ニューカッスル城の一室。ウェールズの部屋である。
護られる様に箱へと入れられた手紙。
名残惜しそうに一度、ウェールズはそれに目を通し、少し苦笑した後に、ルイズへ手渡した。
ルイズの目に何かしらの迷いがあることを見取ったウェールズが、問いかけてみる。
護られる様に箱へと入れられた手紙。
名残惜しそうに一度、ウェールズはそれに目を通し、少し苦笑した後に、ルイズへ手渡した。
ルイズの目に何かしらの迷いがあることを見取ったウェールズが、問いかけてみる。
「何か、あったかな?聞きたいことでも……」
「恐く、ありませんか」
ピクリ、とウェールズの手が動いた。
衝動的なものであったのか、やはりそうか、という反応だったのか。
定かではないにしても、返答するべきだろうとウェールズは踏んだ。
衝動的なものであったのか、やはりそうか、という反応だったのか。
定かではないにしても、返答するべきだろうとウェールズは踏んだ。
「恐くないな」
そして、自分でもそれが真意だ、そう思う返答をした。
ルイズが納得するかどうかといえば、納得しないのかも知れない。
だが、彼女は口を開かない。
今、こうして対面する事によって、彼の覚悟は嫌になるほどひしひしと伝わってきたのだ。
ウェールズを止める事が、勇気を要すものである事を悟る。
相変わらずウェールズの双眸は、ルイズへ注がれていた。
ルイズが納得するかどうかといえば、納得しないのかも知れない。
だが、彼女は口を開かない。
今、こうして対面する事によって、彼の覚悟は嫌になるほどひしひしと伝わってきたのだ。
ウェールズを止める事が、勇気を要すものである事を悟る。
相変わらずウェールズの双眸は、ルイズへ注がれていた。
「いいんだ。アンリエッタのことは、気にしないでほしい。彼女も王女さ、乗り越えてくれるはず」
ナランチャの話す事にも、『覚悟』という単語は出てきた。
彼が珍しく真面目な話をするときに限ってだが。
彼が珍しく真面目な話をするときに限ってだが。
実際、ナランチャの仲間達の覚悟は凄まじい。そして、それと戦った者達も。
身を死の危険に自ら晒してでも、任務を遂行しようとした者。
勝つため、生き残る為にも、跳ね返されると分かっている弾丸を撃ちこみ続ける者もいた。
自分もろとも、敵を倒そうとした者さえ。
数え切れない覚悟の飛び交う戦場で、ナランチャは生き続けた。
身を死の危険に自ら晒してでも、任務を遂行しようとした者。
勝つため、生き残る為にも、跳ね返されると分かっている弾丸を撃ちこみ続ける者もいた。
自分もろとも、敵を倒そうとした者さえ。
数え切れない覚悟の飛び交う戦場で、ナランチャは生き続けた。
またウェールズも、一種の覚悟をもって、5万の軍に挑むのだ。
しかし、その覚悟はあまりに悲しいものである事は、明らかであった。
滅ぶと分かっているなら、いっそ名誉、誇りを護って、誇示して死んで行こうと言うのだろう。
しかし、その覚悟はあまりに悲しいものである事は、明らかであった。
滅ぶと分かっているなら、いっそ名誉、誇りを護って、誇示して死んで行こうと言うのだろう。
不意に、ルイズの背後にあったドアが開く。
その覚悟の溢れる戦場を駆け抜けた少年は、そこに立っていた。
その覚悟の溢れる戦場を駆け抜けた少年は、そこに立っていた。
「その顔、嘘ついてる顔だぜ、ウェールズ」
ウェールズは何も言わない。
ルイズも、無言のまま立ち尽くしている。
所々に暗闇が指す部屋に、ナランチャが足を踏み入れる。
ルイズも、無言のまま立ち尽くしている。
所々に暗闇が指す部屋に、ナランチャが足を踏み入れる。
「ルイズにはもう言ったけどよー、言わせて貰うぜ」
ルイズの顔が上がる。
「勝てばいいんだろ……俺に帰れとか言うんじゃねぇぞ?300居るんだ、十分」
「相手は、5万だよ?」
ウェールズは、嫌味のようには言わない。純粋な疑問として、発言した。
「だが……そんだけ敵がいるなら、魔法を撃てば必ず当たるんだ。やりようなんていくらでもあるぜ?」
「戦艦は、どうする?突っ込むだけでも無茶さ。火力だって段違い」
「乗ってる奴を打ちのめせばなんも問題ねぇ……俺は、あんたらを無視することなんざ出来ねーからよ」
「……ふふッ」
微笑する。
そして暫し、考えるような素振りを見せるウェールズ。
チラリ、と水時計を見る。
そして暫し、考えるような素振りを見せるウェールズ。
チラリ、と水時計を見る。
「そろそろ、パーティの時間だな。ホールへ来てくれ。恐らく、君達は最後の客人となるのだからな」
含みを持たせた『恐らく』の部分は、かすかな希望を見出したとでも言うように、ルイズの耳に残った。
頭の後ろで手を組み、ナランチャも部屋を出る。
しばらく部屋にいたルイズも、やがて城のホールへと歩みを進めた。
頭の後ろで手を組み、ナランチャも部屋を出る。
しばらく部屋にいたルイズも、やがて城のホールへと歩みを進めた。
誰もが最後の晩餐と心に決め、騒ぐ。
全員が明るい笑顔を振りまく、それは死にに行く者達の目ではない。
だが、彼らは死を覚悟している。
態度とは裏腹ながらも、全員が誇り高く、悲しかった。
全員が明るい笑顔を振りまく、それは死にに行く者達の目ではない。
だが、彼らは死を覚悟している。
態度とは裏腹ながらも、全員が誇り高く、悲しかった。
ナランチャは薄目でそれを見つめる。直視するのが辛かった。
いつもなら進んで食べる所だが、気になることもある。
キュルケと、タバサのことだ。
目の前でギーシュはいかにも貴族っぽく食事をしているが、彼女らは、そんな余裕などないだろう。
仮面のメイジは、きっと二人と対峙する。もうすでに、しているだろう。
生き残れているのなら、すぐにでもシルフィードで飛んできて欲しい。
そうすれば、ナランチャの心配は全て消えてしまう。
いつもなら進んで食べる所だが、気になることもある。
キュルケと、タバサのことだ。
目の前でギーシュはいかにも貴族っぽく食事をしているが、彼女らは、そんな余裕などないだろう。
仮面のメイジは、きっと二人と対峙する。もうすでに、しているだろう。
生き残れているのなら、すぐにでもシルフィードで飛んできて欲しい。
そうすれば、ナランチャの心配は全て消えてしまう。
ゴクッ、と喉を鳴らした。酒など飲めないので、水だ。
ルイズも今日ばかりは水を飲んでいた。
片手で少し鶏肉を齧る。
ライトニング・クラウドによって焼け爛れた腕は、少しは動かせるまでになっていた。
ルイズも今日ばかりは水を飲んでいた。
片手で少し鶏肉を齧る。
ライトニング・クラウドによって焼け爛れた腕は、少しは動かせるまでになっていた。
自分の覚悟とはなんだろう。いつしかそう思っていた。
生き抜くこと。それもある。
ただ、このウェールズ達、王党派の覚悟に『打ち勝つ』ために、どのような様を見せればいい?
彼らにも生き抜いて欲しい。
人が死んで喜ぶなど、一部の人間のみだ。
生き抜くこと。それもある。
ただ、このウェールズ達、王党派の覚悟に『打ち勝つ』ために、どのような様を見せればいい?
彼らにも生き抜いて欲しい。
人が死んで喜ぶなど、一部の人間のみだ。
救えるなら救う。そして自分に出来る事は。
反乱軍を――レコン・キスタを、追い払う。それだけ。
とはいえ、それだけのことが、重い。
5万の軍、対して、300。圧倒的な戦力差。
なら、自分は偽りの英雄でもいい。だから、この戦いだけは勝ちたい。希望を見せてやりたい。
そのナランチャの精神に応じて、無意識に発動させたエアロスミスのプロペラ音が、一層高くなった。
反乱軍を――レコン・キスタを、追い払う。それだけ。
とはいえ、それだけのことが、重い。
5万の軍、対して、300。圧倒的な戦力差。
なら、自分は偽りの英雄でもいい。だから、この戦いだけは勝ちたい。希望を見せてやりたい。
そのナランチャの精神に応じて、無意識に発動させたエアロスミスのプロペラ音が、一層高くなった。
ひと段落着いたパーティから抜け出し、かっぱらったサラダと肉を口へと運ぶ。
ウェールズと、また対面した。
ウェールズと、また対面した。
「ウェールズ……いい案、思いついたぜ」
「どんなものだい?」
「……あんたらが全力を尽くして死ぬってんなら、止めはしないけどよ……」
自分に止める権利はない。
だが、協力なら出来る。
だが、協力なら出来る。
「勝てばいいんだろ。そのためにも、兵を集めてくれよ。正面からじゃ、勝ち目はないからな。」
この作戦は改良の余地があるから、とだけ言い残してナランチャは去った。
ウェールズは何一つ文句言わず、作戦を立てるために兵たちを集めると、約束した。
後は彼自身の『生きる』ことへの執念、そして、運に賭けるだけだ。
後は彼自身の『生きる』ことへの執念、そして、運に賭けるだけだ。
兵達を集める間に出来た少しの時間。
夜空の見えるバルコニーで、ナランチャは思い耽る。
夜空の見えるバルコニーで、ナランチャは思い耽る。
「そういや、フーケ倒した時もこんな感じだったか」
空をスクリーンに、澄んだ空気は星を隠すことなく映し出している。
鳥が見えた。すかさず違和感を感じる。
こちらは死の淵際に立たされている状況であるにもかかわらず、その鳥は能天気に体に付いた虫をくちばしでつまんで食べる。
はぁ、と思わず深いため息を吐く。
下手をすれば自分まで死ぬという事さえ忘れていた。
鳥が見えた。すかさず違和感を感じる。
こちらは死の淵際に立たされている状況であるにもかかわらず、その鳥は能天気に体に付いた虫をくちばしでつまんで食べる。
はぁ、と思わず深いため息を吐く。
下手をすれば自分まで死ぬという事さえ忘れていた。
(ここのヤツら全員が鳥なら逃げれるのにな)
変な笑いが込み上げた。
自分は何を考えているのだろう。今一瞬恐怖を感じたのではないか?
頬を全力で殴る。この世界に来て、何回かやった気がする。
痛いが、人を失うより全然マシな痛み。
自分は何を考えているのだろう。今一瞬恐怖を感じたのではないか?
頬を全力で殴る。この世界に来て、何回かやった気がする。
痛いが、人を失うより全然マシな痛み。
「アバッキオ、ブチャラティ。俺、絶対生きて……帰る」
帰るといいかけて躊躇した。
自分に帰る場所はあるのだろうか。
故郷や、ジョルノたちの居るあの世界へ帰ってもいいのだろうか。
自分に帰る場所はあるのだろうか。
故郷や、ジョルノたちの居るあの世界へ帰ってもいいのだろうか。
段々とこの世界に情が移り始めているのが分かって、ナランチャは再び、自嘲めいた笑いを上げた。
そこで、ウェールズに呼ばれ、さっそく作戦の立案を全員で始める。
一人一人の話しを基にしつつ、彼らの話し合いは、翌朝、ウェールズが用事で外へ出ても続いた。
その用事とは――
そこで、ウェールズに呼ばれ、さっそく作戦の立案を全員で始める。
一人一人の話しを基にしつつ、彼らの話し合いは、翌朝、ウェールズが用事で外へ出ても続いた。
その用事とは――
ルイズは、困惑する。
もちろん、レコン・キスタや、ウェールズたちのことでも、自分の中に動揺が広がっているのは分かる。
ウェールズも、愛すべき人が居るはずなのに、その命を捨てるというのだ。
しかし、今はそれ以上に。
目の前に居る、ワルドから告げられた言葉の方がショックだった。
もちろん、レコン・キスタや、ウェールズたちのことでも、自分の中に動揺が広がっているのは分かる。
ウェールズも、愛すべき人が居るはずなのに、その命を捨てるというのだ。
しかし、今はそれ以上に。
目の前に居る、ワルドから告げられた言葉の方がショックだった。
「ここで、結婚式を挙げる。彼は、先に帰ってもらうことにしたよ」
ルイズは、帰ってもらうことにしたと言うワルドが少し可笑しかった。
本気でレコン・キスタに勝つつもりのナランチャは、梃子でも帰ろうとしないだろう。
多分、今頃城の中で……何かを、やってるはずだ。
何か、が分からないにしても、帰っては居ないはず――と、そこまでで思考が停止。
結婚?
あやふやで、まとまらない思考で必死に考えてみた。
結婚するというのだろうか、この地で。
レコン・キスタの襲撃の危険があるのに、、何故急ぐ?
彼には、自分が襲われない自身でもあるのだろうか。
スクウェアであろうと、5万は厳しいだろう。何か秘密があるのか?
いや、それよりも。自分は確かにワルドの婚約者だろう。
それにしても、急すぎた。
宿屋での話など、ルイズの記憶の片隅にしか残っていないゆえ、『何故?』という思いが強い。
多分、今頃城の中で……何かを、やってるはずだ。
何か、が分からないにしても、帰っては居ないはず――と、そこまでで思考が停止。
結婚?
あやふやで、まとまらない思考で必死に考えてみた。
結婚するというのだろうか、この地で。
レコン・キスタの襲撃の危険があるのに、、何故急ぐ?
彼には、自分が襲われない自身でもあるのだろうか。
スクウェアであろうと、5万は厳しいだろう。何か秘密があるのか?
いや、それよりも。自分は確かにワルドの婚約者だろう。
それにしても、急すぎた。
宿屋での話など、ルイズの記憶の片隅にしか残っていないゆえ、『何故?』という思いが強い。
それすら無視し、ワルドは颯爽と去っていった。
強引な態度に少々憤怒しながらも、苛々と口を尖らせて準備を始める。
ウェールズも立ち会うというのだから、出ないわけには行かない。
無理やり自分を動かす。心への負担など、気にしなかった。
強引な態度に少々憤怒しながらも、苛々と口を尖らせて準備を始める。
ウェールズも立ち会うというのだから、出ないわけには行かない。
無理やり自分を動かす。心への負担など、気にしなかった。
礼拝堂。始祖ブリミルの像が、まず最初に目に入った。
その前には、礼装のウェールズがたたずんでいる。感じのいい微笑を浮かべていた。
ワルドもまた、ルイズに微笑む。
その前には、礼装のウェールズがたたずんでいる。感じのいい微笑を浮かべていた。
ワルドもまた、ルイズに微笑む。
分かりきっている、お手本のような問答。
「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し」
次の言葉は、安易に予想できた。
「そして、妻とする事を誓いますか」
「誓います」
妻か。
まだ、この年で、妻なのか。
ルイズは苦笑する。もっとも、読み取れないほど小さな笑みだったが。
まだ、この年で、妻なのか。
ルイズは苦笑する。もっとも、読み取れないほど小さな笑みだったが。
「……新婦?」
目が覚めた。いつの間にか自分は呼びかけられている。
あたふたしている様を、またワルドが笑う。
あたふたしている様を、またワルドが笑う。
「緊張せずに、さぁ」
――緊張?
これは緊張なのか?自分で自分の真意を探る。
いや、違う。これは、ハッキリした『拒絶』の意。
正直に思いを告げるべきか、そこでまた迷う。しかし、やはり、我慢出来なかった。
幼い頃の思い出が走馬灯のように一通り駆け巡った後、決断を下す。
喉の奥から、強引に、呟く。
これは緊張なのか?自分で自分の真意を探る。
いや、違う。これは、ハッキリした『拒絶』の意。
正直に思いを告げるべきか、そこでまた迷う。しかし、やはり、我慢出来なかった。
幼い頃の思い出が走馬灯のように一通り駆け巡った後、決断を下す。
喉の奥から、強引に、呟く。
「私は……ワルドとは、結婚、出来ない」
途切れ途切れで搾り出したか細い声を、2人は聞き取る。
ウェールズは少し目を丸くしている。
ワルドは、反面顔色を変えていた。
ウェールズは少し目を丸くしている。
ワルドは、反面顔色を変えていた。
「……本当に、そういうつもりなのかい」
「ええ、無理よ。やっぱり、今の段階じゃあ、あなたとはとても結婚できないのよ」
「新郎、残念だが、この結婚式はもう続ける事はできない。花嫁が望んでいないのだからね」
ルイズはふと、ワルドがわなわなと拳を震わせているのが見えた。
ゾクッ、と、背筋に寒気が走る。
首筋にナイフを当てられたような感触を振り払い、一歩、引いた。
だが、ワルドはルイズの肩を揺さぶる。まるで、嘘だと言え、という意思を示すかのように。
ゾクッ、と、背筋に寒気が走る。
首筋にナイフを当てられたような感触を振り払い、一歩、引いた。
だが、ワルドはルイズの肩を揺さぶる。まるで、嘘だと言え、という意思を示すかのように。
「ルイズ……僕はね、世界を手に入れるんだ!そのために、君はどうしても必要だ!君の力が!」
今度は、ルイズ自身が嘘だと言って欲しい、という気持ちになる。
そうだったのか。
ワルドの愛は偽り。全て、自分の存在しえない才能を求めてのもの。
急に体から熱が引いていく。
失望。そんな言葉が似合う。同時に、恐怖も感じた。
そうだったのか。
ワルドの愛は偽り。全て、自分の存在しえない才能を求めてのもの。
急に体から熱が引いていく。
失望。そんな言葉が似合う。同時に、恐怖も感じた。
「そう……じゃあ、私を愛していたわけじゃなかったんだ」
「違う!僕は君を……」
「幼い頃は、純粋に好きだったけど、変わっちゃったのね、ワルド。無理よ、心変わりすることなんてないわ」
「……そうかい、どうしても認めないのか。仕方がないな」
豹変したワルドの殺気を感じ取ったウェールズが、空へと『風』の塊を打ち出す。
天井の一部が吹っ飛ぶ。何をしようとして、天井を吹き飛ばしたのか、意図は読めなかった。
ルイズが、爆発を起こして、ワルドを突き倒した。
天井の一部が吹っ飛ぶ。何をしようとして、天井を吹き飛ばしたのか、意図は読めなかった。
ルイズが、爆発を起こして、ワルドを突き倒した。
「三つの目的の内、一つをあきらめよう。一つ目、君を手に入れること、を」
ウェールズは様子を見つつ、警戒の為に詠唱をし続ける。
「二つ目……アンリエッタの手紙を手に入れること。容易い」
ルイズも身構える。いつでも失敗魔法が放てる状態だ。
続けて、呪文を詠唱し始めたワルドへの攻撃。だが、一歩遅い。
一撃で仕留める為に放たれた、破滅の込められた稲妻は、激しい爆風を上げてウェールズへ直撃した。
続けて、呪文を詠唱し始めたワルドへの攻撃。だが、一歩遅い。
一撃で仕留める為に放たれた、破滅の込められた稲妻は、激しい爆風を上げてウェールズへ直撃した。
「三つ目……今、私の呪文を受けた者の命さ」
「あッ……!」
声にならない悲鳴が上がる。
ルイズは口元を手で押さえた。ウェールズの全身が焼け爛れ、血が噴出しているのだ。
ライトニング・クラウドをもろに喰らってしまった。いつまで命が持つか、といっても過言ではない。
ルイズは口元を手で押さえた。ウェールズの全身が焼け爛れ、血が噴出しているのだ。
ライトニング・クラウドをもろに喰らってしまった。いつまで命が持つか、といっても過言ではない。
「い……嫌……そ、そんなのって……」
かろうじて受け流した稲妻は、ブリミルの像のすぐ横の壁を吹き飛ばした。
いかにその衝撃が凄まじいかを物語っている。
いかにその衝撃が凄まじいかを物語っている。
自分の所為なのだろうか。
しかし、自分自身を責めてもどうにもならないと悟り、視線を元に戻す――
しかし、自分自身を責めてもどうにもならないと悟り、視線を元に戻す――
「………」
ルイズはへたりと膝をつき、無言のまま、歩み寄ってくるワルドを見つめた
目元に暗闇が降り、その表情をうかがい知る事は出来ない。
一つ、確認できるのは、自らに迫っている死。
せせら笑うワルドに、怒りのまま魔法を打ち込む気力さえなかった。
目元に暗闇が降り、その表情をうかがい知る事は出来ない。
一つ、確認できるのは、自らに迫っている死。
せせら笑うワルドに、怒りのまま魔法を打ち込む気力さえなかった。
「残念だ、ルイズ」
杖へと集まりつつある電撃。
死へと導く光が奏でるバチバチという耳障りな音を、失望ではなく、絶望感で埋め尽くされたルイズが呆然と聞いていた。
死へと導く光が奏でるバチバチという耳障りな音を、失望ではなく、絶望感で埋め尽くされたルイズが呆然と聞いていた。
一時、その音は中断された。
カラカラカラ、と、何かが投げ込まれたのだ。
石。
気をそらすために、わざと目立つような位置へと投げ込まれたそれが、存在感を誇示している。
カラカラカラ、と、何かが投げ込まれたのだ。
石。
気をそらすために、わざと目立つような位置へと投げ込まれたそれが、存在感を誇示している。
「……知ってるか?意思や覚悟ってーのは誰でも持ってるもんなんだぜ。特定の人間にだけあるもんじゃあない」
ワルドが振り向いた。光を背にして、少年は立っていた。
顔が影となって、多少見えにくい。
顔が影となって、多少見えにくい。
「それが例え自殺者だろうと、死ぬ意思、死ぬ覚悟なんて物騒なもん持ってやがる。だが、それも意思や覚悟だってことには違いない」
ゆっくりと近づいてくる。
歯軋り。
拳は、力を込められている。
歯軋り。
拳は、力を込められている。
「……だからよォ、お前にも見せてもらうぜ、『その二つ』を」
『風』が、吹いた。
バヒュンッ、と拳が空を切る。
ワルドはバックステップで交わしたが、バランスを取る為に地に手を着く。
ワルドはバックステップで交わしたが、バランスを取る為に地に手を着く。
その傍らで石が、滑るように吹っ飛んだ。
彼の勢いが、ワルドを一瞬戸惑わせる。
あの時、挑んだ決闘は拒否された。一人の少年に。
だが、それが思わぬ形で成就する事となった。
あの時、挑んだ決闘は拒否された。一人の少年に。
だが、それが思わぬ形で成就する事となった。
「……ナランチャ……!」
ルイズの小さな歓喜をかき消し、ぶつかり合う力と力の衝突音が響いた。
To Be continued ...