ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サーヴァント・スミス-15

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船の部屋で、痛々しく焼け焦げた自分の腕を半眼で見るナランチャ。
ライトニング・クラウドの威力は凄まじかった。
見事に太く腫れている。赤くなった腕に、ルイズが包帯を巻いていった。
そのたびに痛みでビクビクと動くナランチャをルイズは心配そうな目で見るが、ご主人の威厳を保つ為、あえて何も言わない事にした。

「ふー……まだ痛いぞクソッ。こんな目に合わせやがって……次会ったら蜂の巣にしてやる」

エアロスミスのダメージが腹部に回ったため、そこにも包帯を巻いておく。
一息着いた側から、ワルドがアルビオンに着く事を知らせる。
こうしている間も、船にエネルギーを注ぎ込み続けている

「やっと長旅に一区切りだね」

ワルドも天井に向かって息を吐き出した途端、船内が騒がしくなったのが分かった。
ドタドタと足音がけたたましく響き、船員の一言でルイズとギーシュが固まった。

「……く、空賊だ!」

ワルドの言う、長旅に一区切り……とはいかなかった。
船長がそれを受けて叫ぶ。
黒塗りの空賊の船から攻撃が放たれ、船が大きく揺れる。
砲門の数の差から言っても、勝ち目はほぼないといっていい。というか元々船のタイプというものがですね。
とかやってると、船長の咆哮がまた轟いた。

「左舷!弾幕薄いぞ!何やってんの!」

「ダ、ダメです!相手との戦力差が……砲門の数が違いすぎます!」

「砲門の数だけが、戦力の決定的差ではないことを、教えてやる!」

強気で攻めに出る船長。
しかし努力虚しく一方的にフルボッコにされる船長。

「ええい!空賊の船は化け物か!これだけの攻撃でも!」

「攻撃できてさえませんよ!どうすれば……」

「……すまんな、みんなの命をくれ」

全員が敬礼し、船長が繰り出す作戦を待った。
だが、いつまでたっても口を開かない船長。

「……降伏しよう」

「テメェェェェ!!」

船員全員からフルボッコにされる船長。
その光景を微笑ましく見る4人。
可哀想だけど明日には破産なのねって感じの目で見ていた。

「ひゃ、122回もぶった!親父にもぶたれたことないのに!」

「だから甘ったれなんでしょうが!親に殴られずに一人前になった奴がどこに居るんだよ!」

「……認めたくないものだな、若さゆえの過ちと言うものを」

「あんたの口の周りに生えてる髭はなんです」

「そんなの飾りです。船員達にはそれが分からんのです」

油に火とガソリンと中途半端な水を注ぐ船長。そしてまた拳が降り注ぐ。
ナランチャは心底(どっかで聞いたことある様な気がするな)と思う。
そして122回と言う数字。なんだっけ。コロネ頭の誰かが言っていた気がするが、名前を忘れてしまった。
ラッシュが「ムラムラ」……?だっけ。(実際は『無駄無駄』であるが、この少年に説明する事こそ無駄無駄である)
くだらない事を考えているうちに、空賊がこの部屋にも乗り込んできた

「捕虜の扱いは、南極条約に乗っ取ってくれるんだろうな。食事はな、ちゃんと3回食わせてもらいたいもんだな、俺は船長なんだからなぁ」

すっかり諦めモードの船長。さり気無く自分を特別扱いしているのがバレ、また船員にボコボコにされる。

「エ、エゴだよそれは!」

「エゴでも何でもねぇよ!俺が裁く!」

「いや、裁くのは俺だ!」

「俺だ!」

「「「俺が裁くんだァーッ!!」」」

ファイトクラブと化す船室。
しかし、気にせずナランチャは入ってきた空賊にエアロスミスの銃口を向け――

「ボラボラボラボラッ!」

このナランチャ容赦せん。
空賊は何か言おうと思っていたのか、口を開けたまま床に倒れた。
その場に居た全員が唖然とする中、部屋を出ようとするナランチャ。
その左腕をがっしり掴むルイズ。
わざとだろうか。その腕はライトニング・クラウドを喰らった方なのだが

