ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

一人! 使い魔が征く!

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一人! 使い魔が征く!

人気の無い寺院の中、承太郎はルイズを抱き上げて振り返ると、
いつの間にか扉の前に立っていた個性的な髪型の男に気づく。
「承太郎さん……これからどうする気っスか?
 七万の軍隊を足止めしないと、連合軍は壊滅確定っスよー」
「仗助か……。丁度いいところに来た、頼みがある」
「おッ! さっすが承太郎さん! 何か『策』があるんスねッ!」
もう勝利したも同然とばかりに楽観的な笑みを浮かべる仗助を連れて、
承太郎はルイズをお姫様抱っこしたまま寺院から出た。
そこには仗助の風竜アズーロが待っていた。
「仗助……。お前はルイズを連れて、ギーシュかシエスタのいる艦に戻れ」
「……援軍を呼ぶんスか? それはちょっと難しいんじゃ……」
「アルビオン軍は……俺一人で足止めする」
「……は?」
仗助は耳を疑い、顔をしかめた。
「すいません……ちょっと言葉の意味が理解できなかったっつ~か……」
「聞こえなかったのか? アルビオン軍は俺一人で足止めする。
 お前はルイズを連れて艦隊に帰って、一緒に逃げるんだな……」
あまりにもプッツンした発言に仗助はめまいさえ起こした。
あの冷静で判断力に優れる承太郎さんが、なぜ自殺まがいの戦いに挑むのか?
「いったいどうしちまったんスか!?
 そんな無謀なセリフ、承太郎さんのキャラクターじゃないっスよ~!!
 無敵のスタープラチナとガンダールヴでも、敵は七万、絶対殺されるっス!」
「何を勘違いしてやがる、俺はおめーの知ってる空条承太郎じゃあねえ。
 お前と同じ高校生で、ガンダールヴの承太郎だ」
承太郎はルイズを仗助に向かって差し出すが、仗助は受け取ろうとしない。
「冗談じゃないっスよ~! 例え十七歳の承太郎さんでも、
 俺にとっては誰よりも頼りになって尊敬できる人なんスから!」

拒絶の意を示した仗助を見ると、承太郎は無言でルイズを地面に寝かせた。
「俺は馬で行く。ルイズをここに置いてくっつーなら勝手にしな」
「……グレート。他に言葉が出ねー……」
「あばよ、仗助」
馬に乗るべく承太郎が仗助に背中を見せた瞬間、仗助はスタンドを出し殴りかかった。
「ドラァッ!」
間一髪、承太郎は半身を引いて拳を回避したが、
学ランにつけてある鎖を根元近くから真っ二つに割った。
ジャラジャラと音を立てて鎖が地面に落ちると、承太郎は鋭い双眸を仗助に向ける。
「力ずくで止めるつもりなら……相手になるぜ」
しかし仗助は両手を上げて降参の合図。
「いえ、奇襲が失敗した今……スタープラチナに肉弾戦で勝てるとは思ってないっス。
 ルイズさんは責任持って艦に送り届けますから……死なないでくださいよ」
身長の低いルイズを小脇に抱えながら、仗助はちぎれた鎖を拾ってポケットに放り込む。
「それじゃ、ルイズさんは責任を持って預からせていただきます」
「……適当に引っ掻き回したら逃げるから安心しな。
 おめーとは日本に帰ってから、改めて話をしたいからな……」
承太郎は馬に、仗助はルイズを抱えて風竜に。
承太郎は戦場へ、仗助は撤退する艦へ。
逆方向へと分かれ、向かっていった。

地図に記された小高い丘の上、朝日が暗闇に光を与えていった。
視界が開け、眼下にはタルブの村のような美しい草原が広がっている。
さらにその向こう、朝もやの中からアルビオンの主力軍が進行してきた。
承太郎は馬を逃がすと、デルフリンガーを抜く。

