っ込み、デルフを引き抜いた。
そして鞘から抜き出し、また突っ込む。ただし今度は刃の方が口から飛び出すような向きで。
「特訓の成果を見せる時ね」
「まだなんにもやってねーと思うんだけど」
デルフのつっこみは口の中で空しく響いただけだった。


To Be Continued 。。。。?

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー