ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

出撃! 幻影作戦遂行せよ!

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出撃! 幻影作戦遂行せよ!

シエスタの祖父の形見であるゴーグルを首に下げ、背中にデルフリンガーを背負った承太郎がコルベールの研究室を訪ねた。
コルベールは新兵器の説明書を承太郎に渡すと、彼は語り出す。
本当は『火』の力を人殺しのためには使いたくないと。
その言葉の重みに、承太郎はコルベールの過去を垣間見た気がした。
「確かに今は……戦いのために使われている。
 だが、生活や平和のために役立てたいという意志があれば、前進する事はできる。
 恐らく長い道のりになるだろうが……その意志をあきらめずに努力すれば、いつかあんたの望む未来が来るかもしれない……」
「……そう言ってもらえると、何だか救われる気がするよ。ありがとう」
コルベールが誇らしげに微笑むと同時に研究室の戸が開いた。
「お待たせ! ジョータロー、行くわよ」
「ああ。……コルベール、おめーのおかげで助かっている。ありがとよ」
「うむ。君も気をつけたまえよ」
こうして新兵器を搭載し通信機をはずして二人乗りに改造されたゼロ戦に乗った二人は、シエスタからもらったマフラーを自分達の首に巻いてエンジンをかけた。
「ジョータロー君! ミス・ヴァリエール!」
エンジン音の中、コルベールが叫ぶ。
「死ぬなよ! 死ぬな! みっともなくたっていい! 卑怯者と呼ばれても構わない!
 ただ死ぬな! 絶対に死ぬなよ! 絶対に帰ってこいよ!」
承太郎は親指を立てて応えると、ゼロ戦を発進させた。

命を懸ける覚悟はある。
だが死ぬつもりは無い。

ふと、承太郎はDIOとの戦いで死んでいった仲間を思い出す。
もう二度とコルベールに会えないような、そんな気がした。


『竜母艦』という新しい観種の戦艦をトリステイン軍は建造した。
名を『ヴュセンタール号』という。
コルベールだけでなく、数多くの土系統のメイジが錬金したガソリンを積んでいる。
すなわちゼロ戦の母艦となるためだけに造られた戦艦なのだ。

虚無の担い手。
虚無の使い魔。
竜の羽衣。

このみっつがトリステイン軍でもっとも重要な武器であった。
空を埋める大艦隊にゼロ戦が近づくと、竜騎士がヴュセンタール号への案内に現れた。
誘導に従いヴュセンタール号の甲板へと着艦させた承太郎は、ルイズと共にゼロ戦を降り、甲板仕官を名乗る将校に司令部へ連れて行かれた。
そこには総司令官、参謀総長、ゲルマニア軍司令官といった軍のトップが待っていた。
総司令官の男がルイズを虚無の担い手と紹介し、アルビオン艦隊を沈めた白い閃光はルイズが唱えた虚無の魔法だと説明すると、
虚無の存在をまだ聞かされていなかった将軍達は感嘆の声を上げた。
そして軍議が再開される。虚無を交えて。

アルビオンに六万の兵を上陸させる、それが軍議の内容だったが非常に難航していた。
障害はふたつ。まずは未だ有力な敵空軍艦隊の存在。
タルブの戦いでレキシントン号他十数隻を沈めたとはいえ、アルビオン軍にはまだ四十隻程の戦列艦が残っている。
トリステイン・ゲルマニアは六十隻の戦列艦を有するが、二国混合艦隊のため指揮が困難であり、練度で勝るアルビオン艦隊相手では、数の差を引っくり返されての敗北も十分ありえるのだ。
第二に上陸地点の選定である。
アルビオン大陸に大軍を降ろせる要地はふたつしかない。

主都ロンディニウム南部に位置する空軍基地ロサイス。北部の港ダータルネス。
港湾設備の規模からいってロサイスが望ましいが、大艦隊ではすぐ気づかれ迎撃される。
連合軍に必要なのは奇襲。
敵軍に『ダータルネスに上陸する』と思わせて、ロサイスを制圧するのが望ましい。
軍議が行き詰ったところで、ある将校が虚無に任せてみてはと提案する。
陽動任務だ。エクスプロージョンとディスペルマジックしか使えないルイズだが、デルフリンガーが小声でした助言のためにルイズは承諾した。

「必要な時が来たら必要な魔法の詠唱が読めるさね。
 ディスペルマジックの時がいい例だろ? 多分大丈夫じゃねーかな」
というアドバイス通り、ルイズは始祖の祈祷書を開いてみる事にした。
といっても部屋に着いてからだ。将軍達以外の前で虚無の存在を明らかにはできない。
廊下を歩いていると、目つきの悪い貴族五~六人程度が承太郎達を待ち構えていた。
歳は承太郎、ルイズとほとんど差が無いように見える。
しかし方や老け顔、方やロリ顔。同年代だと思っているのは虚無側だけだった。
一行は同じ革の帽子と青い上衣を着ていて、何らかの部隊の集まりだと推測できる。
その中の一人が承太郎に声をかけた。
「おい、お前。ちょっと来い」
これは新人いびりというやつだろうか?
だとしたら社会のルールというものを教え込んでやった方がいいだろう。
承太郎は無言で彼等の後をついていった。ルイズも心配そうに続く。
連れてこられたのはゼロ戦を係留している甲板だった。
一行のリーダー格と思われる少年は、ゼロ戦を指して恥ずかしそうに問いかける。
「これは、生き物か?」
「そうじゃないなら何なんだ? 説明しろ」
もう一人が真顔で訊ねてきた。
同じ艦に乗る者同士とはいえ、どこまで答えていいものか。

「いや……生き物じゃあねーぜ」
とりあえず、それくらいなら教えても構わないだろうと答えてみる。
すると一番太った少年がガッツポーズを取った。
「ほらみろ! 僕の言った通りじゃないか! ほら一エキュー寄越せ!」
で、他の連中はポケットからエキュー金貨を一枚出して太っちょに渡す。
「驚かせちゃってゴメンね」
「実は僕達、賭けをしていたんだよ。これが何なのかって」
「一風変わった竜じゃないかと思ったんだけどな~……。
 この艦、竜母艦なんて艦種がつけられてるしさ」
「こんな鉄の塊の竜がいてたまるかよ!」
「いるかもしれないじゃん! 世界は広いんだから!」
言い合いを始める彼等を見て、承太郎は学校の休み時間にダベってるクラスメイトを思い出した。
自分はあまり話に加わらなかったが、いつもくだらねー事で盛り上がっていた。
「やれやれ、こいつは飛行機っていう乗り物だぜ」
気が抜けた承太郎は、飛行機の簡単な説明をしてやる。
皆聞き入ったが、コルベールと違い飛行機の原理を理解できる者はいなかった。

彼等の正体は竜騎士で、本来見習いなのだが戦争という事で駆り出されたそうだ。
案内された竜舎にはシルフィードより二回りも大きい大人の風竜がいた。
竜騎士になる大変さや、竜の性質などを彼等は得意げに語る。
「使い魔として契約していない竜は気難しく、乗りこなすのが一番難しい幻獣なんだ。
 乗り手の腕、魔力、頭のよさまで見抜いて乗り手を選ぶんだぜ」
試しにまたがってみるかと言われたので、承太郎は挑戦する事に。

「俺が無事乗れるかどうか賭けてみな」
と言ったら全員『乗れない』に賭けたので、外れたら全額承太郎がもらう約束をする。
またがる前に風竜にガン飛ばしてやったら、風竜は承太郎を乗せてくれた。
竜騎士隊の少年達は悲鳴を上げるほど驚いて、承太郎に一エキューずつ払った。
承太郎が乗れたんなら自分も、とルイズも名乗り出た。
太っちょの少年は「彼が乗れたのなら、もしかしたら彼女も」と『乗れる』に賭ける。
が、他の全員は『乗れない』に賭けた。承太郎も『乗れない』に賭けた。
承太郎の賭けに激怒したルイズは、乱暴に竜にまたがろうとして、思いっきり振り落とされて承太郎にキャッチされた。
爆笑が巻き起こり、ルイズは顔を真っ赤にしてわめき散らす。
そんなこんなで割りと平和な一日をすごすのだった。

「って、マズイ。全然思いつかないし、始祖の祈祷書も真っ白のまま」
夜。自室にてルイズは頭を抱えていた。
虚無のルイズは陽動作戦をせねばならない。方法は自分で何とかしなくてはならない。
で、何ともならない。
「どどど、どうしよう? 何かいいアイディアない?」
唯一相談できる承太郎の部屋にやって来てそう訊ねると、承太郎はしばし黙考する。
「陽動というからには……少数の部隊でダータルネスに奇襲をかけ、かつ小隊を大隊と誤認させるのがベターか……」
「小隊を大隊と誤認……う~ん。でも人数数えられたらすぐバレるわよね」
「雲の中に艦隊が隠れていると思わせるとか、何か方法はあるだろう」
「雲……雲……。当日晴れてたらどうしよう?」
「知るか」
「うぅ……誤認させる、誤認、誤認……。ねえ、ジョータロー。
 あんたはそういう経験無いの? ありもしないものを、あると勘違いした事」
「……砂漠を旅していた時、ポルナレフの奴がオアシスを発見して車を向けたが、
 実は蜃気楼だった……というような事はあったな」
「蜃気楼? ……それよ! 蜃気楼を見せればいいのよ!

ルイズは始祖の祈祷書を開きページをめくった。
蜃気楼という単語に集中して白紙のページを一枚一枚確認する。
しばらくして、一枚のページが光り出し文字が浮かび上がる。

虚無の魔法、初歩の初歩。
『イリュージョン』
翌日その作戦を軍議で発案すると、満場一致で賛成された。
『幻影作戦』と名づけられたそれを遂行すべく、ルイズと承太郎はゼロ戦に乗る。

「虚無を出撃させる! 作戦目標ダータルネス! 仔細は任す。
 第二竜騎士中隊は全騎をもってこれを護衛せよ! 復唱!」
「虚無出撃! 作戦目標はダータルネス! 仔細自由!
 第二竜騎士中隊は全騎はこれを護衛!」
命令を受けた第二竜騎士中隊は、先日承太郎と賭けをした若き竜騎士達だった。
彼等は風竜に騎乗すると、ゼロ戦を先導するように飛翔した。
続いて、操縦席後部にある通信機を外して造った座席にルイズを乗せた承太郎が、ゼロ戦の操縦桿を握り滑走路を走らせる。
飛行機の原理を知らない風のメイジ達が、上官からの指令通り風の魔法を前方から吹かせ、プロペラを力強く回転させ滑走距離を縮め、甲板から車輪を浮かせて飛び上がる。
その光景にヴュセンタール号の乗員達は歓声を上げた。

風のアルビオン。
承太郎にとっては一日にも満たない時間をすごした、しかし忘れられぬ国。
戦友ウェールズの故郷。ここでウェールズの仇を討つ。
「待ってやがれ……クロムウェル!」
一機と十騎の混成部隊、ゼロ戦と竜騎士隊が大空を行く。
目指すは風のアルビオンが港ダータルネス! 幻影作戦遂行せよ!

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