ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

偽愛! 素直クールに萌えろ! その③

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偽愛! 素直クールに萌えろ! その③

一日中後ろをついてくる承太郎に、何か怖いものを感じつつ、でもまんざらではないルイズだった。
昨晩「好きだ」と言われたのを思い出して時折赤面して悶えたりしたが、キュルケは休みでギーシュはモンモランシーにつきっきりだったため、ツッコミを入れる人間は不在だった。
「何だか嬉しそーだねぇ。案外この状況楽しんでないかい?」
「ジョータロー。その剣黙らせて」
「スタープラチナ・ザ・ワールド!! 時は止まる!!
 行くぜ、うおおおおおッ! スーパーコンボはMAXだ!
 プッツンオラを連続で叩き込む! オラオラオラオラオ――」
「わっ、わーっ!! やりすぎだってば! そこまでしなくていいって!」
ツッコミを入れるボロ剣はいた。逆に命の危機に陥ったが。
こんなやり取りを経てやっぱり元の承太郎の方がいいなぁ、なんて思いながら授業が終わるとモンモランシーの部屋に向かった。

「できてないってどういう事よ!」
「仕方ないじゃない! 売り切れだったんだもの!」
解除薬に必要な秘薬が品切れで、しかも入荷が絶望的だとモンモランシーは説明する。
ガリアとの国境にあるラグドリアン湖の水の精霊の涙が必要なのだが、その精霊と最近連絡が取れなくなってしまったそうな。
「じゃあどうするのよ」
「薬の効果が切れるのを待つしかないんじゃない?
 それにあんただってあいつに惚れられて満更じゃなさそうだし」
カァッと赤くなったルイズは「そんな訳ないでしょ!」と怒鳴って、部屋から飛び出してしまった。
とりあえずこれで助かったかなとモンモランシーは一息つく。

自室に戻ると承太郎が本を読んでいた。
「……よお、どこに行ってたんだ?」
「どこでもいいでしょ?」
「……ギーシュの所か?」
「違うわよ。それよりあんた、字、読めたっけ?」
「こいつに読ませてる」
と、承太郎はソファーに立てかけてあるボロ剣の柄を小突いた。
「まったく。俺は剣だぜ? 何で本を読んで聞かせなきゃならねーのかね」
「バラバラにされて川に捨てられねーだけでもありがたく重いな。
 ……まっ、ルイズが戻ってきた今、おめーは用済みだ」
デルフリンガーを鞘に押し込んで黙らせると、承太郎はルイズに本を差し出した。
「ん? 何?」
「以前言っていた通り……字を教えて欲しい。これからの俺には必要な事だ」
そういえばそんな事もあったなと思い出す。
でも確かタバサに教えてもらう約束をしたらしいけど、いいんだろうか?
今の承太郎ならその約束を反故してもおかしくはないが。
「仕方ないわね……。とりあえず机の側に来て。
 いきなり本なんかで勉強するのも難しいし、字の発音から」
こうしてルイズが承太郎に文字を教えるという大役をゲットし、嬉しいような恥ずかしいような、悪くない気分になる。
承太郎の飲み込みも異常に早く、数時間で簡単な文章は読めるようになった。
「あんた、意外と頭いいのね」
「覚えるのは得意だからな。それにどうやら文字や単語さえ覚えちまえば、 後は頭の中で勝手に意味が翻訳されるらしい。
 こっちの世界の言葉を話せる事も含めておめーの使い魔になったおかげだろうな」
「……使い魔?」
「何かおかしな事を言ったか? 俺はおめーの使い魔だろう」

「そ、そう。やっとそういう自覚が持てたのは喜ばしいけど……」
惚れ薬の効果でそういう自覚を持たれたというのは、
本当の意味で喜ばしい事なのだろうかとルイズは悩んだ。
しかしそんな悩みをすっ飛ばす発言が承太郎の口から飛び出てくる。
「今までは認めなくてすまなかったな。
 だが安心しろ、これからは堂々とおめーの使い魔だって胸を張るぜ。
 そのためには文字も覚えねーとな。これからはずっとハルケギニアにいる事だし」
「……え?」
ルイズは自分の耳を疑った。
「ど、どういう事? ハルケギニアにずっといるって」
「当然の事だぜ。俺はルイズの使い魔なんだからな……」
「もも、元の世界はどうするのよ。ニホンに帰るんじゃなかったの!?」
「おめーと一緒じゃないのなら……そんな所に帰りたいとも思わねー」
その言葉を、とても、嬉しく思う反面――酷く惨めな気分にルイズは陥った。
これが承太郎の本心からの言葉なら、申し訳ないと思いつつも、とびっきり喜んでいたのではないだろうか。
けれどルイズは知っている。これが彼の本心ではない理由を。
「違う。……違うわ、ジョータロー」
「ルイズ?」
「あんたは本当は自分の世界に帰りたいはず」
「やれやれ。解らねーのか? 俺は元の世界より、こっちの世界を……いや。
 お前とここにいる事を選んだんだぜ」
「薬のせいよ。ジョータローは、惚れ薬を飲んじゃったの」

