ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サーヴァント・スミス-2

最終更新:

familiar_spirit

- view
だれでも歓迎! 編集
外は見事なまでに暗闇だ
トリスティン魔法学院――ここから覗く闇夜が、ほんのりと、月明かりに照らし出される光景はなんとも美しい
美しいのだが。

「月が二つ……理解不能、理解不能……」

「そんなの当たりまえでしょーがッ!このド低能がーッ!」

凄まじい勢いでベッドに頭をたたきつけられるナランチャ。ド低能に反応する暇さえ与えられなかった。

多分机に叩きつけられていたら死んでいたと思う。勢いがフーゴのときより数倍だったから。
背中に馬乗りになるルイズ。
ドゴッ、ドゴッ。殴られまくるナランチャ。ルイズは鬼と化した

(あれ?何で俺こんなに殴られてんの?)

彼がそのことに気づくのは約12時間後であったが、省略させていただく。
何故過剰に殴られているかといえば、やっとの思いで召喚したと思ったら、平民。しかも子供(ルイズより年上なのに)。ついでにバカ。メイジとしては悔しい事この上ない事をやらかしてしまったので、荒れるのも無理はない
八つ当たりと言うヤツであろう。
だが、ナランチャはそんなこと知る由もないので

「いつまでも乗るなよ」

「あうッ!?」

ホイッと払いのけた
見事に転がり落ちるルイズ。いくらナランチャが小柄とは言え、ルイズはもっと小柄だった。

「な、何てことすんのよ!平民の癖に!」

「知るか!」

知るかと言うより、覚える気がない。
そのあたりは流石フーゴをキレさせた男である
あいつをキレさせたらたいしたものだ。
かけ算も出来ないので、ナランチャは考えるのをやめた

「使い間の役目についてだけど……何で視覚の共有も何も出来ないの?」

「俺に聞かれてもなあ」

「おまけに秘薬を探す事も護衛も出来なさそうだし……もういいわ!洗濯頼むわよ」

投げ渡されたものに、目を移す。女物の……その、所謂『アレ』である。決して中に入れたものが分裂したりはしない。
……ナランチャはしばらく絶句した後、力なく洗濯しに行った。
今後もこんな事が続くのかと思うと、肩を落とす他ない

「水道……鮫が襲ってくる……あ、誰も居ない……」

ナランチャはちょっとだけ壊れかけていた。
デフォルトでトーキングヘッド状態である。
鮫のスタンドに首を食いちぎられた時は痛かった。
これしきの事じゃ済んでない。大変な事になっているのを自覚している。思い出すと軽く吐き気。
舌切り取ったときも死ぬかと思った。つくづく危なっかしかったな。

懐かしい思い出に浸るナランチャ。すがすがしい笑顔である。

すると、何の前触れもなく鈍い音。ナランチャを現実へと引き込んだ。何かにぶつかったのだろうか。
いつもなら踏みとどまる程度の衝撃であったが、クラッと倒れそうになった
頭痛。眩暈。どうも疲れているようだ。一度死んだからですか。そうですか。
自問自答する。弊害を抱えつつ、(まあ寝たら治るか)と考えるナランチャ。
それよりも、何にぶつかったかを確認すべきだ。
エアロスミスのレーダーで探知。人だ。

「おい?大丈夫か?」

「え。ええ。大丈夫ですけど……あなたは?」

「ナランチャ。ルイズだっけ、アイツの使い魔らしい……多分」

何故そこを自信なさげに言うのか。

「私、シエスタです。あなたと同じ平民ですよ」

他人事らしく言うナランチャ。勝手につれてこられてあんな態度を取られちゃ溜まったものではないのは事実だが。
起き上がるシエスタ。
連動するように、ナランチャも頭を擦りながら起き上がる。

「貴族の方を呼び捨てにしない方がいいですよ、何かと目を付けられますから……」

「あいつ子供だろ?だから問題ない(オレより背が小さいし)」

「うわぁ……凄いですね、いろいろ」

感心したような声を漏らすシエスタに、当然の如く吐き捨てるナランチャ。そしてルイズに対しての若干の勝利感。
自分は17だ!と言うのをうっかり忘れていた。もう子供じゃないって。
身長は、年下でありつつ『ド低能』とナランチャを罵った、あのパンナコッタ・フーゴに負けている
自分は164cm、フーゴは171cm程度。何この差。泣きたい。

自分の身長がコロコロ変わっているとの指摘(byミスタ)もあったが、スルーしておいたのを思い出した。
涙を拭き、事の経緯を説明して、何とか洗濯の道具を借りる事に成功する。
その後はシエスタに手伝ってもらいながら終わらせた
ナランチャは完璧に不慣れであり、4着『だけ』服をビリビリに破いてしまった
あとで埋めておこう。上の空でそう画策するナランチャに声がかかる