「意外だねぇ。相棒は精神を操作されてるってのが嫌だったんだろ?
 なのに何でこんな事するのかね。相棒は強いのは認めるけど、間違いなく死ぬぜ」
「……だろうな。だが、俺は仲間を二度と死なせたくない……。
 その気持ちだけは、ルーンに操られたものじゃあない俺の意志だと確信を持てる」
「その確信のために戦うのかね。いや、立派、お見事。
 そんな相棒のために俺がとっておきのアドバイスしてやる。
 真っ直ぐ突っ込め。こうなったらどっから行っても同じだからよ。
 そんでもって指揮官狙いまくれ、頭をやれば身体は混乱するし足も止まる。
 一日ぐらいの時間は稼げるかもよ。時間を止めながらなら何とかなるだろ」
「……行くぜッ!」
「おうッ!」

朝もやをついて突っ込む承太郎に最初に気づいたのは前衛の捜索騎兵隊ではなく、
後続の銃兵を指揮する士官の使い魔のフクロウだった。
「……何、一人だと?」
敵が一人である事をいぶかしく思いながらも、馬のような速力に驚き、
銃兵に弾込めを命じた。その間に承太郎は捜索騎兵隊を斬り飛ばす。
あまりの速さに騎兵隊はタイミングを見誤り、一方的に馬から落とされてしまった。
さらに銃兵が弾を装填する前に仕官を発見すると、杖を持っている手を剣で切断。
慌てて銃兵達が承太郎に向けて発砲するが、
気がついたら承太郎は土煙を残して消え去っていた。
使い魔を使役し上空から承太郎の姿を見ていたメイジ達は、
承太郎が物凄い勢いで空に跳び上がった事に驚愕した。
「オラァッ!」
腕からわずかにスタープラチナの腕だけを浮かせた承太郎は、
銃弾を指で弾き四方八方へと飛ばして使い魔と思われる鳥を次々に撃ち落とす。
承太郎が地面に着地するタイミングを見計らって他のメイジが魔法を放つも、
それらはすべてデルフリンガーの口に吸い込まれて消えてしまう。
着地した承太郎は一足飛びに騎兵隊の隊長へ肉薄してスタープラチナの拳を叩き込んだ。

承太郎は時に跳び、時に駆け、敵軍を翻弄する。
単騎であったため同士討ちを避けるべく銃や投射武器の発砲が禁止され、
メイジ以外の兵隊はガンダールヴの承太郎相手に接近戦をしいられた。
だが兵士達は平民には見えないスタンドの拳の弾幕により四方八方へ吹っ飛ばされる。
吹っ飛んだ兵士の重量を受け、他の兵士にまで被害が及ぶ中、
メイジ達は次々に承太郎へと魔法を放った。
さすがにガンダールヴの速度を持ってしても受け切れない数だが、
スタープラチナの髪の毛が逆立つと同時にそれらは空中で停止した。
「スタープラチナ・ザ・ワールド!!」
氷の矢、炎の球、風の刃、すべてが静止した中、承太郎はスタープラチナで地面を殴る。
「オラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」
あっという間に承太郎の周囲はめくり返された土で覆われ姿を隠すと、
地面すれすれを駆け抜けながら銃弾を指で弾き飛ばし、ターゲットに向かって疾駆する。
時が動き出した直後、突然現れた土の幕に魔法が命中する。中身は当然空っぽだ。
承太郎を見失ったメイジ達は慌ててその姿を探すが、その身体に突然銃弾が命中する。
時間を止めている間に承太郎が放ったものだ。
当然銃声など無く、メイジ達は何にやられたのかすら理解せぬまま倒れた。
「オオラァッ!」
マンティコアにまたがった偉そうな騎士を発見した承太郎は、
デルフリンガーを横薙ぎにして周囲にいた兵士を吹っ飛ばす。
騎士はマンティコアを承太郎にけしかけるが、
鋭い牙を生やした口がスタープラチナのアッパーで無理矢理閉じられ、あごが砕ける。
マンティコアから落っこちた騎士の足をデルフリンガーで深く斬りつけた承太郎は、
続いて槍ぶすまを作っている部隊へと跳躍した。
槍ぶすまを飛び越えられ、指揮官のメイジは咄嗟に詠唱するが間に合わず、
スタープラチナで顔面を踏みつけられて昏倒、顔を足場にして承太郎は再び跳躍した。

弓兵隊を指揮していた若い士官は慌てていたため、誤って弓の発射を命じてしまった。
上空から舞い降りる承太郎は自分に命中する矢だけを狙い、
スタープラチナの拳の弾幕で撃ち落とす。はずれた弓は味方に辺り同士討ちが始まった。
お礼とばかりに承太郎は銃弾を指で弾き飛ばし、弓兵隊の仕官の肩を射抜く。
着地した承太郎は、近くにいた兵士達を剣で薙ぎ払った。ただし峰を使ってだ。
「相棒! さっきから致命傷を与えねーように戦ってねーか!?」
「俺の敵はクロムウェルとレコン・キスタだ! アルビオン軍じゃねーぜ!」

まるで流星のように承太郎は戦場を駆け抜ける。
近距離をデルフリンガー、中距離をスタープラチナ、遠距離を銃弾で攻撃し、
敵軍の放つ魔法を回避しきれない状況に陥った時のみ時間を止める。
突然消え、突然現れ、あるいは気がついたら倒されていたりと、
アルビオン軍は時間の経過に比例して混乱を高めていった。

その混乱が、歯車を狂わせる。
完全に指揮を失ったメイジ達が、連携も何もない滅茶苦茶な魔法を放った。
時間停止は、一度行うと再び行うためには数呼吸分の休息が必要だ。
だから時間停止せずに対処できる攻撃はできる限りスタンドとデルフリンガーで防ぐ。
そのようにして承太郎は斜め前方から飛んできた無数の氷の槍を拳の弾幕で叩き落し、
左側から飛んできた巨大な炎の球、恐らく火の三乗くらいの威力だろう、
それをデルフリンガーの口で素早く吸い込ませる。
直後、右の脇腹が突然裂けた。
「な……にィッ!?」
隊列を乱してしまい偶然承太郎の背後を取ったメイジが、エア・カッターを放ったのだ。
承太郎、スタープラチナ、デルフリンガー、三つの目を持つ彼等が、
戦場の中で偶然生んでしまった死角にそのメイジはいたのだ。

「今だ! やれ!」
メイジの一群の中から号令が聞こえ、メイジ達が次々と魔法を放つ。
氷の粒を孕んだ風が左足を切り刻み、スタープラチナの右肩を火球が焼く。
「くっ……スタープラチナ・ザ・ワールド!!」
咄嗟に時を止め、先程号令をかけた男へと向かって承太郎は跳び上がる。
あれほどの数のメイジに守られている男、恐らくこの大軍を率いる将と見た。
ならばそいつさえ倒せば軍の混乱は頂点を極めるだろう、後は逃げるだけだ。
しかし負傷のためか、連続して時を止めて戦った疲労のせいか、
敵大将を射程圏内に納めるよりも早く時間停止は解除される。
突然前方から飛んで迫ってくる承太郎の姿に気づいた将軍は、素早く杖を抜いて詠唱。
妨害すべくスタープラチナで銃弾を一発弾き飛ばすが、
将軍はその弾道を見切ると杖で叩き落すした。
承太郎と将軍の距離が詰まる。
「スタープラチナ!」
「エア・カッター!」
風の刃がスタープラチナの強靭な肉体を切り裂いていく、
それでも承太郎は止まらず将軍に拳をマシンガンのように浴びせると、
着地に失敗してその場に転がった。
将軍も吹っ飛ばされ気絶してしまったため、連合軍撤退までの時間稼ぎは成功した。
が、この場で戦闘不能に陥った承太郎の末路はたったひとつしかなかった。
「ぐっ……」
学ランを血でにじませる承太郎に、将軍の周囲を固めていたメイジ達が杖を向ける。
(これ……までか……)
デルフリンガーを握っていても、身体の痛みは引かないし力も湧いてこない。
「もう駄目だね。相棒、さよなら」
別れを告げるデルフリンガー、メイジ達の詠唱が終わるのを待つ承太郎。
その時、ほんのわずか……誰も気づかない程度だが、承太郎達の身体に薄い影が落ちた。

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