ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

仮面のルイズ-11

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ラ・ロシェールを出発した船で夜を明かしたルイズは、アルビオン側の港口、スカボローの港に船が到着したと知らせる船員の声で目を覚ました。

船を下り、港町から首都へと移動する最中、街道を歩く人々にある特徴を見つけた。
荒くれ者、傭兵風の者達は、港から首都へと歩いている。
商人風、平民風の男女、子供達は、家財道具を背負い港へと向かっている。

誰が見ても分かるほどあからさまだった。
魔法学院でアルビオンの噂を聞いたときは、まだ内乱が起こっている程度のものだったが、実際に見てみると平民達が疎開しようとするほど酷い状況らしい。
しかも王都から疎開しようとする程、事態は切羽詰まっているのだ。
『私は自分の実力を試しに来ただけ』
そう自分に言い聞かせて、ルイズはアルビオンの首都『ロンディニウム』へと歩いていった。

「おーい!待ってくれよ!」
と、突然後ろから声をかけられた。
振り向かなくてもドタドタと下品に走っているのがよく分かる、あの髭面の男だ。
「ハァ、ハァ、ふーっ…石仮面さんよ、あんた行くところ無いって言ってたろ、俺の知ってる酒場に来ねえか?」
「馴れ馴れしいわね、食うわよ?」
そう言いつつ、息を切らせながら隣を歩くブルリンを見る。
前言撤回、ある意味オークやトロルより不味そう。
ルイズがそんなことを考えているとは知らず、ブルリンは会話を続ける。
「酒場に行けば王党派や貴族派の動きだって耳に入らあ、それからどっちに雇われるか決めても、アンタに損はねえだろ?」
「そうね、でも顔近づけるの止めてよ、汗だけじゃなく酒臭いわよ」
「ひでぇなあ、そんなんじゃ傭兵なんてやってけねえや。一月や二月風呂に入れなくて当たり前なんだからよ」
「…まあいいわ、私はロンディニウムに行きたいんだけど、酒場は?」
「そこよ、ロンディニウムの街道沿いにあるんだ、へへへ話が早ぇや姉御!」
「あねごぉ?」
ルイズは呆れて口を開けたが、すぐに気を取り直し、きゅっと口を結んで早足で歩き出した。
「そ、そんなに急がなくても酒場は逃げねえよ!」

ブルリンは慌ててルイズを追いかけた。

トリスティン魔法学院。
フーケは、ロングビルとして生活していた。
一件平穏に見えるその生活だが、このところある思考が頭から離れない。
アルビオンの内乱はどの程度の規模なのだろうか、それが噂話ばかりでハッキリしない。土くれのフーケとしてマジックアイテムを売りさばき、その金をサウスゴータのある土地へ送り、ついでにアルビオンの情勢も調べていた。

ところが、最近は土くれのフーケとして活躍するどころか、情報を集めること自体が危険な気がして仕方がない。
オールド・オスマンは魔法学院の学院長に収まるような人物ではない、より高等な研究機関にいるべき人物だと、何度か聞いたことがある。

このセクハラジジイのどこが重要人物なのかと疑問に思ったが、ある日その疑問は解消された。

オールド・オスマンの机の上に、壊れた水時計が置かれていた。
お盆に水を張り、その上に針を浮かべて時刻を指し示すというもので、太陽の角度を示している。
砂時計のように限定した時間を計る物ではない。

時刻を指し示す針が水の中に沈んでおり、魔法の効果が切れているのが分かる。
しかし、オールド・オスマンはその時計に指を当てて、針ではなく水面の波を見ていた。
「ミス・ロングビル、来客用のお茶を四人分、準備しておいてくれんか」
「…? はい」
はじめは何のことだか理解できなかった。
しかし、それからすぐに王宮からの使者一名と従者三名が到着し、ロングビルはその水時計に興味を持った。

だが、オールド・オスマン不在の間にその水時計を調べても、まったく魔法の反応がない。
そしてある日、ロングビルは水盆の水を交えといてくれと頼まれた。
オールド・オスマンがトイレに行っている間、ロングビルは横着して、その水を花瓶の中に捨ててしまった。
するとどうだ、しおれた花がみるみるうちに生き返り、生けられた時以上に見事に咲き始めたではないか!
驚いたロングビルは、この水には何かの秘薬が仕込まれているに違いないと考え、すぐにディティクト・マジックを唱えた。
しかし何の反応もない。
他の方法で探査しても、何の反応も無かった。

その日からロングビルは、オールド・オスマンは自分の知らない魔法を使っているという結論に達したのだ。
生命に関与するということは、水系統?
風や土の魔法のように、人の接近を知るセンサー?
正体不明の魔法で監視されていると思うと、背中にも冷たいものを感じる。

ロングビルは、以前のように自由に行動できなくなっていた。



「ミス・ロングビル、厨房にシエスタというメイドがおったはずじゃ、ちょっと彼女を呼んできてくれんか?」
考え事をしていたロングビルに、オールド・オスマンが声をかけた。
「オールド・オスマン、年の差を考えて下さい」
「な、何を言うか!ワシは本気じゃ!」
さすがのロングビルも今の発言には引いた、ドン引きだッ!
「…あ、いや、そういう意味じゃなくて、とにかく連れてきてくれんか、あとワインも一本持ってきてくれ」
昼間からメイドとワイン、どう考えてもいかがわしい要求だった。

ため息をつきながら学院長室を出て行ったロングビルを見て、オールド・オスマンはロングビルにも負けないため息をはいた。

オールド・オスマンは、空のワイングラスを手に取ると、中にワインが入っているかのようにグラスを揺らした。
「北風がバイキングを作った…じゃったかのう」

もし、今が真夜中であれば、この老人の体が薄く発光しているのが誰の目にも明らかだっただろう。


この日。
厨房付きのメイドが一人減り。

生徒が一人増えることとなった。



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