ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

マジシャンズ・ゼロ-20

最終更新:

familiar_spirit

- view
だれでも歓迎! 編集
ルイズが朝食を食べている間、食欲の出ないアヴドゥルは中庭でロングビルと会っていた。
「おはようございます。昨晩はずいぶんお楽しみのようでしたね」
開口一番のロングビルの一言。言い終わるや否や我慢ができなくなったのか、小さく肩を震わせ声をかみ殺し笑いだす。
「んぷッ…くく」
「……やめてくれ…冗談に聞こえない」
目の前の笑いを一生懸命堪えようとしているロングビルに、いつもより幾分げっそりしているアヴドゥルは弱弱しく言い返す。
「ふふッごめんなさい…でも、もうだめ」
完全に壷に嵌ったのか我慢できなく大きな声で笑い出すロングビル。頭をテーブルに付けお腹を抱え笑う姿は……なぜか可愛らしい。
「…はぁ~」
笑い声が響く二人きりの中庭にアヴドゥルの溜息がかき消される。

ようやく笑うのを止めたロングビルだが、諺にある『他人の不幸は蜜の味』の言葉どおりいつもより楽しそうな顔をしている…どうやら隠れドSのようだ。
「それにしても…昨日はずいぶん苦労したようね」
「…ああ」
「ミス・ツェルプストーの噂は聞いていたけれど…噂以上ね」
「噂か……どんな内容かだいたい分かるな」
「それりゃあねぇ」
苦虫を噛み潰したような顔で答えるアヴドゥルにクスッとなりながらも同意するロングビル。そんなアヴドゥルの姿が心底楽しいのか今までで最高の笑顔を浮かべている。
「で、本当は何が起こったの昨晩」
まるで友人と接するように気軽に聞いてくるロングビルの姿は、純粋に仲良くなれたことが分かり嬉しくなる。
だが話の内容が内容なだけに素直に喜べないアヴドゥルは顔に縦線を入れながら語りだす……昨晩の真実を。
それにしても……一日で二人の立ち位置は逆に変わったようだ。

……くちゅ…ちゅ…くちゅ
暗い部屋にアヴドゥルとキュルケのディープなちゅ~の音が響く。もう抵抗すらしないアヴドゥルの首に手を絡めさらに密着するキュルケ。
さらに激しくなるキス。キュルケの顎を伝い二人の混ざり合った唾液が床に円を描く。
されるがままの中、アヴドゥルは考える。
(もう疲れた…このまま流されるか)
キュルケからの熱烈なキスもだが現在進行中で頭に流れてくる電波…

―逝け
 逝けといわれてもこれでは18禁に…
 キュルケ主役の期待があるではないか…逝け
 期待~~~?未成年者もいますよォォォ
 関係ない逝け

電波から許しが出、アヴドゥルが考えるのを辞め、キュルケを抱きしめようと手を伸ばそうとした瞬間。ドッグァーン!…部屋の窓をぶち破られた。
「キュルケ!」
「どうしてなんだ!?急に別れるなんて!」
「それにその…亜人!キュルケに触れるな!」
「ちッくしょー!僕にはキスなんてしてくれなかったのにー!」
窓から雪崩れ込んでくる男男男。今までのキュルケの恋人達だ。キュルケはアヴドゥルに本気の恋をしたので、即座に恋人全員に別れを告げていた。
今のキュルケに見えている男はアヴドゥルだけであるため、全員集めて、
「私本当の恋をしたのだから別れましょ。じゃ~ね~」
と簡単すぎる言葉…理由にもならない理由を言っただけだが。

突如乱入してきた今にも血涙を流しそうな男たちに、アヴドゥルは目が覚める。
(…はッ!わたしは何をしようとしていたんだ!?)
(チッ…ダーリンの目が覚めちゃったじゃないのよ、あのドグサレ共!)
キスから顔を離し目に生気が戻ったアヴドゥルに心中で盛大に舌打ちし、テメェらブチ殺すぞ!な目で乱入して来た元彼達をにらみ付けるキュルケ。
「…あなた達こんな時間にレディの部屋に何しに来たの」
キュルケは何処からともなく取り出した杖を構え言う。その横にはこれまたいつの間にかフレイムがいる。
「「「「ひィ~~~」」」」
完全にブチ切れているキュルケに最初の勢いなど消え怯える男たち。

そんな主人を横目にフレイムはアヴドゥルに小声で言う。
「…きゅるきゅる(今のうちに逃げてくれ)」
「いや、逃げたいのは山々だが……お前は大丈夫か?」
故意に逃がしたと分かればキュルケから罰があるかもしれない。アヴドゥルはフレイムを心配する。
「きゅる…きゅる(いいってことよ…元はと言えば俺にも責任がある)」
「しかし…」
「きゅる…きゅるきゅる!(主人の命とはいえボスに酷いことをしたんだ…俺に構わず行ってくれ!)」
「……すまない」
修羅場で繰り広げた男の世界。本人達は大真面目だが人とトカゲなので端から見れば滑稽でしかない。
すぐさまドアを蹴破り隣のルイズの部屋に逃げ帰るアヴドゥル。それを見送り男らしく笑うフレイム。
「きゅる(生きて会えたら酒でも飲もうぜ)」

呪文の詠唱中だが、真横でそんなことをやられれば普通気付く。目の前のドグサレ共を燃やすため詠唱を続けながらキュルケは思う。
(まあいいわ興も冷めちゃったし。それに…あの手応えなら大丈夫、いつでも落とせるわ。それに、まずは……)
フレイムに同時攻撃するよう目で合図した後、目の前の標的をしっかり見据える。
(……ゴミの火葬が先ね!)
「……いっぺん燃えてみる?」
言葉と共に極大ファイアーボールを放つキュルケ。
ドッグァァーーーーン!!!
その威力は凄まじく、今までのキュルケの魔法の中で最高の出来だった。…男たちを壁と共に吹っ飛ばす程。

「その後は分かるだろ?」
「ええ。いきなり建物が揺れて飛び起きたもの」
若干自分に不利な部分を隠しロングビルに真相を話したアヴドゥル。
「…で、その後は大丈夫だった?」
「その後とは?」
「ミス・ヴァリエールよ。ツェルプストー家とは確か犬猿の仲でしょ?使い魔が敵の部屋に行ったなんて、大目玉だったんじゃないの?」
実にいい笑顔で聞いてくるロングビル…ニヤニヤと付きそうなくらい。
「ああ。それは問題なかったが……」
「何?他に何かあった?」
顔に興味深深と書いてあるような反応。アヴドゥルはちょっとクールなロングビル像が壊れたことを感じる。
「…寝ていたよ」
「へ?」
「横であんな轟音が出ていたのに起きる気配もなかった」
「………さすがヴァリエール家というべきかしら」
学園中大騒ぎになり、『土くれ』のフーケの襲撃まで言われた昨日の事件でルイズが寝ていたと聞き、ロングビルは大きな冷や汗を浮かべる。

「今日のデザートは何かな~w」
周りで寝不足なのか欠伸が頻発する食堂の中、ルイズは一人元気良く朝食を食べていた。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー