ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

帰省! ラ・ヴァリエールから脱出せよ!

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匿名ユーザー

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帰省! ラ・ヴァリエールから脱出せよ!

従者が使い魔一人では情けないという事でシエスタを連れて、ルイズは実家のラ・ヴァリエールに帰郷していた。
というのもアルビオンへの侵攻作戦が発布され、遠征軍の編成が決まった。
貴族学生の多くが仕官として連れていかれ、教師も何人か戦地へと赴いた。
アンリエッタ直属の女官にして虚無の担い手であるルイズは戦争に必要な存在、しかしルイズが実家に「アルビオン侵攻に加わります」と文を送ったら大騒ぎになった。
従軍はまかりならぬと、長姉のエレオノールが迎えにきたのだ。
当然逆らえるはずもなく、仕方なしにと承太郎も同行している。
ヴァリエール家の者にとって、ルイズはまだ魔法が使えない『ゼロ』のままなのだ。

家族がそろったのは、ヴァリエール家の晩餐の場であった。
長女エレオノールは金髪の釣り目で、ルイズのツンを強化したような傍若無人。
次女カトレアはルイズのパワーアップバージョンで、身長や胸が豊かに育っている。
しかも性格はおっとりしていて母性的。
さすがの承太郎もカトレアの魅力は認めるしかなかった。
その承太郎だが、ルイズの後ろでウェイターのように立たされている。
まあ家族とはいえ公式の場なのだから仕方ないとあきらめていた。
ルイズママも高飛車オーラで場を圧倒していたが、承太郎の無言プレッシャーといい勝負で、一瞬睨み合っただけだが、どちらも一歩も下がらぬプレッシャーとオーラを放ち合った。
とりあえずこれがヴァリエール一家との顔合わせだった。
父親は――用事があって今日は来れないらしい。明日の朝には来るそうだ。
晩餐の場でルイズはエレオノールから散々馬鹿にされて、すっかり落ち込んでしまった。
すると承太郎が突如時間を止めて、エレオノールのワインに何かを一滴入れた。
「ちょっ、何してんのよ!?」
「なぁーに、気にするな。タバサからもらった餞別ってやつだ」


時が再始動してエレオノールがワインを飲むと、椅子ごと後ろにバタンと倒れた。
これが! これが! これがタバ茶だ!!
女性初の犠牲者はエレオノール!
飲まされたのはタバ茶十号!

犠牲者リスト。
三号……空条承太郎。
五号……青銅のギーシュ。
七号……空条承太郎。
八号……空条承太郎。炎蛇のコルベール。
九号……疾風のギトー。
十号……デレ無しツンツン婚約解消女王エレオノール。

フラフラになって起き上がったエレオノールは、ギラリとカトレアを睨んだ。
「カトレア! 私のワインに何か入れたんじゃないでしょうね!?」
「え? いいえ、何も入れてませんよ。今日は」
「……いや、絶対何か入ってるわ。間違いなくアレが」
「そんなまさか」
困惑しながらカトレアはエレオノールのグラスを取り、飲み干す。
承太郎は時を止めてカトレアの持つグラスを取り替えようとしたが、一度止めてから再び時を止めるのに必要な数呼吸の間を確保できず失敗。
カトレアはタバ茶十号の混入されたワインを飲んでしまった。
「……あら、おいしい。タバ茶みたいな味がするわ」
「……やっぱりカトレアの仕業じゃない! 変なお茶を通販で大量に買って!」
「でもおかしいわ。一号から七号まで全部飲んだけれど、こんな味のタバ茶初めてよ。
 例えワインで割ってあったとしても、白銀会員の私が間違えるはずないし」
その光景を見て、承太郎は帽子のつばを下ろし「やれやれだぜ」と呟くのだった。
タバ茶の件を全然知らないルイズにとってはとことん謎の出来事である。
そんなこんなで晩餐終了。シエスタは納戸のような部屋でお留守番していた。

晩餐を終えたルイズは、カトレアの部屋に遊びに行った。
『ちいねえさま』と慕うカトレアだけは、いつもルイズに優しくしてくれる理想の姉。
そして理想の貴族の姿でもあった。
病弱であり、様々な水のメイジが治癒を試みても効果の無かったカトレアだが、悲観する事無く、常に聖母のような包容力でルイズの悲しみを癒してくれる。
カトレアはルイズが婚約者に裏切られたのに落ち込んでなくてよかったとか、趣味の動物集めの話とか、同じ色の髪についてとか、ルイズの心休まる事を話した。
ところが、カトレアが「ルイズも恋をする年頃になったのね」と言った途端、ルイズは大慌てだ。否定してもカトレアにはお見通しらしい。相手まで見抜かれた。
「あの使い魔の殿方。物静かだけど内面に力強いものを秘めているようで素敵ね」
「ま、まあ私が召喚した使い魔だし、結構頼りになるけど、その、あの」
「照れ屋さんなんだから。あ、そうそう、これ私が考えた料理なの。食べてみて」
「わあ、おいしいパイ。甘い中にちょっと苦味が利いていて大人の味って感じ」
「大成功だわ。今度これのレシピを新商品開発部に送ってみましょう」
「新商品開発部?」
「こっちの話よ」
どうやらカトレアのはしばみ草料理は、至極真っ当らしかった。
だがそれ故に玄人にはなかなか通用せず白銀会員止まりなのだが。
とまあこんな感じでルイズは至福の夜をすごした。

一方承太郎。納戸のような寝室に戻ってみれば、シエスタが待っていた。
片手に半分ほど空けた酒瓶を持って。顔を赤くして。酒臭い息を吐いて。
「おかえり。とりあえず、飲め」
「……シエスタ?」
「何? 私の酒が飲めないっていうんですか? あぁんっ?」
「…………」
シエスタの変貌の原因が酒にあると察知した承太郎は、即座にこれ以上の悪化を防ぐため酒瓶の中身を全部飲み干した。
「さすがジョータロー、いい飲みっぷり。さすが私が好きになった人です」
「シエスタ、もう寝た方がいいぜ」
「そうですか。寝ますか。解りました、私も女です。覚悟を決めます」
「待て、脱ぐな」
「何ですか、私の身体には興味ありませんか? 胸だって意外と大きいのに。
 ええ、解ってます。ミス・ヴァリエールですね? あれがいいんですね?
 小さいのが好きな男の人は、いつかやってしまうと聞いた事があります。
 このままだとジョータローが道を踏み外してしまいます。
 私が何とかして上げます。治療法は私が知っています。いざっ」
「スタープラチナ。花京院直伝の当て身ッ」
「ガクッ」
酔っ払ったシエスタをベッドに寝かせた承太郎は、床に寝転がった。
するとデルフリンガーが呆れた口調で言う。
「人間てのは大変だね、酒で頭が変になっちまって」
「酒も飲めねーボロ剣が酒を語るんじゃねー」
「まーそう言うなよ相棒。おめーさんが無口なせいで、俺まで喋る機会が無くてさ。
 何かね、退屈。俺、もっと出番欲しい。おめーさん俺と話をしないし、スタープラチナとかいうのあるから、俺を全然抜かないし、どんどん忘れ去られていくような感じがすんだよね。
 仮に出番があったとしても、俺剣なのに、魔法吸い込み用の盾専用な予感がする。
 これってさ、剣としては結構悲しい事だと俺は思う。だから相棒には――」
鍔を鞘に押し込んでデルフリンガーの口をふさぐと、承太郎は冷たい床で眠った。

翌朝、父親帰還。すなわちラ・ヴァリエール公爵である。
ルイズおよび家族を食堂に呼び集めた公爵は、自分は戦争に反対すると宣言。
軍務を退いた身だしこの戦争も気に入らないし枢機卿うぜーし、という感じだ。
アルビオン軍の侵略を迎え撃つのはいい、自国を守るのは王侯貴族の義務だ。
しかし攻め込むのは問題外。
アルビオン軍は五万。
トリステイン・ゲルマニア連合軍は六万。
攻める側は守る側に比べて三倍の戦力があってこそ確実な勝利があるのだ。
拠点を得て空を制しても、たった一万の差では敗戦する可能性が高いという判断である。
そしてこれは国を守るためではなく、女王の復讐のための戦争なのだ。
ヴァリエール公爵が反対するのは当然であった。
で、ルイズ。そんな父親相手に「従軍したいです」なんて言わなきゃならない。
でもその話はすでに耳に入っているらしく、そんな馬鹿な戦争に出る必要は無いと、公爵はルイズに謹慎するよう言いつけた。戦が終わるまでこの城から外出禁止。
だいたい魔法が使えないルイズが戦争に行って何になるのか?
仕方なくルイズは魔法が使えるようになった事を話したが、系統を聞かれて正直に「虚無」と答える訳にもいかず「火です」と誤魔化した。
万が一の時はエクスプロージョンを見せれば火と勘違いしてくれるかもしれないし。
が、それでも公爵パパ認めないから困ってしまう。
最後の手段とばかりに女王陛下からルイズの力が必要だ、と言われたと説明してみた。
「大変名誉な事だ。だがお間違いを指摘するのも忠義、陛下にはわしから上申する」
どんな説得も無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!
公爵パパが近距離パワー型スタンドを得たら、ラッシュのかけ声は「無駄」だろう。
さらに我が道を行く公爵パパはルイズに婿を取らせると言い出した。
するとルイズはなぜか承太郎を思い出してしまい、その様子から「恋人がいるのか?」「まさか身分の低い貴族が相手か?」と、とんとん拍子で誤解(一部真実)が進み、そしてルイズは逃げ出した。

納戸で承太郎が質素な朝食を摂っていると、戸がノックされた。
シエスタだろうか?
元々シエスタの寝所は別に用意してあるから、朝になったら出て行った。
その時、自分が昨晩酔っ払っていただろう事を恥ずかしがっていたが。
「誰だ?」
承太郎が声をかけると、戸が開いて大きなルイズ……じゃなくてカトレアが入ってきた。
「お邪魔してもよろしいかしら? 使い魔さん」
「……何の用だ?」
カトレアの清楚な美貌を見て、承太郎はふと思う。
ルイズも成長したらこんな感じだろうか?
「ルイズも成長したらこんな感じ……と考えておいでではありませんか?
 クスクス。でも私みたいにはならないわ」
考えを読まれた承太郎は、やれやれと帽子のつばを下ろした。
「あなた、お名前は?」
「……承太郎だ」
「あら、素敵なお名前ね。まるで……ハルケギニアの人間じゃないような。
 何だか根っこの部分が私達とは違う気がするわ。当たっているかしら?」
「……やれやれ。秘密にしといてもらえると助かるぜ」
洞察力というより、純然たる勘で正体を言い当てたカトレアに承太郎は驚きを隠せない。
カトレアは、ルイズの面倒を今まで見てくれた事の感謝と、父親がルイズに言った事柄を承太郎に説明し、ルイズの隠れ場所を教えた。
中庭の池だ。
後はルイズを連れ出し、街道に待っている馬車に乗り込めばいい。
ルイズ達と一緒に来たメイドにすでに手綱を握らせてあるとの事。
ラ・ヴァリエールから逃げるお膳立てを、なぜカトレアがするのか?
「戦は感心しない。嫌いだわ。ルイズにも行って欲しくない。
 でもね、あの子が自分で決めて、それを必要とする人がいらっしゃる。
 だったら行かせて上げるべきだと思うの。それは私達が決めていい事ではないと」
「……俺の狙いはクロムウェルの首だぜ。それでもいいのか?」
「ええ。私の可愛い妹をどうかよろしくお願いいたします、異界の騎士殿」


中庭の池の小船の上で、ルイズはうずくまって泣いていた。
つらい時悲しい時いつも、ルイズはここにいた。ここで泣いていた。
独りぼっちの世界に閉じこもって、何もかもから逃げ出して。
そんな世界が、突然大きく揺れる。
「うひゃあ!?」
慌てて顔を上げてみれば、承太郎が小船の上に立っていた。
水音は無かったから、スタープラチナで岸から跳んで来たんだろう。
「あああ、危ないじゃない!」
「……祖国のため、女王陛下のために戦うんじゃなかったのか? ルイズ。
 だったら小船から降りな。おめーの姉貴が馬車を用意してくれた、城を出る」
「だ、駄目よ。家族の許しをもらってないもの。
 それにいくらがんばっても私は虚無、家族に何も話せない、認められない。
 ……すごくさみしいわ、そんなのって」
「確かに……お前は認めてもらうために努力をしてきた。
 だがお前を認めている奴は……いる」
「誰よ?」
「ギーシュ、キュルケ、タバサ……お姫様。それから俺だ。
 お前の虚無はタルブの村を救った。俺ですら守り切れなかった物を守った。
 この戦争、虚無の存在が勝敗を左右するかもしれん……。
 おめーが来ないというなら、残念だ。俺は一人でも行く」
「どうして?」
「奴等は『ウェールズ達の生命と名誉を侮辱した』……その報いを受けさせる。
 戦争なんてどうだっていい。タルブの村の連中や、魔法学院の連中を守りたい。
 それだけだ……俺が行く理由は。おめーも行くのなら、俺の手を取れ」
承太郎が手を差し出す。
いつか見た、夢。

――安心しろルイズ。もう……誰にもおめーに手出しはさせねえ。

ああ、思い出した。
あの時、あの夢、私は彼の手を取った。
アルビオンから脱出した時に見た夢。
夢はただの夢。
けれどこれは。

「あんた、私を守るって約束しなさいよ?
 虚無の使い魔なんだから、虚無の詠唱中の私を守るのが仕事よ」
「やれやれ……そんな言い方しかできねーのか、てめーは」

二人の手が重なり、どちらからともなく微笑を浮かべる。
「行きましょう、アルビオンに」
「ああ」
小船を漕ぐのが面倒だった承太郎は、スタープラチナの脚力で岸まで戻ろうとし、ルイズを抱きしめてから岸を見た。
もし岸を見るのが先だったら、ルイズを抱きしめなかったかもしれない。
だって、公爵パパが、兵隊をいっぱい連れて、池を包囲してたりするんですよ。
怒りでピク、ピクと震えていらっしゃる。口を開かせるとやっかいな事になる確実に。
そこで承太郎は先手を打った。
「公爵! てめー……何の権限があってルイズの従軍を拒んでやがる? 言ってみな」
「平民風情がわしにそんな口を利いていいと思っているのか? おい、あいつ打ち首な」
「ルイズは女王陛下直筆の許可証を受け取っている、女王直属の女官だ!
 ルイズの権限は女王の権限! てめー等全員女王に逆らうたあいい度胸だ。
 俺達の邪魔をするのなら……反逆者であるてめー等を容赦なくぶちのめしていくぜ」
「打ち首じゃなくていいや。あれ、今すぐ殺しなさい。ルイズは塔に監禁、最低一年」
公爵パパの命令と同時に、小船が真っ二つに割れ水柱が立った。
魔法ではなく、スタープラチナの脚力が起こした現象だ。承太郎とルイズはすでに空!
一瞬で急上昇した承太郎達を公爵パパ達が見失った瞬間、
承太郎はスタープラチナでルイズを小脇に抱えるとデルフリンガーを抜いた。
「おっ! 出番か相棒!?」
「おめーを使った方が足が速くなるからな。スタープラチナ・ザ・ワールド!」
公爵パパ達の視線が承太郎達を捕らえる前に時間が停止し、承太郎達は公爵パパの反対側の岸へと着地する。
直後ガンダールヴの能力で強化された身体能力を生かし疾駆する。
時が再始動した時、すでに承太郎達の姿は中庭には無かった。
いともたやすく公爵家から逃げ出した承太郎とルイズは、シエスタの待つ馬車に乗り込み即座に飛び乗った。
ちなみに馬車を引いているのは馬ではなく竜だった。カトレアの計らいらしい。
シエスタは竜に怯えながらも馬車を出し、ルイズ達は無事ラ・ヴァリエールから脱出。

その後、枢機卿と将軍数名に『虚無』の存在が知らされる。
トリステインの軍勢でアルビオンに攻め込むには、どうしても虚無の力が必要だった。
アンリエッタはこの戦争がウェールズの仇を取るという私怨のものだと自覚しながら、それでもこの戦争を望む自分の愚かさを呪った。友人を巻き込んだ自分を蔑んだ。
しかしそんな事などお構い無しに事態は進行する。
トリステイン魔法学院の生徒達が軍隊に連れて行かれる中、承太郎とルイズは竜の羽衣の改修を待っていた。
弾丸の製造などは不可能だったが、コルベールは独自に開発した新兵器を搭載。
技術力が着実に進歩していくのを嬉しく思いながら、結局戦争に利用せざるえない現実に虚しさを覚える。

そして虚無が竜の羽衣をまとい、魔法学院を出立する日が訪れた。

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