「今後、お手伝いしますよ、慣れるまで」

その内、服を全部破いて大変な事になるのを避けるため、とはとても言えなかった

「え?いいのォ!?世話になるよ!」

ズバリチェックメイトである。これで洗濯は当面問題ないだろう。ナランチャの命も
感謝しつつ、洗濯物を干しに行った。ちなみに破いた服は埋めた。

だが、ルイズの部屋に帰ってきたナランチャは、床に毛布が置いてあるのを見て……泣いた……

「……」

ルイズのベッド付近の床に機銃を6発、エアロスミスで撃ち込んでおいた。
もう一回外に出て草やら藁やら集めてきて、ベッドにしておく
フンッ、と意地を張るが、やがて睡魔に負けて、意識を閉ざした

暗中、ナランチャは夢を見る。
目の前で植物に包まれていく自分の体。
それを背に、力強く歩き出す仲間達。
未練があるのだろうか、力強くも、ゆっくりと。しかし、吹っ切れたように、早足で歩く

自分は、それを追おうとする。だが、体がふわふわと浮いて前に進まない。しかし、気づけば場面が切り替わっていた
問題点は、その先はブラシで擦られたように、全く見えないことだ。
何が起きているのか模索している途中で、彼の意識は戻った

そして、その夢はやけに短かった気がする。
実際短かったのだが。

「うー……」

翌朝。ナランチャは主人を起こすため早起きした。疲れているのにコレは酷だ。
頭がガンガンする。立ちくらみがした。寝たはずなのによりひどくなっている気がする
その上、降りかかるもやもやとした気持ち。そういえばあの先、どうなったのだろう
付け加えるなら、健全な男子にこの仕打ちはなんなのだ。

「起きろって……おーい、起きろー」

ナランチャに起こされたルイズは、ベッドから降りようと足を――

「ひゃあッ!?」

床に穴が開いた。エアロスミスの機銃で弱っていたのであろう
片足を床に突っ込んで身動きが取れなくなっていた。いわば落とし穴である
ナランチャは影で(ザマーミローッ)っと毒づいた
作戦成功。計画通り。これがナランチャの裏の顔――裏ンチャである。

「……床はアンタが直してね。ハイ、着替え」

失敗だった。やらなきゃ良かった。すぐに表ンチャ(語呂悪し)に戻る。
ルイズの着替えに洗濯以上の苦戦を強いられつつも、なんとか朝食に間に合わせる事に成功
肩をぐるぐる回し、一回深呼吸をする。
ドアを開けて、食堂へ向かうところで美女に呼び止められた。正確にはルイズが。

(うっわ、スゲッ)

その女のスタイルに驚愕するナランチャ。
トリッシュでもこれほどはなかっ……
そこまで思いかけてナランチャは自分で自分の頭をブッ叩いた

「ふーん、ルイズ、本当に平民召喚しちゃったのねぇ。子供だし」

くすくすと笑う。ルイズも気に障ったようで言い返す
ナランチャも気に障ったので――考えるのを数秒やめて抑える。

「何よ!召喚には成功したのよ!」

「使い魔って言ったら、普通はこういうのでしょ?フレイムー」

のそのそと美女の影から出てくるトカゲ。
尾に火を灯していて、むわっと熱気が伝わってくる
ナランチャが興味津々で見つめているのをみて、ルイズは機嫌が良い様子ではないようだ。

「火竜山脈のサラマンダー。好事家に見せたら値段つかないわよ?」

「あっそ!良かったわね!」

ドスドスと足音荒く歩くルイズ。それに比べればまだナランチャは落ち着いているのではないだろうか

「あれも進化するのかなぁ。レベル16あたり?」

まだ壊れているが。
未だに、頭痛と、もやもやは消えなかった
歯痒さに次第とイライラしながら、二人は歩みを速めていった

『アルヴィーズの食堂』に着くなり、周りには朝から豪華な料理が並んでいる。味も濃そうだ
所々にローソクの光が目立つ。偉く綺麗である。流石貴族の食堂だ

「うわ、朝でこれ?」

ナランチャが豪華すぎる料理を見て口をあけている
ルイズはニヤニヤしながらその様を見つめていた。
それにナランチャは全く気づいていない

「あなたの食事はコレね」

ルイズが指差した先。床。
固そうなパン。ちっちゃい具の浮かんだスープ。
――以上。
脳内で愚痴をありったけ叫んだ。貴族達は所謂食事の前にやる、祈りの唱和中である
ルイズも例に漏れず、きちんと唱和を行なっていた。
唯一の例外はナランチャであった

「いただきます」

祈りよりも簡素で短い言葉。
その声で、ルイズだけが唱和を遮られた
いや、『様子』に驚いたというべきか


「へ?」

特に嫌がる様子もなく食べ進むナランチャ。ちょいと吹っ切れてみたようだ
ギャングの仲間となってからは、コレより美味いものを食べた事も一応あった
だが、フーゴに拾われるまで孤独で、ゴミをあさっていた彼にとっては我慢できる食事であった
あの頃と比べるのならまともといってもいいほどだ。美味しくないけど。
この食事を普通に食べるナランチャにルイズは引いているが、くだらない消耗はあってはならないので、気にせずナランチャは食べ続けた

(クッ、作戦は失敗……だけど、まだ格の差を見せ付けるチャンスはある!)

