ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロのパーティ-17

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匿名ユーザー

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馬に揺られて約三時間。
ようやく僕らは目的の街へとたどり着いた。

しかし素人には乗馬ズボンありでも、3時間は無茶としかいいようがない。
記憶の僕は駱駝に乗った経験があったが、馬の方が揺れが小刻みなので、記憶と比べても楽とはいいがたいものがある。
まぁ、そんなことはスタンドを鞍とお尻の間にしいておけば、全く関係ないのだが。
才人は股間と腰を押さえて、足をがくがくさせながら、老人のように歩いている。

「腰がいてぇ……」
「才人、大丈夫ですか?」
「情けない。馬に乗ったこともないの? あんた。使えないわね」
「うっせ」

使えないといわれても、才人は怒る気力もないのか、短く返しただけで、ひょこひょこ歩き続ける。
ルイズはその姿を見て、呆れたようにため息を吐いた。

「全く…… 上着の財布は落としてないでしょうね!」
「持ってるつーの。こんな重いもん落とすかよ」

その答えを聞くなりルイズは、待ちきれないと言わんばかりに先に先にと、街の中心に向かって歩いていく。
才人も置いてかれまいと精一杯歩くのだが、矢張り遅い。
人通りが多い所為で、余り離れるとルイズを見失ってしまうだろう。

「肩を貸します。早く行きましょう」
「わりぃ、花京院」

僕は仕方なく才人に肩を貸して、ルイズの後を追いかけていくのだった。
報復のことは、後にしておいてやろう。
……水に流した訳ではないが。

「ここが目的地のブルトンネ街。トリステインで一番大きな、宮殿へと続く通りのある街よ」

先先に進んでいったルイズが、街の名前をいう。
僕はざーっと、辺りを見回してみた。

道には老若男女、様々な人間が行き交っている。
身なりは総じて、魔法学院の人間よりも質素な感じだ。
建物は2、3階建ての建物が多く、木造だけでなく、壁が漆喰造りの、中々に立派なものも多い。
道幅は約4~5mと行った所か。文化レベルを考えれば、十分に広いレベルだろう。
しかし、道ばたには露天商の姿も見え、人が大勢通っていて、到底通りやすいとは言えない。
その全体的な姿は、東南アジアの発展途上国を思わせる感じだ。
僕は一瞬、ここが異世界であるということを忘れそうになった。

さて、才人はというと、僕の横で目を輝かせて辺りを見回している。
海外によく行く様な僕では、以外と興味を持たないような光景でも、彼にとっては新鮮なんだろう。
だが、あまりきょろきょろするのは止めて欲しい。
視線がこっちに集中するじゃないか!

「へぇ。大通りっていっても、意外と狭いんだな」

才人が感想を漏らす。
僕らからしてみれば、5m程度の道幅というのは、かろうじて二車線分の広さだ。
日本に住んでいる彼の感想としては、当然といえば、当然の感想だろう。

「あんた達のいた所って、いったいどれだけ広いのよ……」
「そうですね、この道の二倍ぐらいのサイズで、やっと大通りでしょうか? もっと広い道も当たり前のようにありますし」
「そんなとこ、一体何処にあるのよ」
「ですから異世界だと、何度も言ってるじゃないですか」
「信じられないわ」

四日前の夜にあれほど説明したのに、まだ信じていないとは。
ホントにわからん奴だなッ!

「なぁー、花京院。おもしろいもんがあるぞ」

何時の間にやらどっかに言っていた才人が、僕を呼びかける。
見ると露天の怪しげな、僕らの世界で言う、ニセ東洋人の格好をした商人に捕まっていた。

「ハァイ、私、東方から来た商人アルよ。全然怪しくないネ」
「なぁ、このビンは何?」
「アイヤー、お兄さん。お目が高いネ。それは東方に伝わる飲み物で、1エキューと30スゥアルよ」
「へぇー」

何をしているんだ彼奴は。
僕は呆れつつも才人を止めに入ろうと、その露店の方へと近づく。
しかしそれよりも早く、ルイズが才人の耳を引っ張って、強制的にその場から連れて行った。

「痛ぇ、痛ぇって!」
「うるさい、バカ犬!」
「やれやれ……」

――――――――――――――――――――――――――――――――――

「寄り道しない! ここにはスリが多いんだから! 魔法使われたら、一発で終わりよ!?」

耳を引っ張って、才人を露店から離れた、比較的人通りの少ない所まで連れてきたルイズは、颯爽と説教を始める。
彼女曰く、貴族は悉くメイジだが、メイジは全員貴族というわけではないらしい。
落ちぶれた元貴族が、スリや傭兵などに身をやつすことも珍しくないということだ。

しかしそんなルイズの説教を殆ど聞かず、才人は相変わらずキョロキョロと物珍しそうに辺りを見回していた。
今度は店の看板にお熱な様だ。
馬耳東風を地でいくとは。流石は才人だ。
そこに痺れもしないし、憧れもしない。どっちかっていうと引く。

ルイズはため息をつくと、もはや才人に説教は意味がないと悟ったのか、ぐいぐいと才人の袖を引っ張って、まさしく犬のように連れて行こうとする。
しかしいくら才人が貧弱でも、体格の小さいルイズの力ではどうしようもない。

ルイズは才人の袖を引っ張りながら、僕の方に顔を向ける。

「アンタも手伝いなさい!」

結局、僕とルイズで才人の首根っこをひっつかんで、そのままずるずると連れて行くことになるのだった。


「で、あの瓶型の看板は何?」
「……酒場でしょ」
「じゃあ、あのバッテン印は?」
「……衛兵詰め所」

才人を引っ張って行くにしても、力があるとは思えない体格のルイズは、途上であっさりとへばった。
自由の身となった才人は、興味がある看板を見つけるたび、そこで立ち止まる。
そして、もはや強制的に連れて行く事へ諦めムードとなったルイズは、才人の質問に答えて、さっさと先に進ませようという選択肢に移行した。
ちなみにそれでも進まない時は、僕が強制的に首根っこをつかんで、先に進ませている。
まるで手間のかかるお子さまだな。

「じゃあ、じゃあ……」

十五個目の看板にさしあたった時、僕はその建物の横に不審な影を見る。
その影はなにやら大きな木の棒を持っている。
まるでメイジの杖の様だ。もしかして、これがルイズの言っていたスリか!?

「才人、気をつけろッ! そこの物陰にスリがいるぞッ!」
「え!?」

僕は急いで才人に警告をする。
しかし既に影の主は詠唱を終えていたようで、才人の持っている上着の懐から、財布が飛び出した。
影はその財布を、杖を持っていない左手でつかみ取り、そのまま走って狭い路地裏の方へと走っていく。

「へっ、あばよ!」

「てめぇ、まちやがれ!」
「何やってるのよ、バカ犬ぅ!」
「………」

才人とルイズは、その影の後を急いで追いかけていこうとする。
僕も二人についていきながら、しかし冷静に、自分のハイエロファント・グリーンで音もなく、先程逃げた男を追跡する。
僕のハイエロファントは、それなりに素早いスタンドだ。
走って逃げる相手を捕まえるなど雑作もない。

「捕まえたぞッ!」
「うげげっ!」
僕のハイエロファントは、あっさりとスリの足をつかむ。
足を捕まれたスリはそのままドデーンと、道路にお熱いキスをした。
その隙に、才人とルイズは見事にスリの進路を塞ぐ。
スリは元来た道を逃げようとあがくが、そこには僕がいる。
スリは既に、袋のネズミというわけだ。

「あっ!」
「てめぇ、さっき俺から盗んだ財布を返せ!」
「貴族の財布に手をだそうだなんて…… 縛り首ものよ?」
「ヒィイ!」
「いえ、ひょっとしたらもっと重いかも……」
「ヒィィイイイ!」

ルイズがスリに対して脅しをかけていく。
その一言一言が、ルイズから口から発せられるたびに、スリはビクビクと震えて縮こまる。
ルイズはそのスリの反応を見るたびに、ンンンンいい声だ! 実にいい響きだ。その声が聞きたかったぞ! といった調子で脅しを続ける。
ドS全開だ。その内、ウィンウィンとか言い出しそうな気がする。
流石の才人も一歩、引いている。
……どうやら真性のドMでは無かったようだ。
きっと昼頃、鞭で叩かれて喜んでいるように見えたのは、テナーサックスの見せた幻覚か、イエローテンバランスが化けた偽物に違いない。
僕はそうして、昼頃の記憶を上書きすることにしたのだった。

ルイズは暫く脅して、やがて飽きたのか、マントからいつもの乗馬用鞭を取り出した。
「いいわ、鞭打ちの刑で許してあげる」
「へっ!? ……ギニャァァァァアアアアアア!!」
「ム、ムゴイ」
「ムゴイ? いいえ、慈悲深いわ。腕を切り落とさないだけね」

とりあえずルイズは鞭でスリを10回ほど打ち付け、タルにくくりつけて詰め所前に放置した。
そして、僕たちは何事もなかったかのように、先程の路地へと戻っていく。
正直、これくらいのことは僕でもやらない訳じゃないため、特に何もいわず、そのまま何事もなかったかのような空気が流れた。

ちなみに財布は僕が持つ事となった。
才人では信用性に欠けるらしい。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

「えっと、あった。ここね」

目的の武器屋は、先程スリを捕まえた辺りのさらに奥、十字路となっている場所に存在した。
ルイズは銅製の看板を何度も見て確認をし、その建物の中の羽扉を開いて、入っていった。
僕らもその後に倣って、その建物の中に入っていく。
カランカランと、扉についた来客を知らせるベルがなった。

もう昼は幾分か過ぎていたが、まだ明るい外と違って、店内は薄暗く、ランプだけが辺りを照らしている。
そしてそのランプの光を、そこら中に乱雑に積まれた槍やら、剣やらの刀身が弾いて、怪しげな雰囲気を醸し出している。
想像していた武器屋と大分違うな、と僕は思う。
もっとも僕が想像したのは、もっとゲームのような武器屋なのだが。

そんなことを考えながら、店内を見ていると、カウンターの奥から、パイプをくわえた50がらみの親父が顔を出した。
親父……おそらく店主は暫く僕と才人を品定めを見るように眺める。
僕の方も、暫く店主の方を見た。才人は視線など気にしないといった感じで、無造作に立てかけられている剣をがちゃがちゃと物珍しそうにあさっている。
暫く僕と才人を眺めた店主は、大体、見当はついたと僕らから目線を外す。そこで、ようやくルイズの姿に気づいた様だ。
ルイズの方も親父に気づいたようで、つかつかとカウンターの方へ駆け寄っていく。

「これは貴族の旦那。うちはお上に目をつけられるような商売をした覚えはありませんが?」
「客よ」
「お客様でしたか。こりゃ失礼しました。貴族の方が武器を使うとは思わなかったもので」
「使うのは私じゃなくて、そこの使い魔と従者よ」
「忘れておりました。昨今は使い魔や下僕に武器を持たせるのが流行っているようで」

店主がいかにもな愛想の言葉を述べる。
しかしそんなことは気にせず、僕は壁にかけられた槍や剣を一つ一つ観察する。
どれも学園の屯所にあった奴よりも、綺麗な光沢を放っている。
才人の方は、バーゲン品のようにさしてある剣の束を、がちゃがちゃといじくり回していた。

「武器を使うのは、この方々で?」
「そうよ」

商談はルイズの方に任せておこう。
そう思って、僕は興味を完全に売り物の方へ向ける。

「何をお求めで?」
「そうね、槍を一本と……何か見栄えの良い武器が欲しいわ」
「へぇ、それでしたら剣がおすすめですが」
「じゃあ、槍と剣、一本ずつお願いするわ。私は武器については解らないから、適当に選んで頂戴」

どうやら会話から判断するに、槍と剣を一本ずつ買うつもりらしいな。
もっとも僕は槍なんて使わないので、どんなものでも良いのだが。

しかし一通り見てしまった所為で、いささか暇だな。
才人の方を見ると、未だ乱雑に積まれた剣の山やら、バーゲン品の様に刺されている剣の山をいじくり回している。
僕は才人の方へと近づいた。

「何か面白いもの見つかりましたか?」
「特に面白いものつーのは…… あ、さっきそこの積まれた剣の中から、異様に錆びた剣を見つけたな」
「錆びた剣ですか……」

錆びた剣……
何でそんなものが武器屋に置いてあるんだろうか。
僕はちょっとばかり好奇心をそそられ、その束の中を探す。

お目当てのものはすぐに見つかった。
なるほど、確かに錆び錆びだ。
僕はその剣を抱え、才人の方へとみせて確認を取る。

「これですか?」
「そうそう、それそれ」

錆びていなければ、結構カタチのいい剣だろうな。と剣のデザインを眺めつつ思う。
しかし……

「これだけ錆びていては、ナマクラ以下ですね」
「つーかゴミだろ」
「プッ!」

僕らはひとしきりその錆びた剣を笑った後、その剣を元の場所へと戻した。
僕がカウンターの方を見ると、丁度、店主が剣と槍を抱えて戻ってきた所だった。
丁度いいタイミングだ。僕と才人はすっとその場から立ち上がって、ルイズの方へと向かう。

「おめぇら、黙って聞いてりゃ好き放題いいやがって」
「ン!?」
「コラ! デル公!」

なにやら店主のものとは違う、低い男の声がした。
僕はその声がした方に目を向ける。そこは先程、僕が剣を戻した場所だった。
才人も同じようにそちらに視線を向ける。

「特にそこのおめぇ! 誰がゴミだ、えぇ? おめぇみてぇなモヤシにゃ、棒ッ切れがお似合いさ」
「剣が……」
「喋っているッ!?」

僕の目がとらえたのは、先程の錆び錆びのナマクラ剣が、柄をかちゃかちゃと口のようにならしている姿だった。

To be contenued……

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