ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

L・I・A 第14話

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第14話 サザエさんとは言わせない・後編

「腹減ったァ~」
気だるい声が廊下に響く。仗助の声だ。
あの後、厨房の方まで来たのは良かったが、いかんせん仗助は部外者である。料理人として迎えられたトニオの様にホイホイと入ってはいけない。
「やっぱり忙しいィーみてェーだしよォーーー」
丁度昼時、忙しい時間帯である。どうにかならないものかと頭を悩ませていたときであった。
「あの~、どうかされましたか?」
後ろからの声に振り向くと、そこには1人のメイドの少女が立っていた。
「あ、あんたは・・・・・」
仗助には見覚えがあった。昨夜もいた少女。
「あ・・・・」
少女にも見覚えがあった。昨夜突如現れた2人のうちの1人。奇抜な髪型に奇妙な黒装束の青年。
「あの・・・えっとよォ~~確かァ~~」
「シエスタです。昨日もお会い・・・しましたよね?」
「あ、ハイ。そうッスねェー。あ、俺、東方仗助つーモンです」
「・・・・?珍しい名前でいらっしゃいますね?」
「よく言われるッス」
やはり仗助、あったばかりの人間には結構腰が低い。しかし、それがシエスタに安心感を与えていた。
「(てっきり怖い人かと思ってたらそうでもないです)」朝の叫びや姿を見る限り、怖い印象を持っていたが、そうでもないと言うことが分かり、ニコッと微笑みながら再度聞く。
「ふふ、そうでしたか。それで、どうかなさいましたか?」
「実はよォ~・・・」
ルイズの勝手な、そして理不尽な飯抜きの顛末を伝える仗助。
「まぁ!それは大変ですね!人の身で使い魔になってしまっただけでも災難ですのに」

「分かるか?ったくよォー、トニオさんも忙しいだろうしなァー」
「あの~~それでしたら・・・」
シエスタが控えめに上目遣いで尋ねてくる。
「もしよかったら、賄いの物ですが食べていきますか?」
なんと見計らったタイミングッ!普通なら遠慮がちにするなどの行動に移るが、あいにく仗助はそんなモノどこ吹く風だった。
「マジっスかァ~?そいつァありがてェーー。マジで腹減ってたんスよォー」
仗助。日本人の美徳『遠慮』ゼロ。
「うふふ。わかりました。こちらにどうぞ」
そんな仗助の姿な思わず笑みがこぼれるシエスタだった。

「ウんメェェー!!」
美味。実に美味だ。トニオにこそ及ばないものの、どこか愛情のこもったシチューだった。
「余り物で作ったものですが、沢山ありますから、良かったらおかわりもどうぞ」
「グレートだぜェーー余りモンとは思えねェーゼェーー」
「うふふ、ありがとうございます」
目の前に食いっぷりの良い人間が居るというのは『作る』側から見れば気持ちの良いモノである。
そんなやけに嬉しそうな視線を受けて仗助が尋ねる。
「もしかしてよォーーーこのシチューはシエスタが作ったのか?」
ほのぼのと仗助を見ていたシエスタは慌てて答える。「はっ、はいッ!私が作ったんですよ?」
「グレート。マジにグレートだぜェーーシエスタよォーーーウマイ飯をアリガトよォー」
「あっ、ありがとうございますッ!」
やはりウマイと言ってもらえるのは作り手にとって至上の喜びである。
「しかしよォーーー」
だがこの東方仗助、恩を受けっぱなしでいる様な人間ではない。
「何か俺にも手伝わしてくれ。このまま恩を仇で返すっつーワケにもいかねえしよォー」

「いえ、そんな、大丈夫ですよ」
「是非手伝わしてくれよォー。なんかこのまんまじゃあ気分悪いッスからねェー」
そんな仗助に折れたのか、じゃあ遠慮なく、と言った感じで申し出を受けるシエスタ。
「じゃあ、このケーキを運ぶのを手伝って貰えますか?」
「了解だゼェー」

運びの手順をレクチャーしてもらい、シエスタと共にケーキの配膳をする仗助。
シエスタの他に仕事をしている小柄なメイド達の中に、たった1人、ジョースター家の血統の証とも言える長身に筋肉質な体躯、そして真っ黒な学ラン姿というのは、言うまでも無く浮いていた。
しかし、不思議な事にそれがルイズに見付かることは無かった。

配膳もずいぶんとこなした頃、やけに盛り上がっているテーブルに気が付いた。
「おいギーシュ!お前、今誰と付き合っているんだよ?」
「何を言っているんだい?誰かと付き合う?僕にはそんな女性はいないよ?薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
なんてキザなセリフだ。自分を薔薇に例えるなんざ、きっと頭が沸いているに違ェーねェー
こいつはきっと可哀想な境遇なんだわ、どんなに格好よく出てきても、すぐさまフルボッコにされる運命なんだわ。って感じの哀れみ目でギーシュを見つめた。
その時、彼のポケットから物が落ちた。ガラスでできた小壜である。中に液体が入っているようで、なんとなく大事そうな物だと仗助は感じ、哀れみの目のままそれを拾ってやった。
「ポケットから落ちたッスよォー」
そう言ってテーブルの上に置いてやる。
ところがギーシュは苦々しげにそれを押しやった。
「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
その小壜に友人達が気付く。
「それはモンモランシーの香水じゃないのか?」
「しかも彼女自身の為だけに調合するヤツだと見たッ!」
「そいつがギーシュのポケットから出てきたということは・・・・」
「「「お前はモンモランシーと付き合っているッ!!!そうだなッ!!」」」

「ち、違う。いいかい?・・・・」
ギーシュが何か言いかけていたが、もはや後の祭りだった。
「ギーシュさま・・・」
「ケティ。いいかい・・」
「さようならッ!!」
ビシッ!
「レバッ!!!」
しかし時は止まらない
「モンモランシー。誤解なんだ!彼女とはただ、ラ・ロシェールね森に遠乗りをしただけなんだ!」
二人で遠乗りが『だけ』ってどーゆー思考してんだ?コイツはよォー
「やっぱりあの一年生に手を!しかも五回もッ!?」
「え!?ちょ、ま・・・」
「うそつき!」
「チョバムッ!!」
モンモランシーはワインの壜で彼の鳩尾に突き出した。そして彼女は栓を開け、中身をギーシュの頭にかけてから去っていった。
・・・・・・
沈黙が流れた。
いや、ギーシュだけがピクピクと痙攣を起こしているが・・
「ひっ、カヒッ!ホヒッ!」
どうやら軽く呼吸困難を起こしているが、まぁ大丈夫なレベルだろうと思い、仗助はシエスタと共に歩き出した。
「ま、ホヒッ。待ちたまえ。コヒッ」
それを呼び止める声が聞こえる。立ち上がったギーシュだ。しかし復活しきれていない。
「なんだァー?」
ギーシュは顔を拭き、椅子に足を組んで座り、ふんぞり返る。キザな行為に頭痛がする。
「君の・・はひっ、せいホヒッ、で二人のレフヒヒ、ディの名誉が傷ついたじゃないか。どうしてくれるんだね?」
喋っているうちに治ってきたようだ。仗助はそんなギーシュに呆れて返す。
「そりゃァよォーーー二股なんざかけてるオメェがよォーーー悪いんじゃあねェのか?」
ギーシュの友達がどっと笑う。
「「「そうだ!お前が悪い!」」」
それにしてもこの3人、ノリノリである。

「いいかい?僕があの時・・・ああ、そうか。君なんかに機転を期待した僕が馬鹿だった。君はあのルイズが呼び出した変な平民じゃないか。いきたまえ」
プッ・・・・
「あァ?何が変だって?」
「ハハハ!平民は自分の異端さも理解出来ないのか!?鏡を見てご覧よ!特にその・・・」
その空間に何処からか13階段をのぼる音が聞こえるが気付くものは居なかった。
「『頭』を!!」
プププッププッププププププププッ
「まるで『鳥の巣』じゃないか!!ハハハハハハ!」
「ギャハハハハハハハ!ウマイッ!」
ププププ、プッツ~~~~~~~~~ン
何かが切れた。決して切ってはいけない、そしてやってはいけない事をやってしまったギーシュ。
「おい・・・・・今、なんつった?・・・」
空気が変わる。半端無くピリピリした空気が辺りを包む。
「な、なんだね?」
流石のギーシュも気付く。何かがおかしい。
「俺の頭がなんだって?・・・・・」
更に空気が重くなる。
「誰の・・・・・・・・」



「誰の頭がサザエさんみてェーーだとォーーーーーー!?」
ブッチーーーーーーン

やってはいけない事ッ!それはッ!仗助をプッツンさせることッ!
「なんなんだッ!?そんなこと一言も・・・ていうかサザエさんって誰だーーー!?」


ギーシュが叫ぶが、もうこうなったら手遅れだった。「確かに聞いたぞコラァーーーーーー!!!!」
ドゴォッ!
「ヘブゥッ!」
ズシャアアッ!
いきなり殴られ、吹き飛ばされるギーシュ。しかし、仗助は倒れた彼に近づいていく。
「誰の頭がよォーー」
ギーシュの首根っこを片手で掴み、締め上げる。
「イデオンのコスモみたいだってェーーー!?」
「誰だァーーーーーーー!?」
「ドラァーーーーーーーーーーーー!!!!」
ボグシャアッ!
「ウゲェー!!」
そのまま頭からテーブルに落とす。ギーシュの体はテーブルを突き抜け、上には二本の足だけが逆さまに突き出ている。
「クレイジーダイヤモンドッ!」
周りの生徒は見ていた。仗助の体から一瞬だけ『人型の何か』が出てきたのを・・・・・そして・・・
「み、見ろッ!テーブルが!?」
強引に突き破られたはずのテーブルは原形を取り戻し始め、ギーシュと一体化するように彼の体を拘束する。
上半身はテーブルの下に沈み、手も拘束され、二本の足がキレイに上に出ている。それはまさに、木と人のオブジェであった。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!ゼロの使い魔がギーシュをのしたーーー!!」
「なんだあれ!?錬金の魔法か!?」
近くで見ていた者はパニックになり、色々な言葉を口に出す。
かくして、トニオと共に名をはせる男の武勇伝の始まりであったのだった・・・・

あのあとギーシュは教師達の手を借りて救助されたが、いかんせん綺麗に一体化していた為、拘束部分をノコギリで精密に切るという手作業になった。
特に、首の部分の切り離しの際には、恐怖のあまり、少々、茶を漏らしてしまったのは本人の秘密だ。
「クソッ!クソッ!クソッ!平民の癖にッ!僕にこんな仕打ちをッ!」
「許さない・・・・・」

To Be Continued・・・・・

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