ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-19

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匿名ユーザー

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「きゅい!そうなの、あの使い魔が死にそうなギーシュ様を治したのね!」
「そう…」
育郎とギーシュの決闘があったその日、魔法学園の上空でタバサが自分の使い魔の竜、
周りには風竜と説明してあるが、実は伝説とまで言われる、人の言葉や先住魔法まで操る風韻竜と呼ばれる種族のシルフィードに、決闘の顛末を聞いていた。
キュルケからほとんど同じ内容の話を聞いていたが、それでも彼女にとって、
最も重要な事が確認できたので無駄にはならなかった。
だがまだまだ確認すべきことはある。簡単に喜ぶわけにはいかない。
「先住魔法?」
「うーん、ちがうと思うの。精霊の力は感じられなかったの」
先住魔法とも違う力…彼女の瞳に小さな希望が宿る。それは彼女のもっとも大切な人間、先住魔法の薬で、心を狂わされてしまった母を治す可能性。
だが簡単に喜ぶわけにはいかない。相手が自分の頼みを簡単に了承するとは限らない。
そもそもその相手は…
「あの使い魔…なにかわかる?」
相手は知識を求める事に余念が無い、自分ですら知らない亜人なのだ。
たぶん亜人なのだ。
知らないけど亜人に違いない。
とにかく、もしかしたら自分の使い魔なら、ひょっとしてあれが何か、知っているかも知れないと期待して聞いてみる。

「知らない、見たことも聞いた事もないのね!」
使い魔の答えに心を重くするタバサ。
「きゅいきゅい!お姉さま、わたし思うの!あれはきっと悪魔なのね!」
その言葉にタバサの体が一瞬ビクリと震えるが、シルフィードは気付かずに続ける。
「ギーシュ様を治したのもきっと油断させる為なの!
 ミス・ヴァリエールの使い魔をやってるのもたぶんそうなのね!
 そしてある日、キレイな女の人の魂を食べちゃうの!恐い!
 そうだ!カワイイからきっとお姉さまも狙われるわ!
 お姉さまが食べられちゃう!きゅいきゅい!」
ぺしぺしぺし
「きゅい!イタイ!どうして叩くのお姉さま!?」
そんな恐ろしいことを言うからだ。





次の日、彼女は授業を休んで密かに図書館に向かった。
先日の夕食時、あの使い魔は東方の亜人であると、学院長の秘書が言っていたという話を聞いた彼女は、確認のため東方に関する書物を調べに来たのだ。
一応病気という事になっている彼女は、ありったけの書物を借りていく。
中には教師にしか閲覧が許されない、フェニアのライブラリーに収められた書物まで含まれていた。
もちろん、無断である。

「ない…」
自分部屋の中で、大量の本に囲まれたタバサが一人つぶやく。2日徹夜してまで書物を読みふけったが、ルイズの使い魔に該当するような亜人の記述は無かったのだ。
「………」
チラリと部屋の片隅に追いやった2冊の本を見る。
それは念のため、ありえないと思うが、可能性はゼロに限りなく近いが、それでも一応図書館から持ってきた本であった。

シーゲル・ミズキ著『ヨーカイ大図鑑』
カズ・マ・カネコゥ著『万魔殿』

どちらも悪魔や妖精等、伝説とされる存在について詳しく図説された書物である。
意を決して、2冊の本を手に取る。
無論、悪魔や幽霊なんて存在するわけは無いのだが、存在するはずが無いのだが、頼むから存在して欲しく無いのだが、
それでも中には元となる話、生き物等がある可能性があり、
自分が求めるあの使い魔についての、何らかの情報が存在しているかもしれない、そう考えて図書館から持ってきたのであった。

決してあの使い魔が悪魔だなんて思ってないのである。
思ってないんだってば。
例え悪魔であろうとも、自分の母親を救う為ならば、魂の一つや二つドーンと捧げるぐらいの覚悟はある。
まあ、あの使い魔が悪魔なんて、そんな非常識な事があるわけないので、そんな覚悟をする必要は無いのだが。
オバケなんていないのである、オバケなんてウソなのである、寝ぼけた人が見間違えただけなのである。
だけどちょっと、だけどちょっと…
「…………!」
フルフルと首を振って、危険な方向に向かった自分の思考を打ち消し、気を取り直して、
彼女は本を開いた。

ベシッ!
テッテッテッテッ
フルフルフルフル

「あった…!」
何度か恐ろしい項を見る度に、本をその場に叩きつけ、部屋の隅で震えることを
繰り返した後、タバサはあの使い魔に当てはまる記述を見かけた。

『青白い者』
異教の終末の予言にはこう記されている。
「見よ、青白い者が出てきた。その者の名は『死』と言い、それに黄泉が従っていた」
その力は凄まじく、雷を呼び、手で触れるだけで人々を消滅させたと言われている。
また呼び出した者の願いを叶えるとも伝えられ、その際望むものと同じ価値の宝や魂を要求するという。
なお、彼が願いをかなえるのは、その人間の生涯一度だけである。


「…そんな!?」
思わず声をあげてしまう。彼女の脳裏には、先日食堂でハシバミ草とローストチキンを交換した光景が浮かんでいた。

なんという事だろう…自分の軽はずみな行動で母を救う望みが…

なんのかんのいって、結局育郎を悪魔と信じているタバサであった。



 族長(タバサ)! 族長(タバサ)! 族長(タバサ)! 族長(タバサ)!
         『 知 は 生 命 な り ! 』

タバサの脳内で、そんな愉快な光景が広がっていてもおかしくない様子で、彼女が一冊の本を高々と掲げ上げる。
本にはこう書かれていた。
『実践!ブリミル式悪魔祓い』
見れば周りにも様々なおまじないや、民間信仰の本が積みあげられている。
この時点で徹夜4日目であった。


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