解除薬のための材料を前に、モンモランシーは考えていた。
水の精霊の涙が手に入らない以上、この材料は必要ない。
だったら、いっそ別の薬の材料として使ってしまおうか?
いやいや、それともこの材料を売り払って別の物を買ってしまうか?
だけども、一応ルイズからもらったお金で買ったものだし彼女に渡してしまうか?
待て待て、ルイズはあれはあれで幸せそうだからもらっちゃってもよくね?
うんうん、そうしようもらっちゃおうそれがいい大儲けだわーい。
というような事を考えているとノックも無しに部屋の戸が開かれた。
「だ、誰!」
「私よ!」
入ってきたのはルイズ、とジョータローとデルフリンガーだった。
遠慮無しに部屋の真ん中までやって来て、ルイズはモンモランシーに凄む。
「聞きなさい。明日、私達は、ラドクリアン湖に行くわ。
 あんたも来なさい。水の精霊から涙を何としてももらうのよ」
「はっ、はあ!? なに馬鹿な事言ってるのよ!
 水の精霊に……って、それがどれだけ難しい事か解ってる!?
 相手は人間じゃなく精霊なのよ! 私達の常識は通用しないわ!」
「大丈夫よ。こっちにもメイジの常識が通用しない奴がいるから」
と、後ろの承太郎を指す。すると誇らしげに承太郎は微笑んだ。
やっぱり違うとルイズは思う。承太郎の微笑みはもっと希少価値が高いものだ。
こんな簡単に見せられては有り難味に欠けるというもの。
いや別に承太郎の笑顔なんか見せられても全然ありがたいとか思ってないけど。
「ほ、本気なのルイズ?」
「本気よ」
「後ろの使い魔もそのつもりなの?
 惚れ薬を飲んでるのに、解除薬を飲みたがるなんておかしいわよ!」
すると、承太郎は静かに語り出す。

「俺が……ルイズを愛しく思う心は決して変わらない。
 惚れ薬とやらを飲まされる前からも、そしてこれからもな。
 だが惚れ薬なんてモンを飲んじまったせーで、ルイズはそれを認めねー。
 だから……惚れ薬に関係無く俺がルイズを大切に想っていると解らせるには、解除薬を飲んだ後も、何も変わらないという事を見せるしか……方法が無いからな」
それを聞き、真っ赤になるルイズ。
それを聞き、羨ましそうにルイズを見るモンモランシー。
それを聞き、そういうもんかねぇとぼんやり考えるデルフリンガー。
それを聞き、拍手を送るギーシュ。
「さすがジョータローだね! 惚れ薬を飲んだというのにたいした奴だよ!」
部屋の入口にいつの間にかギーシュが立っていた。
拍手を送りつつ部屋に入ってくると、モンモランシーの手を取る。
「ななな、何よ。何でここにいるのよ?」
「モンモランシー、僕も一緒に行くよ! 女の子を守るのが薔薇の使命だからね!」
今度はモンモランシーが赤くなる番だった。
やっぱり何だかんだと言ってもギーシュに惚れているらしい。
「という訳でルイズ、ジョータロー。僕も一緒に行くが構わないね?」
「わ、私は別に構わないけど……ジョータロー、いい?」
「俺も構わねーが、ギーシュ……なぜこんな時間にここにいた?」
「いや何、今日シエスタに会ったら泣きつかれてしまってね。
 聞けば君にフラれたというじゃないか。君がルイズを選ぶというならそれもいい。
 だが今の君は惚れ薬を飲んでしまっている、それではフェアじゃないだろう?
 薔薇とは大勢の女の子を喜ばせるために咲くものだ。シエスタも例外ではないよ。
 だからモンモランシーに解除薬を何とか作ってもらおうと頼みに来たのだが、まさか君達に先を越されていたとはね! まあ目的は同じだしよしとしよう!」
ギーシュの癖になかなかいい事を言う、とルイズは感心した。
しかしモンモランシーはというと、ギーシュがシエスタの名を口にしたあたりから、嫉妬の炎をメラメラと燃やして拳を握り締めていた。
訳あってギーシュが頬を腫らした後、四人は相談して翌日の早朝出かける事に決定。

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