ルイズはグッと拳を握り締め、隣でガツガツと食うナランチャを哀れみの目で見た
この子供を、いつかギャフンと言わせてやらねば
変な使命感に駆られるルイズ。相手が年上だとも知らず。
少ない食事を食いまくるナランチャ。そんな事を思われているとも知らず。

「おかわり」

「ないわよ!」

食事も終わると、教室へ向かうことになった。
使い魔は主人と同伴するらしい。面倒だ。

(頭イテェ。頭イテェ)

フラフラとした足取りで進む。
ここに蓄積してきた凄まじい疲れからか、頭痛がひどくなってきた。
徹夜でパソコンを見ているとこんな感じになる時があるらしい。皆もやってみよう

(調子悪ィ……)

案の定ルイズに床へ座るよう言われた。
ドカッと出鱈目な格好で座ると鉄拳が落ちてくる
頭を狙ってきた。本当に鬼だ

「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」

教師だろうか。何にせよ、ナランチャには生徒に嫌味を言ったようにしか聞こえなかった。自覚はあまりないのだろう。
とはいえ、それは真実でもあるわけで。本人が意図を持って言ったのかは知らないが

そろそろナランチャも、自分が変わっているということには気づいている。気づかないとおかしい。
周りは蛇やら蛙やらと、人間など一人も居なかった

「ルイズ!召喚できないからってそこら辺歩いてた平民連れて来るなよ!」

「うっさいわね!『風っぴき』マリコルヌ、あんた黙ってなさいよッ!」

「だ、誰が風っぴきだ!」

ルイズをからかっていたヤツは、あっというまに口に土を埋め込まれていた。侮辱がどーとか言う話だ。
なんともなかったかのように、授業は続く
魔法には4属性。『火』、『水』、『土』、『風』があるらしい
失われた属性である『虚無』もあるらしいが、今では持つ者は見ないということだ
やがて錬金のことへ話は移り、教師、シュヴルーズが目の前で石を錬金して見せた

「へぇぇー、やっぱあれも魔法かァ」

「黙ってなさいって!」

他に何が出来るのかとか、そんな妄想にいり浸っているナランチャ。
ザオ○クとか、ザラ○とか、マダ○テとか。
あそこに居る容姿が神官っぽい人ならザ○キを使えそうだ。精神力が切れても撃ち続けたりしそうである
多分ルイズはザオリ○を使えるんだろう。だから生き返ったんだ。そうだ、そうに違いない
若者ならではの発想である。それともただバカなだけであろうか
何はともあれ、ザ○リクなんて使えるなら、ある程度生命の境目がなくなってしまうような気がしないでもない。

そのうち、ルイズが錬金をすることになったようだ。
不意に、脳裏を巡る疑問があった
それは、人間としての本能が危機を察知して、記憶を掘り起こしたものだったのだろうか

(そういやアイツだけ、浮いて無かったっけ?)

自分を召喚した時、学院へ帰っていく生徒は皆飛んでいた
ルイズだけは徒歩で学院へ戻っていた。
何故、メイジであるはずのルイズが魔法を使わないのか。
その疑問は、数秒後に起こった大爆発によって教室ごと打ち砕かれた

「ああ!?エ、エアロスミスゥッ!?」

プロペラで前方から飛んでくる破片をガード。ちなみに今机の中が狭かったらしく、友人に押されて転がってきたマリコルヌが目の前で消し飛んだ
爆風までは防ぎきれず、そのまま強烈な風がナランチャへ回る
防げなかった破片もあって、無数の切り傷を作りつつ耐え切った後、グルリと見回す

ボッロボロになった黒板、机。殆ど吹っ飛んでいる。
ガラスも割れまくっており、軽い惨劇であった
今の一瞬でこの状況を作り出せるとは、一体どういう威力なのだろうか
地獄絵図、と言うのがぴったりだ。

マリコルヌは誰にも気づかれずに風になった――ナランチャが無意識に取っていたのは『ジョジョ立ちレベル8』のポーズであった――
全く気づかなかったが故、無言の男の詩があったわけでもなく――マリコルヌは考えるのをやめた


「ちょっと失敗したみたいね」

「………なるほど、魔法が使えないのかァ」

「うるさいわよ!」

教室のみんなの証言から、ルイズのあだ名は『ゼロ』。
魔法が使えないから『ゼロ』らしいことが分かった。あの爆発を見ても魔法が使えないと言い張るか。
ナランチャは教室の片づけをすることになったルイズを手伝う羽目になるが
こういうとき、スタンドが人型だったら楽なのにと、関係ない思考に耽るナランチャであった

ちなみに、シュヴルーズは気絶。
生徒に怪我人は出なかったらしい(マリコルヌ以外)


To Be continued ...

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー