トリステイン魔法学院女子寮の一室。机の上に並べられた様々な花や青色の液体が満たされた壜などを
一つ一つ選別して慎重な手つきでフラスコに詰めると呪文を唱え杖を振る。
様々な材料が溶け合いフラスコから仄かな香りが漂い始め、その抽出された液体を小さな壜に移し変えると
手で風を送り、香水の出来を確かめる。
作り出された香りに眉を顰め、壜ごとそれを廃棄してからモンモランシーは溜息を吐いた。
『香水』の二つ名を持つ彼女は日課である香水作りを行っていたのだが、失敗続きに頭を悩ませていた。
何故失敗するのか?その原因を彼女は既に知っている。昨日召喚された使い魔の所為だ。
あの使い魔の仕草や表情を見ると心が弾む。幾ら追い出そうと思ってもあの顔が頭から離れない。
視線を横にずらすとガラスの水槽の向こう側から、一匹の小さなカエルが彼女を覗き込んでいた。
鮮やかな黄色に彩られ、黒い斑点が幾つも散った使い魔のカエルに視線を同調させる。
ロビンと名付けた使い魔の眼には、頬が上気し物思いに耽る一人の少女が映し出されていた。
恋人であるギーシュをの事を思っても、ゲルマニアの女の様にこんなはしたない表情は出さない。
ギーシュの事は好き。浮気性だがそれはポーズであってモテる自分に酔っているに過ぎない。
たとえ相手がアンリエッタ王女であっても必ず自分の下に帰ってくる。そんなギーシュの事が好きだ。
だけど、この気持ちは何なのだろう?召喚の儀式で呼び出されたあの平民を見たとき心臓が高鳴った。
ギーシュの呼びかけにも気付かないくらい夢中になって見てしまった。
人を好きになった事は何度もある。だけどこんな事は初めてで、そんな自分の事が判らなくなった。
一つ一つ選別して慎重な手つきでフラスコに詰めると呪文を唱え杖を振る。
様々な材料が溶け合いフラスコから仄かな香りが漂い始め、その抽出された液体を小さな壜に移し変えると
手で風を送り、香水の出来を確かめる。
作り出された香りに眉を顰め、壜ごとそれを廃棄してからモンモランシーは溜息を吐いた。
『香水』の二つ名を持つ彼女は日課である香水作りを行っていたのだが、失敗続きに頭を悩ませていた。
何故失敗するのか?その原因を彼女は既に知っている。昨日召喚された使い魔の所為だ。
あの使い魔の仕草や表情を見ると心が弾む。幾ら追い出そうと思ってもあの顔が頭から離れない。
視線を横にずらすとガラスの水槽の向こう側から、一匹の小さなカエルが彼女を覗き込んでいた。
鮮やかな黄色に彩られ、黒い斑点が幾つも散った使い魔のカエルに視線を同調させる。
ロビンと名付けた使い魔の眼には、頬が上気し物思いに耽る一人の少女が映し出されていた。
恋人であるギーシュをの事を思っても、ゲルマニアの女の様にこんなはしたない表情は出さない。
ギーシュの事は好き。浮気性だがそれはポーズであってモテる自分に酔っているに過ぎない。
たとえ相手がアンリエッタ王女であっても必ず自分の下に帰ってくる。そんなギーシュの事が好きだ。
だけど、この気持ちは何なのだろう?召喚の儀式で呼び出されたあの平民を見たとき心臓が高鳴った。
ギーシュの呼びかけにも気付かないくらい夢中になって見てしまった。
人を好きになった事は何度もある。だけどこんな事は初めてで、そんな自分の事が判らなくなった。
『お嬢さん。君は恋をしているね』
「誰?誰か居るの?!」
頭の中に突然響いた声に驚き周りを見渡すも、部屋の中には自分以外には誰も居ない。
とうとう幻聴が聞こえてきたかとモンモランシーは額を押さえて溜息を吐く。
『こっちだよお嬢さん。机の上を見てごらん』
また声が響いた。モンモランシーは言われた通りに机の上を見ると、使い魔のロビンが水槽から出て
フラスコに背を預け、器用に腕を組んでこちらを見つめていた。
「あ、あなた喋れたの?!」
『喋る機会がなかったものでね』
