ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サーヴァント・スミス-7

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庭でナランチャは必死に剣を振っていた。周りはもう暗闇に包まれて、不気味とも言える静寂が広がる。
『使い手』の能力を試す為と、剣の扱いに慣れるため。
なるほど、確かに身体能力は急上昇し、限界を超えた動きが出来る。これがこのルーンの働きなのだろう。
剣を扱ったことのないナランチャでもすぐに扱いになれることが出来た
そういえば、ギーシュとの決闘の際も、この能力は発動している事に気づく。
ワルキューレの剣と、自分のナイフを握った時である。
そして、高ぶらせた精神は『瞬間的にだが』、スタンドを武器と認識させ、攻撃力を上げた
どうも、まだ不明な点がありそうだ
ひたすら風を切る音が続き、やがてそれは止んだ。
目の前には相変わらず、薄霧のように続く闇。

「どうだ?分かった?」

「十分!こりゃいいや」

微笑んで走り出す。
ドンドンドンドンと廊下を大きな音を立てながら走りぬけ

「ルイズー!」

「静かにしろ」

本を投げられた。

「何も!何もあんなことしなくたって!」

「あんた今、夜だって事自覚してる?騒がしいのよ」

鼻血を出して泣き叫ぶナランチャに冷酷な言葉を吹っかけるルイズ。
大声を出したのは悪かったが、何も物凄く大きい本(ナランチャ談)を投げることはないじゃないか。
しかし、ルイズはそれを聞いていない。

「で?本当にその通りだったの?能力が上がるとか」

「マジだった」

「だから使い手ってーのは嘘じゃねーって言ったぶへっ!?」

腰に下げていたデルフリンガーがひったくられ、爆発を食らわせられた
この頃ルイズの気性が荒いような気がするが、気のせいであろうか?

「剣の癖に生意気言わない。……扱えそう?」

「楽勝、楽勝」

「さっきまで『どうかなぁ』とか言ってたくせに」、とルイズ。
目の前のナランチャは見事に悪童の笑みを浮かべており、白い歯が見え隠れする
陽気なナランチャに疲れて、ルイズはベッドに倒れこんだ。

が、それを邪魔するように、凄まじい、重い音が轟いた

「うおうっ!?」

「な、何よ!?」

ぐらぐらと建物が揺れる。
驚いたルイズが飛び上がって窓の外を見る
ナランチャもナランチャで、エアロスミスのレーダーを展開、きっちりサーチを行なっていた
ただならぬ気配。
どう考えても重大な事件が起こっているとしか想像しえない

「ルイズ!この位置!」

「宝物庫ね……!あそこだわ!」

よく目を凝らしてみれば、何か巨大なものが宝物庫の壁を乱打していた
ナランチャは一足先に階段を転げ落ちながら駆け下り、ゴーレムの元へ急ぐ
その後を追ってルイズが走って来た

「ああもう!ルイズ!お前どっか隠れてろ!」

「何よ!あんたこそどっか隠れてなさいよ!」

「何だと!どう考えても俺のほうが強いってーの!」

「私よ!」

「俺だ!」

そこへ突っ込んでくる拳

「「うわあああぁッ!?」」

ワルキューレと比べるのも馬鹿馬鹿しくなる。
ゴーレムだ。それも30メイルはあろうかと言う。
その肩に座っているのは、誰だろう。ローブに邪魔されているのもあるが、見上げているとどうも首が疲れる

(ふん、邪魔が入ったね。あの使い魔が居るのは予想の内だけど)

その盗賊は悪態をつくと、ゴーレムで再び宝物庫を攻撃し始める。強力な『固定化』がかかっているらしく、なかなか壊せないようだ
明らかにこっちを相手にしていない。
ルイズとナランチャは、ダブルプッツンをかますのであった

「テメェェェェ、舐めてんじゃねェーーぞッ!ブッ潰れよォォォッ!!」

「この……吹き飛んじゃいなさいッ!」

エアロスミスが怒りのパワーでほんの少しパワーアップ。
思いっきり加速し、そして、掃射――
だが、土に穴を開けただけで、すぐに治ってしまった
ならばとばかりにエアロスミスを特攻させる

これが普通の戦闘機とかなら「なんとか帝国ばんざーい」とか「後は頼んだぜ」とか「悲しいけどコレ、戦争なのよね」とか。
「最後の波紋だぜ、受け取ってくれーッ」とか言って四散しているところだが、スタンドはスタンドでしか傷つける事は出来ない。とはいえ、魔法なのである程度は干渉しているようだが、あまり気にしないほど。

もし魔法がダイレクトで干渉できたら、今頃ナランチャはゴーレムに激突した衝撃でブチャラティとの対面を果たしていたかもしれない。

ゴーレムをドリルのように少しずつ削っていく。だが、エアロスミスの猛進は、ゴーレムが鉄に錬金されることによって止まる
しかもじわじわと、エアロスミスを飲み込むように修復してきたので、急いで風穴に突っ込んでいたエアロスミスを引っ込める
敵も、『何か』が自分のゴーレムの体に侵入したのは気づいたようだ

「っとと、あぶねー、冷静になれよ、ナランチャ……」

それに反して失敗魔法を撃ちまくるルイズ。威力はかなりのものだ。
正確な位置に撃つことが出来ず、爆発の大きさもコントロールできないのは難点だが。
エアロスミス以下の精密動作性と言おうか、乱雑に撃ち込まれる爆発はまともに当たっておらず、あまりダメージを与える事が出来ないようだった
全く来ない教師や兵士をわずらわしく思いつつ、そんな暴走したルイズをナランチャは止める

「おい!落ち着けってーの!」

「これが落ち着いていられる訳ないでしょ!」

(無駄にプライド高いなぁ)とナランチャは思う。
その刹那、爆発は宝物庫を直撃、壁があっけなく崩れ去ってしまった
ナランチャが乱射した機銃が当たっていた(しかも殆ど直撃)ので、さらに脆くなっていたのもあるが。
それと同時に、ルイズの貴族としてのプライドと言うヤツは思いっきり崩れ去った
結果として二人が壁を破ったのだ。
崩れる瞬間、スタンドの弾丸が固定化を破って開けた穴をみて、ナランチャまで顔面蒼白となる。

「やっちゃったね」

「やっちゃったな」

微笑み、顔を見合わせて言う二人。会話だけだと想像がつかないが、どちらとも顔は真っ青である。
対照的に、ゴーレムに乗っている人間は宝物庫に入ろうとする、だが――
空から、風が吹いて、ゴーレムを攻撃する。
よろけるゴーレム。これは『予想外』か?
仰ぎ見る、そこには巨大な竜が居た

「あ!タバサ!」

「え?え?何であんたが知ってんの?」

「いや、いいから、そういうことは」

ルイズもナランチャと同じ背が低い方なのに馬が合わないから仲良くなれず。
何故か同じく背が低いタバサとは共感できて仲良くなったといったら、多分ここでナランチャは死ぬ。
それもルイズの手にかかって
なので黙っておいた。また死ぬのは御免である。
割と嫉妬深い『ご主人様』は手を焼く。17才が思うことではないかもしれないが

「援護」

「任せといて」

タバサの隣にはキュルケが居た。
どうやら素早いシルフィード(名前はタバサからナランチャが聞いている)で駆けつけたのだろう
キュルケは彼女らしい弾んだ声を出しながら、火球を作り出し、ゴーレムに直撃させる
たいした効果もなかったが、足止めぐらいにはちょうどいい。
それに、乗っているのはれっきとした人間であり、タダではすまないだろうと思われた
しかし、ひょいっと『フライ』で飛んで、着地。あの攻撃を掻い潜りながら素早く目的を盗み、またフライでゴーレムの肩に乗る
凄い泥棒根性である。怯む様子など微塵も見せない
ルイズたちに嫌味のように感謝しつつ、壊れた宝物庫の壁を背後に、ゴーレムは去って行った
背への攻撃もものともせずに。

「あーもう!なんなのよー!」

地団駄を踏むルイズ。ナランチャは呆然としていた
まさか、自分が相手もされずに普通に盗まれて逃げられるとは思わなかったのだ
相手にされていなかった――
メイジのギーシュに勝った。だが、その上にはさらに強力なメイジが居た事を思い知らされた
だからといって、自身が消え去ったわけではなかった
逆だ。『倒す』という明確な意思をあのゴーレムに向けるに伴って、『さらに強く生きる』ことを心に刻んだ
しかし、言動は裏腹で

「いつか張り倒す!」

天国のブチャラティは、彼をどう思っているであろうか

(また……キレてるのか……)

ブチャラティは泣いていた
ルイズはまだ隣で地面を踏んでいた。

次の日。
目撃者として呼ばれた4人は、オスマンの眼前に来ていた。
周りには教師達が精気を搾り取られた様子で倒れている。怒鳴られたのだろう。それも念入りに。
何故女性教師だけが一層ひどくなっていたのかは謎である。

その惨劇(?)の中、オスマンが徐に紙切れを出した

『破壊の杖 確かに領収いたしました。 土くれのフーケ』

このような声明文を出すのも『土くれのフーケ』の特徴なのだという。
そして、やがてはそのフーケに関する話へと移る

「ホント、ふがいないのぉ。 それで、そこの子ら、話を聞かせてもらうぞい」

「はい。ご存知の通り、土くれのフーケが宝物庫を破壊し、中の宝物を」

「いや、それはわかっとるんじゃが、あの固定化を短時間で、邪魔が入ったにもかかわらず壊せるとは思うておらんかったからの。何か理由があったんじゃなかろうかと」

「うっ」

ルイズとナランチャの心臓に矢印が刺さっている。

「い、いえ、単にゴーレムが強力すぎただけだと」

「やっぱそう?王宮に知らせる時間もないし、じゃあ、誰か破壊の杖の奪還に行くものは居らんか?」

凄くあっさりごまかせた。
オスマンのこの性格が功を奏した。
続けて、周りの教師に話を振るが、誰一人として返事はしない

「なんじゃ、情けないのう。名誉を手に入れるチャンスでもあ……」

「私が行きます」

名誉挽回とばかりに杖を掲げたのは、ルイズであった。
しなびれた植物のようになっていた教師が突然起き上がり、静止する

「ミス・ヴァリエール!君は生徒じゃ……」

「先生が行きますか?」

「腹がぶっ壊れた」

「へんじがない ただのしかばねです」

またしなびれた植物に戻る教師達

「ほら、誰も行かないんじゃないですか」

それに続いて、キュルケとタバサが杖を掲げる
2人共にトライアングルクラスのメイジであり、タバサに至っては『シュヴァリエ』の爵位まである
オスマンは、「二人なら安全かのう」と思って心中で許可するが

「えーと、ミス・ヴァリエールはそのー、えー」

「もういいです」

ルイズが眉間をぴくぴくさせていると、いつぞやのようにロングビルがドアを乱暴に開け駆け込んでくる

「おぉぅ?なんじゃい。態々尻をあべしっ!?」

「黙れ爺。皆さん、フーケの居場所が分かりました」

ロングビルの衝撃宣告。
空気は「な、なんだってー!」状態であったが、誰一人として叫ばない。叫んだら負けかなと思っていた。
オスマンは噴水のように流れる鼻血をそのままに、問いただした

「して、その場所は?」

「この森です。廃屋を一時的なアジトにしていると考えられます」

そこは馬車で何時間ぐらいであろうか。少しだけ遠い気がする。
オスマンがうむ、と頷くと、4人も肯定の意を示し、目的地は決まった

ロングビルが馬車の手綱を握る事になり、全員が馬車に乗り込む。
迅速に行動すべく、話し合いが終われば即行動に移すこととなったのだ。
作戦としては、小屋へ囮を出し、フーケの確認。
居れば戦闘開始。いなければ即座にまた合流し、様子を見るということに決まった

ぐらぐら揺れる馬車内に沈黙が広がる。
喋るネタが何も見つからなかったのか、死と隣り合わせの勝負を挑みに行く事を密かに緊張しているのかは知らないが。
キュルケはその空気を打開しようと、ロングビルに話しかけた

「あ、そういえば、ミス・ロングビル。何であなたが御者を?」

「ああ……私は、貴族じゃありませんからね」

「えぇ?」

きょとんとした顔で、珍しく目を丸くするキュルケ
対して、ロングビルは薄く微笑を浮かべていた。

「でも、オールド・オスマンの秘書を……」

「あの方は、貴族や平民などにあまりこだわりませんし(ある一点には凄くこだわるけど)」

小声で言う。
ある一点=スタイル
そう察したキュルケは、「やれやれ」と肩をすくめた

「だけど、何の因果でオールド・オスマンの秘書を……」

「昔の事を根掘り葉掘り聞くなんて、やめときなさいよ、キュルケ」

ナランチャの頭の中が急に寒くなったが、何故だろうか。
絶対零度と言えなくもない。

「んもう、あんまり皆が黙ってるから、喋ろうとしただけじゃない」

むすっとした様子でキュルケが唇を尖らせる
キュルケとルイズが言い合っているのを聞いていると、本当は仲いいんじゃないか?と思える
いつの間にか小ぢんまりとした廃屋に到着。
その手前の茂みに隠れて様子を見て、暫くして動きでもあろうものならばとっ捕まえる寸法だ

(ナランチャ)

(わーってるよ)

エアロスミスのレーダーについては、ルイズしか知らない。
それが、『土くれのフーケ』の不幸だった
目の前に投影し、二酸化炭素を探知して光点が出る……はず、だったのだ

「……オイ、ミス・ロンゲビール」

「ロングビルです。どうしました?」

「あの中にゃ、人いねーぞ」

「……え?」

ロングビルは、何故か愕然とした様子で、呟いた。ナランチャは密かに怪しく思う。
逃げられている可能性は十分あったのだ。
別段驚くような事ではないし、破壊の杖奪還が優先の任務なのだから、逆に無駄な危険を省けて喜べる事でもある。
ホッと一息つくのはいいとしても、ここまで来る時間を考えればおかしいことではないだろう。
この時点から、ナランチャは「ミス・ロングビル」を警戒する事にした。

「逃げられたんじゃねーか?もしフケ野郎倒すって言うなら、他の所探そうぜ」

「フーケですよ。え。いや、まだ分からないとおも」

「ボラァッ!」

機銃を撃ちまくり、廃屋を崩す。
あまりにも脆かった。
その中には、ちょいと木屑のついた『破壊の杖』以外、何もなかったのだ
呆然とするロングビル。
やはり様子がおかしい。ナランチャの洞察力が見抜く

「ほら、フーケを倒す気がないんならさっさと取って帰るぞ、最優先はこれの奪還だろ?」

何気なしにそのどう見てもロケットランチャーな物体を握る
その瞬間、『誰か』が笑った。

「……?M……72、なんだって?」

頭に流れる情報に、戸惑う。
その一瞬の隙を突いたのかは分からないが――突如としてゴーレムがロングビルを掴み――投げた

「あ……ッ!み、ミス・ロングビル!」

虚を突かれた4人は、森林から伸びてきたその腕に対応しきれず、薙ぎ払われた
キュルケとタバサがレビテーションをかけてくれたおかげで何とかなったが、少し痛みが残る
激しく地面を削りながら踏みとどまり、眼をゴーレムに向ける。

「来たなァ~、大ボスッ!」

ナランチャの言葉を皮切りに、その場に急遽張り詰めた空気が流れ、全員が戦闘体制に入る
先手を打たんとばかりにデルフリンガーが抜かれ、一瞬の煌きを残して、ゴーレムに向かって一閃した

To Be continued

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