ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-32

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匿名ユーザー

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翌日、『竜の羽衣』こと零式艦上戦闘機を学院に運ぶべくシルフィードで学院に戻り
オスマンに竜騎士隊を手配してもらいゼロ戦を運んだのだが
それを見たコルベールが妙にテンパった様子で頭を…もとい顔を輝かせて『ゼロ戦』に寄ってきた。
ちなみに輸送代はギーシュの遺産+オスマンに負担させた分で全額出したので問題無い。

彼の生き甲斐は研究と発明であり、ドラゴンに運ばれてきたゼロ戦を見て、好奇心を刺激されスッ飛んで駆けつけてきた。
息切れしながら走り、ただでさえ少ない髪の毛がヤバイ事になってるのも気にしない。
「き、きみ…これは…一体何だね!?」
汗まみれの顔で質問攻めにしてくるので非常に鬱陶しい。いっその事老化させちまおうと思ったのだが
その心を読んだ他の三人が悲しそうな顔をしているので止めた。
やはり、これ以上髪が減るのは見るに耐えないらしい。

「…この前、言ってたエンジンを積んでるやつで、オレんとこじゃあ、飛行機ってやつだ」
「ひこうき…?飛行というからにはこれが飛ぶというのかね!?詳しく説明してくれたまえ!!」
顔を寄せてくるコルベールをスタンドで阻む。弟分でもないオッサンの顔を至近距離で見る趣味は無い。
「そうだが…それ以上寄ると毛を抜くぞ、てめー」
~5秒後~
「調子乗ってスイマセンでした」
綺麗に土下座するコルベールの姿がそこにあった。

「次、その顔で寄って来たら全滅させっからな…」
スーツに中年の汗が付くと言うのは非常に避けたい事なのでこっちもこっちで結構必死だ。
土下座を終え顔を上げると、ゼロ戦の近くに寄りあちこちを探り始めそこからまた質問攻めを始めた。
「いや、ホントすまなかったからそれだけは…それでこれは羽ばたくようにできていないが、どうやって飛ぶんだね!?」
「エンジンでそこのプロペラが回って推力を得て飛ぶ」

「なるほどよく出来ておる!私の作ったエンジンでも、これと同じものが飛ぶようになれば…」
半分陶酔したような顔をしているコルベールに三人娘が引いているが当の本人は気にしていない。
「では早速飛ばして見せてくれんかね! ほれ! もう好奇心で手が震えておる!」
もうスデに彼の頭の中ではゼロ戦と自分が作ったエンジンを積んだ飛行機が大隊を組んで飛行している姿が映っているらしい。
今にも「バンザーーーーーイ」と叫んで何かに特攻しそうだったが、とりあえずガソリンが作れるかどうかを言う事にした。
「その為の燃料…風石みたいなもんなんだが、ガソリンっつーもんがねぇと飛ばねぇんだよ、そいつは」
「ガソリン…なんだね?それは」
今にも『しぶいねぇ…』と言いたげな顔のコルベールを無視し、ゼロ戦の燃料タンクを開き
固定化のおかげで化学変化を起こさずに僅かに残っていたガソリンの臭いをかがせた。
「ふむ…嗅いだ事のない臭いだ…温めなくてもこのような臭いを発するとは……
   随分と気化しやすいのだな。これは、爆発したときの力は相当なものだろう」
「火気厳禁だ。仮にこのタンクが満タンで、そこに少しでも火が入ると、この周りが吹っ飛ぶ」
「私が作った愉快なヘビ君に使ってた油では駄目なのかね?」
「ありゃ駄目だな。オレんとこじゃ石油っつーやつから精製したモンがガソリンになるんだが。こっちに石油はあんのか?」
「石油とだけ言われてもな…どういったものなんだね?」
「化石燃料…だったな。地下に埋まってるモンで『粘り気のある黒い液体』ってとこだ。もちろん燃えるが…そのままだと煙とかがスゲーって聞いたな」

一方こちら三人娘。科学的話をされてもサッパリ分からないので完全に放置食らっている。
「……今日の晩ごはんなんだろ」
「……よく、あの臭いをかいだ後でそんなこと言えるわね」
「……はしばみ草!」

「黒い燃える液体か…自然に湧き出したりするものかね?」
「普通、掘って採掘するもんだからな…無いとはいえねぇだろうが」
「とりあえずサンプルを採って私の研究室に来たまえ。それと…君達三人は分かってるだろうね?」
コルベールが妙に体を捻らせ三人を指差しつつ、ズキュゥゥゥゥンというような音を出しながら、三人娘に窓拭きを命じた。

研究室は本塔と火の塔に挟まれた一画にあった。お世辞にも綺麗とは言えない。むしろボロいという表現が適切な掘っ立て小屋である。
「自分の部屋では追い出されてしまってね」
そう説明されるが、この臭いだ。そりゃあそうだろうと思う。
回りを一瞥するが、、本棚や天体儀はまだいい。オリに入ったヘビやトカゲなどがいて、妙な異臭が漂いそれに顔を顰めた。
「なあに、臭いはすぐに慣れる。しかし、ご婦人方には慣れるということはないらしく、この通り独身なんだがね」
「ヤローでも慣れたくねぇよ…で、ガソリンなんだがどうにかなりそうか?」
「難しいな…石油というのがあれば錬金できるかもしれないが…それに近いものでもいい」
「化石燃料っつーぐらいだからな…こっちに石炭はあんのか?石炭も化石燃料のはずだぜ」
「石炭か…それなら用意できる…おもしろい!調合は大変だがやる価値はあるな!」
「頼む」

「しかし、東の地の技術は素晴らしい…私も何時の日か行ってみたいものだ」
「期待させたようでわりーが、こいつぁ別の世界の技術だ」
東の地という事で通してもよかったが、ガソリンの精製をやってくれる者に偽りで通すのは、恩を仇で返す事になる。
リスクはあるが、他のヤツにベラベラと話すようなタイプでもあるまいと判断し事実を話す事にした。
「別の世界…なるほど。確かに君が取ったミスタ・グラモンへの言動、行動、そしてその能力。その全てが我々ハルケギニアの常識から掛け離れている」
「あのマンモーニか…あいつにオレを平民だからっつーナメた理由で、殺す気があったからな。
   悪いが見せしめも兼ねて始末させて貰った。ここのマンモーニどもじゃあ、ああでもしねぇと後が鬱陶しい」
ぶっちゃけ、コルベールの耳が痛い。彼自身はそうでもない方だが
プロシュートが召喚されたとき、やり直しを要求したルイズを突っぱねて契約させたという理由がある。
貴族がいくら神聖だの、重要だの言ったところで、呼ばれた方からすれば、いきなり拉致され一方的に奴隷契約を結ばれるようなものだ。
命を救われたという恩義があったからよかったようなものの、そうでなければどうなっていたか分かったものではない。
魔法学院、下手すればトリステインは今頃老人の死体だけという事もありえただけに、少々背筋が寒くなった。
『炎蛇』の二つ名を持つコルベールであるが、何故か、過去に捨てたはずの軍人としての本能が『悪魔憑き』の能力の前には歯が立たないと警告している。
火を出した瞬間、死亡確定だからなのだが、体温の上昇で老化速度が変わる事はコルベールには知りようの無い事だ。

そう考えているコルベールを射抜くような目で見ているプロシュートに気付いたのか、話を戻す。
「私は、周りから変わり者だの、変人だの言われていて、未だに嫁さえこない。しかし…このコルベールには信念がある!」
いい年こいたオッサンが15の少年のような目をして熱く語り始めている姿を見て少し引いたが、言ってる方は構わず話を続ける。
「ハルケギニアの貴族は、魔法をただの道具……それでも使い勝手のいいような道具ぐらいにしかとらえておらん
  だが、私はそうは思わないのだよ。魔法は使い方次第で変わる。伝統や既存の考えに拘らず、様々な使い方を試してみるべきだとね」
それを聞いて、なにかわからんがコルベールが未熟ながらもエンジンを作れた理由を納得した。
能力の応用という、ここにおいては珍しい事ができる存在。
スタンド使いが最も必要とさせられる能力。それをコルベールは持っていた。
「能力の応用…ホルマジオがよく言ってる、くだるくだらねーは使い方次第って事だな」
「やはり君は別の世界の人間のようだね。そのホルマジオ君という人にも会ってみたいものだよ」
「……そいつぁ無理だ」
「別の世界だからなのだろう?分かっているよ。だが何時の日か君の世界との道を「違う」」
ちょっとトリップしているコルベールの言葉を遮る。
「……そいつはもう死んでるんでな」
「………拙い事を聞いてしまったようだね」
「気にするこたぁねー。…『覚悟』の上での結果なんだからよ」
組織から離反した事を後悔など微塵もしていない。
そんな事をすればホルマジオとイルーゾォの覚悟を汚す事になる。
「それで、ガソリンの他にもう一つ頼みてぇ事があるんだが…日食って何時起こるか分かるか?」
「日食…か。前に起こった時期を調べれば大体は特定できるだろうが…余裕があれば調べてみよう」

