ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

疑念! 意思の在り処

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疑念! 意思の在り処

ゼロ戦の周囲を竜騎士隊が固めて飛ぶ。弾切れのゼロ戦にとってはありがたい護衛だ。
しばらくするとスタープラチナの目が前方にいる十数匹の敵竜騎士を発見した。
迂回できそうなので承太郎はゼロ戦を傾け方向を変える。
すると他の竜騎士もゼロ戦を囲むように軌道を変え、戦闘の竜騎士が速度を調節してゼロ戦に接近してきた。
承太郎は伝令用の小さな黒板にスタープラチナで素早く文字を書いてそれを見せる。
『前方に竜十数騎確認、回避する』
彼は慌てて前方を確認するが敵影など見つけられなかった。
だが『ひこうき』という奇妙な風のマジックアイテムを使う彼等は、多分自分達では解らない何らかの方法で敵の存在を知りえたのだろう。
ゼロ戦と竜騎士隊は順調に敵を回避しながらダータルネスへと接近する。
しかしダータルネスまで後少しというところで、承太郎はそれを発見した。
それは百騎を越えようかという竜騎士の群れ。
そして地図につけられた幻影作戦目的地は、百の竜の群れの目前であった。
つまり発見される前提で百の竜の前に飛び出さなければならない。
百の竜の存在を承太郎は小さい黒板に書いて皆に教える。
すると竜騎士隊は互いの顔を見てはうなずき合い、百の竜の待つ空へと突っ込む。
「えっ!? じょ、ジョータロー! 大変、みんなが……!」
「野郎……そういう、事か。……何が護衛だ、あいつ等は……捨て駒だ」
「捨て……? ま、まさか、囮になって私達を……」
「……行くぜ、ルイズ。詠唱の準備に入れ」
「ジョータロー!? 本気!?」
竜騎士隊を盾にするようにしてゼロ戦を飛行させながら、承太郎は奇妙な感覚に陥った。

――これは本当に、俺が望んだ戦いなのか?


味方の竜騎士が敵の竜騎士の注意を引く。
そして複数の竜騎士から魔法を受けて墜落し、またはゼロ戦への攻撃を自ら受けて墜落し、彼等は若い命をアルビオンの空に散らしていく。

――こうなる事は解っていたはずだ。ウェールズの仇を討つための戦争なんだからな。

承太郎はスタープラチナで座席の下のレバーを引っ張った。
コルベールからもらった説明書の内容が正しければ、これで速度が増し敵を振り切れる。
尾翼下の胴体の外板がはずれて鉄の筒が現れると、そこから青白い炎が噴出する。
炎の使い手コルベールが開発したロケット推進機関だ。

――仇を討つなら俺一人でアルビオンに忍び込みクロムウェルを暗殺すればいい。

ゼロ戦の加速に敵の竜騎士達は驚愕し、追いつく事も魔法の狙いをつける事も不可能。
これで作戦は成功したも同然だろう、竜騎士隊の犠牲を払って。

――なぜ俺は異世界の戦争なんかに首を突っ込んでいる?

ゼロ戦は計器速度で450ノット近い速度を捻り出して飛び続ける。
敵を振り切った今、ダータルネスまで障害は無い。

――この世界で戦う理由を見つけた途端、俺はそれをしなくてはならないと思った。

ウェールズを殺し、そして死後までも彼の生命と名誉をもてあそんだレコン・キスタを、確かに承太郎は許せないし怒りも感じている。
だが何かが違う。その怒りが何かに利用されている気がする。

ダータネルスの港に到着し、船を係留するための桟橋が多数見えてきた。


「上昇して。虚無の魔法を使うわ」
「…………」
承太郎は無言でルイズの指示に従い、ゼロ戦を操縦する。
高度を下げて減速し、風防を開けてルイズが詠唱を開始すると、承太郎は先程まで考えていた疑問が薄らいでいくのを感じた。

ルイズの虚無の詠唱を聞いていると、なぜか心が安らぐ。
作戦がうまくいきそうだから安心しているのだろうか?
仲間を――犠牲にしたのに。
わずかな疑心が、安らぎを拒絶する。

エクスプロージョン。ディスペルマジック。
あの時に感じた高揚感や信頼感などは、今感じているこの感情は、まさか。

詠唱が完成する。
描きたい光景を強く心に思い描くべし。
なんとなれば、詠唱者は、空をも作り出すだろう。
虚無の魔法イリュージョンにより雲が掻き消え、空に幻影が描かれ始める。
それは巨大な戦列艦の群れ。
ここから何百キロメイルも離れた場所にいるはずのトリステイン侵攻艦隊の姿。

ロサイスに向かっていたアルビオン艦隊は、ダータルネス方面からの急便の知らせを聞き全軍を反転させた。

ヴュンセンタール号の作戦会議室で将軍は報告を受け取り、もぬけの殻となったロサイスへ全軍を全速前進させた。
しかし上陸が成功しても苦しい戦いになるだろう、アルビオンには手つかずの五万の軍隊が眠っているのだ。


帰還中のゼロ戦の中には沈黙が流れていた。
竜騎士隊の犠牲を目の当たりにしてルイズは落ち込んでいたが、きっと承太郎も同じ気持ちだろうと思い無言の彼を気遣っていた。
だが承太郎は、確かに彼等の犠牲を憂いてはいたものの、ずっと考え事をしていた。

『使い魔として契約していない竜は気難しく、乗りこなすのが一番難しい幻獣なんだ。
 乗り手の腕、魔力、頭のよさまで見抜いて乗り手を選ぶんだぜ』

先日、竜騎士隊の一人が言った言葉を思い出す。
つまり使い魔として契約すれば、竜は無条件で主を乗り手として選ぶ。
タバサのシルフィードもとても従順で、タバサだけでなく自分達も平気で乗せる。
使い魔とは、そういうものなのだろうか。
だとしたら自分はどうなのか?
伝説の使い魔ガンダールヴのルーンを刻まれた自分は?

この世界で戦うと決めたのは本当に自分の意思か?
この世界でウェールズの仇を討つと決めたのは本当に自分の意思か?
この世界でルイズを守ると決めたのも本当に自分の意思なのだろうか?

自分の怒りは悲しみは、使い魔のルーンに介入されてしまっているのではないか。
脳味噌が頭から左手に移ったような気分になり、承太郎はタバコを点けた。
そういえば最近あまり吸っていなかった、ルイズが嫌がるからだ。
「ちょっと、こんな所で吸わないでよ。煙がこもるじゃない」
「……やかましい、黙ってろ」
ルイズを気遣ってタバコを吸うのをやめようかと一瞬考えたのは、本当に自分の意思か?
気分転換のために吸っているはずのタバコが、やけに不味く感じられた。
自分の意思の在り処はどこなのだろう? 頭か、胸か、それとも左手か。


一匹の風竜がアルビオンの空を飛んでいた。
黒衣の男を乗せたその竜は、何かを発見してそれを主に教えよう小さく鳴く。
だが竜は人語を話せない。
伝説の韻竜でもなければ、人間との完全な対話は不可能だ。
だが黒衣の彼は風竜の頭を撫でるとを森の中に降下させ、そこに倒れている竜騎士隊を発見する。
着ている服装を見るにアルビオン軍ではないようだが、だとするとトリステインかゲルマニアの連中だろうか? なぜこんな場所に?
主から連合軍に協力するよう言われているし、見捨てていくのも寝覚めが悪い。
人間十名は全員重傷、風竜は一匹だけ無事で擦り傷がある程度だが気絶している。
残る九匹の風竜は全部死んでいた。死因は魔法で受けた傷や落下した衝撃。
そして生き残った十人の騎士達が死ぬのは時間の問題であり、水のスクウェアメイジが貴重な秘薬を使っても助かりそうにない奴もいる。だが。
「死んでいないのなら……問題なく『治す』!」
黒衣の男は、手袋をつけた両手からさらに『腕』を出して、竜騎士隊の騎士と竜を次々と触っていった。
「さて、こいつ等が目を覚ましたら……トリステイン軍の旗艦にでも行くか。
 ガンダールヴが承太郎さんだったとして、どうすっかな~?」
黒衣の男は、ハルケギニアの人間では決してありえない『個性的』な髪型だった。



第六章 贖罪の炎赤石 完

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│To Be Continued   >
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