ロビンはそう言って肩を竦め、カエルとは思えない態度でモンモランシーの問い掛けに答えた。
気味の悪い色をしたカエルでハズレを引いたと思っていたモンモランシーは素直に驚いた。
知性を持ったカエルなんて聞いた事がない。ロビンが何処から来たのか興味をそそられ聞いてみると、
更に驚くべき事が解った。
「本当にウチの領地に住んでたの!?」
『知らないのも無理はない』
突然変異で知恵を身につけたロビンは、生まれた池を飛び出して見聞を広める為に世界中を旅していた。
そして最後に辿り着いたのがモンモランシー家の領地だった。そこで何年かを過ごし、また旅に出ようとしたときに
目の前に鏡の様な物が現れた。魔法についても学んでいたロビンはそれの正体がメイジが使い魔を召喚する為に
使う魔法と解り、更なる知識を得る為のチャンスと思ってゲートに飛び込んだのだった。
「誰?誰か居るの?!」
頭の中に突然響いた声に驚き周りを見渡すも、部屋の中には自分以外には誰も居ない。
とうとう幻聴が聞こえてきたかとモンモランシーは額を押さえて溜息を吐く。
『こっちだよお嬢さん。机の上を見てごらん』
また声が響いた。モンモランシーは言われた通りに机の上を見ると、使い魔のロビンが水槽から出て
フラスコに背を預け、器用に腕を組んでこちらを見つめていた。
「あ、あなた喋れたの?!」
『喋る機会がなかったものでね』
ロビンはそう言って肩を竦め、カエルとは思えない態度でモンモランシーの問い掛けに答えた。
気味の悪い色をしたカエルでハズレを引いたと思っていたモンモランシーは素直に驚いた。
知性を持ったカエルなんて聞いた事がない。ロビンが何処から来たのか興味をそそられ聞いてみると、
更に驚くべき事が解った。
「本当にウチの領地に住んでたの!?」
『知らないのも無理はない』
突然変異で知恵を身につけたロビンは、生まれた池を飛び出して見聞を広める為に世界中を旅していた。
そして最後に辿り着いたのがモンモランシー家の領地だった。そこで何年かを過ごし、また旅に出ようとしたときに
目の前に鏡の様な物が現れた。魔法についても学んでいたロビンはそれの正体がメイジが使い魔を召喚する為に
使う魔法と解り、更なる知識を得る為のチャンスと思ってゲートに飛び込んだのだった。
『さて、私の事はこれ位でいいだろう。先程の話しに戻ろうか』
「な、何のことかしら?」
惚けるモンモランシーにロビンは人間の様な仕草でチッチッと指を振って見せる。
『あの人間の事さ。私が思うに一目惚れと言ったところかな?』
「な、なんで私が平民なんて好きにならなきゃいけないのよ!」
『私は一言も平民なんて言ってはいないが?』
ハッと口を噤むがもう遅い。ロビンを見ると手を顎に当て、興味深そうに赤面したモンモランシーを見つめていた。
「別に私が誰を好きになろうとあなたには関係ないでしょ!」
しかし、その言葉にロビンは首を振る。
『私は人間の恋愛感情に興味があってね。多くの動物はより良い種を残す為に優れた特徴を持つ者と交配する。
そう本能で決められている。だが、人間は違う。優秀な者が自分より遥かに劣っている者を選ぶ事が多々ある。
今の君のようにね。何故そうなるのか、私はその理由を知りたいんだ』
モンモランシーは何故か自分の考えを語ったロビンが苦悩している様に思えた。カエルの表情なんて解らないのに。
『それでは行くとするか』
ロビンは机から降りるとピョコピョコと跳ねて部屋の扉まで移動する。
「行くってどこに?」
『決まってるだろう。君の思い人のところだ』
「なな、なにを言ってるの!どうして行かなきゃならないのよ!?」
『ここで悩んでいても仕方がないだろう。どんな男なのか私も見たいしな』
「ひょっとして知らないで言ってたの?!」
『そうだ。そもそも私は今日ここから一歩も外に出てないじゃないか』
