ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

影の中の使い魔-10

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匿名ユーザー

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決闘に勝利したにも関わらず、ルイズはその場から逃げるようにして離れた。
顔を真っ赤にしている彼女のその手には、一枚のパンツが握られている。
一枚、たった一枚。その他多くはルイズの放った失敗魔法の爆発に巻き込まれ天に召されたか、あるいは第三者の手に渡ってしまったようだ。
「ブラック・サバス」
ルイズは怒りのこもった声で、自分の使い魔を呼んだ。だが、神出鬼没の使い魔は姿を現そうとしない。
ルイズはいろいろ高ぶる気持ちを抑えながら、例の装置と鞭を手にする。
そして、もう慣れた手つきで装置を『再点火』する。

「お前、『再点火』したな!」
「サバス…………あれは、どういうこと?」
予定通り現れたブラックサバスに、できるだけ笑顔で答える。鞭をもつ手はプルプル震えていたが。
「チャンスをやろう!」
「うるさい!意味分からないこと言っても、もう逃がさないわよ!あんたにはもうチャンスはないからね!!」
ルイズはブラック・サバスに向かって鞭を振るった。
「ブグッ!」
ブラック・サバスはうめき声を上げるものの、痛そうなそぶりは皆無だった。
それを見たルイズはますますむかっ腹が立ってくる。
「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」
ルイズは顔を真っ赤にして鞭を振るった。
しかしそれでも、ブラック・サバスは特に堪えた様子は無い。
いい加減疲れがピークに達したので、ルイズは考えるのをやめた。ベッドに横になる。
ブラック・サバスが相変わらず自分のすぐ側に立っているのを確認して、そして泥の様に寝た。
その可愛らしい寝顔を見ることなく、ブラック・サバスはただルイズの横に立つ。
長い長い一日がやっと終わった。

「いつまで寝てんのよ!さっさと起きなさい!」
「……もうちょっと寝かせて……後5分……」
「まったくだらしないんだから。あなたもそう思うわよね~?」
ルイズは寝起きのボンヤリとした頭で考える。
今、私は誰と会話してるんだ?……ブラック・サバスか……朝、起こすのも使い魔の仕事よね……
それにしても声変わったんじゃない?妙に高いわね。それにいつの間にやらボキャブラリー増えてるじゃない……
なんかムカつくしゃべり方だけど……まるでキュルケに似て……
そこでルイズは跳ね起きた。
横を見るとキュルケが、ブラック・サバスと普通におしゃべりをしている。といっても一方的に話しかけてるだけだが。
「なななななな!」
「何よ。朝から元気ねー」
「なんであんたがここにいるのよ!鍵かかって……勝手に開けたのね!?」
見るとキュルケの後ろのドアが、全開で開いている。
「勝手に開けて入ってくるなんて、ホントにツェルプストーの人間ってデリカシーがないのね!」
「そういうあんたこそ。ヴァリエールの人間は抜けてるようね。いつまで寝てんのよ」
「いつまでって………今何時」
「朝食、もう終わったわよ」
「えええええええええええ!?」

朝食の時間、食堂での話題は昨晩の決闘のことで持ちきりだった。
ギーシュはもうケガは治ってるとか、いや全治一週間だとか再起不能だとか。
ルイズの魔法によって、大爆発と共にパンツが舞い始めたとか。
そして、なによりあの謎の使い魔のこと。
不気味な姿、決闘の時見せたトリッキーな動きと、ギーシュを異様な状況に追い込んだ奇妙な力。
あれは先住魔法だ、つまりあれは亜人ではなくエルフなんだよ。
違う!あの黒づくめの格好……あれは悪魔だったんだよ!な、なんだってー!
という具合だ。
しかし、その話題の中心であるルイズとギーシュがなかなか現れない。
まぁギーシュはケガを負ったので、今も療養中というのは理解できるが、ルイズが来ないのはなぜか?
キュルケも顔には出さないが、少し気にかけていた。
すると後ろから声を掛けられる。振り向くと昨日の決闘の関係者の一人であるシエスタが立っていた。

「あの、ミス・ツェルプストー。ミス・ヴァリエールはどうなさったんでしょうか……昨日のことで具合を悪くなされたとか……」
「別に心配することはないと思うけど……」
そう言って二人で顔を曇らせる。後で様子を見に行ったほうがいいかもしれない。
食事が終わるとキュルケはルイズの部屋の前まで行き、何度かノックしてみる。しかし返事はない。
少し考えた後、ドアをアンロックの魔法で開けて入ってみる。
幸せそうな顔で寝ているルイズと、その横でじっと立っている使い魔をみてため息をついた。
心配して……いや、別に心配なんかしてないわよ。
ここから最初のやり取りへと展開していくのだ。

「もう!サバス起こしなさいよ!使い魔でしょ!…………ってあれ」
とりあえずブラック・サバスに文句を言おうとしたら、またもや姿を消していることに気づく。
「ああ、あんたの使い魔なら洗濯物持って……ていうか食べて出てったわよ」
「止めなさいよ!」

ベットから飛び出してルイズはブラック・サバスを追おうとするが
「あんた、もう用意しないと授業に遅れるわよ?それともそんな格好で出るつもり?」
言われて自分が昨日の決闘の時と同じ格好であることに気づく。
目だった汚れは無いが、それでも砂や泥が付いてる所があるし、なによりシワだらけだ。
というかこの格好でベットで寝たのか……と、少し後悔の念が生まれる。
「き、着替えるから出てって」
ルイズが慌ててクローゼットの前に移動する。
しかし、言われたキュルケは出て行かずにニヤリと笑った。

「着替えならあるわよ」
ニヤニヤ笑うキュルケの手の中には、パンツがあった。
「!!!!か、返して!!!」
ルイズがものすごい勢いで飛びつくが、キュルケは手を上に伸ばしてヒョイッとかわす。
「やっぱりこれあんたのだったのね~。この色気の無さはあんたのだと思ってたのよ。まぁあなたの体にはお似合いだけどね」
そう言って自分の胸を強調するキュルケを見て、ルイズの顔がどんどん赤くなっていく。
「じゃあね!早くしないと授業に遅れるわよ!」
キュルケはいろいろなものが飛んでくる前に、部屋から飛び出した。
ルイズの怒りの叫びが後ろから飛んでくる。
なぜかとても清清しい気分だった。やっぱりルイズは面白い。

その日の昼休み、ルイズはギーシュの元へ出向いた。
勝負の結果とはいえ、やりすぎた感はある(あまり覚えていないけど)。
というのも授業中、回りの生徒が自分を見る目がどうもおかしい。
決闘に勝利したことによる、改めて見直したとかそういうのではなく、なんというか畏怖しているというか。
たまに『デビル』とか『キラー』とか物騒な単語が聞こえるけど、私のことじゃないわよね。

……いざギーシュの部屋の前に来ると、ドアを開けるのをためらってしまう。
開けた瞬間「ご臨終です」とか聞こえたらどうしよう。
…………え~い、ままよ!
覚悟を決めてドアを開ける。
「ああああああああああああああああああ」

まず聞こえたのは学院中に響いたのではないかという泣き声。
見るとモンモランシーが包帯まみれのギーシュ……恐らくギーシュである物の横で号泣している。
ギーシュ・ド・グラモン死亡確認!
処罰…………退学…………実家に強制送還…………
そんな単語がルイズの頭の中を駆け巡る中、呑気な声が彼女に届く。
「おや、そこにいるのはルイズ。君も見舞いに来てくれたのかい?」
…………らせん階段……カブト虫 ……廃墟の街……イチジクのタルト…………ん?
「ギーシュ!生きてたの!」
「君はいきなりだね……」
「ちょっと!縁起でもないこと言わないでよ!」
包帯男とその横の目を赤くしたモンモランシーが順番に答える。
「ギーシュはね!今やっと目を覚ましたところなのよ!」
「まぁまぁモンモランシー落ち着いて。そんな顔をしてはせっかくの美貌が台無しになるよ」
「ギーシュ…………」
「元気そうでよかったわね。お大事に」
もう帰ろうと思い始めたルイズに包帯男があわてて声をかける。

「ま、まってくれルイズ!…………まず君と君の使い魔を侮辱したことに対して謝らせて欲しい。すまなかった」
そういって頭を垂れる包帯男に、ルイズは少々驚いていた。こんなに素直に謝るとは。
意外な顔をするルイズに包帯男、もといギーシュは続けた。
「決闘に負けて、モンモランシーが僕に付きっ切りで看病してくれてる間にいろいろ考えてね。
 僕は女性には優しい薔薇のつもりでいたが………モンモランシーにケティに君に、あとあのメイドの……」
「シエスタ」
「そう、そのシエスタって子も傷つけてしまったんだ。動けるようになったら彼女にも謝罪しに行くつもりだよ」
それを聞いたルイズは、ギーシュに謝られるシエスタを想像した。
きっと頭を下げるギーシュ以上にペコペコするんだろうなあの娘は。
それを考えると少しおかしくなったルイズは二人にばれないようにフッと笑った。

「ままぁ私もちょっとやりすぎたわ。悪かったわね。私の使い魔の分も謝っておく」
予想以上にギーシュにあっさり謝罪されたので、ルイズもそれに合わせるかのように謝罪の言葉を口にする。
なんとなく気恥ずかしくなったルイズは、もうさっさと部屋を出て行こうとしていた。
そこへモンモランシーが呼び止める。
「ルイズ!ひとつ教えて…………あなたの使い魔はいったいなんなの?あれは魔法じゃないんでしょ?」
「…………」

改めてブラック・サバスのことを考える。
……たしかにブラック・サバスの力はルイズたちの魔法の基本である四系統から、大きく逸脱している。
……まぁそれはある意味ルイズもなのだが……
とにかく、だからといってブラック・サバスが、例えば「虚無」や「先住魔法」を使っているなんてことは思えない。
ファンタジーやメルヘンじゃあないんだし。
でも……あの力がなんだろうと……ブラック・サバスは私の使い魔なんだから。
使い魔である以上……大丈夫よね。

……はたして本当にそうだろうか。ブラック・サバスは本当に自分を主と思っているのだろうか?
あの力を、自分は御することはできるのだろうか……。
実際、今ブラック・サバスがどこで、何をしているかルイズは分からない。
「…………さぁ」
ルイズはそれだけ言うとギーシュの部屋を後にした。

その頃ブラック・サバスは

「サバスさん。あまり強くするとゴムが切れてしまいますよ」
「…………」

パンツを洗っていた。


To Be Continued 。。。。?

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