「おいっ、花京院。起きろッ!」
聞き慣れない声で目が覚めた。
「ん…… ここは……」
まだ意識がはっきりしない。
一体、僕はどうしたんだ?
まず、状況を確認する。
大小様々な遊具が、視界一杯に広がり、くるくると回っている。
「ここは…… 遊園地? な、何故、僕はこんな所に……」
何故、僕はこんな所にいるんだ?
着ている服も学ランだし。
しかも、何故か一人でコーヒーカップの上にのっている。
とりあえず僕は、直前まで何をしていたかを思い出す。
「確か、僕はヨモギの葉を口にして……」
ちょっと待て。
何で、そこから遊園地に飛ぶことがあるんだ?
そもそも僕は、異世界に来ているんじゃあないのか?
余りにも不条理すぎる! 論理的じゃないぞッ!
「待てよ、この状況…… 覚えがあるッ!」
そうだ。コレは確か記憶にあった、赤ん坊のスタンド使い……
「『デス・サーティーン』ッ!」
マズイッ!
スタンドの出せない僕は、一般人となにも変わらない!
何とかして起きなくては!
僕は急ぎコーヒーカップから離れ、全体を広く見渡せる所に移る。
「ラリホー。何をやっているんだ、花京院ンンーーッ!?」
後ろから声が聞こえる。
しまった! もう追いつかれていたのか!
振り向くとそこには、記憶と寸分違わない、鎌を持った死神のヴィジョンを持つスタンドが一体。
無駄かもしれないが、僕は近くにあった木の枝を持って、精一杯の抵抗の意を示す。
「デス・サーティーン! 貴様、どうやってここにッ!」
「デス・サーティーン? 何をいっているんだお前は。ラリホー」
「とぼけるなッ!」
「ラリホ?」
目の前のデス・サーティーンは心底解らないといった様子で、首を傾ける。
……もしかして、違うのか?
いや、油断はするな。
「なんだか解らないが、俺はムラサキヨモギの精さ。ラリホー」
「ムラサキヨモギ?」
そういえば、僕が倒れる前に口にしたヨモギの名前が、そんな名前だったな。
目の前の、自称ムラサキヨモギの精は、変わらないペースで、口上を続ける。
「お前はこれから、炎髪灼眼の討ち手と優柔不断男と一緒に紅世の徒と戦ったり、
『宇宙人、未来人、超能力者を探し出して、一緒に遊ぶこと』が目的の団体に所属したり、
所構わずフラグを立てまくる、異能を消す男と一緒に、学園都市で不幸の避雷針をやったりするのさ。ラリホ~」
何を言ってるのか解らないが、かなりマズイ状況だ!
「さて、覚悟はいいかい? 俺は出来てる。ラリホー」
お前が覚悟してどうするんだ!
僕はそう、心の中で毒づいた。
しかし、スタンドの出せない僕には、為す術がない。
「うわああああああ! やめろッ、やめてくれッ!」
僕は持っている枝を必死で振り回す。
しかし抵抗むなしく、自称ムラサキヨモギの精は、僕の目の前まで迫ってきた。
万事休すか……
僕はすっと、目を閉じ、歯を食いしばった。
しかし、来ると思っていた衝撃はなく、代わりに冷たい冷気が顔にかかった。
僕はゆっくり、目を開ける。
「ラグース・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース」
「ウッガーッ!」
そこには、ツララに頭を打ち抜かれた、自称ムラサキヨモギの精がいた。
僕はそのツララが飛んできた方向を見る。
そこにはあの、青い髪のちびっ子が杖を構えて、こちらを見ていた。
「間に合った」
「えっと、君は?」
「本当のムラサキヨモギの精。はしばみ草の精も兼務している」
なんだか良く解らないが、とりあえず助かったのだろうか?
「さぁ、はやく起きて。才人やシエスタ達が待ってる」
目の前の少女の、そんな声を聞いて、再び僕の意識は遠くなっていったのだった。
「おい、花京院! しっかりしろよ! なぁ!」
「ノリアキさん、大丈夫ですか! ノリアキさん!」
才人とシエスタの声が聞こえる。
どうやら、二人で僕の身体を揺さぶっているらしい。
重たい瞼を開けると、そこは厨房だった。
……戻ってきたんだな。
僕はゆっくりと、机に突っ伏していた身体を起こす。
「ああ、やっと起きたのかよ、この野郎!」
「大丈夫ですか?」
才人の顔の赤みが引いている。
どうやら僕は、酔いが抜けるぐらいの時間、ここで突っ伏していたようだ。
僕は二人に向き直る。
そして、右手を口元に持っていき、ありのままに今、起こったことを伝えた。
「あ、ありのまま、今、起こったことを話します!
『ヨモギを食べたと思ったら、生ゴーヤ並みに苦かった』
な、何を言っているのか解らないと思いますが、僕にも何が起こったのか解りませんでした。
舌がどうにか成りそうでした……
草の味とか、生なんだから苦いのは当たり前とか、そんなちゃちなものでは、断じてありませんでした。
もっと恐ろしい苦みの片鱗を味わいました」
「か、花京院?」
「ノ、ノリアキさん?」
「いや~、どうなることかと思ったぜ」
「もう、二度と食べたくありません……」
ルイズの部屋への帰路。
僕らはあの後、すぐ厨房を後にした。
シエスタやマルトーさんが、心配そうにこちらの様子を見てくるので、非常に居辛いものがあった所為だが。
僕と才人は空を見上げる。
相変わらず、そこには二つの月。
「何か、ああも月がでかい面してると、すげぇ憎たらしいよな」
才人がそんなことを言い出した。
確かに、アレは僕らが異世界に来てしまったという、象徴でもあるんだと思うと、非常に憎たらしく感じる。
才人は何を思ったか、かがみ込んで石を拾う。
そして、何を思ったのか、その石を空に向かって思いっきり投げた。
「あ~、少しはすっきりしたな」
憂さ晴らしか。
気分転換には良いかもな。
僕も一つ、真似をして、空に向かって石を投げた。
僕の投げた石は綺麗な放物線を描き、ガンという、小気味のいい音が響かせる。
見ると、前方にいたギーシュに当たっていた。
「ギーシュ! どうしたのよ! ギーシュ!」
近くにいる金髪ロールの子が、がくがくとギーシュのマントをもって揺らしている。
どうやら何が起こったか、気づいていないようだ。
「やべぇ!」
「逃げますよ、才人」
「おう!」
僕らは足早に、ルイズ達の寮へと向かっていった。
階段を駆け上がって、僕らはルイズの部屋にたどり着く。
そういえば結局、僕の所為で、才人もルイズのことを放置していたらしい。
ルイズのことだ。
主人を不快にさせる使い魔と下僕には罰を与える等といって、また鞭を持っているに違いない。
僕らは覚悟して、部屋のドアに手をかける。
しかし、ドアが開かない。
どうやら鍵をかけているようだ。
「ああっ! 俺等の毛布!」
僕らの毛布と、昨日、屯所から貰った布団が放り出されているのを見て、才人が叫び声をあげた。
その声に反応して、部屋の中から声が聞こえる。
「あああああんた達を人間扱いした、私が間違っていたわ。授業の事だけじゃ飽きたらず、ご主人様の事まで放置して……
あんた達、今日から使い魔と下僕らしく、外で寝なさい」
どもっている。どうやらルイズは相当、怒っているようだ。
「部屋の外は、風が入ってくるから寒いんだが」
「きっと、夢の中のわたしが暖めてくれるわ」
才人が何とか部屋に入れないか、交渉するもばっさりと切り捨てられる。
とりつく島も無しだ。
しかし、それだけでこんなに怒るとは……
夢の中で暖める? 何のことだ?
「才人。何やったんですか?」
「いやな、ちょっと夢の事でからかっただけだぜ?」
僕はまたか、と思い、手を顔に当てた。
才人はもう少し学習するべきだと思う。
頭を下げるのがいやなのは、僕も同じだが、何故虎の尾を踏む。
わざとか。わざとやっているのか。
沸々と沸いてくるぶつけようのない怒りを、何とかこらえて、僕は才人ととりあえずどうするかについて話し合う。
「で、どうするんです?」
「とりあえず、風呂に入る?」
廊下の空いた窓から、冷たい風が入ってくる。
「却下です。湯冷めをして、風邪を引くのがオチですから」
「じゃあ、一日中入っておくとか」
「のぼせますし、そんな薪の量何処にあるんです? 温度調節だって大変なんですよ?」
僕と才人は改めて、大きなため息をついた。
「仕方ない、このまま毛布にくるまって、朝が来るのを待ちましょう」
「それしかないのか……」
呪われろ! お前のゼロに明日などあるものか!
僕たちは、そんなルイズに対する呪詛を心の中で吐きながら、寒い夜を過ごすことになったのだった。
To be contenued……
聞き慣れない声で目が覚めた。
「ん…… ここは……」
まだ意識がはっきりしない。
一体、僕はどうしたんだ?
まず、状況を確認する。
大小様々な遊具が、視界一杯に広がり、くるくると回っている。
「ここは…… 遊園地? な、何故、僕はこんな所に……」
何故、僕はこんな所にいるんだ?
着ている服も学ランだし。
しかも、何故か一人でコーヒーカップの上にのっている。
とりあえず僕は、直前まで何をしていたかを思い出す。
「確か、僕はヨモギの葉を口にして……」
ちょっと待て。
何で、そこから遊園地に飛ぶことがあるんだ?
そもそも僕は、異世界に来ているんじゃあないのか?
余りにも不条理すぎる! 論理的じゃないぞッ!
「待てよ、この状況…… 覚えがあるッ!」
そうだ。コレは確か記憶にあった、赤ん坊のスタンド使い……
「『デス・サーティーン』ッ!」
マズイッ!
スタンドの出せない僕は、一般人となにも変わらない!
何とかして起きなくては!
僕は急ぎコーヒーカップから離れ、全体を広く見渡せる所に移る。
「ラリホー。何をやっているんだ、花京院ンンーーッ!?」
後ろから声が聞こえる。
しまった! もう追いつかれていたのか!
振り向くとそこには、記憶と寸分違わない、鎌を持った死神のヴィジョンを持つスタンドが一体。
無駄かもしれないが、僕は近くにあった木の枝を持って、精一杯の抵抗の意を示す。
「デス・サーティーン! 貴様、どうやってここにッ!」
「デス・サーティーン? 何をいっているんだお前は。ラリホー」
「とぼけるなッ!」
「ラリホ?」
目の前のデス・サーティーンは心底解らないといった様子で、首を傾ける。
……もしかして、違うのか?
いや、油断はするな。
「なんだか解らないが、俺はムラサキヨモギの精さ。ラリホー」
「ムラサキヨモギ?」
そういえば、僕が倒れる前に口にしたヨモギの名前が、そんな名前だったな。
目の前の、自称ムラサキヨモギの精は、変わらないペースで、口上を続ける。
「お前はこれから、炎髪灼眼の討ち手と優柔不断男と一緒に紅世の徒と戦ったり、
『宇宙人、未来人、超能力者を探し出して、一緒に遊ぶこと』が目的の団体に所属したり、
所構わずフラグを立てまくる、異能を消す男と一緒に、学園都市で不幸の避雷針をやったりするのさ。ラリホ~」
何を言ってるのか解らないが、かなりマズイ状況だ!
「さて、覚悟はいいかい? 俺は出来てる。ラリホー」
お前が覚悟してどうするんだ!
僕はそう、心の中で毒づいた。
しかし、スタンドの出せない僕には、為す術がない。
「うわああああああ! やめろッ、やめてくれッ!」
僕は持っている枝を必死で振り回す。
しかし抵抗むなしく、自称ムラサキヨモギの精は、僕の目の前まで迫ってきた。
万事休すか……
僕はすっと、目を閉じ、歯を食いしばった。
しかし、来ると思っていた衝撃はなく、代わりに冷たい冷気が顔にかかった。
僕はゆっくり、目を開ける。
「ラグース・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース」
「ウッガーッ!」
そこには、ツララに頭を打ち抜かれた、自称ムラサキヨモギの精がいた。
僕はそのツララが飛んできた方向を見る。
そこにはあの、青い髪のちびっ子が杖を構えて、こちらを見ていた。
「間に合った」
「えっと、君は?」
「本当のムラサキヨモギの精。はしばみ草の精も兼務している」
なんだか良く解らないが、とりあえず助かったのだろうか?
「さぁ、はやく起きて。才人やシエスタ達が待ってる」
目の前の少女の、そんな声を聞いて、再び僕の意識は遠くなっていったのだった。
「おい、花京院! しっかりしろよ! なぁ!」
「ノリアキさん、大丈夫ですか! ノリアキさん!」
才人とシエスタの声が聞こえる。
どうやら、二人で僕の身体を揺さぶっているらしい。
重たい瞼を開けると、そこは厨房だった。
……戻ってきたんだな。
僕はゆっくりと、机に突っ伏していた身体を起こす。
「ああ、やっと起きたのかよ、この野郎!」
「大丈夫ですか?」
才人の顔の赤みが引いている。
どうやら僕は、酔いが抜けるぐらいの時間、ここで突っ伏していたようだ。
僕は二人に向き直る。
そして、右手を口元に持っていき、ありのままに今、起こったことを伝えた。
「あ、ありのまま、今、起こったことを話します!
