ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第十話『 'Lesson 1' My Name Is MANHATTAN-TRANSFER 』

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フーケ討伐隊を乗せた馬車は順調に目的地に向かっていた。
途中でキュルケがミス・ロングビルのことを根掘り葉掘り訊こうとしたり、
そのことでルイズと口論になったり、タバサがいつもと変わらず本を読んだり、
金色の野に降り立ったり、人がゴミのようになったり、森の守り神に会ったり、
モップで空を飛んだり、腕からハーミットもどきが生えてきたり、猫耳になったり、
色々あったが諸々の事情により省略する。

『変な帽子みたいな使い魔』

というわけで、彼女達は森の中の小さな小屋にやってきたのだ。
「あそこにフーケがいます・・・タブン」
『ちょっと待って!今小さくたぶんってつけたさなかった!?』
と三人が突っ込む前に、あわててミス・ロングビルは偵察をしに森の中に消えた。
「なーんか罠っぽいわよねー」
キュルケがつぶやく。
「作戦会議」
タバサがちょこんと地面に正座すると、地面に絵を描いて作戦の説明を始めた。
『ドキッ!女だらけのフーケ討伐作戦~囮もあるよ!~』
「以上」
ようするに囮が小屋を偵察しつつフーケをおびき出し、小屋の外に出たフーケを一斉攻撃すると。
そしてその囮は、
「わたし!?」
2対1でルイズに決定した。これぞ数の暴力。
「いやよ!なんか囮って格好悪いじゃない!」
「そう言われてもねぇ、あんたの爆発だと囮も巻き込む可能性が高いもの」
「正論」
そう言われたらルイズも引き下がるしかない。いや・・・
「そうよ!こいつが行けばいいのよ!」

ルイズの提案で帽子が囮になった。ルイズの言い分は、
「こいつならどんだけ巻き込まれても当たらないもの」
明らかに帽子では偵察にも囮にもならないが、
ルイズが譲らないのでとりあえずやってみることになった。
(行きなさい!帽子ッ!)
ルイズの命令を聞いてか聞かないでか、帽子はふわふわと小屋に接近していく。
 ・・・と見せかけて離れていく。
 ・・・と思いきやまた近づいていく。
 ・・・ところがどっこいまた離れて・・・

30分後。
「もういいッ!わたしが行くわッ!」
『もうどこにでも逝け』とキュルケとタバサは思った。
ルイズはカサカサと小屋に接近し、窓から中を覗く。
(人の気配はないみたいね・・・)
ルイズはジェスチャーで離れた所にいるキュルケたちに合図を送った。
「『パン』『ツー』『マル』『ミエ』・・・どういう意味かしら?」
「キュルケ、全然違う」

フーケが小屋にいないので三人で調べることにした。
まずタバサが『ディティクトマジック』で罠の有無を確認したが、反応はなかった。
ルイズを外の見張りとしてキュルケとタバサは中を捜索し、
フーケのかわりに箱を一つ見つけた。
タバサが箱を開けると『パララパッパラー』
「破壊の杖~」
破壊の杖はあっさり見つかった。
「・・・どういうことかしら?」
キュルケがそうつぶやいた瞬間。
「敵襲――――ッ!!!」
小屋の屋根が吹っ飛び、大きなゴーレムがコンニチワしてきた。

「『フレイム・ボール』ッ!」
「『ウィンディ・アイシクル』」
キュルケとタバサの超必殺が叩きこまれるが、ゴーレムはすぐに再生する。
「・・・やっぱり反則よ、コイツ」
「退却」
すでに破壊の杖は回収した。フーケを取り逃がすのは残念だが、学院の面子は保てるだろう。
二人はそう判断し、ルイズを引っ張って逃げ出した。
ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ
「ちょっと!?なんで足を引っ張るのよ!痛い痛い!ハゲる!頭ハゲる!」
仰向けに引きずられているルイズのわめき声は、必死に逃げる二人の耳に届かなかった。
「ヤバイ!これヤバイって!パンチがくるわよ――――ッ!」
ゴーレムのメガトンパンチが逃げるルイズたちに振り下ろされる!
ゴシャァッ!
「きゅいきゅい!(ギリギリセーフ!)」
間一髪のところでシルフィードがルイズたちを回収した。
ゴーレムが空に攻撃できないのは前回の戦いで証明済みだ。
これで一安心、と三人がホッとした瞬間、
「キャアァァァァァァァァァッ!!!」
ミス・ロングビルを忘れてたことを思い出した。

ミス・ロングビルは巨大なゴーレムの手でがっちり掴まれていた。
正直に言えば、ルイズたちはこのまま逃げようか?と考えた。
ただでさえゴーレムに歯が立たないのに、人質をとられたらどうしようもない。
なんとか助けだせたとしても、再び逃げ切れるかどうかも賭けだ。
フーケは姿をまだ見せていない。逃げようとしたところを狙われるかもしれない。
そうすれば全滅する可能性が高い。
全滅する危険を冒すよりは逃げたほうが良いのではないか?

(良い訳ないじゃない!!)
ルイズは自答する。
彼女は貴族ではないが、仲間ではないか、短い間とはいえ。
仲間を見捨てて、敵から逃げ出す者を貴族と呼べるのか?
ルイズの脳裏にミス・ロングビルとの思い出が浮かぶ。
学院長室で『帽子』を連呼していたミス・ロングビル・・・それしか思い出せなかった。
(・・・やっぱり見捨てようかなー)
しかしそんな考えを振り切り、
「敵に後ろを見せない者を!貴族と呼ぶのよ!デュワッ!」
ルイズはそう叫ぶと破壊の杖を引ったくり、シルフィードから飛び降りた。

ミス・ロングビルを掴んでいたゴーレムの腕が爆散した。
崩れた腕と共にミス・ロングビルが地面に落ちる。
「ミス・ロングビル!早くこっちへ!」
ゴーレムの動きを爆発で牽制しつつルイズが叫ぶ。
土まみれのミス・ロングビルは急いでルイズのそばまでくると、
ルイズが破壊の杖を持ってきたのを見てこう言った。
「ミス・ヴァリエール!早くそれでゴーレムを!」
「わかってるわ。こいつでとどめよッ!」
ルイズはゴーレムへと破壊の杖を振った!
『・・・だがなにもおこらなかった!』
「・・・あれ?」
まあぶっちゃけロケットランチャーだし。
「・・・使えないんですか?」
ミス・ロングビルがやけに冷たい声で言う。ルイズは泣きたくなった。
ゴーレムも再生完了しこちらに向かってきた。ルイズはもっと泣きたくなった。

「二人ともッ!跳んでッ!」
空にキュルケの声が響いた。
見ればシルフィードが物凄い勢いで急降下してくるところだった。
ルイズとミス・ロングビルはキュルケの言う通りジャンプした。
「シルフィード!」
(オッケーお姉さま!うおっしゃあぁぁぁ!!!)
ブオンッ!とシルフィードがバレルロールを行う。ちょうどルイズたちの真上で逆さまになるように。
そして逆さまになったキュルケが、
ガシッ
とミス・ロングビルの腕を掴んだ。
同時にタバサがルイズの手を、
スカッ
「「あ」」
タバサとルイズの声が重なった。
タバサの手はルイズの手を掴むことなく離れていく。
ルイズには見えた。高速で離れていく風竜の背中で、
『ごめん。マジでごめん』と両手を合わせるタバサがやけにゆっくりと見えた。
「このド貧乳がァァァァァァァァァァァァ――――ッ!!!」
どべ、とルイズは地面に倒れた。
あわてて立ち上がり逃げ出そうとするが、
「痛ッ!」
お約束通り足をくじいており、立ち上がれない。
ルイズが振り向くと、ゴーレムが足を上げルイズを踏み潰そうとしていた。

①可憐なルイズは突如、脱出のアイデアを閃く。
ルイズはとっさに杖を抜き、呪文を唱えたが、
さっきミス・ロングビルを助けたときのように爆発を当てても、
足が吹っ飛ばせても、すねの部分で潰されるだろう。
そしてルイズにはそれしかできない。

②仲間が来て助けてくれる。
タバサたちを乗せたシルフィードは急いで戻ろうとしていたが、
スピードを出し過ぎたせいでルイズから離れ過ぎている。
ゴーレムがルイズを踏み付ける方が早いのは、子供でもわかる。

③かわせない。現実は非情である。
(・・・わたし、死ぬの・・・?・・・)
まだ魔法を満足に使えないままで?『ゼロ』の汚名を返上しないままで?
バカにしてきたやつらを見返すこともできずに?
実家の家族を安心させてやることもできずに?
魔法が使えるようになって異性にモテモテ、ビジネスも成功し、
書いた自伝がベストセラーになって毎日札束のお風呂に入り、
『やってて良かった、○文式』とも言ってないのに?
(・・・イヤよ、そんなの・・・惨め過ぎるじゃない・・・
 わたしはただ『認められたい』だけなのに・・・
 キュルケやあのタバサって娘ほどじゃなくてもいい・・・
 ギーシュやマリコルヌ以下でもかまわない・・・
 ただ一人の『メイジ』として認めてもらいたいだけなのに・・・!
 なんでこうなるのよ・・・――――ッ!)
答え③・・・?


ふわり


④何故か帽子がやってくる。
ルイズとゴーレムの足との間に、そいつはふらりとやってきた。
ゴーレムを打ち砕く矛となるつもりか?ただの帽子が?
ルイズを守り抜く盾となるつもりか?ただの帽子が?
まるで帽子に、運命におちょくられているような気分を、ルイズは味わった。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ムカツク)
ルイズは怒った。いつもの虚勢ではなく、心底心の底から怒りが湧いてきた。
(御主人様が死にそうだってのに!これみよがしにふわふわしやがってェェェェェ!!)
死の恐怖も不条理も理不尽さも、帽子への純粋な怒りで塗りつぶされる。
全てこいつが悪いとは言わない、全ては自分で選択した道だから。
でもムカツク。本当にムカツク。なにがなんでもムカツク。
こいつに一発かましてやらないと、死んでも死に切れないッ!!!
ルイズは早口で呪文を唱え終えると、帽子に向かって杖を振り下ろそうとした。

ようこそ、『ルイズの精神世界』へ。
「このドグサレがアァァァァァァアァァァァァァアッ!」
『本能』が叫ぶ。
「今にも『第3部完ッ!』しそうなのになにしてんだろ、わたし」
『理性』が嘆く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そして『もう一人』。
彼女(60歳、専業主婦)は、やけに自信たっぷりにこうつぶやいた。
「・・・それでいいッ!それがベストッ!」

ルイズは帽子に向けて杖を振り、呪文を解放し、そして叫んだ。
何故そう叫んだのかヤケクソ気味のルイズにはわからない。
そういう『運命』なのかもしれなかった。


「『マンハッタン・トランスファー』ッ!!!」


第十話『 'Lesson 1' My Name Is MANHATTAN-TRANSFER 』完ッ!

ピンポンパンポーン


―――お詫びと訂正―――
今回、不適切な表現があったことを心からお詫びいたします。
読者の皆様には、以下のように脳内で訂正してくださるようお願いします。
『ド貧乳』→『クサレナイチチ』


ピンポンパンポーン

to be continued...>

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