ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第3章 伝説は蘇り、歴史は繰り返す ②

最終更新:

familiar_spirit

- view
だれでも歓迎! 編集
第3章 ②


「Buongiorno!(こんにちは!) まさかこんな荒れ果てたところで、素晴らしく美しい花と出会うだなんて♪」
「…それはどうも」
なんかノリが悪い……。 警戒してんのか? じゃあ最初は真面目に。
「お嬢さん、いかがなさいました? ここには自分しかいませんが。」
「あ、いえ、こちらで爆発があったと聞きまして(お嬢さん? …久しぶりかも♪)」
何となく美人の背景が”パァァァァ”と明るくなった? よくワカンネ。
「嗚呼、それで……。 確かにありました。デカイヤツがね…。」
瓦礫の山からはマシになってはいたが、まだまだ悲惨な教室を二人で見渡す。
「……みたいですね。 ところで貴方、ミス・ヴァリエールの…」
「ええ、スクアーロといいます。 良くご存知で (オレって有名? ……多分悪い意味だな)」
「使い魔が人間など、前代未聞ですからね」
「(やっぱり……) …そうなんですか? 自分はよく知らないもので… 
 今度ご教授願えませんか? ぜひ二人っきりで。ミス……」
「ロングビルです。 でも私、人に教えるのは苦手で……」
「? ここの先生では無いんですか? ミス・ロングビル」
「私は院長の秘書をしています。 教師ではありません」
「では魔法は使えない?」
「少しではありますが使えますよ。 貴族でないメイジもいますの」
「??」
「つまり、『貴族は全てがメイジだが、メイジが全員貴族ではない』ってことです。」
「…なんらかの理由で、貴族でなくなった人たちがいる」
「その通りです。 そして、私もその一人……」

「…これは拙いことを聞いてしまいました。 どうか許してください。ミス・ロングビル」
「大丈夫。気になさらないでください。
…それと、気軽にロングビルと呼び捨てで構いませんよ?スクアーロさん」
「良いんですか? じゃあオレのこともスクアーロで。もしくは”鮫”で!」
「鮫…ですか?」
「オレのクニでは鮫のことを”スクアーロ”って言うんです」
「そうなんですか? とても遠い国からいらっしゃったんですね」
「そりゃあ、もう… 気の遠くなるほどにね……」
……マジで帰れんのか。 すンげー不安だ。
「今度、お国のお話を聞かせてくださいね」
「! ええ! いつでもいいですよ! 早速今夜いかが?」
ウフフ♪と微笑むロングビル。 こりゃあ期待していいのか!
「お誘いありがとう♪ ……でも、ごめんなさい。 せっかくだけど、ここ二・三日は忙しいの…」
「そうなの……」 (´・ω・`)ショボーン
「ごめんなさいね? また今度誘ってね、”鮫”さん♪」
「! 喜んで!!」 (`・ω・´)シャキーン
手を振りつつ、教室から出て行くロングビル。
「鮫さん♪」だって! うひょー! ……でも彼女何しに来たんだろ? 野次馬?

……久しぶりにイイ感じの男の人にあったわ♪ へんな髪型だけど。
あのエロヒゲジジイに会ってからロクな男がいなかったもの!
ジジイにコッパゲ、その他大勢の男性教師。 周りはガキばっか。
お宝のためとはいえ、院長にあそこまでセクハラされるとは……。
心が折れかけたわ……。 その分ジジイをやっつけたけどね。
……異国情緒たっぷりってのが新鮮でいいわ♪ へんな服装だけど。
……お誘い受ければよかったかも。
なんちゃって☆ キャー!キャー!

最初の目的も忘れ、廊下で跳ね回っているフーケ。
今後の参考のため(勿論盗賊家業の)、爆発する魔法の話を聞くつもりが……。
色々苦労があるようで。 小さな幸せが嬉しいらしい。
不憫だなぁ、土くれのフーケよ……。


なかなかの好感触に気分を良くしていた鮫の処へ、学院の使用人が来た。
庭仕事用の一輪車をもって来てくれたらしい。
教師たちが準備させたようだ。手伝いましょうか?とも言ってくれた。
(運び出す苦労は減ったわけだ…)
使用人に一輪車の礼を言い、手助けは丁重に断った。
「気持ちはありがたいが、これも”オレの仕事”なんだ」

”自分の仕事”はきっちりやる。 ”みんなの仕事”は周りをみて、休む。 つーか、サボる。

それがちょっとしたポリシー(?だった。
使用人が教室からいなくなり、独りぼっちになる。
(あんま無かったよな……。 独りきりってのは)
いままでは相棒が必ず隣にいた。
「……何考えてたんだか。 さ、仕事しようか……」

