ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

影の中の使い魔-9

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匿名ユーザー

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ワルキューレの振り下ろした槍は、ブラック・サバスの後頭部に勢いよくヒットした。
その結果、そのままブラック・サバスは地面とディープキスをする破目になった。
それを見たギーシュはフンッと鼻を鳴らす。すると再びワルキューレが槍を高々と掲げた。
もう4,5発ぐらい喰らわせないと気がすまない。
ドゴォ!ドガ!ボゴォ!メメタァ!ドスゥ!!!

「君がッ!謝るまで!殴るのをやめない!」
徹底的に叩きのめしてやる!それも正々堂々とな!
一応女であるルイズを傷つけるのは、女性に優しいギーシュの評判をさげることになる。
だが、この使い魔なら!殺すつもりはないが、派手にやらせてもらう!
それに決闘でなら、例え死んでも文句はあるまい!もし死んじゃっても、もう一度呼び出せばいい訳だしね!
『ゼロ』のルイズでも一度は召喚できたんだ!もう一度召喚するぐらいできるだろ!
このまま!!槍の先端を!こいつの!目の中につっこんで!振りぬく!

ブラック・サバスが宙を舞い、そして仰向けに倒れる。
「サバス!!」
ルイズはさらに槍を振り下ろさんとしているワルキューレに杖を向ける。

自分の考えが甘かった。なんでブラック・サバスが強いなんて思ったんだろう?
ルイズを押さえつけたあのパワーも、きっと自分の勘違いだったんだ。
初めて成功した魔法の結果があいつだったから、きっと特別な力があるって思いたかったんだ。
『ゼロ』の私を押さえつけた私の使い魔は、『ゼロ』よりもほんの少しマシだっただけなんだ。
今さらになって後悔の念が心の中を支配しそうになる。

…………違う!今はそんなことしている場合じゃない!助けないと!私の使い魔を!
自分の魔法は絶対に失敗するかわりに爆発を起こす。効くかは分からないが、助けるにはこれしかない。
しかし、それを阻止するかのように、もう一体のワルキューレがルイズの前に立ちふさがった。
最初にブラック・サバスに突撃してきた奴だ。
ルイズは狙っていたコースを塞がれ、魔法を出すことができない。

「どきなさいよ!」
焦りながらルイズは、ブラック・サバスがまだ無事か確認する。そこで使い魔の様子が変わっていることに気づく。
ブラック・サバスは仰向けに倒れたままで、ルイズを指差し、じっとこちらを見ているのだ。
回りから見たらそれこそ、ルイズに助けを求めている姿にしか見えなかっただろう。
だが、ルイズは頭の中に響く声を聞いた。
それは、使い魔と主は意識を共有しているとか、信頼関係が生まれたとか、そんな大げさなことではなかった。
だが、確かにブラック・サバスはルイズにこう言っていたのだ。

(チャンスをやろう!お前には選ぶべき道がある!)

「とどめだ!ワルキューレ!」
ギーシュが機嫌の良さそうな声で命令を下す。
ルイズは叫んだ。呪文を唱えるように力強い意志を持って。
「ギーシュをやっつけて!!」

観客席で顔を赤らめていたシエスタは、派手な音でブラック・サバスが殴られるのを見て我に返り。
さらに数発槍が振り下ろされたのを見ると、思わず顔を背けた。
あの使い魔は殺される!そんな恐ろしい考えが浮かぶ。
そのとき叫びを聞いた。それは断末魔の叫びではなく、ルイズの命令だった。まだミス・ヴァリエールは諦めていない!
だが次の瞬間、今までとは質の違う軽い音が聞こえる。きっと槍で貫かれたにちがいない。

……恐怖で顔を背けたまま数秒たつが、どうも様子がおかしい。
自分の周りにいるメイジたちがざわめいている。何が起きたのだろうか。
恐る恐る戦いの場へ視線を向ける。
「え……?」
シエスタは絶句するしかなかった。
自分が顔を背けた数秒の間に何が起きたのか?
ワルキューレの槍は黒づくめの使い魔にではなく、地面に突き刺さっていた。
さっきまでその場所にひれ伏していたブラック・サバスが消えている。
横にいるキュルケをみると、彼女も何が起きたか把握していないようだ。
タバサはじっとギーシュの方を見つめている。そのとき。

「うわあああああああああああ!!?」
断末魔の叫びのようなその声は、ブラック・サバスではなくギーシュのものだった。
慌てて、シエスタもギーシュの方を見てみる。それは彼女の理解の範疇を超えるものだった。
消えたブラック・サバスがいつの間にかギーシュの横に現れ、そのゴツゴツした両手を彼に向けている。
「つかんだ」
そのセリフはさっきと全く同じものだったが、今度はやけに凄みがあるように感じた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………