「うっぎゃああああ!?」

「バッカ!アンタなにしてんのよ!こんなのバレたら殺されるわよ!」

怪我をした部分を触られたナランチャは激痛で顔を歪めつつ絶叫。
貴族としての誇りを保つ為に死ぬならまだいいが、使い魔が暴走して死にましたーなんて言って天国へ行きたいはずも無い。
というかまだ死にたくない。死にたくありましぇーん。
急いで倒れている空賊を隠す船員たち。ワルドはこの船を浮かばせるために力を使っているので見せ場なし。
ルイズは強引にナランチャを引っ張り、成り行きを待つことにした。

その内、もう一人空賊の男がやってきて、貴族と言うことがあっさりバレた4人は船倉に閉じ込められた。
ギーシュがドアを叩きながら「開けてよ!空賊さん!聞こえてるんだろ!……僕が……一番ワルキューレを…・・・上手く、使えるんだ……!」とか言っていたが、極自然にスルー。
ナランチャに最低限の手当てをしていると、またも空賊の男。さっきと同じ男だ

「あんたら、貴族派か?貴族派だったら世話になってるし、助けてやってもいいが」

「……王党派よ」

「な、何を言ってるだァーッ!分からんッ!」

即座に落とし穴へと片足突っ込んだ。
ギーシュが慌てて言うが、もう遅い
男は頭領に報告をしにいった。タダでさえ青い顔だったギーシュは体まで青くなろうかと言うところだ。
ボディーがブルースカイのギーシュはほっといて、ナランチャはルイズに拳を突き出す

「………」

「………」

「「YEAAAHッ!!」」

「あんたら一体なんなんだー!」

叫ぶギーシュに呼応してか、またあの男が来て、自分たちを頭領の所まで連れて行くという。
いよいよギーシュの体は鮮やかなオーシャンブルーに染まっていく。

僅かに見えるエメラルドグリーンの光は――じゃなかった、それはともかく、頭領の元へと連れてこられた。
目の前の凄まじく恐ろしい顔の頭領には、やると言ったらやる『凄み』がある。
その手前に、恐怖を感じたと思ったらその時スデに卒倒しているギーシュ。

「おめえらか?王党派ってーのは」

「そうよ。だから、大使としての扱いをして欲しいものだけど……あなたたちには出来そうもないわね」

「そりゃそうだ。貴族派に寝返る気はないのか?」

「……本当に、貴族派になれば助けてくれるのね?」

「ああ」

「だが断るわ」

キッパリ言い切った。後戻りと言う選択肢は消えた。
ギーシュは凄く深い青色に染まった。青銅ってレベルじゃない。所々に黄色が混ざっている
※お食事中の方、大変申し訳ありません

ワルドはそのギーシュを気色悪そうに見ている。実際気色悪い。
もはや人なのかコレ、という域へ達している。そろそろ服までもその青で侵食しようとしていた。

「このルイズが最も好きなことは、どんなに脅されても貴族の誇りを突き通すことよ」

「……言ったな?後悔はしないか?」

「しないわ」

ギーシュはお空へ旅立った。
頭領はいやらしい笑みを浮かべると、その髭に手をかける。
次の瞬間、その髭は取れた。

「は?」

パパパパッ、と変装を解いていく頭領。
その実態は

「バカなーッ!アルビオンに居るはずのッ!」

「アルビオンの皇太子のッ!」

「ウェールズ・テューダーッ!」

照れ笑いするウェールズ。
大抵の人間から見れば好感をもたれるだろう。さらに美形だ。
人望も厚いと見える。多分。
そして指につけた『風のルビー』からも、本物である事がうかがえた。
ナランチャは売りたそうにしている。売りますか?
→いいえ
 いいえ

「して、何の用でここまで来たのだ?君たちは……」

そのウェールズのもっともな問いに、ワルドが進んで答える。

「ラ・ヴァリエール嬢が、姫殿下より密書を頂いておりまして」

「それでここまで来られたのか……君達のようなものが何人も居てくれたらとは思うが、それは無理な話だ。ところで、それは……」

ルイズが懐から手紙を取り出し、ウェールズに渡す
すっと手を出し、受け取るウェールズ。
その内容――実に衝撃的なものであった

『かゆ

 うま』

「………」

「あぶり出しだ!これ、あぶり出しだ!」

ナランチャが渾身の叫びと共に、どこからかかっぱらってきたろうそくであぶる

「……何か、浮き出てきた」

「ほら!ほら!」

「調子に乗るなッ」

すぱーん、と平手でナランチャの頭に鋭い手刀を打ち加え、ルイズ、ウェールズたちが再び手紙を見る

浮き上がってきた薄い字を見る限り、こんな文章だ。

『差出人 コールサイン ウルズ7 認識番号 B-3128

ふもっふ ふも ふもっふ ふもふ ふも
ふもふも ふもっふ
ふも ふもっふ ふるもっふる ふも

再度確認 コールサイン ウルズ7 認識番号 B-3128』

「………」

「ボン太君だ」

「黙んなさい」

文章に違和感を覚えた。解読不能。これなんて気になるアイツは軍曹(サージェント)?
まだあぶり出しは続くが、そこからは解読可能ながら見ているこっちが恥ずかしくなってオーバーヒートするような内容(所謂恋文)であったため、ルイズたちは見ていない。
実質、ウェールズは多少顔が赤くなっていた。
後に、ナランチャが「ラムダ・ドライバ!」の掛け声でエアロスミスを展開させていたが、真相は謎である。
ちなみに40回にも及ぶ健闘をしても、その場が白けただけで終焉を迎えた。
多分、そういう年頃であったからだと思いたい。
キ○ガイじゃないんです。ド低能なだけなんです。

「ま、まあ、大体の事情は分かった。あの手紙はニューカッスル城にある。ついてきてほしい」

「分かりました」

船は、人目に当たるのを避け、秘密のニューカッスルの港へ到着した。
回復したギーシュと共に部屋を出るなり、メイジと見受けられる老人がウェールズへ一報を持ってくる

「ウェールズ様、硫黄でございます!」

「おお、火の秘薬か。これで我々の誇り、名誉。それらを敵へ見せ付けながら敗北できる!」

「なー、何言ってんのこいつら。負け前提でしかも嬉しそうだぞ」

「子供には分かんない世界なのよ」

「お前もだろ」

「………」

空気の読めないナランチャの発言はルイズ以外に聞かれる事はなかったが、その聞いた当人は顔を真っ赤にしながらナランチャの肩を激しく揺さぶる。
そして往復ビンタ、ナランチャの顔も見事に赤くなった。

ルイズには、彼らの覚悟は痛いほど悲しくも、誇り高いものだと感じた。
だが、ウェールズにはまだ愛すべきものが居るはずだ。
それでも守りたい世界があるんだ、とか?
いや、この場合は誇りか。
残されたアンリエッタはどうなるのだろうか。

結局、ルイズはそのことを口に出せずに居た。
彼らの覚悟を咎めるわけではない。しかし――

「……死んじゃったら同じよ。ザオリクザオリク」

お前も空気読めよ。

「……ルイズ、どうせあれだ、止めるかどうか迷ってんだろ?」

思考を、ナランチャが的確に突いた

「……根本的なところから考えろ」

「根本?」

「……勝っちまえばいいだろ?」

無邪気な笑みを浮かべて言い切ったナランチャの言葉に、どこか出来そうな感覚を覚えるのは気のせいだろうか。
ウェールズが言うに、敵は五万以上。
こちらは500にも満たない。天と地ほどの差。
それに勝てるというのか?そう考えても、何故か、『無理だ』とナランチャを否定できないのだ。

「まー、無理ってわけでもないんじゃねえ?全部倒す必要ないし」

「へ?」

「追っ払うとか。策はないけど」

「ないの?」

あ、やっぱり無理かもしれない。
深いため息と共に、ルイズは頭に手を当てた。

To Be continued ...
おまけ
「おーい!なんか着ぐるみがあるぞー!」

「こ、これは……!!」


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