ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第八話 がんばれ女の子!後編

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第八話 がんばれ女の子!後編



気持ちのいい風。
教室の窓を吹き抜けるそよ風にタバサは授業そっちのけで風の通り抜ける感触を
楽しんでいた。自分がこの学校で学ぶ知識など正直に言ってしまえばないに等しい。
ここはタダの亡命先なんだから。でも来てよかったと思う。来てなければキュルケに出会う
事はなかっただろう。彼女にはいくら感謝してもし足りないと。それにルイズの使い魔のジョルノ。
彼とは会ってまだ間もない。だが彼はもうみんなに馴染み始めている。顔はまったく似てないのに
お父様と雰囲気が似ていて。でもまだ他に会った事のないタイプの不思議な人。彼は今図書館で勉強している。
今日も授業が終わったら彼に勉強を教えるつもりだ。彼は飲み込みが早く教えがいがあるから読書がてらに
教えてもすんなり覚えてくれる。また教えてくれたお礼にと頭を撫でる事をせがんでみよう。


「タバサ。アナタ大丈夫?授業もう終わったわよ。」
「…ありがとう。」
「ほ~ら。ボサっとしてないでお昼ご飯に行きましょう。私もうおなかぺこぺこだわ。」
「うん…」


食堂にはルイズは来ているけど彼はいない。まだ勉強しているのかな。ルイズは一人ちょこんと寂しそうな顔
をして座っている。やっぱりキュルケがちょっかいを出してルイズがそれに乗って。いつも通り。
キュルケはルイズがかわいいのだろう。彼女は面倒見がよくて優しい人だから。

「タバサ?アナタホントに大丈夫?さっきからボケっとしちゃって。」
「大丈夫。ご馳走様。」
なんだか熱があるみたい。午後の授業は休ませてもらおう。

「あの子なんかおかしかったわねえ。どうしちゃったのかしら。」
「いっつも無表情だし私にはわからないけど」
「タバサはアンタほど分かりやすくはないのよ。アナタは物凄く分かりやすいけどね。」
「ちょっとそれどういう意味よキュルケっ!あ、コラ待ちなさい!」


部屋で休むにしても眠気はないしダルさもない。気のせいかもしれないけどやる気なんか出ない。
授業サボっちゃおう。彼のいる図書館のほうがいい。


図書館ではやっぱり彼が勉強していた。
「タバサさん。今日は早いんですね。」
「…授業をサボった。アナタに教えるほうが面白い。」
「…なるほど。では昨日の続きからお願いできますか?」


やっぱり面白い。出来のいい生徒が出来たみたいでまるで教師になった気分だ。教師もいいかも。
彼は前フランス語に似ていると言っていた。聞いた事のない国だ。彼が亜人でない事は知っている。
では彼は一体どこの国の人間なんだろう。まだ私は彼の事が全然わからない。彼の事をもっと知りたい。

「そう言えばタバサさん」
「タバサ。さんはつけなくていい。」
「…分かりました。ではタバサ。アナタは明日開いていますか。」
明日は虚無の曜日。いつもなら読書をして一日を過ごす。けど
「……特にない」
「実は明日ルイズが街を案内してくれる事になりましたので一緒に行きませんか?」

「行く!絶対行く!私が案内する。」
「わ、わかりました。ルイズにも言っておきます。」
「彼女には言わなくていい。言わないでいい。」
「はあ…分かりました…」

やった。これで彼に街を案内してあげられる。ルイズもついてくるけど……それは仕方がない。
新しい本も買えるし彼のためにも簡単な本を買ってあげよう。私は顔を少々ニヤけているのを
自分でも自覚できていた。でもなんで私は彼の事にこんなにも必死なのだろう。
また熱っぽくなってきた。明日のために早めに寝てしまおう。


「シルフィード。明日は街に行く。」
「きゅいきゅい!」(了解なのねお姉さまっ!あの人も一緒に行くの?きゅいきゅい)
「行く。私と一緒か分からないけど。」
「きゅいきゅい」(わかったのねっ!多分あの桃色と一緒に行くのねっ!負けないでねお姉さま!)
この子は何に負けないでと言っているのか分からないけど。がんばるよシルフィード。

翌日の朝

「きゅいきゅい!」(お姉さま!起きて起きて!今日は街に行くのねっ)
窓の外からシルフィードが騒がしい。この子ったら。
「きゅいきゅい」(今日は愛しの彼と街に行くのよおね~さま。お~き~て!)
そうだったァァァァァ!!!!!!
私はガバっとベットから起き上がるとマッハで着替えを済ませて…40秒で支度完了!
「きゅいきゅい」(本当に40秒なのね。それじゃシルフィ中庭でまってるのね~)
素直に感謝しよう。あの子が起こさなかったら絶対起きなかったし。
でもさっきドサクサにまぎれて愛しの彼って言ってた。…でも許そう。むしろ褒めよう。褒め称えよう。



「タ~バサ!アナタダーリンどこにいるのか知らない?……めずらしいわね読書してないなんて。」
「彼は街に行くと言っていた。だから今はルイズと一緒に中庭だと思う。」
「街!?なんでそれを早く言わないのよぉ~!私も行くわ!ルイズと二人っきりなんてこの私が許さないっ!」
「私も行く。シルフィードの後ろに乗って。」
「アナタも行くの?珍しいわね読書をやめてついていくなんて。」
「彼が……いるから…」
「彼って…ジョルノの事!?ハハ~ン。さてはアナタジョルノにほれたわね!アナタが恋わずらいだなんて!
アナタにも春が来たのねっ!でもダーリンは渡さないわよぉタ~バサ」
「正直自分でもよくわからない。けど……アナタにもルイズにも私は負けない。」
「よく言ったわタバサ!それでこそ私のライバルよ。ホラホラ早く行きましょーよ。」
私に抱きつきながら笑って私を励ましてくれる。やっぱりキュルケは優しい。 


私は彼の事が好きなの?自分でも分からないみたい。

そして中庭に行くと。シルフィードだけ?

「きゅいきゅ~い!」(お姉さま~!準備万端なのねっ!いつでもいけるのね!)
あれ?そこにはシルフィードしかいない。ルイズ達の姿はどこにもない。
「彼らは……?」
「きゅいきゅい!」(あの人たちならもう先に行ったのねっ!えっと一時間ちょっと位前なのねっ!)

ビキッ!ビキビキビキッ!

「きゅいきゅい~♪」(お姉さまをしっかり起こしたのね。シルフィをほめてほめてっ!る~るる♪)
「シルフィード。あとでたっぷりお仕置き。覚悟して」
タバサはいつもの口調で。でも鬼のような目つきで冷たくシルフィードに言い放った。
「きゅい!?」(な、なんで怒ってるのお姉さまっ!あのお仕置きだけは。お仕置きだけはやめてぇ!死んじゃうっ!!)
「それがいやならすぐに追いつけ。キュルケ。乗って。」
「う、うん。」

ああ、こりゃマジでダーリンの事を好きなのね。あんなちょっとした事でタバサが怒るなんて初めてみたわ。
でもこの子もダーリンが好きだなんて。この子とは争いたくないわねぇ。
つーかあのお仕置きってどんな事をするのかしら。がんばってねシルフィード。

(馬の走る速度はおよそ60km/h  この子の速さなら途中で追いつく。)

二人がシルフィードの背中に乗ると風を切るように飛び立っていった。

そしてこちらの二人は。

「あとどれ位で着きますか?ルイズ」
「そうね。あと2時間ちょっと位にはつくと思うわよ。」
こちらの二人は空ではなく馬を二人乗りで走らせていた。ちなみに馬の名前は黒王。
もちろん同じのは名前だけである。ジョルノは馬に乗った事がないらしく仕方なくルイズの後ろに
乗って走る事にした。表向きは。むしろルイズには願ったりな展開でありジョルノはルイズの背中からお腹に
手を回す形でしがみついている。ルイズはジョルノの手の感触と背中の感触をドキドキしながら感じていた。

(ああ!フレイムの言う通りにしてよかったわ!ジョルノがこんなにもくっついてくれるなんて!)
ジョルノからはルイズの顔が見えないがにやけまくってバカ殿みたいな顔になっている。とても見せられない。
(そう。やがて二人の関係は親密になって最後には使い魔とご主人様を超えた関係にッ!うっほほ~い!)

キュルケやシエスタとか言うメイドやタバサの悔しがる顔が目に浮かぶ。う~ん。ディ・モールトいい!
相変わらずのバカ殿顔でウへへと笑いながら妄想してルイズは馬に鞭打って走っていた。
後ろにいるジョルノといえば「ルイズに胸なんてやっぱりありえないんだな」と掴みながら思った。


ジョルノはそんなご主人様とは違くまったく冷めた。現実的な思考で別のことを思っていた。
この世界の事を自分は学園内しか知らない。学校と作りが変わらない様なら街もおそらく中世レベルの文化
なのだろう。自動車は馬を使って移動してるためないと思える。他にもあるな。この世界が異世界だとしても
どことなく地球の文明に似ている。コミュニケーションについても疑問はある。僕はイタリア人だ。
しゃべれる言語は日本語と英語とイタリア語だがどの言語で会話しても通じる。なにか別の能力が働いてると
しか考えられない。この左手のルーンとやらのおかげだろうか?まだはっきりと分からない。

それにフランス語にこの国の言葉は非常に似ている。そしてルイズの隣人のキュルケは留学生で
ゲルマニアと呼ばれる国の留学生。ゲルマニア。ゲルマン。ジャーマン。どう考えてもドイツだ。
この国は地球側で見るとフランスに該当する国なんだろう。ルイズの名前もフランス人の名前だ。
この世界でも地球と同じような国の配置なら近くにイギリスやイタリア。ヨーロッパに該当するような
国もあるのだろうか。後で調べてみるか。

割とどうでもいい事を考えていたジョルノだがそれは仕方がない事だ。だって気になるのだろう。
前のご主人様のほうがホントにどうでもいい事考えてる。脳内麻薬ドピュドピュだ。



「ふう~。スゴイ速さねアナタの風竜って。落ちそうになったわ。」
「きゅいきゅい!」(おねーさま!前方に馬に乗った桃髪と金髪の二人を捕捉!食べていい?)
「だめ。そのまま接近して」
「きゅ~いきゅい!」(了~解!)
「ってきゃあああ!!!おちるぅぅぅぅ!!」
シルフィードはタバサの命令通りにキュルケを振り落としそうになりながら急降下していった。



「ねえ……ジョルノは街で買いたいものがあるの?」
「まあいろいろ…衣服や下着はさすがに一着で過ごす事はできませんのでとりあえず服ですね。」
「アンタお金あったっけ?」
「トランプの時の罰ゲームでギーシュから巻き上げた金があります。だから問題ありません。」
そういやそんな罰ゲームあったわね。ホントに全額出させるなんて……ギーシュもアホなのね。

「えっとねジョルノ…私からもアナタに剣を買ってあげたいのよ。」
「剣?」
「そうよ。これから何かと必要になるかもしれないじゃない?」
剣か。使った事はないがこの世界の武器は持っておいて損はないだろう。
スタンドだけで対処できない状況がもしかしたら出来るかもしれない。備えは必要だ。
「ルイズ。アナタはお金のほうは大丈夫なんですか?」
「アンタの剣くらいならなんとかなるわ。ありがたく受け取りなさいっ!」
「グラッツェルイズ。ありがたく使わせていただきます。」


フフフ。あのジョルノが私をからかわずにお礼まで言ってくれるなんて。こいつもホントは
やさしい奴なのね。それでこそ私の使い魔よっ!後でたっぷり可愛いがられてあげるわぁ。
グフフフフフフフフフ。ちなみに馬に乗ってからずっとバカ殿フェイスである。自重しろ。

そんな変人ルイズの上空にシルフィードはせまっていた。
「どうするのタバサ!」
「二人の前に急降下する。GO!!シルフィード!」
「きゅるきゅる!」(了解!うおりゃああああああああ!!!)
「って急降下やめてえええええええええ!!!」




そしてシルフィードは見事に誤ってバカ殿顔しているルイズの顔面から黒王にむかって激突した。


「散々な目にあったわ。」
「私は死ぬかと思ったわよ。」
「あぁら。アナタはぶつかる前から死んだような顔してたわよ。いてて」
「うるさいっ!……いたた。ホントに散々よまったく。」

ここはトリステイン城下町
先ほどのシルフィードの暴走によりルイズは鼻を折りキュルケは落下の際腕からオチて左腕を骨折。
馬もかなりのダメージを負った。なおタバサとジョルノは無傷である。
モチロン怪我した両人は運がいいのか悪いのかすぐさまゴールド・エクスペリエンスの能力によって
治療できたのだが部品を作るわけだから当然まだ痛い。
ハア……せっかくジョルノと二人で買い物しようと思っていたのに。なによ。タバサにも声掛けてたんじゃない。
おまけにキュルケまで来ちゃうし。いつものメンバーじゃないっ!…ライバル達ってわけね。上等よっ!

「それでは街の案内をおねがいします。まずは衣服をそろえたい。」
「「「こっち。」」」
オイオイ。三人別方向に指差すなよ。


「道が狭いですね。」
「狭いって。ここがこのブルドンネ街の大通りよ。」
ずいぶん狭い。すこぶる狭いがまあしかたあるまい。
「それじゃーダーリン。私のお気に入りの服屋紹介するわ。こっちきてー」
「あ、コラ待ちなさい!」
「…………畜生」
ひとり怖いのいるけど気にしない。

「ほら。周りに気をつけてぇ。スリや泥棒だっていっぱいいるんだから。」
「そうね。ほら財布に気をつけなさい。落とさないように。」
「……魔法を使うスリもいる。気をつけて。」
三人で僕の事を心配してくれるのはありがたいがうっとおしい。
魔法を使うスリ?貴族もスリをするのか?

「魔法は貴族しか使えないはずでは?泥棒も使えるのですか?」
「没落した貴族が泥棒になる事もあるのよダーリン。まあそんなの平民同然の最低のクズよねぇ。」
「貴族としての誇りを失ったクズ共だもの。傭兵になるような奴もいるわ。平民と同じような事するなんてありえないわ」
「あ、でもダーリンは別よぉ。魔法使えるものねぇ。魔法が使えないクズ共と同じなんかじゃないもの。ルイズは別だけどね」
「うるさいわねっ!私を平民ごときと一緒にしないで!」

二人はそれが当然だよね~。とばかりにしゃべっている。ジョルノの周りの空気がが凍りついたのも知らずに。
これが当然だと育てられたのだろう発言にはまったく悪びれた様子はない。無意識に平民の事をクズと考えている。
平民のシエスタさんの事も本当は見下してるのか?
キュルケとルイズも所詮他の貴族と結局変わらない。二人にちょっとガッカリした。


「……どうしたの?」
「いえ……何でもありません。」
「そう…服屋はそこ。」


あまり好みの服はなかったが下着も揃えられたし後は用事はルイズの武器屋くらいだ。
「僕は後は武器屋以外に用はないのですがみなさんが寄りたい所はありますか?」
「アクセサリーショップにいきたいわぁ」
「本屋」
「私はその…武器屋よ。」

すっごい綺麗…うっとりしちゃうわぁ~」
キュルケが張り付いて覗いているのはシルバーとエメラルドで加工されたネックレスと
ゴールドを主体にした指輪である。かなりの高級品みたいだ。
そこに安物みたいだがなじみのあるテントウ虫のブローチが売っていた。僕のよりデザインは
少し違うがなかなかお洒落な柄をしている。気に入った。
「これを三つお願いします。」
「あらダーリン。これくらいなら私が買ってあげるわよ。」
「ちょっとっ!これは私が買ってあげるのよ!」
「邪魔です二人とも。自分で買います。」
ジョルノはくっついてくる二人を乱暴に振りほどき自分の買い物が終わるとさっさと店の外に出てしまった。

ダーリンたら…あんなに邪険にしなくてもいいのに…
なんか怒ってるようだし…気に障るようなことでもいったかしら。
「私はこれをお願いするわぁ。」



「終わりましたかタバサ。」
「うん……これはアナタに。」

タバサから手渡された本を手渡された。ラー・メン子の大冒険。何だこれ

「いいのですか?」
「いい。いつも勉強がんばってるからご褒美。」
やや微笑んでタバサは恥ずかしそうにジョルノに本をプレゼントした。
「ありがとう」
彼女だけはまともな思考をしていると信じたい。



なによ……なんでアイツは怒っているのよ。ワケ分わかんない。
あんなに冷たくするなんてひどいわよまったく。
しかもタバサに本をプレゼントしてもらった時は嬉しそうな顔したくせに!
なんで私が買ってあげるって言った時に怒るのよっ!
でも。いつもジョルノにはからかわれているけどなぜかさっきの怒り方は
本当の意味で私とキュルケを軽蔑しているような気がした。なんか悲しい。



「いらっしゃいませ。おや、ウチは貴族様にとっちめられるような事はしてませんぜ。」
「客よ。剣は私の使い魔が使うのよ。」
「ほほう。こちらの方ですね。お使いになるのは」

店主はジョルノを見て貴族のカモがきたぜ!ぼったくってやるぜひゃっはっは!!!

と思いたかったが、やめた。その男はとても機嫌がよさそうには見えない。怒らせたら事だ。
貴族相手にそんなまねしちゃヘタすりゃ首が飛ぶ。

「最近は使い魔に剣を持たせるのがはやっていますからね。なにやら土くれのフーケって
貴族専門の盗賊が最近よく出るって噂ですぜ。」

貴族専門の泥棒か。バカな貴族を狙って泥棒に入る。かっこいいじゃないか。

「それほど手持ちのお金はないので投げナイフを多めに頼めますか?」
「かしこまりました。」

店主は投げナイフを取りに店の奥へ入っていった。

「ちょっ。お金がないって私が払うって言ったじゃない!」
「剣なんてかさばるだけで邪魔なんで結構です。」

なによそれ……さっきはあんなに嬉しそうに言ってたくせに。

「なによ…アンタさっきはありがたく使わせてもらいますって言ったじゃないっ!」
「そ~そ~。投げナイフなんかじゃ凌ぎきれねえよ。俺みたいなカッコイイ奴マジオススメだぜ」
「そうよカッコイイ奴マジオススメなんだからっ!ん?誰今の?」
「私達じゃないわよ。一体誰が」
「どこに目ェつけてんだ!ここだよここ!!」
剣が飾られている一角から声はする。しかし人影はない。
「目の前にいるかっこいい剣が見えねえのか?お前らの目は飾りかコラ!」
剣がしゃべっている?
「インテリジェンスソード?」
「そうだよお嬢さん方。俺はかっこよくてよく切れるんだ。買っていかないか?」


そうは言ってもその剣はどう見ても錆付いているしよく切れそうには見えないし。
ジョルノは興味深くその剣を握って持ち上げた。すると左手のルーンが反応し光がルーンから出ている。
「ほほう。おでれえた。お前さん『使い手』か!どうだ!俺を買っていかないか?損はさせねえぜ!」
「さっきも言ったようにかさばるだけで邪魔ですよ。」
「んだとテメェ!!見る目ねえなあ!!変な頭してるくせにナマ言ってんじゃねえぞ!!」
ガシッ!!

さっきのルイズ達の態度もあってイライラしてたジョルノは剣を掴むといとも簡単に臨界点を超えた。

「ゴールド・エクスペリエンス!」

「アハハハハハハハハハ!ヒィ~~~!ヒィ~~~!!」
「や、やめて、笑いすぎて鼻に響くゥゥゥゥゥ!」
「…カワイイ…クスクス」
さっきの気まずい空気は何処に行ったのやらタバサまで笑うのを堪えてうずくまっている。


「ちゅうちゅう!」(おい!コラ!てめえなにしやがったぁ!元に戻せぇ!!)
「なるほど。意識があるものを生物に変える事もできるが自我は残りコントロールもできないみたいだな。」

威勢よくほえているのはインテリジェンスソードではなく一匹のはハムスターだった。正確には二匹。
我らがデルフリンガーはゴールド・エクスペリエンスによってかわいいハムスターに生まれ変わったのだ!

「ちゅうちゅう!」(おいコラ元に戻せ!っておい誰だお前!触るんじゃねえ)
「ちゅうちゅう」(忘れたのアナタ。いつもアタシのナカにいるじゃない。)
「ちゅうちゅう!」(お、お前はまさか俺の鞘か?って俺にのしかかるな!やめろお!)
「ちゅうちゅう」(いっつもアタシにブッ刺してるくせにぃ。アタシがあんたの事好きなの分かってるでしょ?)
「ちゅうちゅう!」(助けてだれか!犯されるぅぅ!!!逆レイプされるぅぅ!!)
「ちゅうちゅう」(ふふふ。夜は長いのよ。楽しみましょう)
「ちゅうちゅう!」(今は昼だ!ってアッー!)


デルフはハムスターになってわずか数十秒で初体験を終えた。
生意気なデルフをしめてやる!!二匹のド迫力ファックはまだまだ続く。

「ひどい。ひどいよ。俺初めてだったのに…」
武器屋を出てデルフと鞘を元に戻してあげると絶望したようにデルフはつぶやいた。
あの後武器屋の店主がナイフを持ってきたの時店の中でネズミが二匹大迫力な交尾をしていたので
「このねずみは僕の使い魔です。かわいいでしょう」とジョルノがごまかしてそのまま店の外まで連れてきた。


「うぅ…コイツがまさか俺の事をあんなふうに思っていたなんて…」
「いつも刺さってるんですからこれ位の恩返しは必要でしょう。いつまでいじけてるんです。いい加減にしてください。」
「うるせぇ!俺は剣だから仕方ねぇじゃねえか!まったく今度の使い手はトンでもねえ奴だ。」
デルフの言う事のほうがもっともなのだがジョルノの逆切れによって鞘に押し込められてデルフの会話は終了した。
「でもジョルノ。アナタは一体何を使ったの?あなたヘビ以外もあんな事できるなんて知らなかったし。」
「さあ……なんでしょうね。」


ジョルノはまだ機嫌がよろしくないようでムスっとしている。そんなにツンツンしなくてもいいじゃない。
怒りたいのは私のほうよまったく。結局ジョルノになにも買ってあげる事はできなかった。でも
なんでジョルノはイライラしていたのか。その時のルイズにはまだ自覚すらできていなかった。
そしてルイズは帰り際にようやくジョルノがなぜ怒っているのか理解できた。
それはもう学園に戻ろうとした矢先の事。


帰りに馬とシルフィードが待ってる場所に向かった時だ。どこかの貴族が騒いでいるらしく軽く人だかりが
できていた。モチロン貴族相手にいびられている平民を助けようとする者なんているはずもなく周りでただ
傍観しているだけ。貴族に踏みつけられているのはまだ小さい男の子。様子を見るかぎり貴族の財布でも
盗もうとした所を捕らえられたようだ。薄汚い格好をしている。

「貴族にたいして盗みを働くなど言語道断ッ!この場でその汚らわしい手を切り落としてくれるっ!」

その子供は孤児なのだろう親らしき姿は何処にも見えない。平民層の人間達も少年の事などどうでもいいのか
むしろちょっとした余興程度にしか考えてないのかもしれない。モチロン誰も止めなかった。
ジョルノは正義感が強いわけではない。タクシー運転手のフリをして泥棒もやっていたし悪いとも思った
事すらない。だがこの世界。このハルケゲニアの貴族。魔法が使用でき強大な力を持つ人間は使えない人間を
平民という形で支配し押さえつけている。その押さえつけられて今手を切り落とされようとしている黒髪の少年。
歳はまだ二桁には届かないであろう。その子供の目には絶望すら浮かんではいなかった。死人の目。
虚ろで昔の僕とまったく同じ目。ここで手を切り落とされて誰も助けなければ失血死するのは間違いない。
正義感など一切ない。ジョルノは手を切り捨てようとしている貴族に近づいた。射程まで後6m

だが

そこでタバサに止められた。僕の服をぎゅっと掴んではなさない。彼女は耳元で
「こらえて」
とだけ言った。


「あなたも……所詮他の貴族と変わらないのですか?」
「ちがう…今アナタを行かせたら相手を殺してしまう。あの子には悪いけど…あなたは傷を治せる。」

頭に少々血が登りすぎたらしい。タバサの言う通りだ。ここで問題を起こしたらタバサ達にも迷惑を掛けてしまう。
それに僕は切り落とされたぐらいの傷なら問題なく治療できる。冷静になろう。
「すみませんタバサ。」
「……いい。アナタは少し優しすぎる。」
僕が優しすぎる?

本当はゴールド・エクスペリエンスで相手のヒゲ野郎を殴り殺したかっただけだ。
助けようとした事より殺す事で頭がいっぱいだったのだろう。

そして子供の右手がついに切り落とされて子供は悲鳴をあげてのた打ち回った。
ヒゲはそれを見て機嫌がよくなったのか子供に唾を吐き捨てるとどこかに行ってしまった。
周りで見ていた群集もしかたなかったとばかりに子供を見捨てて散っていく。


子供は血を大量に失ったためかヒュー、ヒューと弱い呼吸になっている。急がなければ。
僕は子供に右手を拾ってゴールド・エクスペリエンスの能力で右手を再生し
失われた血液も元に戻す事ができた。子供も気を失ってはいるが命に別状はない。


だけどこれで本当によかったのだろうか。この子供が今助かったところで生きる糧などなにもない。
すぐに死んでしまうだろう。一体何をやっているんだ僕は。


ルイズはその子供の事をカワイソウとは思っていたが所詮平民以下の孤児が死のうがどうでもいい。
悪意もなく純粋にそう思っていた。それよりも早くしてよねって気持ちのほうが強かった
だからルイズは考えもなしにこんな事を言ってしまったのだ。最低の行為を。


「ジョルノ!そんな薄汚い子供なんかほっといて早くコッチに来なさいっ!」


バチンッ!!!!!



ジョルノの強力な平手打ちが炸裂してルイズはぶっ飛んだ。キュルケはその様子を唖然とした
様子で見ておりタバサはむしろジョルノに共感があるらしくルイズに軽蔑の眼差しを送っていた。
ジョルノは怒気をあらわにした表情でルイズに冷たく言った。

「ルイズ。あなたの事を本当は優しい人だと思っていました。少なくともあんな事は言わないと。」

え?

「でもそれは僕のただの勘違いだったようです。帰りは一人で帰ってください。僕は
タバサの竜に乗って帰ります。」

「失望しましたよ」


どうしてそんな事言うの?


私は飛び立っていくタバサとジョルノの後ろ姿をを眺めながら泣いていた。
どうして怒られたの?私はさっき死に掛けた薄汚い子供をバカにしたからだ。
どうしてそんな事に気がつかなかったの?やっぱり私は出来損ないだからだ。。
フレイムがせっかく相談してくれたのにすべて台無しにしてしまった。
ルイズはうずくまって泣きまくった。ルイズを気遣って残ってくれたキュルケはやさしくルイズを
なだめながら馬に乗せ。学園に帰っていった。帰りはずっとキュルケの背中でルイズは泣き続けた。
やがて泣き疲れたのかそのままルイズはキュルケの背中で眠りについた。。


to be continued

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