ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サーヴァント・スミス-1

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「……!………ッ!………!!」

仲間の声が聞こえない。かすれている。全てうやむやのまま掻き消えていく
自分の――ジョルノの体はどうなった?
自分自身の体ではないのに、傷つけてしまった。謝りたい
そして、自分はボスと戦う事も、何も出来ずに、『浮かんでいく』。

(……痛みが、ない)

完全に自分は死んだのだろう。もはや痛みを感じる必要はないが、二度と帰る事が出来ない。
ましてや、戦ってきた仲間とも会うことは出来ない
嫌だ。戻りたい、仲間の元へ。
必死に手を動かすが、どうにもならなかった

観念して、あの世へと昇るのを待つ。雲はすぐそこだ
異変に気づいたのは、すぐ後だった

「鏡……?」

あからさまにこちらへ向かってくる『鏡のような物体』に少し戸惑う
自分はすでに『見えない』はずだ。その自分を標的とするスタンド使い?
ありえない。狙った所で意味はないのだから。
それに、どうやってここまで上昇する?
次々と浮かぶ疑問を抑えつつ、自分は死んでいる。どうにでもなれと腹をくくった少年が次に見たのは――

澄んだ青空と、大勢の人々。
ハゲと、桃色の髪をした少女が、一段と目立っていた
足元には青々と草が茂る。ついでに勢いよく尻餅をついた

(え?なんだなんだ?)

まだ状況が分からない。
さっきまで雲の上に居たはずの自分は、地面にいた
キョロキョロと周りを見渡すうちに、わなわなと震えている少女と、笑い出す人々が目に入った

「平民をッ、ククッ、召喚したぞぉーッ!」

「流石『ゼロ』ッ!ある意味君に敬意を表するッ!」

耐えかねたように笑いが飛び出した。
段々と騒がしくなって収拾が付かなくなっていく。
そんな中、少女は、髪の毛が寂しい男に何か訴えかけている

「ミ、ミスタ・コルベール!儀式のやり直しを……!」

「だが断る」

「………」

無言で項垂れる少女。それを呆然と見つめている時に、自分の異変に気づいた。
どうやらここへ来た時に尻餅をついたようだが

「痛い……?そ、それに、何で俺の体がッ……」

そして、感じられる心臓の鼓動。体の感触。
拳を握っては開き、握っては開く。首を回すと、ゴキゴキと音がする
『元の世界』にあったはずの自分の体は、足りない一つのピース、魂を補って、ここに自分として存在していた
まだ信じられない。ここはあの世ではない?だとしたら。
まず、一つの疑問が真っ先に浮かんだ
ここは、どこだ?

「あんた誰?名前は!?」

今にもプッツンしそうな勢いで問い詰めてくる。
一応、身の安全を保持する為に質問に答えることにした
見下ろされている姿勢のまま、口を開いた

「ナ、ナランチャ……」

「ナランチャね!分かったからおとなしくしなさい!」

急に肩をつかまれ、見つめられる
身の危険のようなものを察知したナランチャは後ずさりしようとするが、杖で殴られて倒れてしまった
まさに外道である

「い、いたッ!?イッテェ……ッ!?」

殴られた頭を抱えていると、次の瞬間には少女の唇が近づき
キス、された。

何を言っているのか分からないと思うが、ナランチャ自身にも何をされたのか分からなかった
やたら派手な効果音が脳内に響いただとか、そういうのはいけないと思いますッだとか、そんなチャチなものでは断じてない。
もっと、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったのは、この後だった

「うおおああぁッ!?」

左手に走る激痛。焼印が押されているのかと錯覚する
思わずエアロスミスを発現させ、身構えるが、すぐに痛みは消えた
キョトンとしているナランチャをルイズが「大げさね」とでも言うような目で見つめていた
自分の傍らに浮かぶエアロスミスを見る

(エアロスミスは、出る。だけど、俺は死んだはずだ……)

スタンドとスタンド使い。それは切っても切れぬ縁のようなもの
スタンド使いが死ねば、スタンドも消える。(例外もあったが)
自分は死んだのだ。だが、今は生きていて、エアロスミスがきちんと出てくれる。ややこしすぎる話だった。

(つーか、凄く髪が寂しいな、アイツ)

ついでに着眼点が逞しいほどにズレていた。多分コルベールもヅラをつけるとズレるタイプだ
突然、当人であるコルベールが近づいてきて、『左手の甲』に刻まれたルーンをじっと見つめる
ナランチャが思わずそっち系の人かと疑ってしまう所だった

「ふむ、珍しいルーンだな……みんな、教室へ戻るぞ」

そのコルベールの一声で、周りの人々が浮かんだ。
ついでにナランチャの誤解も解除。しかし代わりに驚きが生まれた
人が浮く。理解不能理解不能。

「ス、スタンド……じゃあないよな……」

何も見えないので、おそらくスタンドではない。
ナランチャは開き直って『何が起きてもおかしくない』と考える事にした
死んだはずの自分を召喚できてしまう世界なのだから、このことも普通かもしれない
逆に、死んだ人間を召喚できるのに他が全く元の世界と一緒なのはおかしいだろう。

ボーっとしていると、少女から声がかかった。
慌てて振り返ると、彼女だけは浮かんでいない。
違和感を感じるが、放っておく事にした。

「じゃ、行くわよ」

「っと、待ってくれよォ」

「私、ルイズ。ご主人様って呼びなさいよね」

「……本気?」

ナランチャは半ばため息をつきつつ、歩く。この先何が待っているか、その若干の不安から。
彼の『ご主人様』もため息をつきつつ歩く。何でよりによって平民なのか悩みつつ。
終わりかけていた、人生は。
彼の人生は、再び始まったのだった

To Be continued ...

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