ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-17

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「ほら、朝だよ」
育郎がベッドの中で丸くなっているルイズを揺さぶる。
「うにゅ~もうちょっとー」
「もうそろそろ準備しないと遅れるよ」
「むー」
仕方なくベッドから離れるルイズ
「ほら、顔を洗って。着替えはいつも通りそこにあるから」
「ふぁ~い」
「着替えはおわったね、はい鞄」
「うん」
「それじゃあ行こうか…ど、どうかしたのかい!?」
見るとルイズが頭を抱えてうずくまっている。
ルイズは先日の一件で色々考えた結果、もう育郎を召使のように扱うのはやめようと
決心したのであった。それは単純に、育郎の境遇に同情したと言うだけではないのだが、
とにかく、今日からはそれまでのように、自分のことは自分でしようと、
そう考えていたのである。

ち、ちがう…こんなはずじゃなかったのに!

平民に何もかもやらせる事は、貴族を人間的にどんどん駄目にしてるのかも…
ルイズは生まれて初めてそんな事を思った。


食堂に入ると、自分達に視線が集まるのを感じる。
なんとなく、使い魔を連れての初めての授業を思い出すが、その時とは視線の質が
明らかに違う。ある生徒達はこちらを見ながら、小声で囁き合い、ある生徒は露骨に
脅えた顔をこちらに向ける。中にはルイズを見て、涙を流す女生徒までいた。
昨日何故か部屋にやってきたキュルケから、育郎が悪魔だのなんだの好き勝手に
噂されているとは聞いていたのだが…
「…予想していたとはいえ、ここまでとはね」
溜息をつくルイズ。育郎を見ると複雑な表情をしている。
幸いな事に、先生達はチラリとこちらを見る事はあっても、基本的にそれぐらいで、
特に変わった反応はしない。一応オールド・オスマンの説明を信じているようだ。
そのオールド・オスマンの姿も見えたが、ミス・ロングビルにアッパーを喰らって
宙を舞っていた。これはどうでもいい。
あ、浮いたオールド・オスマンにさらにストレートを叩き込んでる。
とはいえ、どうでもいい事にはかわらないけど。
「ところでルイズ…僕の食事だけど、本当に良いのかい?」
育郎がルイズの隣に並べられた、食事を指差して聞く。
「いいのよ!その、えーと、ほらあれよあれ!た、ただの平民よりはこう、
 使い魔として役にじゃなくて…とにかくいいの!」
そう言って隣の席を指差す。
「でも、座る席は決まって…いや、やっぱりいい」
ルイズの席の周りは誰も座っていなかった。ついでに料理もルイズと育郎の分以外は、
かなり離れた場所に置かれていた。
よく見れば平民のメイド達も、調理場からチラチラとこちらを伺っている。
「…まあ、気持ちはわかるけど、何日かすればいつも通りになるわよ。たぶん」


脅えながらこちらを伺うメイド達の中に、黒髪の少女を見つけ、育郎の顔が曇る。
育郎は昨日の決闘が終わり、ミス・ロングビルに連れられていく時に、シエスタと
思わしき黒髪が、その場を離れていくのを見ていた。となると、変身した姿も
見ていたと思って良いだろう。脅えるのも仕方が無い。
そう考えていると、自分が見ているのに気付いたメイド達が、
調理場へ引っ込んでいった。

「………外で食べてこようか?」
「い…いいわよ…」
と言ってみたものも、とても食べにくい。
こちらが気になるのは分かるのだが、そんなに凝視されると、その…困る。
「あらルイズ、大人気ね」
「キュルケ!」
「キュルケさん」
食堂に入ってきたキュルケがこちらに気付き、気付かない方がおかしい気もするが、
こちらに手を振って近寄ってくる。
正直いつもなら嫌な顔をして、追い返そうとする所だが、今日に限っては普段通り
語りかけてくるキュルケがありがたかった。
「キュルケでいいわよ、えっとイチローだっけ?」
「イクローです、キュルケさん…」
「だからキュルケで良いって」
とりあえず、昨夜で誤解は解けた(何を誤解していたのかはよくわからないが)
キュルケは、育郎が噂のような危険な人物ではないと、納得してくれたようだ。
たまに熱っぽい視線を送るのも、何時もの悪い病気なのだろう。

じゅるり

何時もの悪い病気なのだろう。

「あ、そうそう貴方達タバサ見なかった?」
「タバサ?えっと、授業中いつも貴方の隣に座る、青い髪の子?」
「そう、その子。朝から姿が見えないんだけど、知らないかなって」
「まだ寝てるんじゃないの?」
「う~ん、あの子に限ってそんなことは無いと思うんだけど…」
「その…ちょっと良いかな?」
何時の間にかモンモランシーと腕を組んだギーシュが、三人の傍まで近づいていた。
「君は…その…大丈夫かい?」
育郎が席を立って、ギーシュに近づこうとするが
「………!!!」
「モンモランシー…」
組んだ腕に力を込め、育郎を睨み付けるモンモランシーをギーシュはなだめる。
「その、怪我なら大丈夫さ。君のおかげだよ…」
「ギーシュ!貴方はこいつの」
「あら、最初に決闘を申し込んだのはギーシュのほうじゃない。
 傷を治したことを感謝こそすれ、恨むのは筋違いでなくてモンモランシー?」
「…ッ!」
今度はキュルケを睨み付けるモンモランシー、
「モンモランシー、いいんだ。彼女の言うとおりだよ…」
「でも!」
「モンモランシー、君が僕のことを心配してくれるのは本当に嬉しいんだけど…」
「………わかったわ」
さすがに簡単には納得できないのか、不満そうな顔をするが、素直にギーシュの
いう事を聞くモンモランシー。

「それで…何の用なのよ?」
ルイズの不機嫌そうな声に、ギーシュが躊躇いながら口を開く。
「その…約束通りあのメイドには謝っておいたよ。
 ちゃんとモンモランシーにも頭を下げさせたから…」
「そうか、ありがとう…」
「いや、貴族として当然の…な、なんだい君たち。そんな変な顔して?」
口をポカンと開けているキュルケとルイズに、ギーシュが気付く。
「その、ギーシュならともかく…モンモランシーも!?」
ルイズが驚いた声をあげて、モンモランシーを見る。
「な、何よ…悪い?」
「へー貴方がねぇ…」
キュルケが世にも珍しいという目でモンモランシーとギーシュを見比べる。
「だ、だってその…じゃないとギーシュの名誉が傷つくし…
 そ、それに言う通りにしないと、そいつが何かするかわからないじゃない!」
「おお!モンモランシー、僕の為に!」
「あ、貴方の為じゃなくて…もう…」
「それでもありがとうと言わせてくれ、愛しいモンモランシー」
顔を真っ赤にしたモンモランシーを、感極まった様子でギーシュが抱きしめる。
「相棒、このバカップルに何か言ってやれ」
「そんな、邪魔するのは悪いよ…」
「なんか、ますます食事がしにくくなったわね…」
「アタシ、タバサの部屋を見て来るわ…」
どうでも良いが、抱き合う二人を『死ねば良いのに』という目でマリコルヌが見ていた。


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