ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

影の中の使い魔-6

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ドドドドドドドドドドドドドドドド…………
ルイズはギーシュを睨みつけていた。
正直最初はブラック・サバスを連れ出してさっさとこの場から離れようと思っていた。
しかしギーシュから『侮辱』を受ける少女が、悔しさで肩を震わせ涙を流すのを見たとき
自分の頭の中で何かがプッツンした。
ギーシュとメイドと野次馬たちの視線が自分に集まる。
ブラック・サバスは……テーブルの上のデザートを見つめていた。おい、誰のせいでこうなったと思ってんだ。

ギーシュは芝居がかった仕草でルイズの方を向いた。
「侮辱?ミス・ヴァリエール、君には関係ないことだと思うんだけど?」
「関係あるわよ、同じ貴族としてね。もともと悪いのはあんたでしょ。それを他人のせいに……しかも相手が平民だからって馬鹿にして。
 貴族にはあるまじき行為よ。あんたは貴族と平民の両方の誇りを傷つけてんの!」
「なるほど、ミス・ヴァリエール。『ゼロ』の君は平民の心がよく分かるらしい」
ギーシュのその言葉に回りからドッと笑い声が上がる。
ルイズはそれら全てを無視し続けた。
「それにあんたは私の使い魔も侮辱した」
「使い魔?…………それってコレのことかい?」
ギーシュがコレと言って指差した先で、ブラック・サバスはデザートのケーキを口の中に放り込んでいた。
「……………………そうよ」
自分の使い魔と紹介したことをちょっと後悔しつつルイズは答えた。後でオシオキね………。

「君の使い魔は召喚したと同時に死んでしまったという噂だったんだけど……
 しかしメイジの実力を見るには使い魔を見ろとはよく言ったものだね
 この素行の悪さなんか君にそっくりじゃないか」
ギーシュの嫌味たっぷりの言葉にまたもや回りのギャラリーから笑い声が生まれる。
ルイズは悔しさを顔に出さないが、両手をグッと握り締めた。隣で泣いているメイドも嘲笑された時同じ気持ちだったのだろう。
味方がひとりもいない中、嘲笑の的にされる気持ちは誰よりも分かる。

ルイズが何か言い返そうと口を開きかけた…………が、先に口を開いたのはブラック・サバスだった。
そしてその口から出てきたケーキは、ギーシュの顔面をクリームだらけにした。
本日二度目のザ・ワールド!皆がクリームまみれのギーシュを見て唖然としている。
…………この世界で最初に動いたのはルイズだった。

「…………フ…………フフフ………」
何をやっているのだ自分の使い魔は?
いきなり私を襲ってくるし、分けわかんないことをオウムみたいに繰り返すし
洗濯物食べてどこか消えるし、授業でないし、片付け手伝わないし、揉め事を大きくしてるし……でも
「フフフフフフ…………フハフハフハハハハハ!」
でも、今のは最高だったわ!最高に「ハイ!」って奴だわアアアアアア!
「アハハハハハハハハハハハハ!」
ルイズは腹を抱えて笑っていた。こんなに心の底から笑ったのは久しぶりだった。
おかげでギーシュが自分たちに決闘を申し込んだのを聞きそびれるところだった。

ばか笑いを上げるルイズをほっといて、ギーシュは他の生徒を連れて先に広場に向かって行った。
食堂に残っているのは、3人のメイジと1人のメイドと1匹の使い魔。
ルイズは一応ブラック・サバスに文句のひとつでも言おうと、笑いを抑えるのに必死だった。
シエスタは展開についていけず、ただ涙を止めようと必死だった。
ブラック・サバスはボーっとしていた。
タバサは食後の読書タイムだった。
そしてキュルケは機嫌の悪そうな顔でルイズの方に近づいてきた。
「ちょっとルイズ!説明しなさい!その使い魔は死んだんじゃなかったの!?」

キュルケがルイズに詰め寄る。ルイズは笑いを抑えるために一度大きく深呼吸してから答えた。
「あぁ…………ごめん」
「え?」
意外な返事にキュルケは言葉に詰まってしまう。
「あんたが私の使い魔のことで考えてくれてたのは分かってたけど、こっちも色々あって説明するヒマがなかったのよ」
「あら~?えらく素直じゃない?」
皮肉たっぷりに答える。
「どーせこの後決闘のやじ馬するんでしょ?辛気臭い顔で見られてたら勝てるものも勝てなくなるのよ」
キュルケの方を一切見ずに言う。
言われたキュルケは思わずポカンとした顔をしてしまう。が、しばらくしてプッと噴いた。
「何よ」
「別に…でもあんたの使い魔なかなかやるじゃない。今のはなかなか傑作だったわよ」
そう言ってニヤリと笑うキュルケに釣られて、思わずルイズも再び笑いそうになってしまう。ヤバイつぼだ。

「申し訳ありません!私なんかの為に大変なことになってしまって!」
シエスタがペコペコと頭を下げて会話に入ってきた。その顔はまさに顔面蒼白である。
「勘違いしないであんたの為に戦うわけじゃないんだから。大体あんたは何も悪くないじゃない。
 ギーシュが二股して、私が文句言って、こいつが話をややこしくした。だから決闘を申し込まれた。あんたの為に決闘するんじゃないのよ。
 だから…………そうね。あんたが侮辱された分は、私がギーシュを倒してあんたに謝りに来させるから、それでいい?」
ルイズは事も無げにそう答える。
「そんな!謝罪なんてけっこうです!本当にいいんです!ミス・ヴァリール!そのお心遣いだけで十分です!決闘なんて危険です!」
シエスタは数時間前のブラック・サバスの虚弱性を見ていた。
それに自分を助けてくれたこの貴族は、確か『ゼロ』のルイズ……魔法の使えないメイジ……勝てるわけ無い。

再び泣きそうな勢いでルイズに話しかけるシエスタの肩に、キュルケの手がそっと置かれた。
「貴族が決闘を申し込んだ以上、それを取りやめることはできないのよ。それに大丈夫。今は昔と違って命のやり取りをするわけじゃないんだから。それに…」
話を途中で止めたことにシエスタは訝しげにキュルケを見たが、キュルケは気にすることなく話題を変えた。
「でヴァリエール?あれだけ啖呵を切ったんだから、もちろん勝算…あるんでしょうね?」
「勝算ね」
ギーシュ・ド・グラモン 。『青銅』のギーシュ。土系統のドットメイジ。派手好きでキザでナルシスト。
決闘には錬金で作る青銅のゴーレムを使ってくるだろう。たしか5,6体は同時に作ることができたはず………
それに対して私の使える魔法は爆発のみ…はたしてゴーレムに対して効くかどうか?

ふと、ブラック・サバスの方を見てみる。なにやら今度は窓から外を眺めているようだ。
ルイズもその視線を追ってみる、この時間帯にしてはかなり暗い。
どうやらあんなに昼間は晴れていたのに、いつの間にか雲が出て二つの月を隠してしまっているみたいだ。
そこまで考えてルイズは力強く答えた。
「あるわよ」
「今の間はなによ…」
キュルケが苦笑しながらつっこみを入れるが、ルイズの自信満々の様子は変わらなかった。
「ブラック・サバス!」
名前を呼ばれた使い魔はルイズの方へゆっくりと向きを変えた。
「今度は私の言うこと聞きなさいよ」
ブラック・サバスは答えなかった。ただ首を縦に振っただけだった。
「分かったなら、返事しなさい」
そう言いながらもルイズは満足そうに笑っていた。

シエスタは不思議だった。『ゼロ』のルイズと、シエスタよりも貧弱な使い魔。決闘をするというには絶望的なコンビ。
しかし彼女たちからは不思議な安心感を感じる。
今までシエスタが出会ってきた、どの貴族たちとも違っていた。爽やかささえ感じていた。

「行くわよ」
そう言って歩き出したルイズの後を、ブラック・サバスと呼ばれた使い魔はまるで影のようについていった。


To Be Continued 。。。。?

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