カエルは乾燥に弱いと思ったモンモランシーは、昨日の騒ぎで授業もなかったのでロビンを水槽に入れたままに
していたことを思い出した。その後、行かないと一点張りだったモンモランシーは上手くロビンに言い包められて、
カエルの癖にと呟きながら渋々といった感じで部屋の外に出たのであった。
「な、何のことかしら?」
惚けるモンモランシーにロビンは人間の様な仕草でチッチッと指を振って見せる。
『あの人間の事さ。私が思うに一目惚れと言ったところかな?』
「な、なんで私が平民なんて好きにならなきゃいけないのよ!」
『私は一言も平民なんて言ってはいないが?』
ハッと口を噤むがもう遅い。ロビンを見ると手を顎に当て、興味深そうに赤面したモンモランシーを見つめていた。
「別に私が誰を好きになろうとあなたには関係ないでしょ!」
しかし、その言葉にロビンは首を振る。
『私は人間の恋愛感情に興味があってね。多くの動物はより良い種を残す為に優れた特徴を持つ者と交配する。
そう本能で決められている。だが、人間は違う。優秀な者が自分より遥かに劣っている者を選ぶ事が多々ある。
今の君のようにね。何故そうなるのか、私はその理由を知りたいんだ』
モンモランシーは何故か自分の考えを語ったロビンが苦悩している様に思えた。カエルの表情なんて解らないのに。
『それでは行くとするか』
ロビンは机から降りるとピョコピョコと跳ねて部屋の扉まで移動する。
「行くってどこに?」
『決まってるだろう。君の思い人のところだ』
「なな、なにを言ってるの!どうして行かなきゃならないのよ!?」
『ここで悩んでいても仕方がないだろう。どんな男なのか私も見たいしな』
「ひょっとして知らないで言ってたの?!」
『そうだ。そもそも私は今日ここから一歩も外に出てないじゃないか』
カエルは乾燥に弱いと思ったモンモランシーは、昨日の騒ぎで授業もなかったのでロビンを水槽に入れたままに
していたことを思い出した。その後、行かないと一点張りだったモンモランシーは上手くロビンに言い包められて、
カエルの癖にと呟きながら渋々といった感じで部屋の外に出たのであった。
ロビンに乗せられたモンモランシーは件の相手の部屋の前で立ち尽くしていた。
ここに来るまでにどうやって話しを切り出そうかと考えを廻らしたのだが、それが拙かった。
考えれば考えるほど心が相手の事で埋め尽くされていく。
そもそもこの気持ちを伝えてどうなると言うのだ。相手と顔を会わせたのは今日が初めてだ。
なのに自分の思いを伝えたら、奇異の眼で見られるか、嫌われる。
嫌われる事だけは避けたい。なんとしても。
いや、どうして思いを伝えようとしているんだ?部屋を出るときは自分の気持ちを確かめるだけの筈だったのに。
自分の心が暴走しているのが判る。落ち着かなければならない。
だけど余り時間を掛けられない。部屋の主とは大して親しくも無いのに、こんな所でウロウロしているのを
他の誰かに見られては大変な事になる。ギーシュを悲しませてしまうかもしれない。
なまじ頭が良いだけに、モンモランシーは思考の泥沼に嵌り身動きが取れなくなっていた。
『お嬢さん入らないのか?まさかここまで来て帰るなんて言わないだろうな』
(判ってるわよ!……ちょっと気持ちを落ち着かせてただけ)
ロビンに催促されて意を決し扉をノックする。暫く待ってみたが誰かが出てくる気配はない。
ノブに手を掛けて回してみるとスンナリと回った。悪いと思いつつ扉を開けて部屋を覗いてみると誰もいない。
『留守のようだな』
(そう見たいね)
モンモランシーは相手が居なくてホッとすると同時に、顔が見れなくて少し残念な気持ちにもなった。
『仕方ない。出直すとしよう』
(何であなたが仕切ってるのよ。私が御主人様なんだからね、それを忘れちゃダメよ。
それから、私の事はお嬢さんじゃなくてご主人様って呼びなさい。いいわね?)
『判っているさ御主人様』
おどけた感じで答えるロビンに少し腹が立ったが、怒る様なことでもないと自分に言い聞かせ部屋を後にした。
ここに来るまでにどうやって話しを切り出そうかと考えを廻らしたのだが、それが拙かった。
考えれば考えるほど心が相手の事で埋め尽くされていく。
そもそもこの気持ちを伝えてどうなると言うのだ。相手と顔を会わせたのは今日が初めてだ。
なのに自分の思いを伝えたら、奇異の眼で見られるか、嫌われる。
嫌われる事だけは避けたい。なんとしても。
いや、どうして思いを伝えようとしているんだ?部屋を出るときは自分の気持ちを確かめるだけの筈だったのに。
自分の心が暴走しているのが判る。落ち着かなければならない。
だけど余り時間を掛けられない。部屋の主とは大して親しくも無いのに、こんな所でウロウロしているのを
他の誰かに見られては大変な事になる。ギーシュを悲しませてしまうかもしれない。
なまじ頭が良いだけに、モンモランシーは思考の泥沼に嵌り身動きが取れなくなっていた。
『お嬢さん入らないのか?まさかここまで来て帰るなんて言わないだろうな』
(判ってるわよ!……ちょっと気持ちを落ち着かせてただけ)
ロビンに催促されて意を決し扉をノックする。暫く待ってみたが誰かが出てくる気配はない。
ノブに手を掛けて回してみるとスンナリと回った。悪いと思いつつ扉を開けて部屋を覗いてみると誰もいない。
『留守のようだな』
(そう見たいね)
モンモランシーは相手が居なくてホッとすると同時に、顔が見れなくて少し残念な気持ちにもなった。
『仕方ない。出直すとしよう』
(何であなたが仕切ってるのよ。私が御主人様なんだからね、それを忘れちゃダメよ。
それから、私の事はお嬢さんじゃなくてご主人様って呼びなさい。いいわね?)
『判っているさ御主人様』
おどけた感じで答えるロビンに少し腹が立ったが、怒る様なことでもないと自分に言い聞かせ部屋を後にした。
自分の部屋に戻りロビンを水槽に戻した後、モンモランシーは気分を落ち着かせる為に風呂にでも入ろうと
窓の外を眺めながら廊下を歩いていると、中庭に何人かの人影が眼に写った。
「あれってマリコルヌ?それに…」
良く眼を凝らして見てみると、マリコルヌ、トリッシュ、サイトの三人が隠れながら何処かへと向かっていた。
その先にあるのは学院の馬を繋ぎとめている厩舎だ。
気になったモンモランシーは先回りをして厩舎に辿り着き、茂みに身を隠し息を潜めて三人を待ち受けた。
暫く待っていると思った通り三人が現れ、マリコルヌに教えてもらいながら馬に鞍を付け始めた。
(こんな夜更けにどこにいくのかしら?)
馬を使うという事は遠出をするのだろうか?それならどうして見つからない様にするんだろ?
それにルイズの使い魔も一緒ってどういうこと?
モンモランシーの脳裡に様々な疑問が渦巻くが、一番気になったのは親密そうな二人だった。
「私、馬に乗った事ないんだけど。サイトはある?」
「オレもねえよ」
(なにベタベタしてるのよ!)
元々嫉妬深いモンモランシーは、トリッシュとサイトが仲良さげに話しているのを見て飛び出したくなる衝動に
駆られたが、辛うじてそれを抑えて推移を見守る。
「こうやって鐙に脚を乗せて…」
「クソッ!動くんじゃねえよ!」
「シッ!静かにしなさいよ。見つかるじゃあないの」
トリッシュが嗜められたサイトが馬の乗った彼女を見上げると、腰の辺りにまで入ったスリットから覗く脚に
眼を奪われ鼻の下を伸ばす。その顔を見てモンモランシーの我慢がとうとう限界に達した。
窓の外を眺めながら廊下を歩いていると、中庭に何人かの人影が眼に写った。
「あれってマリコルヌ?それに…」
良く眼を凝らして見てみると、マリコルヌ、トリッシュ、サイトの三人が隠れながら何処かへと向かっていた。
その先にあるのは学院の馬を繋ぎとめている厩舎だ。
気になったモンモランシーは先回りをして厩舎に辿り着き、茂みに身を隠し息を潜めて三人を待ち受けた。
暫く待っていると思った通り三人が現れ、マリコルヌに教えてもらいながら馬に鞍を付け始めた。
(こんな夜更けにどこにいくのかしら?)
馬を使うという事は遠出をするのだろうか?それならどうして見つからない様にするんだろ?
それにルイズの使い魔も一緒ってどういうこと?
モンモランシーの脳裡に様々な疑問が渦巻くが、一番気になったのは親密そうな二人だった。
「私、馬に乗った事ないんだけど。サイトはある?」
「オレもねえよ」
(なにベタベタしてるのよ!)
元々嫉妬深いモンモランシーは、トリッシュとサイトが仲良さげに話しているのを見て飛び出したくなる衝動に
駆られたが、辛うじてそれを抑えて推移を見守る。
「こうやって鐙に脚を乗せて…」
「クソッ!動くんじゃねえよ!」
「シッ!静かにしなさいよ。見つかるじゃあないの」
トリッシュが嗜められたサイトが馬の乗った彼女を見上げると、腰の辺りにまで入ったスリットから覗く脚に
眼を奪われ鼻の下を伸ばす。その顔を見てモンモランシーの我慢がとうとう限界に達した。
「なに覗いてるのよ!いやらしいわね!!」
声を荒げて茂みから飛び出したモンモランシーに三人の視線が集中する。
「モンモランシー?!どうして君がここに?」
「べっ別に良いじゃない!私がどこに居ようと関係ないでしょ!」
「大アリよ。どうしてこんな所にいるのかしら?」
馬から下りたトリッシュが気モンモランシーの肩を掴み、恩人直伝の嘘を見破る方法を試そうと顔を近づける。
モンモランシーは平静を装いながらも気まずそうに顔を逸らす。
「え…とね。あなた達が隠れながらどこかに行こうとしてたから…ちょっと気なって」
「嘘は吐いてないわね。でも…」
「え?ひゃうっ……あ…」
トリッシュはモンモランシーの汗を見て嘘を吐いていないと確信するが、念の為に味も見ておこうと
頬を伝う汗を舐め取り、その感触にモンモランシーは腰が砕けて尻餅をつき呆然とトリッシュを見上げる。
その頬の色は赤を通り越して紅へと変わっていた。
「この事は誰にも言わないで貰えないかな」
問い掛けに反応せず、呆けた表情でトリッシュを見上げるモンモランシーをマリコルヌは訝む。
そして赤みが差した顔を見てある結論に達したが、その考えを有り得ないと否定する。
「行こうぜ。あんまり時間もないしな」
いつの間にか馬に跨っていたサイトの声でモンモランシーが我に返り、三人を問い詰めた。
最初はみんな口を噤んでいたが、ルイズに知らせると言うとサイトがとうとう口を割った。
声を荒げて茂みから飛び出したモンモランシーに三人の視線が集中する。
「モンモランシー?!どうして君がここに?」
「べっ別に良いじゃない!私がどこに居ようと関係ないでしょ!」
「大アリよ。どうしてこんな所にいるのかしら?」
馬から下りたトリッシュが気モンモランシーの肩を掴み、恩人直伝の嘘を見破る方法を試そうと顔を近づける。
モンモランシーは平静を装いながらも気まずそうに顔を逸らす。
「え…とね。あなた達が隠れながらどこかに行こうとしてたから…ちょっと気なって」
「嘘は吐いてないわね。でも…」
「え?ひゃうっ……あ…」
トリッシュはモンモランシーの汗を見て嘘を吐いていないと確信するが、念の為に味も見ておこうと
頬を伝う汗を舐め取り、その感触にモンモランシーは腰が砕けて尻餅をつき呆然とトリッシュを見上げる。
その頬の色は赤を通り越して紅へと変わっていた。
「この事は誰にも言わないで貰えないかな」
問い掛けに反応せず、呆けた表情でトリッシュを見上げるモンモランシーをマリコルヌは訝む。
そして赤みが差した顔を見てある結論に達したが、その考えを有り得ないと否定する。
「行こうぜ。あんまり時間もないしな」
いつの間にか馬に跨っていたサイトの声でモンモランシーが我に返り、三人を問い詰めた。
最初はみんな口を噤んでいたが、ルイズに知らせると言うとサイトがとうとう口を割った。
「メイドの為に貴族の屋敷に乗り込むって…正気なの?!」
医務室で寝ていたモット伯の看病をしていたシエスタが、彼に見初められて屋敷に連れて行かれた事を
マリコルヌから聞いたサイトとトリッシュが連れ戻すと言い出し、止めても聞かないトリッシュを心配して
仕方なくマリコルヌも着いて行くことになった事を、トリッシュの口から聞いたモンモランシーは言葉を失った。
そんな事をしたら平民のサイトとトリッシュは縛り首、貴族のマリコルヌも牢に入れられてしまう。
気を取り直し、モンモランシーがそれを精一杯伝えるが、トリッシュは被りを振る。
「そうね。その通りだと思うわ。けど…やらなくっちゃあいけないのよ」
「自分が何をしようとしているのか解ってるの?!捕まったら死んじゃうのよっ!」
「モット伯が医務室に行ったのは僕たちの責任だからさ」
マリコルヌとトリッシュがモット伯に怪我を負わせなければ、シエスタと出会わなかったと言うのだ。
それはその通りかもしれない。だったら責任は自分にもある。
「判った。用意してくるからちょっと待ってて。私も一緒に行くわ」
そう答え、マリコルヌ達の声を背中に受けながらモンモランシーは部屋に向けて走り出した。
『おやお嬢さん。慌ててどうした?』
ロビンの問い掛けを無視して、モンモランシーは秘薬屋に売る予定だった薬品を鞄に詰め込み
鍵も掛けずに部屋を飛び出した。
(モット伯にもっと強い薬を飲ませておけば、こんな事には成らなかったのに)
ある薬を作ろうとしていて偶然できた、短時間だが飲ませればどんな命令でも聞かせることが出来る薬を、
眠るモット伯に飲ませて暴行事件を揉み消したのだが、それがこんな結果に成るなんて考えても見なかった。
医務室で寝ていたモット伯の看病をしていたシエスタが、彼に見初められて屋敷に連れて行かれた事を
マリコルヌから聞いたサイトとトリッシュが連れ戻すと言い出し、止めても聞かないトリッシュを心配して
仕方なくマリコルヌも着いて行くことになった事を、トリッシュの口から聞いたモンモランシーは言葉を失った。
そんな事をしたら平民のサイトとトリッシュは縛り首、貴族のマリコルヌも牢に入れられてしまう。