ほぼ全ての石くれを片付け終え、綺麗になった教室。
うーん、掃除のスキルがアップしたぞ! これでお嫁にいつでもイケル!
馬鹿なことを考えていると、御主人様が帰ってきた。
「……もう終わった? 掃除…」
「おう、お帰り。 ほとんどな」
やっぱり可愛い子は綺麗な姿が一番だな。
ルイズの周りの空気が輝いて見えた。……気がする。
「そう……」
だが、本人は輝くどころか、くすんだ表情をしている。
「何か元気ねーな? ……大丈夫ですか?御主人様?」
「……」
おどけてみるが、効果は無かった。
「……”失敗”のこと気にしてんのか?」
「……あんたも分かったでしょ? 私が何故”ゼロのルイズ”って呼ばれてるか…」
「なんとなくな…」
「魔法の成功率”ゼロ”。それが私の二つ名……」
「ルイズ…」
目が潤み、身体が少し震えている。 怒りと悔しさの混じった声で続ける。
「誰もが成功するような簡単な魔法も使えない」
「貴族なのに、メイジのはずなのに魔法が使えない」
「周りからは勿論、家族からも呆れられるぐらい成功しない」

……自分の目から涙がこぼれているのが分かる。
何故、泣いているのだろう。
何故、こんな愚痴を他人にこぼしているのだろう。
何故、心を見せているのだろう。
何故? コイツが……使い魔だから?
使い魔とメイジは一心同体だから?
コイツは人間。しかも平民。
幻獣や動物ではない。”言葉”が通じる。
人間の気持ちが分かるのだ。 心で理解できてしまう。
今までの自分だったら絶対にこんなことはしない。
同情されたくない。
そんなこと絶対に嫌だ。
たとえ、”ゼロ”でも…… 私はメイジであり、貴族なのだ。
誇りがある。
絶対に譲れない誇りがある。
哀れみはいらない。
可哀想な女の子で終わってはいけない。
私は絶対に、立派なメイジに、貴族になる。
そのために誰にも負けないような勉強をしてきた。
知識だって、練習だって誰よりやってきた自負はある。
それでも失敗する。
何度やっても失敗する。
失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。
失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。
失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。
失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。
失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。失敗……

もう自分はメイジに、貴族になれない。
そう諦めかけたとき、コイツがきた。
使い魔の召喚に成功した!
もうゼロじゃない!!
嬉しかった。ただただ嬉しかった。
自分も魔法は使えるのだ!
もうゼロじゃない!!!
……だから、錬金もできると思った。
だって私は魔法が使えたのだもの!
もうゼロのルイズじゃないもの!
………でもダメだった。
今までと同じ。
魔法が使えないメイジ。
メイジじゃない貴族。
ゼロのルイズ。
そんな自分が嫌い。
嫌い。嫌い。嫌い。
嫌い。嫌い。嫌い。
嫌い。嫌い。嫌い。
大ッ嫌い! 
自分が許せない!!
そして何より……

自分の失敗で、誰かが傷ついたり、誰かの迷惑になるのが許せないッ!」

「アンタにも、怪我をさせてしまったッ! 傷つけてしまったッ!!!」

使い魔の軽く傷ついた腕や少し破れた服を見て、改めて自分の失敗を悔やむ。
涙は止まらず、声はかすれ、身体はガタガタと震える。 感情が一気に溢れ出す。

「自分のせいで、誰かが嫌な思いや辛い思いをするのは絶対嫌ッッ!!」

最後の言葉を言い切ると、その場にへたり込む。
足に力が入らない。
情けないところを見せてしまった。
使い魔に軽蔑されるだろうか。
自分を哀れむのだろうか。
本当に情けない。
まるで同情してくださいと言わんばかりだ。
本当に情けない………

鮫は優しく、ゆっくりとルイズを包み込むように抱きしめる。

「ルイズは優しいな……」

優しい? 私が?

「オレは…誰かに説教できるような立派な人生は送ってない。
 勿論、後悔はしてない。 自分で選んだことだからな……」

腕を解き、ルイズの涙を指で拭いながら、鮫は続ける。

「だから… 慰めるとか励ますなんてことはできねぇ。ただ…」

今までにない真剣な目で見つめる。ルイズも精一杯見つめ返す。

「『心の優しい人間』は、『腕力の強い人間』よりも『頭の賢い人間』よりも、ずっとずっと立派だと思う。」

「……」

「だから、今のルイズは十分立派だとオレは思うよ」

「でも…」

「それにオレの世界じゃ、偉人は必ずこう言うぜ?
『倒れぬ者が強いのではない。倒れても立ち上がる者が強いのだ』ってさ。
 ……分かるだろ? ルイズなら」

「……。 ……うん」

「もし、一人で立ち上がれなかったら、手助けするぜ?
 オレはお前の使い魔だから、それは”オレの仕事”だろ?」

「…うん」

「”ベネ”! だから、何かあれば使い魔にご相談下さい? 鮫の如く、全て飲み込んで差し上げます♪」

「……全然上手くない。 無理やりすぎ。 センス無い」

「……オレにだけ優しくない気がする」

「当たり前でしょ? ”私の”使い魔なんだから!」

「……理由になってねぇぞ?」

「良いの! あんたは使い魔! 私は御主人様なんだから!」

溢れるように出ていた涙が止まり、今度は笑顔がこぼれる。
……怒った口調とは裏腹に、とても穏やかな顔を見せてくれる。
(微笑むような笑顔は、初めてだな……)
素直に美しいと思う。
本当の笑顔は、笑った者の心が表れ、見た者の心が洗われる……。

