ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サーヴァント・スミス-14

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匿名ユーザー

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「じょ……冗談じゃないよ!何でこんなの相手にしなきゃ……」

「喋ってる暇あったら、ワルキューレを出して!」

「も、もう知らないからな!」

テーブルを盾にしつつ、応戦する。
ワルキューレの召喚は、余力を残しておくために5体に止めた。
タバサのエアハンマーが傭兵の群れとの距離をある程度開けてくれたが、それでも防げるのは3秒程度。
どたどたと入り込んでくる傭兵に、無表情のまま、タバサはウィンディ・アイシクルを撃ち込んだ。
周りに穴が開きまくっているため、ウィンディ・アイシクルに必要な水蒸気はある程度入っては来る。
だが、連発は出来ない。一発撃ったら暫く待つ。
その間をキュルケとギーシュが押しとめていく。

大軍にはルイズの爆発も有効だ。
炸裂するそれに、傭兵の統制が一瞬崩れる。しかも、連発できるのも強み。
杖を構えて撃ちまくる、次々と空間が歪み、爆発が起きた。

「こんのおぉ!キリがないわッ!」

「仕方ないわ。ギーシュー、油の入った鍋持ってきて、多分あるわ」

「うわーん!ワルキューレがボコボコにィー!?」

「いいから早くするッ!」

戦いなれた上、既に情報を得ていた数多くの傭兵達の手によって、『メイジ以外の相手には頼りになるはず』のワルキューレは、あっと言う間にグチャグチャのボッコボコのズッタズタにされた。悲惨である。
生き残っているワルキューレ2体の内、1体が厨房から鍋を持ってきた。
その中には油。キュルケは化粧をしている。

「きゅ、キュルケー!何をしてるだァーッ!!」

「あ、あんた何してんのよ!こんな時にー!」

「だって締まらないものー。これからショーが始まるってのに。あ、それぶちまけちゃって」

「ああああもう!だから嫌なのよキュルケは!」

ワルキューレが床に油をぶちまける。
そこへキュルケがフレイム・ボールを放ち、一気に炎を回らせる。そこへワルドが風を送り、火を余計燃え上がらせる。
経営者涙目。
傭兵達の勢いが弱まった所で、一番早く異変に気づいたのはタバサであった。

「……来る」

「え?」

促され、急いで階段に上がる一行。
宿屋の入り口が内側へ押し込まれる。岩の巨腕が傭兵ごと宿の入り口を殴り抜いたのだ。
岩で出来ていようと、あっちのゴーレムも岩だ。さっきも部屋を打ち砕いたのだから無理ではない。
階段が壊れ、どんどん崩れていく。それより上に上がり、様子見。
覗いた穴から見えたのは、岩に錬金されたゴーレム。
以前の戦いから、フーケだと、ギーシュを除く4人は見切った。
ワルドが何故知っていたかは、この際言及しない。

「フーケね……」

「フーケってあの?ど、どうしろって言うのさ!」

「ギーシュ!まだ終わってない!」

「無理だよ!」

「やるのよ!」

ギーシュの弱音をキュルケが一蹴すると、宿の耐久力もどんどんなくなってくる。
岩が軋み、建物の揺れる音が騒がしい。

「少なくとも……そう、ワルド、ナランチャ、ルイズ、ギーシュがここから抜けられればいい」

「で……でも!こ、この数と、その、あの土くれのフーケがいるんじゃ!」

「だからこそここを切り抜けるのよ!追って来れないように全部叩き潰すわ!」

穴から抜ける手は、もはや消えた。そこにはゴーレムが待ち受けているのだ。ワルドだけなら抜けられるかもしれないが、ルイズ、ギーシュ、ナランチャにはキツイ。
さらにナランチャの姿が見えない状態でも、まだ諦めない。
キュルケは気丈な声を張り上げ、詠唱。
次々と飛ぶ火球。傭兵には十分でも、ゴーレムには全く効果を示さない。
土からグレードアップした岩では、破壊するのも一苦労だ

だが、急にゴーレムの攻撃のペースが落ちる。
またもいち早く勘付いたタバサは、全員に言う

「彼がフーケと戦ってる」

「……本当なの?」

「外に出てる。多分、ゴーレムが部屋を叩き潰した時」

「これで1名脱出ね……後3人……どうにかできないかしら」

ルイズには機銃の発射音がかすかに聞こえる。間違いはないだろう
階段の上から応戦するが、やがて限界に達し、下でテーブルを盾にしつつ戦う。
とは言っても、ゴーレムがひとたびこちらに腕を振えば、耐え切れないだろう
緊迫した状況は続き、プレッシャーはどんどん増して行く

「ナランチャがどれだけ踏ん張ってくれるかね……全部叩き潰すって言っても、フーケは厳しいわ」

「せめてここから抜けられればいいのよね……突破口さえ開ければ」

「私が行く。キュルケも抜けて」

進み出たのは、タバサだった。

「だだだ、大丈夫!?ナランチャが言ってたわよ、そういうの死亡フラグって!」

「………」

ルイズが慌てて言う。
普段の様子からは想像できない。やっぱり、何だかんだでナランチャの言葉をここで出すあたり、仲はいいのだろう。
……多分。

「ダメよ、私も留まる。ついでにギーシュも」

「え、ええ!?い、いや僕は抜け……」

「途中まででいいわ。付き合って」

露骨に嫌な顔をするギーシュを制する。
ゴーレムへの魔法の無駄撃ちは避けたい。となれば、精神の消耗が少ないルイズの爆破が最適ではあるが。
それでもびくともしないゴーレムを見て、ため息をついた

「無駄に頑丈よね」

ナランチャの足止めは攻撃を当てやすくしているものの、だからといって安易に破壊は出来ない
こういうときのセオリーは、本体を狙う。
が、高く上昇しなければならないため、どうも届かない。
シルフィードは腹にゴーレムのパンチを食らってのびていた。現実は実に非情だ。
その隣では、ナランチャがゴーレムの拳を回避しつつ、機銃を撃つ。
宿の部屋に居た時、速攻で撃つべきだった。そうすれば、ゴーレムも消え、逃げる必要もなかったし、楽に撃退できたはずだ

「畜生……ミスったね、こりゃ」

自嘲気味に呟く。
キュルケが、宿から叫んだ。

「ナランチャ、逃げてくれない?ワルドも、ルイズ連れて逃げてよ!」

「……抑え切れるか?」

「やるわよ」

ワルドが素早くルイズを抱きかかえ、外へ出るなりフライを唱える。
地面を強く蹴って宙へ浮かぶワルド。ナランチャもレビテーションで浮かばせて運ぶ

足を再び地面へと運び、走り出す。
ルイズも戻ろうと愚図り出すも、ワルドが制す。
歯を折らんとばかりに噛み締めるナランチャも同様だったが、感情の高ぶりを何とかコントロールしようとしていた。
目の前にあの仮面を被ったメイジが現れない限りは。

「何だッ!?メイジ!?」

「詠唱を完成させているぞッ!避けろ!」

ワルドが狼狽し、それより一瞬早くナランチャが反応する。
だが、稲妻はそれすらも越えた速さで向かった。
デルフリンガーを抜いたところで、着弾。
左腕が消し飛んだかと思うほどの激痛と衝撃で、ナランチャが2メイルほど吹っ飛んだ。

「………ぐッ」

それだけ言うと、エアロスミスを発進させ、機銃掃射。
見えないはずのその弾丸をいとも簡単に避けると、そのメイジの姿は掻き消えた。

「レーダーには映っていない……逃げた?」

だが、拭いきれない疑問がある。
走っている途中もレーダーを確認していたナランチャ。
その時映ったあの仮面のメイジ、出している二酸化炭素の量が少なかった。
だが、弱っている様子など皆無だったはずだ。

「………」

焼け焦げた左腕を庇いながら、走った。
方向は―――

一方、足止め中の3人。
シルフィードは何とか立ち直り、3人を乗せて空からフーケを攻め立てる。
ゴーレム自身に攻撃があまり聞かないのなら、フーケ自身を攻める寸法だ。だったのだが……
言われなくてもスタコラサッサでフーケはどこかへ隠れてゴーレムを遠隔操作しているので、只今ゴーレムの攻撃を避けながら探索中である

「ゴーレム潰せればフーケの力も持たないと思うのに……」

「分かっている!何でゴーレムがあんなに持つんだ!?」

ギーシュが苦し紛れに叫ぶ。

「タバサ、近づくな!こいつは僕がやる!」

吹っ切れてきたギーシュは段々強気に攻めようとするが、ゴーレムの前ではワルキューレなど居ても居なくても同じ。
ゴシャッと金属が軽くひしゃげる音と共に、青銅の騎士は宿へ激突して動かなくなった。
このまま埒が開かないと判断したタバサはフライを唱え、目星をつけたところで降り立った。

「タバサ、無茶だ!」

確かに今回のゴーレムは岩。ウィンディ・アイシクルなど弾き飛ばしてしまう。
それでも唱えた。
動きの鈍るゴーレム。その隙に抜け出して周囲を探す。
わざと隙を見せつつも警戒し、フーケが直接攻撃してくるのを待つが、流石に熟練者、易々とは姿を見せない。
もう一度フライで飛び上がり、結局シルフィードに戻る羽目となってしまった

「ダメ。いない」

「探さなきゃ……追っかけられたら、面倒な事になるわ」

「もう彼らを追っているんじゃないのか?だから今頃港なんかに……」

「それかもしれない」

ギーシュの話は無視できるものではない。
明らかに敵は足止め、あわよくばこちらの殺害を目指していた。寧ろ殺害がメインだったかもしれない。
現時点でゲルマニアとトリスティンの同盟の決裂がメリットとなるのは――

「レコン・キスタ……フーケが雇われたのか?」

あのフーケが軽々と従うわけは無い。つまり、余程の圧力か、殺されかけたか。
もしくは金だ。彼女は盗賊だし、金はあっても困らないはず。
もう一つ、可能性。それら全て。
少なくともフーケより上の、絶大な力を持つ者の圧力と金。
従えば命が助かり、金ももらえる。だが、彼女のプライドを考えるに、また一つの可能性が浮かび上がる。
――リベンジ?

「……ナランチャが居れば」

彼の能力を、タバサは聞く気はなかったが、聞いていた。
生物を探知できる。
フーケの居場所を探し出せたかもしれないが、彼は急ぐべきだと考え、タバサは思考をカット。
港にシルフィードを飛ばせながら、見下ろす。

信じられない人が居た。

「おーい、フーケいたぞー」

陽気に手を振るのは、ナランチャであった――
ワルドやルイズは居ない、先に行ったのだろうか。
その横には、ロープでグルグル巻きにされて転がされているフーケ。
猿轡をかまされ、んーんーと唸っていた

フーケを蹴り転がすと、ナランチャは「時間ないから」とだけ行って走っていった。

「さっさと行きなさいっての」

意地悪な笑顔を浮かべてみる、精一杯の意地。
ギーシュをシルフィードの上から突き落とすキュルケ。
タバサがすぐさまレビテーションを唱え、着陸させた。

「………」

キュルケとタバサの目線は背後へ。
宙に浮かぶ仮面のメイジが、またそこに居た。
更に、ナランチャが折り損ねたフーケの杖をフーケに渡し、縄を解く

「……足止めは、私達がする」

その様子を確認する間もなく、既にギーシュは港へ走っていった。
彼女達の山場は、これからだとも知らずに。
勝てる見込みは、薄い。トライアングルとスクウェア、こちらはトライアングルとトライアングル。
一つのランクの違いが、劇的な差であることは知っている。それでいながら、スクウェアとの実力差を埋めるものもいる。
それでも、相手は相当の使い手だ。

(もし……生きてナランチャと会えたら、どうしようかしらね?)

「風石が足りないなら私が補う……」

ワルドと船長の交渉。風石が足りないならワルド自身が魔力を提供するという事らしい。
時々『異議あり!』や『待った!』がかかっていた。
結果としては出航を認める形となり、ささっと4人は船へ乗った。
ナランチャは彼女らを止めなかった。
あの『覚悟』を無駄にする気などない。握り締めた手に爪が食い込む。

(……元の世界に帰れたら、どうするかな?)

何故こんな事を思うのだろうか。
それは置いておくとして、まずは、仲間に会いたい。
やがて、船は宙へと浮かんだ。

To Be continued ...

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