ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

白銀と亀の使い魔-20

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早朝。朝靄が立ち込める中、馬に鞍をつけている三つの人影があった。すなわち、ルイズ、ポルナレフ、そしてギーシュである。
「…結局見つかったんだな。」
ポルナレフが嫌そうな顔でギーシュに話しかけた。
「違うな。」
ギーシュが作業をとめ、チッチッとキザっぽく人差し指を振った。
「自分から志願したんだ。女の子が危険な任務を任されたんだ。黙って見てるわけにはいかないだろう?」
ポルナレフは舌打ちした。折角の金づるが…と思っているに違いない。
「ところでお願いがあるんだが…」
「何よ。」
「僕の使い魔も連れていきたいんだ。」
「あんたの使い魔ぁ?…別にいいけどどこにいるのよ?」
「ここさ。」
ギーシュが下を指差すと地面が盛り上がり、巨大なモグラが現れた。
「ヴェルダンデ!ああ、僕の可愛いヴェルダンデ!」
ギーシュが地面から出て来たそれに抱き着いた。
「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?」
ルイズが驚いて聞いた。
「ああ。このつぶらな瞳が可愛いらしいだろ?」
ベタ褒めである。親バカというか何と言うか…
「なるほど、別にいいかもしれんな…モグラならスピードは馬ぐらい出るだろう。」
ポルナレフの言葉にギーシュは頷いた。だが、
「私達、これからアルビオンに行くのよ。地面を掘って進む生き物を連れていくなんて、駄目よ。」
ルイズはギーシュの案に反対した。
「アルビオン?昨日も言っていたが本当にあそこに行くのか?」
「そうよ。そういう訳だから、残念だけどモグラなんて連れていけないわ。」
「そんな…お別れなんて辛い、辛過ぎるよ……、ヴェルダンデ…」
ギーシュは再び抱擁しようとしたが、そのヴェルダンデはギーシュの抱擁から逃れるとクンクン嗅ぎながらルイズに近寄って行き、押し倒した。そしてそのまま体を弄びだした。
「ちょ、何すんの!このモグラ!」
ルイズは必死になって抵抗したが、相手は小熊程あるジャイアントモール。このSSではあくまでただの少女の肉体であり、現実は非情である。

「いやぁ、巨大モグラと戯れる美少女っていうのもある意味官能的だね。」
「手篭めにしてるのはお前の使い魔だがな。」
ポルナレフは鞍を取り付けながらギーシュにツッコミを入れた。
「こら、離しなさい…!姫様から貰った指輪から…!!」
ヴェルダンデはルイズがしていた指輪に鼻を近付けていた。
「なるほど指輪か。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね。ヴェルダンデは貴重な鉱石や宝石を僕のために見つけて来てくれるんだ。『土』系統の僕にはこの上ない素敵な協力者さ。」
ギーシュが自慢するように言ったその時、突如突風が吹きヴェルダンデが吹っ飛ばされた。
「誰だ!」
ギーシュが愛する使い魔を吹っ飛ばされたのに怒って杖を取り出した。
ポルナレフはギーシュと対称的にまず冷静にルイズが無傷であるのを確認した。ルイズが無傷ということは敵ではなく増援か何かだろうと考え、ゆっくりと風のした方を見た。
靄の中から羽根帽子を被った長身の男が現れた。容姿から昨日、ルイズが見とれていた貴族であることが分かった。
その貴族は一礼してから名乗った。
「僕は敵じゃない。姫殿下より、君達に同行することを命じられてね。君達だけではやはり心許ないらしい。しかし、お忍びの任務である故、一部隊を付ける訳にもいかぬ。そこで僕が指名されたって訳だ。」
帽子をとった男はルイズより外見からして10歳は年上だろうとポルナレフは推測した。もっとも、ルイズの外見も考慮すると更に5歳ほど加算出来そうだが。

「僕は女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ。すまない……婚約者がモグラに襲われているのを見てみぬ振りは出来なくてね…」
「婚約者…?」
ギーシュが信じられない様子で呟いた。
ポルナレフも自分の予想を少し越えていて驚いたものの、中世の貴族社会ならこの程度の年齢差のある婚約も有り得るか、と思い納得した。
しかしワルドがばれないように股間を押さえているのを見て、やっぱりただの変態か、と思い直した。
ワルドは信じられないといった面持ちでいるルイズに駆け寄ると抱き上げた。股間はもう大丈夫らしい。
「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!相変わらず軽いな、君は!まるで羽根のようだね!」
「お久しぶりでございます。……恥ずかしいですわ」
ワルドに笑いかけられ、ルイズは頬を赤く染めた。

「おでれーたなあ、相棒。まさかあの娘っ子にあんな婚約者がいたなんてなあ!」
鞘から少しだけ刀身を覗かせていたデルフがポルナレフに話しかけた。
「ああ。あの若さで魔法衛士隊…多分メイジだけで構成された親衛隊か何かと思うが…その隊長で子爵だとはな。確かルイズは公爵家の三女…家柄だけを考えたら婚約者として相応しいかもしれんな。」
ポルナレフがそう言って頷く。
「君、何納得してるんだい!?魔法衛士隊は僕たちメイジの憧れなのだよ!その隊長と『ゼロ』が婚約者だなんて…」
ギーシュが喚いた。
「誰も魔力や性格について相応しいとは言って」
ポルナレフがここまで言ったとき、二人がいた位置に巨大なクレーターが出来た。

「…彼等は何なんだい?」
ワルドがクレーターの底で倒れている二人を指差した。
「あの金髪がギーシュ・ド・グラモンで」
「グラモン…ひょっとしてあのグラモン元帥の御子息かい?」
「はい。であっちの眼帯をしているのが…その……私の使い魔…ですわ。」
ルイズが恥ずかしそうに言った。
「あれが君の使い魔かい?人だとは思わなかったな」
ワルドの言葉にデルフはちょっとムカッとした。
「おいおい、人の相棒を悪く言うなよ。」
いきなり咎められて驚いたワルドは辺りを見回した。
「今の声は…?」
「あ、あの……私の使い魔の…剣です」
ルイズが怖ず怖ずとポルナレフの近くに落ちている剣を指差した。
「ひょっとしてインテリジェンスソードかい!?これはまた驚いたな。君の使い魔はまた変な武器を使うんだね!ところで彼と彼の剣は何て言うんだい?」
「使い魔はポルナレフで、剣はデルフリンガーです。」
「そうか、デルフリンガー君か。いやいや、持ち主の名誉のために抗議するなんて泣かせてくれるね。」
ワルドが芝居がかった口調でそう言うと、デルフはケッと言い捨ててから喋ろうとしなくなった。
「おいおい、僕は別に君や使い魔君を馬鹿にしたつもりは」
「子爵、早く二人を起こして出発しましょう。こうしてる間にもレコン・キスタは…」
「おっとそうだったね。」
ルイズに急かされたワルドはクレーターの底で倒れていた二人をたたき起こすと、口笛をふいて使い魔のグリフォンを呼び出した。その背中にひらりと跨がるとルイズに手招きした。
「ルイズ、おいで。」
ルイズはもじもじ恥ずかしそうにしていたが、ひょいと抱き上げられ、一緒にグリフォンに跨がった。
「では諸君!出撃だ!」
ワルドがそう勇ましく言ったが、ルイズから死角となっていたその顔はだらし無くニヤついており、ポルナレフ、ギーシュ、デルフの三者は「こいつ、本当に魔法衛士隊隊長なんだろうか」と不安にならずにはいられなかった。
ともあれ、四人はラ・ロシェールを目指して学院を出発した。

「まったく…魔法衛士隊の連中は化け物か?」
とある駅で馬を交換している時、ギーシュがポルナレフに話しかけた。
「まったくだ。半日近くもノンストップで駆けさせるとは…」
学院を出発してから既に半日が経過しており、二人共息を荒げていた。
「二人に先に行っててもらうよう言おうか?」
ポルナレフはギーシュにそう提案したが、
「馬鹿もほどほどにしたまえ。今アルビオンが窮地に立たされていることぐらい知ってるだろう?だから一分たりとも時間が惜しいのだよ。」
ギーシュはポルナレフの提案に反対した。
「確かにな…だが、俺達の体力も限界だ。」
「そうなんだよなあ。勘弁してもらいたいよ。まったく。」
ポルナレフは少し考えてから再度提案した。
「なら俺達もグリフォンに乗せてもらうことにしよう。」
「そんなの出来る訳無いだろう?君は本当に頭脳がマヌケだな。」
「それが出来るんだな。もっとも、誰にも言いたくは無かったんだが…」
ごそごそとポルナレフは鞄の中を探してあるものを取り出した。ギーシュはそれを見て目を丸くした。
「それは…?」
「これが俺達もグリフォンに乗ることを可能にしてくれる。ただ、他の奴らには言うな。いいな?」

「おーい、ルイズ。グラモン元帥の御子息と使い魔君は何処に行ったのか知らないかい?馬を交換するって言ってから全然見当たらないんだが…」
「彼等なら先に行くとか言ってもう出発しましたよ。」
「ははは。なんだ、先に行ったのか。…ところでその亀はどうしたんだい?」
ワルドがルイズが持っている亀を指差した。
「この亀も私の使い魔ですわ、子爵。」
ルイズがそう言うとワルドは笑い出した。
「あっはっは!おもしろいことを言うな、ルイズは!でも冗談は休み休みにしたまえ。時期が時期だからね。」
「いえ、本当ですわ。この亀にも、ほら、この通りルーンが…」
ワルドが見ると確かに亀にもルーンが刻まれていた。なるほど、ルイズが言っているのも嘘じゃないらしい。
「…まあ、いいか。早くその亀を連れてお乗り。すぐに彼等に追い付けるだろう。」
ワルドはルイズを抱き上げてグリフォンに跨がると再び疾駆させた。

「驚いた!君はこんな所で暮らしていたのかい?ポルナレフ」
ギーシュが部屋中を見渡しながら言った。
「ああ。寝るときはそこのソファでな…」
ポルナレフは椅子に座りながらけだるそうに返答した。
二人は今亀の中にいる。馬は疲れるし、その内置いていかれるのは明白だからだ。
「この箱はなんだい?開けたらひんやりするんだが…」
「冷蔵庫。中にいろいろな物を冷やしておける物だ。」
「マジックアイテムかい?」
「違うな…。どういう仕組みか詳しくは知らんが魔法で動いてるのではない。電気で動いてる。」
「ほ、本当かい?」
異世界の文明に触れて驚きっぱなしのギーシュ。
その内、壁に掛けてある矢に気付いた。
「ポルナレフ、ここに飾ってある矢はなんだい?」
ギーシュがそれに魅せられたかのようにフラフラと近寄って行き手に取ろうとしたその時、
「それに触るな!」
ポルナレフが一喝し、ギーシュはびくっと動きを止めた。
「いかなる者もそれに触ってはならないんだ…。」
ポルナレフは椅子に座ったままギーシュを睨んだ。
「さ、触るぐらい構わないじゃないか…」
睨まれたギーシュは大人しく矢から離れた。
「それでいい…世界にそんな矢など…力など…要らないからな…」
ポルナレフはフッと溜め息をついた。
「あと、そこの棚の上の物も触れるな。矢とそれらはこの亀の持ち主の仲間の遺品だからな。」
「遺品…」
棚の上には大きなジッパー、ヘアピン、タマゴの殻みたいな帽子、ナイフ等が飾られてあった。
「…よければ聞かせてくれないか?」
「何をだ?」
「『持ち主』と『遺品』の話をさ。」

ギーシュは真剣に聞きたがった。だが、知りたがったのは『持ち主』や『遺品』ではない。
それはポルナレフが先程口走った『矢』と『力』のことであった。
ギーシュはグラモン家の末っ子として生まれたため、ルイズほどではないが、二人の兄にコンプレックスを抱き、実力で二人を越えたいと常日頃思っていた。
だが、ドットの彼に作れるのは青銅のゴーレム、ワルキューレのみ…まだ子供だからしょうがないのだがそれでもなお悔しかった。
だが、今さっき、何らかの『力』が矢にある、とポルナレフは仄めかした。ギーシュはそれが喉から手が出るほど欲しく思った。その『力』なら兄を、いやひょっとしたら父をも超えれるかもしれないと考えたからだ。
だが、ポルナレフの台詞からしてそのままじゃ明かしはしないだろうと考え、話を『持ち主』と『仲間』の話にすり替えた。
きっと『持ち主』やその『仲間』は『力』に関係している。なら、そいつらの話から推測すれば『力』の手に入れ方も明らかになるはずだ…と考えたのだが、
「だが断る」
「はい?」
「俺は最後ぐらいしか関わってなくてな。だからほとんど知らんのだ。話は聞いてはいるんだが、俺ごときが喋っていい物じゃあないしな。」
「そ、そんなあ…」
「それより先は長いぞ。少しでも寝て精力を蓄えろ。」
そう言って口惜しがるギーシュをよそにポルナレフはソファーの上で横になった。


To Be Continued...

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