ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

意外! 神の右手ヴィンダールヴ

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意外! 神の右手ヴィンダールヴ

人気の無い森の中までやって来た承太郎は、タバコに火を点けた。
「おめーも吸うか?」
「いや、俺は遠慮します」
とりあえず適当な岩に承太郎は腰掛け、仗助は木の根の上に座り込んだ。
「さて……何から話すべきっスかね~……」
「まずてめーが何者なのか教えてもらおうか」
「はあ……その前に一個確認させてください。今年は西暦何年でしたっけ?」
「……1989年だ、俺がこの世界に召喚されたのはな」
「そ~っスか……俺もです。参ったな、どう説明すればいいのか……」
難しそうに頭を抱える仗助。
どうやら『いきなりハルケギニアに召喚された』という訳ではないらしい。 
破壊の杖の持ち主や、シエスタの祖父のように、偶然この世界に紛れ込んだのか?
「だったら答えやすいよう質問する。お前はどうやってこの世界に来た?」
「サモン・サーヴァントです。ロマリアの……えー、とある人に召喚されました」
なぜか自分の召喚者を隠す理由を承太郎は推測してみる。
「まさか……虚無の担い手か? お前を召喚したのは」
「さすが承太郎さん、話が早いっス。
 そういう訳で誰が俺を召喚したかは訊かないでください、虚無の担い手って知られると俺の主の人も色々迷惑すると思うんで……」
「となると、てめーは虚無の使い魔……という訳か」
仗助は右手の手袋を外して、使い魔のルーンが刻まれた手の甲を見せた。
「神の右手ヴィンダールヴ……能力はあらゆる獣を操る事。
 そして俺のスタンド、クレイジー・ダイヤモンドの能力は、触れた物を『直す』……人だろうが物だろうがお構いなく」
そう言いながらスタンドを出現させた仗助は、地面に落ちていた石を拾うと、クレイジー・Dの拳で粉砕する。
しかし粉々になった石は、時間が逆回りするかのように元通りの形に戻った。

「……手の内をそう簡単にバラしていいのか? 仗助」
「別に構わないっスよ~。承太郎さんの能力もバレバレですから」
「……何ッ?」
「時間を数秒間止め、止まった時の中を動く……。知ってる人は知ってます」
まるで自分以外にも知っている人間がいるというような物言いに、承太郎は警戒心を強めた。自分の能力を知る何者かが情報をばらまいているのか?
ワルドと、操られたウェールズの事を思い出したが、二人とも時間が止まった事は理解していないようだった。
他に時間停止を見せた相手はキュルケとタバサくらいのもの。
いったいどこから情報が漏れたのか?
それは、自分の事を知っているような態度を取るこの東方仗助からではないか?
果たして仗助は敵か? 味方か?
「知っているなら話が早い……。てめーが怪しい素振りをした瞬間、時間を止めてスタープラチナを叩き込む」
「ちょっ、待ってくださいよ~ッ。俺は別に承太郎さんと敵対する気はね~んスから。
 むしろ味方です! 日本に帰るために協力し合いたいと思ってんでスよ?」
「だったらてめーが何者なのか正直に喋ってもらおう。
 虚無の使い魔だという事は解った。だがそれだけじゃあねーだろう?」
頬杖をついて仗助は溜め息を吐いた。
「信じてもらえるか自信無いけど……ぶっちゃけると俺は承太郎さんの叔父です」
「叔父……だと……?」
「ジョセフ・ジョースターが日本人女性と浮気して産まれたのが俺です。
 いわゆる隠し子。この件はジョースター家は『まだ』知りません」
仗助の言葉を信じるなら、祖父ジョセフは承太郎がホリィから生まれた頃に、他の日本人女性に子供を生ませていた事になる。
ほぼ同い年の叔父という存在は実に奇妙なものだった。それが真実ならだ。

「……確かにじじいの面影はあるが……信じると思うか? そんな話……」
「そうなんスよね~……それが俺も疑問なんです。どうすれば信じてもらえるか。
 という訳で俺の生い立ちとか色々話したいんですけど、いいですか?」
「……話してみな」
仗助はS市杜王町に住んでいて、そこにはスタンド使いが大勢いると話した。
その原因はスタンド能力を発現させる『弓と矢』の存在。
かつて『DIO』がそれを使い部下を増やしていたらしい。
その『弓と矢』は日本にも存在し、杜王町に様々な事件を起こした。
アンジェロに殺された祖父。虹村兄弟と父親。矢に貫かれた広瀬康一。
弓と矢を強奪したレッド・ホット・チリ・ペッパーの音石明。
スタンド能力に目覚めた二匹のネズミをハンティングに行った事。
漫画家の岸辺露伴に、幽霊の杉本鈴美。
重ちーという友人の死と、シンデレラの能力。
そして吉良吉影という殺人鬼と、写真の親父が持つふたつ目の弓と矢。

「……話が見えねーな。『弓と矢』の話は興味深いが、
 てめーの武勇伝を自慢したいなら後にしてくれ」
「まーまー、これが結構重要なんです。
 それにスタンド使いの情報は知っておいて損は無いっスからね」
承太郎の異論を軽く流して仗助は話を続けた。

吉良吉影のスタンド能力、川尻浩作の顔や指紋を得ての逃亡。
新たに弓と矢に貫かれた刺客達と、成長した吉良吉影との決着。

「とまあ色々あった訳ですが、この時杜王町には頼もしい助っ人がいたんです。
 その助っ人のおかげで命を救われたっつーか勝つ事ができたって感じっス。
 助っ人の名前は……空条承太郎。一連の事件は1999年の夏の出来事です」

突然話がぶっ飛んだ。
スタンド使いの話をしていたかと思ったら、なぜか未来の話になっている。
さすがの承太郎も困惑し、仗助の頭がおかしいのではとまで思った。
「さっき……話しましたよね、吉良吉影のバイツァ・ダスト。
 1999年の秋、あれと似たようなスタンドに出会った俺は、承太郎さんがDIOを倒すために旅をしていた時代に飛ばされました。
 そこで過去の自分を救い……1999年までどうすごすか考えていたら、このハルケギニアに召喚されちまった……これで全部です」
「……本気で言っているのか?」
「本気です。歴史を変えるなんてグレートな問題、承太郎さんがどう考えるか解んなかったもんですから先に話させてもらいました。
 これで……日本に帰る事ができたら、1999年の夏の出来事を変えられる。
 虹村形兆や重ちーだけじゃなく、多くの人が死なずにすむんです。
 知っちまったからには……見過ごせませんよね?
 少なくとも弓と矢は二本も回収しね~とかなりヤバイ事になります」
承太郎は無言で、しかし拳を握りしめ仗助を睨みつけていた。
最初から正直に話していれば、確かに未来の話なんて聞かなかったかもしれない。
しかし1999年の未来を案じ真剣に聞いたかもしれない。
重要なのは、仗助が騙まし討ちのように真実を最後に明かした事だ。
「騙すような真似してすみません。でも……ダチを死なせたくないんスよ」
だが仗助のこの言葉が承太郎にIFを想像させる。

もし自分がエジプトへの旅へ行く前に戻る事ができたなら、どうする?
敵のスタンド能力や攻略法まで知り時を止める事が可能な自分なら、花京院、アヴドゥル、イギーを死なせずにDIOを倒せるのではないか?
死んでしまった命は決して戻らない……しかし、戻って欲しいと思ってしまうものだ。

「やれやれ……作り話にしては出来すぎだ。正直信じ難いが……証拠はあるのか?」
「えっ、証拠っスか?」
「てめーがじじいの隠し子だとか、1999年から来たという証拠だ」
仗助は慌てて学ランのポケットを探り、財布や学生証を取り出した。
「学生証……レシートもあります。1999年って書いてある……けど」
「こんなもん偽造しようと思えば簡単だが、まあ無いよりはマシか。
 それと仗助、てめーはじじいの息子だと証明する方法を知らないのか?」
学生証とレシートを確認しながら、仗助の観察を怠らずに承太郎は問う。
「DNA検査とか戸籍とか……日本に帰らないとちょっと無理っスね」
「……首の背中の付け根を見せてみな」
「首の……? はあ、解りました」
何の事だか解らないといった表情をしながら、仗助は素直に学ランを半分脱いで首の背中の後ろを見せた。
「これでいーんスか?」
「……なるほど。じじいの息子かどうかはともかく、ジョースターの血統なのは間違いないらしい」
「へ?」
仗助の首の付け根にあったのは星型の痣。
ジョセフ、ホリィ、承太郎、そしてDIOが奪ったジョナサンの肉体にもあった物だ。
それを説明してやると仗助はかなり驚いていた。本当に知らなかったらしい。
ついでにジョースターの不思議な血の波長でお互いの位置が漠然と解る事も話すと、仗助はさらに驚いて、その感覚を認識してみようと目をつむって念じたりした。
「だがまだいくつか疑問がある。話を聞く限り……おめーは俺の味方。そうだな?」
「もちろんっスよ。承太郎さんの判断力も、無敵のスタープラチナも頼りにしてます」
「だったらなぜ……俺の能力が仗助以外の奴も知っているような言い方をした?
 まさかてめーが言いふらしたんじゃねーだろうな」
「え? ああ、そうか。虚無に関してはあんまり情報持ってないんでしたっけ」

仗助はちょっとした優越感を持ってニヤニヤと笑った。
尊敬している承太郎より何かが秀でているというのは、何気に嬉しいものである。
「これはこの世界で虚無に関わる以上、非常に重要な問題です。
 確かに承太郎さんの能力は俺が召喚者に説明しました……。
 でも、承太郎さんの能力に『その人が気づいたから』から説明したんです」
「どういう意味だ?」

「虚無の担い手は、虚無の使い魔の持つスタンド能力の干渉を受けない」

仗助は真剣な表情になって言い、承太郎は目を見張る。
時の止まった世界を認識して動いていたルイズだが、認識とか動くとかいう問題ではなく、ルイズの時間は止められなかったとしたら。
「承太郎さん、こっちの世界に来て何度か時間を止めてますよね?
 俺の召喚者はそのたび、時間の止まった世界の中を動いています。
 最初は戸惑っていたようですけど、その事を俺に相談してきて……すぐ解りました。
 承太郎さんがハルケギニアに召喚されて時間を止めた……と。
 ちなみにクレイジー・Dの『直す』能力も、俺の主には効果がありません。
 そして……もちろん時間を止める能力は、もう一人の虚無にも知られています」
「もう一人の虚無だと?」
「ガリア王ジョゼフ。名前が俺達の身内と似ていてアレですけど、うちの召喚者はガリア王が虚無の担い手だと睨んでます。
 この事も黙ってろって言われてるんで、くれぐれも秘密にしてください。
 一応俺は主と結構友好な関係を築けてるんで……」
「……やれやれ、今度は虚無について聞く必要があるようだな」
「とはいえ、喋りっぱなしでちょっと疲れましたね。一度戻って何か飲まないっスか?
 ルイズさんにも虚無の話はしといた方がいいだろうし……」
「……そうだな」

承太郎はタバコを消すと、仗助と一緒に天幕へと戻ろうとした。
が、その前にもうひとつ、ルイズのいない今聞いておきたい事を思い出す。

「虚無の使い魔は……虚無の担い手にとって都合のいい行動を取るようにできてるのか?
 本能的に虚無の担い手を守ろうとしたり、そいつの力になってやろうとしたり」
「さぁ……どうでしょうかね~? 俺は特にそういうのは感じませんけど。
 最初は勝手に召喚されてムカついたものの、元の世界に帰れるよう手を尽くしてくれてるし……こっちもそれに協力しねーと」
「……そうか」
「何か気になる事でもあるんスか?」

虚無の詠唱を聞いて高揚感や安堵を感じる自分。
この世界にいる理由を見出した途端、迷わずそれを選んだ自分。
ルイズを守り戦ってきた自分。
どこからどこまでが自分の意思だったのか……。

「いや、別に……」
「はあ。まあ後でまたじっくり情報交換すりゃ~いいか」
二人が天幕に戻ると、生還した竜騎士隊が酒盛りして大暴れしていた。
「ちょっと、こいつ等どうにかしなさい!」
完全にプッツンしたルイズに渋々従い、承太郎と仗助は結構しんどい目に遭うのだった。

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