ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

絶望! 砕け 散る 時……

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匿名ユーザー

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絶望! 砕け 散る 時……

不気味なたたずまいを見せるミョズニトニルンから離れるように、承太郎はゆっくりと後ずさりをした。
「仗助……俺が攻撃した瞬間、何が起こったのか……見えたか?」
「と、時を止めたんじゃないんスか!? 二人とも突然移動したよーにしかッ!」
ミョズニトニルンのスタンド能力は解らないが、
とにかく近づくのはヤバいと判断した仗助は、
部屋の扉の近くからミョズニトニルンを凝視する。一挙手一投足見逃すまいと。
「デルフ、おめーは何か解ったか?」
「とりあえず、もっかい同じ事をされても攻撃を避ける自信は無いね。
 それと相棒は時間を止められなかったみてーだな、けど気がついたら柱は壊れてるしあいつは後ろにいたし……やっぱ時間止まってた?」
「そこまでは解らねーが、ひとつ解った事がある。奴は俺達の攻撃を読んでいた」
恐るべき強敵ダービー、の弟のアトゥム神を思い出す承太郎。
奴はこちらの心を『YES』『NO』で読む能力により、攻撃方法をあらかじめ知る事により対処をしていた、
その時のようにミョズニトニルンは自分達の攻撃を読んでいるようだ。方法は違うだろうが。
しかしスタンド能力は基本的に一人にひとつ。
仗助から聞いたキラー・クイーンに至っても、
三つの能力を有しながら『爆弾を爆発させる』という一貫性を保っていた。
すなわちキング・クリムゾンも攻撃を読んだ方法と回避した方法に何か共通性があるはず。
しかも理由は解らないが、キング・クリムゾンは時間停止を妨害できるらしい。
ほとんどの攻撃は、それを読まれていたら通用しない。
それを捻じ伏せるほど強大な力があれば読まれていても通用するが、その代表格である『時を止める』事すら妨害されては打つ手が無い。
相手が何をしようが問答無用で一方的に攻撃できるはずの時間停止に対抗する術は、同じ土俵に上がるすなわち時の止まった世界に入門するしかないと承太郎は思っていたが、先程の吉良の件も考え『時を操作するスタンド』の可能性に行き着く。
もしかしたらキング・クリムゾンとはスタープラチナと同じ『時を操作するスタンド』では?

スタープラチナとザ・ワールドは『時間を止める』
キラークイーン・バイツァダストは『時間を戻す』
他にパッと思いつく時間の操作は『時間を早める』くらいだ。
ビデオで考えれば一時停止、巻き戻し、早送りになる。
早送り……?
攻撃しようとしたら、すでに攻撃は終わっていた。
攻撃の瞬間を『認識できない』ほど早送りされたとでもいうのか。
しかし時間の停止にまで干渉できるものなのか?
『認識できない』
このキーワードから何かを掴めるはず。

承太郎の考えがまとまるよりも早く、ミョズニトニルンはスタンドを出したまま迫ってきた。
近づかれたら『認識できない』能力を使われて、再び背後を取られるのではないか。
少なくとも機動力ならガンダールヴの自分が上、ジョースターの血統らしく一時的に『逃げる』という手もあるが、もちろん戦闘を放棄して逃げ出すという選択肢は無い。
アンドバリの指輪をミョズニトニルンが持っている限り、クロムウェルは蘇り戦争は続く。
まず距離を取って敵の動きを観察する。
即座に承太郎は部屋の中央まで走って距離を取りつつ、銃弾を指で放って様子を見るが、『認識できない』能力を見せるまでもなくキング・クリムゾンは銃弾を叩き落す。
だがその防御のための動きからスタンドの基本スペックは計る事ができた。
スタンドでガードしなければ人体を貫く程度のパワーはあるだろう、ラッシュのスピードはスタープラチナよりは劣るが相当のもので回避は難しい。
謎の能力を除けば、自分や仗助と同じ正統派スタンドだ。
シルバーチャリオッツやアヌビス神、そしてザ・ワールドなど、そのパワーとスピードは驚異的で真っ向勝負を挑んで勝つのは非常に難しい。
勝敗の鍵を握るスタンド能力は、手の内を知られている承太郎が不利。
このまま逃げ回っていたら、いつかガンダールヴの能力の疲労が来る。
クレイジー・Dは傷は治せるが体力までは回復させられない、長期戦は己の首を絞める。

「どうした、敵と直接戦うのはガンダールヴの役目だろう? 逃げてばかりでは話にならない。時間を止めてかかってこないかガンダールヴ」
安い挑発だ。わざわざミョズニトニルンに接近戦を挑む必要は無い。
とはいえ逃げてばかりでも突破口は開けない、虎穴に入る必要がある。
「仗助! 一瞬でも目を離すんじゃねーぞ!」
そう叫んで承太郎はミョズニトニルンに向かって走り出した。
自分の身を危険にさらさねば、敵のスタンド能力は解らない。
「オオオラァッ!」
ヤクザがドスを持って突っ込むようにして、デルフリンガーの刃を向けながら、スタープラチナをも出して優れた動体視力で観察しつつ迫る。
「フンッ……時を止めるつもりは無いらしいな。無駄な足掻きだ。
 喰らえ! キング・クリムゾン!」

遠くから声がする。声は次第に近づき、彼女の意識を覚醒させていった。
「ルイズ! ルイズ!」
「ミス・ヴァリエール、起きてください!」
出航するレドウタブール号の甲板で、ルイズは目を覚ます。
冬の風が頬を撫で、切れるような冷たさに震える。
「うっ……私、いったい?」
起き上がって周りを見てみれば、心配そうな顔のギーシュとシエスタの姿があった。
自分が艦の上にいると気づいたルイズは、慌てて飛び上がった。
「てて、敵軍を止めなきゃ! アルビオン軍は!?」
連合軍の命運を握っていたルイズは一気に危機感が爆発したが、
ギーシュが説明するにはどうやらアルビオン軍の進攻は間に合わなかったそうだ。
ホッと一安心するルイズだが、シエスタの質問が再びルイズを慌てさせる。
「ミス・ヴァリエール。ジョータローさんはご一緒じゃないんですか?」
「えっ……」
承太郎が、いない? なぜ?


――アルビオン軍は俺が足止めする。

最後に聞いた言葉を思い出したルイズは柵に駆け寄り叫んだ。
「ジョータロー!」
「ミス・ヴァリエール! 何があったんですか!? 説明してください!」
「ジョータローは……一人で、アルビオン軍の足止めに……私の代わりに……。
降ろして! 私を降ろして、行かなくちゃ。ジョータロー……私はジョータローを!」
わめくルイズの両肩をギーシュが掴んだ。
「落ち着くんだルイズ! 本当にジョータローは一人で……?」
「間違いないわ、そう言ってたもの。事実アルビオン軍は間に合わなかった!」
「……しかし……ルイズ。七万もの軍勢の相手を一人でして……その……」
無事なはずがない。
言われずとも、ルイズにはそれは解っていた。
だからといってこの激情、おさまるものではない。
ルイズはギーシュを振り払うと、柵に足をかけた。
慌ててギーシュはルイズを後ろから羽交い絞めにする。
「な、何を考えてるんだ! この高さから落ちたら死ぬぞ!」
「ジョータローを助けに行くの!
あいつは、あいつは自分の気持ちが偽者かもしれないって考えてたのに、それでも私を……私達を守ろうとして! だから行かせて!」
「……解った、ただし条件がふたつある。
 ひとつは、僕も連れて行く事。ここから降りるにはレビテーションを使わないと」
もっともな意見を言われ、ルイズは仕方なくその条件を飲んだ。
確かにレビテーション無しで艦から飛び降りるなんて自殺行為、ギーシュを連れて行くのは本意ではないがやむを得ない。
「もうひとつの条件は?」
「今この場でサモン・サーヴァントをして、召喚のゲートが……現れない事だ」


それは一瞬の出来事だった。
仗助は目を離さなかった。
時間を止める以外に、どうすればこうなるのか理解できなかった。
突然承太郎の位置が前方に移動し、同時にミョズニトニルンは承太郎の後ろに回って、すでに拳を繰り出していた……さらに騎士のガーゴイルが二体、いつの間にか現れ、承太郎の両脇から剣を突き出している。

その一瞬の出来事の後、承太郎はキング・クリムゾンの拳に後ろから胸を貫かれ、同時にガーゴイルが承太郎の脇腹を左右から突き出す。
だが承太郎は怯む事無くスタープラチナの両腕を左右に叩き込んでガーゴイルを破壊し、直後スタープラチナを回転させミョズニトニルンを肘打ちで吹っ飛ばす。
後ろにすっ飛びながらミョズニトニルンはアンドバリの指輪を使い己の傷を癒す。
「ぐっ……心臓をやったというのに、まさか反撃されるとはな。
 だがこれでガンダールヴは終わった。さすがに死者までは生き返らせれまい。
 ガーゴイルはすべて使い切ってしまったが、残るはヴィンダールヴのみ!」
ミョズニトニルンが承太郎から離れた、と仗助が認識した瞬間、アズーロが翼を羽ばたかせ、仗助はその足に掴まった。

「承太郎さぁぁぁん!!」
一刻も早く! 承太郎の傷を癒さねば。
死んでしまってからでは、傷は治せても、命は――戻らない。

サモン・サーヴァントを唱え終えたルイズは愕然とした。
ギーシュもその場に膝をつき息を止める。
シエスタは意味を理解しきれず、おろおろとするばかりだった。
指が白くなるほど杖を握りしめ、ルイズは首を横に振った。
「ウソ、嘘よ……こんな……こんなの……」

ルイズの前には、白く光る鏡のような形をしたゲートがあった。
つまり、ルイズの使い魔、ガンダールヴの空条承太郎は――死んだ。

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