気を取り直し、モンモランシーがそれを精一杯伝えるが、トリッシュは被りを振る。
「そうね。その通りだと思うわ。けど…やらなくっちゃあいけないのよ」
「自分が何をしようとしているのか解ってるの?!捕まったら死んじゃうのよっ!」
「モット伯が医務室に行ったのは僕たちの責任だからさ」
マリコルヌとトリッシュがモット伯に怪我を負わせなければ、シエスタと出会わなかったと言うのだ。
それはその通りかもしれない。だったら責任は自分にもある。
「判った。用意してくるからちょっと待ってて。私も一緒に行くわ」
そう答え、マリコルヌ達の声を背中に受けながらモンモランシーは部屋に向けて走り出した。
『おやお嬢さん。慌ててどうした?』
ロビンの問い掛けを無視して、モンモランシーは秘薬屋に売る予定だった薬品を鞄に詰め込み
鍵も掛けずに部屋を飛び出した。
(モット伯にもっと強い薬を飲ませておけば、こんな事には成らなかったのに)
ある薬を作ろうとしていて偶然できた、短時間だが飲ませればどんな命令でも聞かせることが出来る薬を、
眠るモット伯に飲ませて暴行事件を揉み消したのだが、それがこんな結果に成るなんて考えても見なかった。
「おま…た…せ…」
置いて行かれないか心配だったが、みんなが待っていてくれた事に安堵して厩舎に向かう。
しかし、厩舎には馬が一頭も残っていなかった。
「ど…どうしていないの?」
「それが…さっきオールド・オスマンが最後の馬に乗ってどこかに行ってしまってね」
「そんな…」
「それなら、私と一緒に乗れば良いんじゃあないの?」
トリッシュは手招きして呼び寄せるが、モンモランシーは固まって動こうとしない。
「どうしたの?…ああ、私じゃあ不安なのね」
自分の後ろに乗るのが不安なのだと合点したトリッシュは、馬を下りてモンモランシーに乗る様に促す。
「え、ええ!わたしがまえにのったほうがいいわよね!」
「大丈夫?何だか顔が赤いけど」
「だ、だいじょうぶよ!」
そう言ってモンモランシーは石像の様にギクシャク歩きながら、それでもなんとか馬に跨り、そして、背中に当たる
トリッシュの胸の感触にドキドキしながら門に向かって馬を歩かせる。
(まさかな。お嬢さんの思い人が女性だったとは…これは実に!実に面白い!)
こっそりとモンモランシーの鞄に忍び込んだロビンは、主人に気付かれない様にひっそりと哄笑した。
置いて行かれないか心配だったが、みんなが待っていてくれた事に安堵して厩舎に向かう。
しかし、厩舎には馬が一頭も残っていなかった。
「ど…どうしていないの?」
「それが…さっきオールド・オスマンが最後の馬に乗ってどこかに行ってしまってね」
「そんな…」
「それなら、私と一緒に乗れば良いんじゃあないの?」
トリッシュは手招きして呼び寄せるが、モンモランシーは固まって動こうとしない。
「どうしたの?…ああ、私じゃあ不安なのね」
自分の後ろに乗るのが不安なのだと合点したトリッシュは、馬を下りてモンモランシーに乗る様に促す。
「え、ええ!わたしがまえにのったほうがいいわよね!」
「大丈夫?何だか顔が赤いけど」
「だ、だいじょうぶよ!」
そう言ってモンモランシーは石像の様にギクシャク歩きながら、それでもなんとか馬に跨り、そして、背中に当たる
トリッシュの胸の感触にドキドキしながら門に向かって馬を歩かせる。
(まさかな。お嬢さんの思い人が女性だったとは…これは実に!実に面白い!)
こっそりとモンモランシーの鞄に忍び込んだロビンは、主人に気付かれない様にひっそりと哄笑した。