ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

休戦! 銀の降臨祭

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休戦! 銀の降臨祭

シエスタと思わぬ再会を果たした承太郎は、色々と意外な話を聞かされた。
スカロン店長がシエスタの母方の親戚だとか、スカロンの娘ジェシカも黒髪で日本人の血を引いてるらしいとか、承太郎達が出発してすつ魔法学院がアルビオンの賊に襲われたとか。
三つ目の話には承太郎も驚き、シエスタが無事だった事を安堵した。
だがシエスタの話では何人かの死者が出たらしい。
平民である彼女は誰が死んだか教えてもらえなかったらしく、キュルケとタバサ、それにコルベールあたりから聞けなかったのかと問い返してみると、事件の後三人とも姿を見かけないし会いに来る事もなかったと返された。
キュルケの場合、トリステインは危ないという事でゲルマニアに帰ったのかもしれない。
タバサはキュルケに捕まって一緒に連れてかれたのかもしれない。
コルベールは多分研究室にでもこもっているのだろう。
その後スカロン店長はルイズにも挨拶したいと言い、承太郎は渋々ルイズを連れに戻って、一緒に魅惑の妖精亭出張店の天幕で酒盛りをした。
シエスタの作る寄せ鍋の効果もあって、承太郎だけでなく仗助も魅惑の妖精亭に入り浸るようになったが、仗助の場合店の可愛い女の子で目の保養をしたいという理由もあるらしかった。
そんなこんなで年が開け、降臨祭が始まった。
承太郎と仗助にとっては正月とクリスマスが合体したような変なイベントだが、久々に気が紛れると承太郎は結構楽しんでいるようだ。
酒に弱いルイズは、ワインを果汁やハチミツや水で徹底的に薄めて飲んでいたが、それでも顔はすぐに赤くなってしまう。
その赤くなった顔で、チラリと少し離れた席で酒盛りしている連中を見る。
承太郎と仗助に、幻影作戦の時の竜騎士隊メンバーと、仗助の所属する外人部隊である第三中隊の竜騎士隊達、それに加えて再会したギーシュも自分の手柄を威張りながら酒を飲んでいる。
マリコルヌも従軍しているはずだが見かけないので放置だ。
大勢でドンチャン騒ぎをしてはいるものの、承太郎はそれを眺めているだけだ。
と思ったらタバコを五本取り出していつぞやの芸を披露していた。
「ぐ……グレート! 若き日の承太郎さんがこんな面白いキャラクターしてたとは!」
仗助はとてつもないショックを受けたらしく思いっ切りのけぞっている。
若き日ってどういう意味だろ? とルイズは首を傾げた。
そりゃ承太郎は老け顔だがまだ十七歳なのに。
しかし男というのはなんでああも騒ぎたがるのか?
承太郎はあんまり騒いでないけど、一応あの空気を楽しんでいるようではある。
おかげでルイズは居場所を無くして、一人さみしく飲んでいた。
「おかわりいりますか?」
するとワインのビンを持ったシエスタが、ニッコリと微笑んで現れた。
「……そういえばあんたも来てたんだっけ」
「ええ、ジョータローさんがいますから。あ、それとギーシュ様も」
ギーシュはついでか。まあ解るけど。
「ところでミス・ヴァリエール。お気づきですか? 雪が降ってますよ」
「え、そう?」
言われて天幕の外を覗いてみれば、白い粒がチラチラと降っていた。
「雪の……銀の降臨祭かぁ。結構オツなものね」
「私、雪の降ってる降臨祭って夢だったんです」
シエスタはうっとりとした口調で言う。
「タルブの辺りは冬でも暖かいですから、あんまり雪は降らないんです」
「……とりあえず、あんたも飲みなさいよ」
子供のように無邪気にはしゃぐシエスタを見て、
なぜか急に気が抜けて男達のドンチャン騒ぎも気にならなくなったルイズは、シエスタにもワインを勧めるが、下戸で酔い癖が悪いからとシエスタは紅茶を用意した。
そして二人で乾杯をして、外を降る雪と、承太郎やギーシュの席を適当に見る。
「楽しそうですね、ジョータローさん」
「ん……そうね。男はみんな馬鹿騒ぎが好きなのかしら?
 ジョータローは物静かだから、ああいうの嫌いだと思ってたんだけど」
「でも……空元気ばっかりじゃ疲れちゃいますから、ジョータローさんが元気になったみたいで嬉しいです」
さすがは恋する乙女と言うべきか、シエスタは承太郎の不調を察していたようだ。
「やっぱあんたにも解る?」
「ええ。何だか悩み事があるみたいなんですけど、話してくれなくて」
まあ自分にさえ相談しないのだから、シエスタに相談などしないだろうとルイズは考える。
何だかんだで今までの数々の視線を潜り抜け、お互い信頼も深まっているし。
(……そんな私に相談できない悩み事って何よ?)
異性には相談しにくい内容の悩み事なのかとも思ったけれど、
ギーシュや竜騎士隊がいるから大丈夫だし、同郷出身の仗助までいる。
ギーシュとは今日再会したばかりだが、仗助にはすでに承太郎について相談してある。
しかし仗助曰く、余計な口出しはしない方がいいらしい。
判断力に優れた承太郎ならどんな悩みだろうが一人で勝手に一番いい解答を出すだろう。
それが仗助の承太郎に対する信頼だったが、当の承太郎はというと、その判断力自体を疑っているのだから困りものだ。
おかげでルイズは承太郎の悩みが何なのか知るすべをまったく持てないでいる。
実はデルフリンガーは多少事情を知っているのだが、いつも承太郎が持ち歩いてるし、ルイズの視点ではデルフリンガーは相談対象から完全に除外されてたり。

十日間続く降臨祭だが、承太郎と仗助にとっては少々長すぎるお祭りだった。
クリスマスはイブを含めて24日、25日の二日間。
正月は大晦日から正月三が日までと考えても四日間。
どちらも十日には及ばない。そんな訳で承太郎と仗助は祭りを飽食し疲れていた。
気分転換にと仗助は承太郎を狩り(ハンティング)に誘い、森へと連れ出す。
そこで獲物を見つけては、銃弾をスタンドの指で弾いて飛ばし獲物を狩る。
1999年の夏の承太郎が、スタンド使いのネズミを狩るため仗助に伝授した技を、逆に仗助が承太郎に伝授するという奇妙な姿が展開されていた。
といってもスタープラチナの精密動作性を持ってすれば、一発撃っただけで力加減などを完全に把握し、二発目からは完璧に狙い通りに銃弾を飛ばせるようになって、実に教え甲斐が無かった。
ちなみに弾はマスケット銃の弾であるため、杜王町で使用したライフル弾に比べると威力も射程も精密性もかなり劣る。
「まーこれでもメイジ相手にはかなり役立つはずっス。
 詠唱してる間に口の中にでもぶち込めば楽勝って感じです」
ちなみに銃弾はスタンドを使って放つため、ガンダールヴのルーンは反応しない。
試しに素手で銃弾を摘んでみたが、銃弾だけでは武器と認識されなかった。
野うさぎを数匹仕留めた二人は、さっそく寄せ鍋を作ってもらおうと街へ戻り、魅惑の妖精亭の新メニューにまで発展しつつあるヨシェナヴェを食べる。
「ある意味トニオさんの料理より感動的だぜ~、ハルケギニアで食べる寄せ鍋はよー」
シエスタとジェシカが日本人の血を引いてると承太郎から聞かされた仗助は、二人に対しかなり親近感を持つようになっていた。
ちなみに魅惑の妖精亭の妖精(店員)達はお客様の髪型を馬鹿にするような事はなく、さらに承太郎が隙を見て仗助の髪の件を伝えておいたため、仗助の髪型を馬鹿にして大惨事という事態は起こらずにすんでいる。
ついでに承太郎は怪しそうな料理はまず仗助に毒味をさせ、見事店長スカロン(はしばみ草愛好会青銅会員)のはしばみ料理を回避していた。
毒味をさせられた仗助だが、タバ茶のトラウマが無い分、はしばみ草は嫌いというレベルですんでいた。
実はロマリアにあるはしばみ草専門料理店に誤って入った事があり、そこで初心者向けの料理から入門する事で耐性を養ったらしい。
何だかんだで結構楽しかった降臨祭も九日目を迎える。
アルビオン軍が休戦協定を破って攻めてくる気配も無かったが、休戦協定を破っての奇襲を仕掛けてくる可能性を考慮して、見張りだけはしっかりと立て、その他の連合軍は残り少ない降臨祭を楽しんでいた。
降臨祭が終われば、また戦争が再開される。
その前にルイズは承太郎の調子を何とか治してやろうと考えた。
とりあえず一緒に食事をしながらでもと、魅惑の妖精亭出張店に誘う。
「一人で勝手に行ってな、俺も気が向いたら行く」
「ちょっと話があるのよ、いいからついて来なさい」
渋々といった様子の承太郎を連れて魅惑の妖精亭の天幕へ行くと、隅の席を選んで座り朝食を適当に注文する。
「で、話ってのは何だ」
「あんたなら何の話かくらい解ってんじゃないの?」
「……さあ、どうだろうな…………」
何の事だか解らないという態度を取る承太郎だったが、ルイズは引かない。
「まさか気づかれてないなんて思ってないでしょうね?
 …………。あのね、黙ってても解らないの。悩み事があるなら言いなさい。
 ………………。いい? 私達はトリステイン軍の切り札なの。
 何か問題を抱えたまま戦場に出て、任務や作戦に支障が出たら大変でしょ?
 ……………………。せめて何があったかだけでも話してよ。
 ジョースケと会って故郷が恋しくなったの? 家族に会いたい?
 …………………………。そりゃ、私だって悪いと思ってるわよ。
 あんたの都合お構いなしにサモン・サーヴァントしちゃって。
 だからこの戦争が終わったら、姫様とも相談して帰る方法探して上げるから。
 ………………………………。さっきから私ばっかり喋りっぱなしじゃない。
 せめて『はい』とか『いいえ』って答えなさいよ。相槌でもいいから。
 とにかく黙ったままっていうのが一番困るの、何も解らないでしょ?」


次第にルイズの口調に苛立ちが混じってくる。
相手は無口な承太郎だが、ここまで無視された事は一度も無かった。
ルイズが口を止めても承太郎は一向に喋ろうとせず、沈黙の時間が長引くにつれイライラが増大していく。
何も答えない承太郎の相手をするのが馬鹿らしく思えてきて、頭がグツグツと煮えたぎり始めたところでシエスタが料理を運んできた。
「お待ちどうさまです、今日はパンがおいしく焼けましたよ」
焼き立てフワフワのパンに、鶏肉と野菜のスープとオムレツ、サラダとワイン。
「ありがとよ」
お礼を言い、承太郎はさっそく焼き立てのパンにかじりつく。
プッツン。ルイズの中で何かがキレた。
「私を無視してメイドには反応するってどういう了見!?」
ルイズもパンを掴むと、杖のようにして承太郎に突きつけた。
構わずパンを咀嚼する承太郎と、いきなりルイズがキレて困惑しているシエスタ。
「せっかく! せっかく人が心配して上げてんのに何なのその態度!
 もう完ッ全に頭にキたんだからッ、ご主人様としてあんたに礼儀ってものを――」
「やかましいッ! 俺はてめーみたいなうるせえ女が一番ムカつくんだ!」
テーブルが真っ二つに割れんばかりの勢いで拳を叩きつけた承太郎は、勢いよく立ち上がりながら腹の底からの怒声を張り上げた。
あまりのド迫力にルイズだけでなく店中が静まり返り、天幕の隙間から入り込む冬の冷たい風の温度がさらに下がったような錯覚まで落ちる。
「なな……何いきなりキレてんのよ。わ、訳解んない」
「ケッ……飯が不味くなっちまった。俺は帰るぜ」
降臨祭九日目。ルイズと承太郎は今までにない最低な喧嘩をした。
承太郎は仗助の天幕に泊まり、ルイズは宿で一人の夜をすごす。
そして翌日、事は終焉へと向かって動き出す。

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