「つ…疲れた…」
よろよろとベットにボテっとルイズが倒れこむ。
そりゃあ学院の窓拭きやっていたのだから疲れも溜まるというものだ。
もちろんプロシュートは生徒でもないので、そんな事は知ったこっちゃあない。
「姫様の結婚式までもうすぐなのに…詔も考えなくちゃいけないのに…どうしよう」
「つまり、まぁ何も思いつかなくてヤバイってわけか」
ぶっちゃけ、どうでもいいため殆ど聞いていない。
「そうなんだけど…なにも思いつかないから困ってるのよ」
どうでもいい。と言おうとしたが、そんな事を言えば確実にこじれるので一応聞く事にした。
「じゃあ、考え付いたとこだけ言ってみな」
その後、ルイズが前文と各属性への感謝を読み上げるが
「そりゃ詩じゃなく、形容詞や諺だろ」
という突っ込みにあえなく爆沈させられたのは割愛させていただく。

ベッドに倒れたまま、床に藁の上に布を重ねた即席布団で寝ているプロシュートにルイズが尋ねた。
ちなみに、ベッドに寝ていいと言ったが
「んな事できるか」
の一言に一蹴させられている。
「組織ってとこで…何やってたの…?」」
「…どうしても聞きたいってのなら教えてやらねーでもないが…後悔すんなよ?」
「わたしは、あんたの使い魔なんだから…そのぐらい知っておく義務があるのよ」
少しばかり躊躇ったが、きっぱりと言った。
「暗殺だ」
「…あ、暗殺って…こ、殺すやつよね…人を」
「そりゃあな」
暗殺という言葉にビビったが、よくよく思い出してみれば
『ブッ殺すと心の中で思ったなら』発言などがあるために真実味があった。

「な、何で…そ、その…暗殺なんてやってたの…?」
「あそこで、生きるための手段だ。別に趣味でやってたわけじゃねぇよ」
趣味では無いと聞き安心したが、やはり殺しである事に少しだけ嫌な感じがする。
「それで、組織に信頼を裏切られて離反したんだったのよね…逃げようとは思わなかったの?」
「そこで逃げるようなヤツなら暗殺チームなんぞに属してねーよ。
  殺すっつー『覚悟』を持ってるからには殺されるかもしれねぇっていう『覚悟』も持ってなけりゃあいけないんだからな…」
「…元の世界に帰っても…暗殺とか…するの?」
「さぁな、ボスが生きてたら報いを受けさせるために殺るだろうが…それが終われば、他人の命令で殺す気にはなれねぇな」
当然、リゾット達が生きていても、それに加わる気は無い。
そう言うとルイズがベッドから降り、即席布団の上で腕組んで寝ているプロシュートの横に寝てきた。
「狭いんだが、何やってんだ」
文句に答えずに、怒ったような声で続ける。
「わたしが、帰らないでって命令しても…帰るの?」
「あいつらは仲間通り越して家族みてーなもんだったからな。日食が来る時期が分かんねー。来れば、そん時決める」
「家族か…そりゃあ帰りたいわよね…」
自分とて家族、特にカトレアの安否が不明になればスッ飛んで駆けつけるはずだと思う。
だから、それ以上何も言えなかった。
しばらく沈黙が続いたが、片方が口を開いた。
「ま…オメーもペッシみてーなもんだからな」
要は弟分扱いなのだが、兄貴属性的に未熟な弟分を放って帰るってのもどうかと思い始めている。
短期間で成長させられればいいのだが、経験上それがそう巧くいかない事をよく知っているため、結構悩むところである。
ペッシ=マンモーニ扱いされた事により何らかのリアクションがあるかと思っていたがルイズはスデに夢の世界に突入して子供のような寝息を立てていた。
「……このマンモーニが」
ペッシと違うのは、ギャング的説教で叩き込めれないとこだ。
ギャング世界に漬かりきっていたため、それを封印して成長させるとなると結構な事だった。

数日後
トリステイン艦隊旗艦『メルカトール』号がラ・ロシェール上空に艦隊を率いて布陣していた。
艦隊戦を行うわけではない。新生アルビオン政府がゲルマニア皇帝とアンリエッタの婚礼に出席する大使を乗せた艦隊の出迎えに出ているのである。
「やつら遅いではないか。艦長」
そうイラついた声で呟いたのは、艦隊総司令『ラ・ラメー』
「獅子身中の虫ですからな。虫は虫なりに着飾っているのでしょう」
そう返すのは『メルカトール号』艦長フェイヴス。この男もアルビオン嫌いで通しているため似たような状態だ。
「左舷上方より艦隊接近!…確認しました。アルビオン艦隊旗艦『ロイヤル・ソヴリン』級…『レキシントン』です」
鐘楼に登った水平の報告に、ラ・ラメーと艦長がそちらを見ると、巨大な艦が後続艦を引きつれこちらに降下してきていた。
「あれが『ロイヤル・ソヴリン』か…なるほど、あの艦を奪われたのでは王党派が太刀打ちできんわけだ」
あえて、現在の艦名であるレキントンとは言わないのが彼なりの意地である。
「戦場では会いたくないものですな…こちらの戦列艦が小型艦艇のようにしか見えません」
「正面からぶつかればな…そうでなければ、やりようはある。……もっとも今砲撃されれば成す術は無いが」
「は…?今なんと?」
「いや、ただの杞憂だ」
砲撃云々の部分は、聞こえない程度の呟きだったのでフェイヴスには聞こえていない。
そこにアルビオン艦隊の旗流信号を確認した水兵が内容を報告した。
「レキシントンより旗流信号を確認しました。『貴艦ノ歓迎ヲ謝ス。アルビオン艦隊旗艦『レキシントン』号艦長』以上です」
「こちらは提督を乗艦させているというのに、艦長名義での発信とは…」
「あの艦があるにしろ…元々我が艦隊とアルビオン艦隊では
    空挺戦力に差がありすぎるのだから仕方あるまい。返信だ。『貴艦隊ノ来訪ヲ心ヨリ歓迎ス。トリステイン艦隊司令長官』、以上」
『メルカトール』のマストに旗流信号がのぼるとアルビオン艦隊から大砲が一定の間隔を開け放たれた。

儀礼用の空砲だが、その空域の空気を震わせるのは十分だ。
「…よし、答砲だ。順に7発」
「よろしいのですか?最上級の貴族なら11発と決められておりますが」
「向こうは、艦長が旗流信号を出してきたのだろう?司令長官でもないのに11発撃つ必要はあるまい」
くだらない意地と言えばそうだが、フェイヴスもそれが気に入ったのかにやりと笑ってラ・ラメーを見つめると命令を出した。
「答砲用意!砲数7発、順次射撃!準備出来次第撃ち方初め!」

「ハルケギニア中に恥を晒す事になる…か」
そう低く呟くのはレキシントン号艦長ボーウッドだ。
正直、この作戦には乗り気ではないのだが、軍人である自分には命令に拒否権は無い。
まして、戦死したはずのウェールズもそれに関わっているとなると…
艦隊司令長官のサー・ジョンストンが何か喚いているが聞いていない。
実戦経験の無い司令長官など飾りもいいとこである。空なら自分がルールブックだ。
「左砲戦準備!気付かれるなよ」
「Sir!Yes Sir!左砲戦準備!」
それと同時に、轟音が鳴り響きトリステイン艦隊より答砲が放たれる。
「作戦開始だ!『ホバート』号乗員は速やかに退避!退避が完了し次第『ホバート』号を自沈させよ!」
その瞬間軍人の顔に変化した。ここまでくれば後戻りは出来ない。そうなればただ、作戦を遂行するのみである。

答砲を発射しているメルカトール号の艦上が騒がしくなる。
アルビオン艦隊、最後尾の旧型艦が炎上、轟沈したからだ。
「旗流信号を確認しました!『『レキシントン』号艦長ヨリ
  トリステイン艦隊旗艦。我ガ方ノ『ホバート』号ヲ撃沈セシ、貴艦ノ砲撃ノ意図ヲ説明セヨ』以上です!」
「撃沈だと!?馬鹿なッ!至急返信!『本艦ノ砲撃ハ答方ナリ。実弾ニアラズ」
そう送るが、すぐさまレキシントンより返答が返された。
「タダイマノ貴艦ノ砲撃ハ空砲ニアラズ。我ガ艦隊ハ貴艦ノ攻撃ニ対シ応戦セントス」

その瞬間ラ・ラメーが悟った。そして瞬時に命令を下す。
「…謀ったな!!全艦に伝達!砲撃に備えよ!!」
艦隊に指令が行き渡ると同時にアルビオン艦隊から轟音が鳴り響いた。
「て、敵艦発砲!!……『ニーベルング』!『ヴァレンシュタイン』!『ケルンベル』!被弾!!」
「こ、この距離で大砲が届くだと…!?閣下!至急アルビオン艦隊に砲撃の中止を!」
「…無駄だ。我々は奴らに嵌められたのだ!」
「では、応戦ですか?」
「我々は浮き足立っている…準備万端のアルビオン艦隊と浮き足立った我々では勝ち目はあるまい。降伏か撤退しかあるまいが…降伏は性に合わん、逃げる事にしよう」
続けざまにレキシントンから砲撃が撃ち込まれ各艦が被弾していく。旗艦は今のところ健在だが何時撃沈させられるか分かったものではない。
「伝達。『旗艦ガ最後列ニ残リ味方ノ撤退ヲ援護スル。各艦艦長ノ裁量ニヨッテ戦域ヲ離脱セヨ』…以上だ」
メルカトール号より右舷大砲が砲撃を行うが射程外からの砲撃だ、届くはずもない。
放物線描き数発着弾した砲もあったが、そんな勢いの無い砲弾ではレキシントンの分厚い装甲に阻まれ殆ど被害らしきものを出してはいない。
メルカトール号同様に残り撤退を支援する艦もあったが、次々と被弾し撃沈させられていく。
「『ヴァレンシュタイン』大破轟沈!『ホーランド』沈みます!」
次々と僚艦が沈められていくが、旗艦は各所に被弾しながらも未だ健在であり、何とか踏みとどまっていた。
しかし、火災を起こし火薬庫に引火するのも時間の問題である。
「…味方は脱出できたか?」
「『ロイヤル・ソヴリン』の砲の射程が思いのほか長かったため…脱出艦艇は約4割程度かと…その内、何隻が無傷かは…」
「…全滅よりはマシといったところだろう、本艦も退避命令を……」
そこに、トドメの砲撃が撃ち込まれ船体が大きく揺れた。
「…間に合わん…か、旗艦に乗り合わせた者には悪いことをしたな」
ラ・ラメーとフェイヴスが向かい合い敬礼をすると同時に甲板がめくりあがりメルカトール号が爆沈した。

「思いの他、敵艦隊の行動が早かったですな」
被弾しながら射程外に離脱していくトリステイン艦隊を見送りながら、上陸作戦の指揮を取るワルドが呟いた。
「の、ようだな子爵。だが、旗艦を初め主力艦をほとんど撃沈したのだ。
    すでに勝敗は決した。…しかし、制空権を抑えておきながら、あの作戦にレキシントンを使う必要があるのかね?」
「恐らくガンダールヴも出てくるでしょう。ヤツの奇妙な魔法ならレキシントンがいくら巨大でも数分で制圧されますな」
「それほどのものかね…」
「それに、私が新たに召喚した使い魔ならばレキシントンなど無くとも、十分です」
そこにレキシントン号の艦上から万歳の叫びが聞こえボーウッドが眉をひそめる。司令長官のサー・ジョンストンまでそれに混じっているのが拍車をかけた。
「トリステインの司令長官は、乗艦を犠牲にしてまで味方の撤退を支援したというのに、我が方の司令長官がアレではな…」
戦力そのものの差と奇襲という戦術上の優勢、それが無ければどうなっていたかと思い、思わずそう呟く。
「艦長、彼が来たようです。御紹介した方がよろしいですかな?」
「ああ、頼む」
扉が開きボーウッドが視線をそちらに向けると、アルビオン艦隊司令長官よりも長官らしい佇まいの人影が入ってくるのを見た。

トリステイン艦隊 ― 大破轟沈6割 残存艦艇中 中破4割 小破5割 健在艦艇1割
司令長官ラ・ラメー以下旗艦『メルカトール』号乗員全員『戦死』
閃光のワルド ― ザ・ニュー使い魔!


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