『ヨモギを食べたと思ったら、生ゴーヤ並みに苦かった』
な、何を言っているのか解らないと思いますが、僕にも何が起こったのか解りませんでした。
舌がどうにか成りそうでした……
草の味とか、生なんだから苦いのは当たり前とか、そんなちゃちなものでは、断じてありませんでした。
もっと恐ろしい苦みの片鱗を味わいました」
「か、花京院?」
「ノ、ノリアキさん?」
「いや~、どうなることかと思ったぜ」
「もう、二度と食べたくありません……」
ルイズの部屋への帰路。
僕らはあの後、すぐ厨房を後にした。
シエスタやマルトーさんが、心配そうにこちらの様子を見てくるので、非常に居辛いものがあった所為だが。
僕と才人は空を見上げる。
相変わらず、そこには二つの月。
「何か、ああも月がでかい面してると、すげぇ憎たらしいよな」
才人がそんなことを言い出した。
確かに、アレは僕らが異世界に来てしまったという、象徴でもあるんだと思うと、非常に憎たらしく感じる。
才人は何を思ったか、かがみ込んで石を拾う。
そして、何を思ったのか、その石を空に向かって思いっきり投げた。
「あ~、少しはすっきりしたな」
憂さ晴らしか。
気分転換には良いかもな。
僕も一つ、真似をして、空に向かって石を投げた。
僕の投げた石は綺麗な放物線を描き、ガンという、小気味のいい音が響かせる。
見ると、前方にいたギーシュに当たっていた。
「ギーシュ! どうしたのよ! ギーシュ!」
近くにいる金髪ロールの子が、がくがくとギーシュのマントをもって揺らしている。
どうやら何が起こったか、気づいていないようだ。
「やべぇ!」
「逃げますよ、才人」
「おう!」
僕らは足早に、ルイズ達の寮へと向かっていった。
階段を駆け上がって、僕らはルイズの部屋にたどり着く。
そういえば結局、僕の所為で、才人もルイズのことを放置していたらしい。
ルイズのことだ。
主人を不快にさせる使い魔と下僕には罰を与える等といって、また鞭を持っているに違いない。
僕らは覚悟して、部屋のドアに手をかける。
しかし、ドアが開かない。
どうやら鍵をかけているようだ。
「ああっ! 俺等の毛布!」
僕らの毛布と、昨日、屯所から貰った布団が放り出されているのを見て、才人が叫び声をあげた。
その声に反応して、部屋の中から声が聞こえる。
「あああああんた達を人間扱いした、私が間違っていたわ。授業の事だけじゃ飽きたらず、ご主人様の事まで放置して……
あんた達、今日から使い魔と下僕らしく、外で寝なさい」
どもっている。どうやらルイズは相当、怒っているようだ。
「部屋の外は、風が入ってくるから寒いんだが」
「きっと、夢の中のわたしが暖めてくれるわ」
才人が何とか部屋に入れないか、交渉するもばっさりと切り捨てられる。
とりつく島も無しだ。
しかし、それだけでこんなに怒るとは……
夢の中で暖める? 何のことだ?
「才人。何やったんですか?」
「いやな、ちょっと夢の事でからかっただけだぜ?」
僕はまたか、と思い、手を顔に当てた。
才人はもう少し学習するべきだと思う。
頭を下げるのがいやなのは、僕も同じだが、何故虎の尾を踏む。
わざとか。わざとやっているのか。
沸々と沸いてくるぶつけようのない怒りを、何とかこらえて、僕は才人ととりあえずどうするかについて話し合う。
「で、どうするんです?」
「とりあえず、風呂に入る?」
廊下の空いた窓から、冷たい風が入ってくる。
「却下です。湯冷めをして、風邪を引くのがオチですから」
「じゃあ、一日中入っておくとか」
「のぼせますし、そんな薪の量何処にあるんです? 温度調節だって大変なんですよ?」
僕と才人は改めて、大きなため息をついた。
「仕方ない、このまま毛布にくるまって、朝が来るのを待ちましょう」
「それしかないのか……」
呪われろ! お前のゼロに明日などあるものか!
僕たちは、そんなルイズに対する呪詛を心の中で吐きながら、寒い夜を過ごすことになったのだった。
To be contenued……