復活したかな? まったく……手のかかる御主人様で……。
まあ、そこが”カワイイ”かな? ……なんてな。

「……」

「どうした? まだ、言い足りないか?」

「……き、急に変な事言って… わ、悪かったわね…」

「ハイ?」

「だだ、だから! ”悪かった”って言ってるでしょ!?」

「謝ってんのか? それ。 …全然だめだな」

「じじじ、じゃあ、どうすれば良いのよ!?」

「(お? 素直じゃん? んじゃあ…)
 そうだな…… 『ごめんなさいのキス』と『ありがとうのキス』と…」

「……と?」 
ドクン。ドクン。 何故か鼓動が強く、そして早まる。 
(おおお、落ち着きなさいルイズーーッ!)
自分で自分に喝を入れる。 しかし、全然収まらない。むしろ酷くなっていく。

そんなルイズに耳打ちをする。 優しくはっきりと。

「『××××』が良いな♪」*

(『』の中にお好きな”セクシャルな”言葉をお入れください。文字数はいくつでも構いません。)


「~~~~~~~~~~~~~~ッッッッ!!」
完全に真っ赤になるルイズ。 完熟トマトよりも赤い。海に沈む夕日よりも赤い。 とにかく赤い!!
頭から湯気が立ち上っている。 ……どうやら想像しているらしい。 …事細かに。 

「……いかが?」
「ちちちち、調子にのんなぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」
メ メ タ ァ !! パウッ! ガ シ ャ ン
……フフ ……は…波紋入りの金的アタックは い 痛か……ろう(オレが)………フッ
…ってこりゃ確実に天国へ逝けるぜ!? 神父さんよォ!
「ややや、やっぱりアンタご飯抜き!! 絶~対ご飯抜き!! 一週間ご飯抜きィィィィッ!!」
床で、大事な股間鮫を押さえながら痙攣しているスクアーロに言い放つ。
「アアア、アンタのことなんかッ! しししし、知らないんだからぁッ!」
返事の無い鮫を置いて出て行くルイズ。 どうやら昼食の時間らしい。食堂の方へ行こうとしている。
ドアで立ち止まり、まだ起き上がらぬ使い魔を確認する。
ここからなら聞こえないはず……。
「…………ありがとう」
絶対アイツには聞こえない大きさで言う。まだアイツには面と向かって言えない。
でも、きっといつか……。

 言ってあげよう スクアーロに 感謝の言葉を
 聞いてもらおう 自分の気持ちを
 愚痴なんかじゃなく 本当の気持ちを
 いつか必ず

今は……まだ自信が持てないし……恥ずかしい。
そそそ、それに! アイツはすぐ調子に乗るし!
そういうヤツなのよ! アアア、アイツは!
だだだ、だからまだ、ちゃんと言ってやらないんだからッ!
アア、アンタが悪いんだからねッ!? ばばば、馬鹿鮫ッ!

ドタドタと今にも廊下を走り出しそうな勢いで食堂に向かう。
なにやら、吹っ切ったような、ややこしくなったような……?

「……どういたしまして。 御主人様……」
何とか、天国の門で呼び込み(キャッチ)している天使から逃げてきた。
素直じゃないねー、うちの御主人様はよー。

…それより本ッ当にオレか? あの台詞をほざいたのは!
恥ずかしくてオレが泣きそうだぜ!?
何が「説教できない」だ? 思いっ切りしてんじゃねぇか!!
口説くのならともかく…。 今のは完全にオレのキャラじゃねぇ!
……どうしちまったんだろう……。

助けてくれ… ティッツァーノ…… 
……ハッ!? まさかティッツァの『記憶DISC』がオレにッ!?

…何か電波をキャッチしちまった……。 何だよ『記憶DISC』って……。
マジでヤバイかも……。

(良かった… ”下”は潰れてない… ”上”も…大丈夫……だと思う)
股間鮫の具合と頭の様子を伺いながら、罰掃除の仕上げに入る。
…もうすぐ終わるな。 結局全部オレ一人でやったのか……。
使い魔はツライなー。 動いたから腹減ったなー。 肉体労働は疲れるぜ……。
…そうだ! 朝計画した通り、厨房にでも行ってみるか!
なんか食い物わけてもらおう!
それにメイドも沢山いるだろうし!! カワイイ子、イッパイいるかな?
良~し! 頑張るもんねー!!

…今のところ、性欲と食欲と、ほんのちょっとの”偉大なる理性”……で動いている鮫。
本能全開!―――というよりは煩悩全開です。 本当に(ry

「―――そんでもって『愛してるよ。 マチルダ…』なんて言われたりして♪♪」
キャー!キャー!キャー!
まだ廊下で一人、はしゃいでいた『土くれのフーケ』。
………あのー、本名だだ洩れなんですけど?
…このフーケなら、意外とスクアーロと相性良いかも? ……ンな訳ないか!



「The Story of the "Clash and Zero"」

第3章 伝説は蘇り、歴史は繰り返す ② 終了


To Be Continued ==>

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー