ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-15

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「ところで少年よ、君が来た魔kゲフンゲフン異世界の事なんじゃが……
 実はワシに心当たりがある」
「「「「本当ですか!?」」」」
長い握手が終わり、オスマン氏が手の痺れを隠しながら、放った言葉で、その場にいる
全員がオスマン氏に詰め寄った。

育郎の場合
「まさかこんなに早く帰る手がかりが見つかるなんて!」
コルベールの場合
「魔法が無くとも使える技術がある世界…まさしく私の夢ッ!」
ミス・ロングビルこと土くれのフーケの場合
「感じる!お宝の気配をッ!」
ルイズの場合
「まさか…いや、でもひょっとして………このジジイついにボケちゃったの!?
 だって異世界よ?うわーこの学院どうなっちゃうんだろ?」

「うむ、とりあえずついてきなさい」
そう言って部屋を出るオスマン氏についていくと、オスマン氏は一つ下の階の
鉄の巨大な扉の前まで来て足を止めた。

「ここは宝物庫じゃないですか」
声を上げるコルベールをそのままにして、オスマン氏が懐から鍵を取り出し、
巨大な門に相応しい、巨大な錠前に差込、鍵を開ける。
「こっちじゃ………」
様々なマジックアイテムが収められている宝物庫の片隅に、それは陳列されていた。
「これは…」
育郎が驚いた様子で『それ』を見る。
「ふむ………やはりか」
「これは、『破壊の杖』…ですよね?」
一人納得しているオスマン氏の横に立つミス・ロングビルが、確認の為に問いかける。
「その通り、我がトリスティン魔法学院宝物庫に収められた秘法の一つにして…
 ワシの命を救ってくれた人の形見じゃよ…」
オスマン氏が遠い目をして語りだした


あれはもう数十年前のことじゃ………ワシが森をふらりと散策していると、
突如ワイバーンが襲い掛かってきての。
油断しとった、というのは言い訳じゃの。最初のワイバーンの攻撃で杖を取り落として
しまったワシは、なす術も無く追い詰められた…
その時じゃ!

「アパム!アパム!弾だ!弾もってこい!アパーーーーム!」

そんな叫び声が耳に入ったと思ったら、ワイバーンがいきなり爆発しての。
辺りを見回せば、満身創痍の見たこともない服装をした男が、破壊の杖をもって
立っておったんじゃ。
じゃが、その姿は傷だらけでの、ワシが駆け寄るとそのまま倒れてしまった。
急いで学院に運んだんじゃが…
彼は最後まで「ここはどこだ?元の世界に帰りたい」とうわ言を繰り返しておった…
その後、ワシは彼が使った杖を『破壊の杖』と名づけ、宝物庫にしまいこんだ。
恩人の形見としてな………

「それが、『破壊の杖』の全てじゃ…あれから何度かこの杖を使おうとしたが、
 振ってみても、魔法をかけてもうんともすんとも…
 宝物庫に入れてあるのも、はっきり言ってワシ個人の」
「ちょ、ちょっと待ってください!使い方わからないんですか!?」
ミス・ロングビルが、慌てた様子でオスマン氏に詰め寄る。
「うむ!いや、もう笑えるぐらいさっぱり!」
何故か自信満々なオスマン氏。
「ねえ、あんたあれが何か知ってるの?」
そんなミス・ロングビルを脇目に、ルイズが『破壊の杖』を食い入るように見ている、
育郎に疑問をぶつける。
「これは…詳しくは判らないけど僕の世界の武器だ、間違いない!」
M9A1バズーカ、それが破壊の杖の正式な名前だが、育郎にわかるわけがない。
或いは彼がそれを手に持てば、その左手のルーンの効果により理解できただろうが、

相棒の武器は俺だけだ!俺だけでいいんだ!
こここここここんな武器なんてああああ相棒にはいらねーんだ!

と、事の次第を知っているデルフリンガーがこんな感じなので、望むべくもない。
無論そんな心の中など露ほども見せず。
「へーこれが相棒の世界の武器か…かわってんなー」
等とのたまっている。
「ワイバーンを一撃なんて…なんか怖いわね」
「武器と言うのは悲しいですが…凄い技術だ!」
それぞれ感想を述べるルイズ達。

「あの…ひょっとしてイクロー君、これの使いかたわかります」
一縷の希望を込めて、ミスロングビルが育郎に問いかける。
「知るわけねーよな相棒!だって相棒はふつーの生活送ってたんだもんな!
 ワイバーンを一発でぶっ倒す武器の使い方なんてわかるわけ」
「詳しくは判りませんけど…一応」
「…………………………ッ!!!!!!!!!!!」
一振りの剣がさりげなく絶望を味わっていたが、誰も気付かなかった。
「ほ、本当ですか!?」
「はぁ、引き金を引けば撃てると思いますが…」
喜びを隠し切れないミス・ロングビルに、育郎が申し訳なさそうに続ける。
「………弾が無いと」
その言葉にミス・ロングビルが固まった。
「ふむ…つまり銃、いや小型の大砲みたいなものかね?」
「そうですね、だいたいそんな感じじゃないかと」
その答えに満足そうにうんうんと頷き、『破壊の杖』を改めて観察するコルベール。
「………オールド・オスマン!」
「おお!そう言えば何に使うかよくわからん円筒形の代物を持っとったのう!」
「そ、それはどうしました!?」
「恩人と一緒に墓の中に入れたよ…もう随分年月がたっとるし、使えんじゃろうな」
その言葉に崩れ落ちるミス・ロングビル。そして人知れずデルフリンガーが
絶望から這い上がったが、勿論誰も気付いていない。
「ど、どうしたのかね?ミスロングビル…」
駆け寄りながら、さり気なく胸を触ろうとするオスマン氏の手を捻り上げて、
なんとか平静を装うミス・ロングビル。
「いえ…その…『破壊の杖』が無価値というのは如何な物かと思ったもので…
 秘法と言われている物ですし…」
「ま、秘法といっても、わしの説明を聞いた役人がそう指定しただけじゃしな。
 使い方が判らんと知った時の、奴らの顔は見ものじゃったぞ」
ふぉっふぉっふぉっと笑いながら「そろそろ手を放してくれない?痛いから」
という目でミス・ロングビルを見るオスマン氏。

「とにかく、これで君以外にもこの世界にやってきた人間がいると確定したわけじゃ。
 君が元の世界に帰る手がかり…とは言えんが、希望がなくなったわけではない。
 もちろん、わしらも出来る範囲でじゃ君が元の世界に返れるように協力する」
そう言ってから「もうしませんから放してください」という視線を、ミス・ロングビルに
向けるオスマン氏。今度はその視線に気付いてくれて、彼女は手を放した。
「何から何までありがとうございます…実は、僕も気になっていることがあるんです」
「と言うと?」
育郎が言葉を選びながら話し出す。
「この世界には、僕の世界では空想の産物とされる生き物達が、実際に存在しています。
 勿論多少の差異はありますが…それでもあまりにも似通っている」
「なるほど…つまり、ひょっとしたらこの世界の生き物が君の世界へ。
 或いは君の世界の人間が、この世界にやって来て、そして元の世界に帰り、
 この世界の生き物達の事を伝えた…その可能性があると」
コルベールの言葉に頷く。
「はい。勿論偶然の一致かもしれませんが…」
「いや、確かにその可能性は否定できぬの………
 おお!そうじゃ、ミス・ロングビル!」
「な、なんでしょう?」
先程のショックからまだ抜け切れてないのか、弱々しく(そのわりには、オスマン氏を
捻り上げる手は力強かったが)返事をするミス・ロングビル。
「少年、きみは異世界から来たという事は、文字は読めんのじゃろ?
 ミス・ロングビルに字を習ってみてはどうかね?
 まずは資料をあさる事しか出来そうに無いが、君でなければ見落としてしまう部分
 があるかもしれんし、これからこの世界で生きていくのにも便利じゃろ」
そうじゃそうじゃ、と自分の言葉に満足げに頷く。
「あの、それなら主人の私が」
おずおずとルイズが教師役に立候補するが。
「君は君で学生の身じゃろう…」
即座に一蹴される。

「でも、ロングビルさんにも仕事が…」
「ミス・ロングビルを秘書に雇ったのはほんの数ヶ月前からじゃし、
 なにも一日中というわけではない。午後の授業中の、1、2時間程度じゃ。
 ミス・ロングビルもそれでよいか?」
ミス・ロングビルがその言葉を受け、暫く考えるそぶりをし
「そうですね…それぐらいの時間なら」
そう言ってもう一度自分の中で、考えを反芻し。
「いえ、是非やらせていただきます!
 イクロー君、これからよろしくおねがいしますね」
「こちらこそ、すいません、僕の為に」
「いえいえ、良いんですよ!」
にっこり笑って答えるミス・ロングビルを満足げに見るオスマン氏。
「さてと、とりあえず今日のところは解散とするかの
 それでじゃ、少年には悪いんじゃが…
 何かを聞かれたら、君は東方の亜人という事にしておいてくれんかね?
 ワシらもそれで話を合わせるようにする。」
「かまいません」
「すまんの、いらぬトラブルを避けるためとはいえ、君の事を真っ当な人間として
 扱ってないようで、心苦しいんじゃが…」
「いえ、おじいさんのその気持ちだけで、僕には十分です…」
「すまんの…そうえいば名前はどうするかの?」
「名前…ですか?」
横からルイズが、何故わざわざ名前など付けるのかと、疑問の声をあげる。
「ま、一応の。少年自身が自分の種族の名前を知らんというのも、変な話じゃろ」
なるほどとルイズが納得する。
「バオー…『ドレス』は僕の『力』のことをバオーと呼んでいました…」
「ふむ…では少年はこれから東方の未確認の亜人『バオー』という事になる。
 みなもそれで良いな?」
確認の為に全員を見回し、オスマン氏が改めて口を開く。

「あとは…ミスタ・ゴッゾーラ、少年に服を貸してやりなさい」
「は?」
「穴が開いたままじゃ」
ワルキューレに貫かれた服はそのままなので、育郎の肌が見えている。
「わ、わかりました。あとで彼の服は誰かに修繕を頼みますので。
 それと私の名前はコルベールです」
「うむ…ミス・ロングビル、せっかくじゃから今のうちに触っとくかね?」
コルベールの抗議を当然無視して、育郎の服に開いた穴を指差して言ってみる。
「そういう軽いセクハラでも、次からは容赦しません」
「お、おーけぇ…」


「美人秘書の個人授業か…わくわくするの。モートソグニル、明日から頼むぞ」
「ちゅうちゅう(了解だ、大佐)」
一人学院長室に残ったオスマン氏が自分の使い魔に語りかける。
「それにしても…」
水パイプを吹かして、すっかり暗くなった外を見ながら先程のやり取りを思い出す。
「ガンダールヴ…全然関係なかったの…」
二つの月は、今日も何処までも美しく輝いていた。


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