ブラック・サバスはギーシュの隣に立ち、両手を彼に向けて伸ばしている。
しかしそれらは決してギーシュには触れられてはいない。
宙ぶらりんのその両手は、しかし、何かを力強く捕らえているかのように固定されていた。
いや………確かに何かをつかんでいる………それは白くボンヤリと闇の中で存在している。
一方のギーシュはピクリとも動かずに、ただ悲鳴をあげているだけだ。
ブラック・サバスの方を見ようともせずに、最後にワルキューレに命令を下した時と同じポーズのまま固まっている。
変化した点といえば、その顔が恐怖で歪んでいることだけだ。

「うわあああああああ!離せ!くそ!」
慌てふためく声を上げながら、硬直しているというギーシュの異様さに、しだいに回りのメイジたちは薄気味悪さを覚え始めていた。
『ゼロ』のルイズの使い魔が「何か」をしているのは間違いなかった。
しかしその「何か」が分からない。
ギーシュはなぜ急に動かなくなったのか?何に怯えているのか?あの使い魔がつかんでいる「ボンヤリとしたもの」は何か?
「な、何をしているんでしょうか?」
シエスタがキュルケに尋ねる。しかしその質問に答えたのはタバサだった。
「分からない。だけど魔法ではない」
めずらしく即答したのは、タバサも興味が湧いているからだ。
「あの…白いのは?」
「それも分からない」
「もしかして幽霊かしら」
キュルケのその言葉にタバサがビクッと震えた。

ルイズはブラック・サバスとギーシュを見て、戦況が一転したことを理解した。
ワルキューレはすべて動きを止めている。これではゴーレムではなく、ただの銅像だ。
あれだけ派手に殴られてたはずなのに、ブラック・サバスには外傷が無いようだ。
仰向けに倒れていたところから、ギーシュの隣……いや影の前までの瞬間移動。
…それだけ早く動けるなら、相手の攻撃を避けるなりなんなりしなさいよね。心配して損したわ。

改めて、今の状況を確認してみる。
そこでやっと、ブラック・サバスがつかんでいる「白いもの」がギーシュの形をしていることに気づいた。
ブラックサバスはギーシュの影から、「ボンヤリと白く光るギーシュ」を引っ張り出してつかんでいる。

まるで夢でも見ているかのような気分だ。だが、ルイズは心当たりがあった。
(あれが……私が今までやられていたことか)
気づいたらブラックサバスの目と鼻の先で捕らえられている感覚。今日の朝も昨日のサモン・サーヴァントのときも。
ブラック・サバスは、ルイズの影から幽体離脱のように魂?いや精神?だけ引っ張り出していたのだろう。

まぁ詳しくは分からない。とにかく今はすることはひとつだ。
このままあいつが抑えてる間にすべてのワルキューレを破壊する。
もちろん、このままギーシュの杖を取り上げて勝ちにするほうが楽だろう。
だがあのプライドの高い男に、この後シエスタに謝罪をさせるにはそれなりの勝ち方じゃないといけない。
それにせっかくだから、回りの観客にも見せ付けておきたい。もう勝ったも同然だし。

しかし、その甘い考えを打ち砕くかのように、ギーシュの叫びが響く。
「ワルキューーーーーレ!!!!」
ギーシュの叫びと共に、沈黙していた7体のワルキューレが活動を再開する。
その動きは滅茶苦茶だった。……本当に滅茶苦茶だった。
しっちゃかめっちゃかに槍で空を斬ったり、ワルキューレ同士でぶつかり合ったりしている。
「ちょ、ちょっと!ギーシュ!」
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
ルイズにワルキューレが突っ込んでくる。当たると間違いなく、致命傷になりそうな速度だ。ルイズは杖を強く握った。
「ファイヤーボール!」
炎は出ずにワルキューレの上半身で、爆発が起きる。
さらに追撃しようと身構えるが……その必要はなかった。ワルキューレの上半身は粉々に砕け散っていた。
「やった……!」
予想外の戦果に思わずガッツポーズをしてしまう。そのとき。
「ファイヤーボール!」
聞き覚えのある声のした方を見ると、キュルケの前でワルキューレが上半身をドロドロに溶かして倒れている。

「キュルケ!余計な事しないで!」
「私は私の身を守っただけよ。余計な事させたくないなら、そういう風に戦いなさい。ホ~ラ、来るわよ」
「言われなくても分かってるわよ!」
ルイズは再び杖を強く握り、ワルキューレを睨む。こうなったら意地でも全部倒してやる!
そんな決意を固めるルイズを、キュルケは微笑を浮かべながら見つめていた。
………そしてそんな二人を、この人たち実は仲いいのかしら。なんて思いながらシエスタは見つめていた。

「な、なんだぁ!それはぁ!」
いきなり、今までで一番大きいギーシュの悲鳴が上がる。
見るとブラックサバスが大きな口を開いている。
(安心しなさい。ギーシュ。そいつは噛み付きはしないわよ)
ルイズは笑いながら杖を構える。
だがブラックサバスはルイズの予想外の行動にでた。
口から何かを吐き出したのだ。

ギーシュは何が起きているのか理解できずにいた。
「つかんだ!」という声のとおり、ギーシュはこの不気味な使い魔に拘束されている。全く動くことができない。
自分の肩を掴むその両手からは恐ろしいほどのパワーを感じる。とにかく指一本動かすことができない。
ワルキューレに命令するも、これもやはり思いどうりに動かすことができなかった。
というか、今ワルキューレがどこでどう動いているかが理解できない。
見て確認したいのに、使い魔の仮面のような顔から視線をそらす事ができないのだ。

急に使い魔が大きな口を開ける。その中を見てさらに驚いてしまう。
歯や舌という生物として必要なものが無いかわりに、「何か」がある!
そしてそう思った次の瞬間ソレがこちらに向かって飛び出してきたのだ!
「!!」
とっさに目を閉じ衝撃に耐えようとする。しかし何も起きない。後ろから「ドガッ」という衝撃音が聞こえる。
恐る恐る目を開ける。まだ口は開かれたままだ。その中は何もない暗闇。
思わず目をそらそうと横を向く。すると視界の端に誰かの足が見える。

助けに来てくれた!もはや決闘のことなど忘れギーシュは安堵する。
しかしその誰かの足はピクリとも動かない。
(誰なんだ!助けてくれ!は!声がでない!)
ギーシュは無理矢理首を捻り、ギリギリまで黒目を動かし自分の後ろにいる人物を確認しようとする。
(ん?あれ?なんだおかしいぞ?後ろのやつ倒れてる!?しかも顔から血を流して!?
 はっ!!なるほど!!うわははははははははははははははははは倒れてるのは僕でしたぁー!!)
ギーシュは自分の後ろに、頭から血を流し下着に囲まれて倒れている自分を発見した。

ルイズはブラックサバスの口から何か箱のようなものが飛び出すのを見た。
自分のいる位置からではそれが何かは分からなかったが、それは発光体ギーシュの頭を通過した。
そして、その後ろでフリーズしていたギーシュ(本体)の頭に向かって飛んでいき、当たって跳ねた。
そこから先に起きたことは、ルイズにはスローモーションのように。
血を出しながらゆっくりと倒れていくギーシュ(本体)、宙を舞う箱、その箱の中から出てくる無数の白いモノ。
上手いこと風に乗った一枚がヒラヒラと自分の足元に舞い降りてきたとき、それが何かを理解した。
それはパンツだった。

(はぁ???)
なんでパンツ?誰のパンツ?…………あれ?このパンツどこかで見た覚えが…………。
今はワルキューレを倒すべき時なのに、気になる……。こまかいことが気になると夜もねむれねえ質なのよ私。
朝、ブラック・サバスにカゴごと洗濯物を渡した。ブラック・サバスはそれを口の中に入れてどこかへ行ってしまった。
それ以来姿を見ていなかった。そして今あいつは口からカゴを吐き出した。
なぜか?そういえばさっきブラック・サバスにギーシュをやっつけろって命令した。これは攻撃手段のつもりだったのかもしれない。
実際今、ギーシュ(本体)は倒れている。さっき血を流していたようにも見えた。軽傷だろうが。
それよりも、鬼の形相をしながら下着に囲まれて倒れていることで、傷つく尊厳の方が重症のような気がする。
観客の方を見てみる。キュルケがパンツを持ち、こっちを見て笑っている。……コッチミンナ。アア、ヤジウマタチノホウマデトンデイッタノネ。
いろいろ考えた結果。
……………………もしかしてこれは私のパンツですかーッ!?

 YES!YES!YES!OH MY GOD!

「……………………バカァー!!!!」
その日一番の破壊をもたらす爆発がブラックサバスとギーシュを飲み込んだ。

ギーシュ・ド・グラモン→再起不能
ブラック・サバス→消滅
To Be Continued 。。。。?

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