ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

~奇妙なルイズ 空条徐倫の場合~-1

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匿名ユーザー

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「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど…洗濯ってどこでやればいいの?」
「はい?」

~奇妙なルイズ 空条徐倫の場合~

シエスタはテーブルクロスを両手で抱えながら、先ほど声をかけてきた女性『空条徐倫』と一緒に洗濯場へと歩いていた。
「ルイズ様が平民を呼び出してしまったと、厨房でも噂になっていましたよ」
「あー、そうなの?」
徐倫は苦笑いしながら、このハルケギニアに召喚された瞬間を思い返した。


『来いッ!プッチ神父!』
加速し続ける時間の中で、父も、友も、自分に求婚してきた男も、皆バラバラに切り裂かれて散っていった。
自分自身の体からも血が流れ出て、体が冷たくなっていくのが分かる。
エンポリオ少年に最後の望みを託し、ほんの一瞬、時間が加速し尽くす直前に、千分の一秒だけでも時間稼ぎをすべく、空条徐倫はプッチ神父の前に立ちはだかった。
そして無惨にも五体をバラバラに切り裂かれ、意識が虚空に消えていったのだ。


(目が覚めたらファンタジーの世界?何の冗談?それとも夢?)
今自分が生きていることに感謝すればいいのか、それとも取り残されたエンポリオを心配すべきなのか。
徐倫の思考は、召喚されてからずっとループし続けていた。
「…夢じゃないのね」
「え?」
「あ。何でもないわよ、こっちの話」
徐倫が空を見上げる、その仕草を見て察したのか、シエスタは話を変えることにした。
「トリスティンは自然に溢れていて、住みよい所ですよ」
「ありがと、確かに空気は美味しいわね」
昨日ルイズから聞いた話では、元の世界に返す魔法なんて存在しないし、使い魔を呼び出すゲートを開く『サモン・サーヴァント』は使い魔が死ななければ唱えられないと言う。
ちょっとだけふて腐れていた徐倫は、シエスタの言葉を短く返した。

徐倫が慣れない洗濯をしている頃、ルイズはキュルケ達と共に授業を受けていた。
疾風のギトーが、相変わらず『風の魔法こそが最強である』と、慢心に満ちた講義をしている。
そこでルイズが手を挙げて質問した。
「先生、質問があります」
「なんだね…君が質問とは珍しいな、まあいい、言ってみたまえ」
「エア・ニードルとエア・カッターでは、どちらが強力なんですか?」
ギトーは、思いがけない質問に数秒ほど考え込むが、生徒達に言い聞かせるように答えた。
「面白い質問だ、いいかね、両方とも風の刃であることには違いないが…」
呪文を詠唱し、小さなつむじ風でノートのページを何枚か宙に浮かせる。
「エア・カッターは風の刃だ、目に見えぬ鋭い刃が、広い範囲に展開される」
ギトーの前後左右にばらまかれたノートがの紙が、空中で切り裂かれる。
「エア・ニードルは密度の高い風の刃を作り、我々メイジの杖を、名だたる魔剣よりも鋭い刃とする」
ギトーは宙に舞う紙切れに杖を当てる、すると紙切れはバリバリッと音を立て、跡形もなく散った。
「このように、どちらが強力か議論しても意味はない、使いどころが違うのだ」
何人かの生徒は納得したように頷くが、ルイズは更に質問した。
「…では、エア・カッターで起こした竜巻に、エア・ニードルを付加することは考えられますか?」
そう言われてギトーは言葉に詰まる。発想はともかく、そんなシチュエーションはなかなか考えられないからだ。
「考え方は悪くはないが、効率が悪い、水の魔法を重ねたウインドウ・アイシクルの方が効率は良いな」
「そうですか…ありがとうございます」
「どこからそんな発想が出てきたのだね?」
「いえ、ちょっと思いついただけです」
「ユニークな使い方を思いつくのは結構だが、その前に魔法を使えるようになって欲しいものだな」
ギトーの言葉に苦笑いするルイズ、魔法云々は仕方がないとしても、まさか魔法衛士隊の隊長に殺されそうになりましたとは言えない。
(スタープラチナはエア・カッターでは傷つかないけど、エア・ニードルなら傷つく…)ルイズ苦笑いしつつも、自分の『スタープラチナ』の能力を分析していた。

しばらくすると授業終了の鐘が鳴り、本日の授業が終わった。
「ルイズ、あんた明日はどうするの」
キュルケが声をかける、明日といえば虚無の曜日だ。
「明日?」
「あんたの使い魔、服とか買ってあげなきゃいけないんでしょ?」
「あ、そっか」
「それにしてもルイズには驚かされるわ、やっと召喚したと思ったら平民を召喚するなんて、始祖ブリミルもビックリよ!」
「うっさいわね!」
思わず声を荒げるルイズ。
やっとの事で召喚したのが平民、しかも女性。
中庭で召喚してしまったため当日のうちに全校生徒に知られてしまった。
しかも、コルベール先生も召喚の瞬間を目撃していたので、言い逃れも出来なかった。
コントラクト・サーヴァントを余儀なくされ、ファーストキスは同姓に…思い出す度にブルーになる。
「怒らないでよ、明日はタバサが町に用事があるって言うから、シルフィードに乗せて貰いましょ」

ルイズは悩んだ、シルフィードに乗せて貰うのは嬉しい、しかし他人の使い魔に乗せて貰うのは癪だ。
メイジの実力を見るには使い魔を見ろと言われるが、平民を召喚した自分と、風竜を呼び出したタバサの実力差を見せつけられてしまう。

と、考えたところで、タバサの用事というのが気になった。
タバサは読書の虫と言われる程、読書が好きで本を手放さない、休日は部屋に引きこもって印象がある。
「タバサの用事って何かしら」
「入荷日って言ってたけど」
「何の?」
「さあ」
明日になれば分かるだろうと、キュルケが話を切り上げて食堂に向かった。
ルイズは徐倫を呼びに部屋に戻ると、徐倫が取り込んだ洗濯物を畳んでいるところだった。
「徐倫!夕食の時間よ、あんたも食堂までついて来なさい」

やれやれと言いたげな表情で、徐倫がルイズの後をついて行く。
ルイズ達が食堂に着くと、奥の給仕口からシエスタが顔を出すのが見えた。
「ルイズ様、徐倫様の分もお食事を準備させて頂きますが、皆様と同じものでよろしいのでしょうか」
シエスタに徐倫を紹介しようとしたところで、逆にシエスタから声をかけられ、ルイズは驚いた。
「あー、悪いけどこんな豪勢なの食べられないわ、厨房でまかないの料理でも分けて貰える?」
「それでよろしいんですか?では徐倫様、こちらへどうぞ」
「ありがと、あ、さっきも言ったけど徐倫で良いわよ、様なんて付けられるのは苦手なの」
シエスタと徐倫が普通に会話しているのを見て拍子抜けするルイズ、そこで思わず徐倫の肩を掴んでしまった。
「ちょっ、ちょっと待ちなさい、何私を置いて話を進めてるのよ、って言うか何でシエスタが徐倫の事知ってるの?」
昨日と今朝は厨房から分けて貰ったパン(日持ちする固い奴)を徐倫に渡しただけで、徐倫を食堂には連れて行っていない、シエスタとは面識がないはずだ。
「洗濯場はどこかと聞かれたんです」
シエスタが笑顔で言う。
「あ、そ、そうなの、それじゃ徐倫はまかないを分けて貰いなさいよ」
「そうさせて貰うわ」
ルイズの想像では
ルイズ『使い魔とはいえ人間に餌を食わせるわけにはいかないわ、一人分の料理を追加して頂戴』
徐倫『ルイズ…田舎から出てきた私をそこまで気遣ってくれるの?』
シエスタ『わあ、ルイズ様は貴族の鏡でいらっしゃいます!』
…と、なるはずだったのだ。

「ではルイズ様、食事が終わる頃、こちらに徐倫様をお連れします」
有能かつ気の利くご主人ざまを演出しようと、穴だらけの計略を用いたルイズは、肩を落としてため息をつきつつ、手招きするキュルケの元へと歩いていった。
「ルイズ様…疲れてるんでしょうか…」
「くだらないことでも考えてたんじゃないの」
「まあ」
シエスタは、徐倫のぶっきらぼうな態度に驚いた。

閑話休題。

食事を終えると、徐倫がシエスタに連れられてルイズの元へとやってくる。
ルイズの近くに座っているのは、キュルケ、タバサ、ギーシュ、モンモランシー、平たく言えばいつものメンバーだ。
「やあ凛々しいお嬢さん、ルイズに召喚されたとは災難だね」
「災難よ」
徐倫はギーシュの言葉に素っ気ない返事を返した、ルイズはそれが気に入らないのか、少し唇を尖らせると。
「あんたねえ、使い魔なんだからもうちょっと使い魔らしい事言いなさいよ、例えば…」
「『ゼロのルイズに召喚されて光栄です』」
「そうそう、ゼロの…ってちょっと待ちなさいよ今言ったの誰!?」
どこからか聞こえてきた声が、自分を侮辱する内容だったので、ルイズは立ち上がって周囲を見た。
別のグループがルイズ達を嘲笑の目で見ながら、食堂を出て行った。
おそらく彼らが言ったのだろう。
「…あー、そういえば聞きたかったんだけど、さっきから何度か『ゼロの使い魔』って言われるのよね、ゼロって何?あだ名?」
徐倫の何気ない質問に全員が固まる、ルイズは一瞬の硬直の後、ハァーとため息をついた。
「ま、ここで話すのもなんだから、皆でルイズの部屋に行きましょう、アフターディナーティーも悪くないわ」
キュルケが提案すると、ルイズ以外の皆が頷いた。
「ちょっと待ちなさいよ、なんで私の部屋なの」
「だって貴方、授業に出てたんだから、その使い魔さんにトリスティンのことを何も教えてないでしょ?」
「そりゃそうだけど…」
ワゴンを押して食器を片づけていたシエスタが「後ほどお菓子をお持ちします」と言ったのをきっかけに、皆はルイズの部屋へと歩き始めた。。


途中、空に見える二つの月を見て、徐倫は考える。
プッチ神父はどうなったのだろうか、この世界は神父が望んだ世界なのか?
エンポリオは?アナスイは?エルメェスは?そして…父は…

「徐倫、何してるの、行くわよ」
「はいはい、ご主人様」
考えても仕方がない。今はとにかくこの世界の情報収集に努めようと頭を切り換えて、徐倫はルイズの後をついて行った。


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