ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

降臨! アルビオンの風が呼ぶ!

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
降臨! アルビオンの風が呼ぶ!

「こりゃ駄目だ、と思ったら……これはどう受け取るべきかね?」
承太郎は胸を貫かれた、すなわち心臓を破壊された。普通は即死する。
それでもミョズニトニルンに反撃できたのはまさに奇跡。
デルフリンガーは承太郎の身体からガンダールヴのルーンが消えるのを感じたし、承太郎は今の一撃で死んでしまったものと思っていた。
だから仗助のクレイジー・Dにも期待していなかった。
実際、アズーロの足に掴まった仗助がすんごい勢いで飛んで来て、承太郎の身体の隣に着地して即座にクレイジー・Dで傷口を治しても、心臓の鼓動は感じられないし、生気が無いし、指一本ピクリとも動かない。
だというのになぜ、使い魔を召喚するためのゲートが承太郎の上に現れたんだろう。
「どーゆー事だこりゃ~!? おいデルフ、承太郎さんはどうなったんだ~!?」
「知るかよ。心臓止まってるから、死んだんじゃねーの? でもこのゲートは何だろ」
仗助もデルフリンガーも事態を理解できない。
助かった? 助かってない?
混乱しながらも、仗助は自分ができる事はもう無いと判断し、クレイジー・Dを出してミョズニトニルンの方を向く。
「まさかミョズニトニルンがアンドバリの指輪で承太郎さんを……」
「いや、そんな感じはしねーな。普通に死んでるわ、これ。
 でももしかしたら何とかなるかもしれねーから、とりあえず相棒の死体は守れ」
「死体とか言うんじゃねー! 不吉だろうがよォ~!」
叫びながら仗助は必死に作戦を考えた。
しかし結局ミョズニトニルンのスタンド能力は解らずじまい、打つ手は無い。


宴会というのは見ているだけでも楽しいものだと承太郎は思った。
みんな楽しそうに酒を飲み料理を食い、戦果を自慢し合ったりと盛り上がっている。
ニューカッスル城は王党派の名誉を守りきった事により歓喜していた。
だが、なぜだろう。その光景は酷く物悲しいものに思えるのは。
「楽しんでるかい?」
壁際で突っ立っている承太郎に、グラスをふたつを持ったウェールズが声をかける。
「……ああ」
「そうか。それはよかった、さあ君も一杯」
グラスを受け取った承太郎は、中に入っているワインを見つめた。
赤い、朱い、紅い色をしている。まるで血のような。
「……すまないな、ウェールズ」
「何がだい?」
承太郎はワインから目を離さぬまま続ける。
「結局……俺はお前の仇を討てなかった。
 クロムウェルは死んだが……恐らく奴を操っていただろう男は生きている」
「君らしくないな、実に弱気だ。何かあったのかい?」
「……俺の意思は使い魔のルーンによって操られた紛い物だったのかもしれん。
 ルイズを守ろうと思ったのも、お前の仇を討とうと思ったのも……。
 自分で自分ってヤツが解らねー、俺の本当の意思はどこにあるのか……」
「胸に手を当ててごらん」
ウェールズはそう言うと、見る者をなごませるような微笑みを浮かべた。
右手でグラスを持っていた承太郎は、左手を自分の胸に当ててみる。
「……心臓が止まってやがる。やれやれ、俺の心はここには無いらしい」
「では左手にあるとでも?」
からかうようなウェールズの言葉を受け、胸に当てた左手を見てみれば、そこにガンダールヴのルーンは無かった。痕跡すらまったく見つからない。
「これは……いったい……」
「仮初の生命を与えられ意識を支配されていた時、解った事がひとつある」
握りしめた拳を、ウェールズは承太郎の左手にコツンと当てた。
「確かに魔法によってありもしない感情を植えつけられる事はある。
 だがそれでも、本当の気持ちを消す事はできない……一時的に抑えつけられるだけだ。
 今の君なら本当の自分を理解できるはずだ。
 友を、仲間を、ラ・ヴァリエール嬢を守りたいという意志はあるかい?」
ルイズ。わがままで、高飛車で、やかましい女。
しかし誇り高くあろうとし、努力家で、心に優しさを秘めた少女。
「それさえ見失わなければ、例え再びルーンを刻まれようとも、君の黄金に輝く精神を冒す事は何人にもできないだろう」
「ウェールズ……」
「君がまだ戦うというなら、君が目覚めるための協力を少しだけしよう。
 ジョータロー……アルビオンの風と共に君を見守っているよ。さあ、ワインを飲んで!」

ワインを飲む。
赤い、朱い、紅いワインはまるで炎のように熱く胸を焦がし、
血液のように全身を駆け巡る。

ドクン。

意志は、精神は、想いは、ここにある!


今にもあふれ出しそうな涙をこらえながら、ルイズは目の前のゲートを見つめていた。
これは証、承太郎が死んだという。
「あっ、うあぁ……ジョータロー……」
嗚咽が漏れ、身体中から力が抜けていく。
膝が砕けそうになった、その瞬間。

ゴウッと音を立てて、アルビオンの風が吹いた。

突然の突風に背中を押され、足から力が抜けていたルイズは思わず転びそうになる。
それでも無意識に足を動かして一歩、二歩と前に歩き、杖を持った手がゲートの中へ。

――さあ、彼が待っているよ。

「えっ?」
いつかどこかで聞いた声が、風に混じった。
声の主を探そうと視線をめぐらせようとした瞬間、右腕がゲートの中に力強く引っ張り込まれる。
「えええっ!?」
前代未聞、サモン・サーヴァントのゲートに吸い込まれるメイジ。
「る、ルイズ!?」
「ミス・ヴァリエール!」
ギーシュとシエスタは慌ててルイズを掴もうと手を伸ばすが、それよりも早くルイズは全身をゲートの中に飲み込まれてしまった。
呆然とするギーシュとシエスタの前でゲートは閉じ、ルイズの姿は艦の上から完全に消失した。

十日間に及ぶ降臨祭はもう終わってしまった。
しかし虚無は降臨する。その名は『ゼロ』……ゼロのルイズといった。


「ムギュッ!」
承太郎の遺体の上に出現していたゲートから、なぜかルイズが落っこちてきた。
顔を承太郎の胸に埋めて変な声を上げたルイズは、頭を抱えながら起き上がる。
「う~ん……いったい何事?」
「何事って言われてもなぁ」
デルフリンガーの声が聞こえたので、ルイズは周囲を見回してみた。

額から血を流しながらクレイジー・Dを出している仗助。
壁に寄りかかるようにして倒れている風竜のアズーロ。
変なゴーレム、というよりスタンドっぽいものを出している知らない男。
それから、自分の下で仰向けに倒れている承太郎とデルフリンガー。
「え~っと……ここ、どこ?」
「ロンディニウムのお城。で、相棒死んじゃった。どうしよう?」
デルフリンガーが説明すると、ルイズは目を丸くして承太郎を見下ろした。
「えっ……」
そうだ、ゲートが出現したんだから承太郎は死んでいるはずだ。
だからゲートは新しい使い魔の前に現れるはずなんだけど……。
「だったら、何で承太郎の前にゲートが現れてんのよ?
 それに、心臓、動いてるじゃない。本当に死んでるの?」
偶然承太郎の胸の上に左手が乗っていたルイズは、
服越しに伝わる心臓の鼓動を感じ取って顔をしかめていた。
デルフリンガーも承太郎の心臓が再び動き出していると気づく。
「おでれーた! 相棒、あのスタンドとかいうやつで自分の心臓動かしてる」
かつてDIOとの戦いで心臓の鼓動を止め、直接心臓マッサージをしたように、祖父ジョセフ・ジョースターの心臓を動かしたように、
無意識の中で承太郎はスタープラチナによる心臓マッサージを行っていた。

「奴はまさか……虚無のッ! ゼロのルイズ!?」
ミョズニトニルンは主から聞いていた虚無の担い手の情報を思い出し、仕留めるべき相手として仗助よりルイズを優先し走り出した。
「や、やばい! ルイズ逃げろー!」
仗助が叫び、ルイズはハッと顔を上げ、額にルーンが刻まれた男が迫ってくるのを見た。
反射的に仗助の言葉に従い逃げようとした刹那、デルフリンガーが叫ぶ。
「逃げるな! 相棒を起こせ! 今度こそトドメを刺されちまう!」
起こせと言われても、ルイズはどうすればいいか解らなかった。
ただ、サモン・サーヴァントをやったんだから、次は、とその行為が思い当たる。
続いて、そういえばすごく痛がってたっけ。そんなに痛いなら目が覚めるかなと連想。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」

これでもかってくらい早口で詠唱したルイズは、思いっきり承太郎に口づけした。
すると承太郎の左手にルーンが刻まれ、唸りを上げる。
唇を離して顔を上げると、ミョズニトニルンが数メイルの距離まで来ていた。
「キング・クリムゾン!」
そいつが叫ぶと同時に、ルイズは承太郎が時を止めた時のような、世界が反転したかのような錯覚に陥る。
ミョズニトニルンはキング・クリムゾンの拳を振り上げ、ルイズに向けた。
ヤバイと反応したルイズは咄嗟に杖を突き出し魔力をほとばしらせる。
「何ィ!?」
次の瞬間、ミョズニトニルンの顔面が爆発した。
「ば……馬鹿な! 動きが……予測できない!?」
ミョズニトニルンが顔を抑えると同時に世界の反転のような奇妙な錯覚が消えた。
「え? えっ? 何?」
「くっ! 死ねィッ!」
怒りに顔を歪ませたミョズニトニルンが、キング・クリムゾンの拳をルイズに放つ。
だがその必殺の拳は、ルイズの下から放たれた異なる拳によって弾き飛ばされた。
帽子のつばの下でそれは開く。承太郎の双眸が、生きている証明のように見開かれる!

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー