ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は刺激的-12

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匿名ユーザー

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 トリステイン魔法学院開設以来の大惨事となった使い魔暴走事件より一夜明け、学院の教師たちは事件の
 後処理に追われ、被害にあった生徒たちは、ある者は死に、又ある者は未だ治療を受け続け生死の境を彷徨う中、
 中庭のテラスでのん気に紅茶と会話を楽しむ者たちがいた。 
「いやあ~モンモランシーとデートの約束をしてね~。今度の虚無の日に街に出かけるんだよ~~」
「ギーシュ。それもう五回目だよ」
「聞いてないわよ、マリコルヌ」  
 声高く笑い嬉しさの余り顔が崩れているギーシュと、それを呆れた顔で見るトリッシュとマリコルヌである。
「でもさ、よく許してくれたわよね。普通は暫く顔なんか見たくないと思うけど」
「よくぞ聞いてくれた!実は全てヴェルダンデのおかげなんだよ!!」 
 トリッシュが嫌そうな顔で見ている事にも気付かず、ギーシュは顔を綻ばせ傍らに侍る巨大なモグラに頬擦りをする。
 マリコルヌはギーシュとヴェルダンデのスキンシップを見て、自分がトリッシュに頬擦りをする光景を想像して
 恍惚の表情を浮かべ、気持ち悪い物を見るようなトリッシュの視線にやはり気付かなかった。
「……それで、そのモグラがどうしたのよ」
「そうだ!その話だったね!!」
 トリッシュとルイズが決闘の最中、広場の隅でいじけていたギーシュにヴェルダンデが地中から可愛い洋服を
 掘り出してそれを差し出した事を幸福の絶頂と言った顔でギーシュが語り、その話を聞いていたマリコルヌは
 その洋服は自分が埋めた物と気付き、顔を引き攣らせた。
 幸いなことにトリッシュはギーシュの話を聞いていた為、マリコルヌの表情に気付かなかった。

「お待たせしました」
 ギーシュの話が八回目を迎える頃に、シエスタがイチゴのショートケーキが乗ったトレイを持って現れ配膳を始める。
 トリッシュがトレイを見ると、テーブルには三人しか居ないのに何故かケーキが四つ置かれていた。
 その『四つ』のケーキを見て、ある人物の事を思い出したトリッシュは、以前から疑問に思っていて聞き辛かった事を
 思い切って聞いてみることにした。
「あのさ、『ミスタ』って敬称よね?」
「そうですけど、それがどうかしましたか?」
 改まった様子のトリッシュに三人の視線が集まり、トリッシュは心に渦巻く疑念を吐露する。
「もしよ?グイード・ミスタって貴族が居たら『ミスタ・ミスタ』になるじゃない。それってどう?」
「どうって言われても…貴族の方なら敬称は付けないと」
 困った様子で答えるシエスタと、トリッシュの疑問を考えるギーシュとマリコルヌ。
 トリッシュは更に言葉を重ねる。 
「でもさ、その人は名前を二回呼ばれる事になるでしょ?それって失礼じゃあないの?」
「ええと…だったらミスタ・グイードになるんじゃないですか?」
「シエスタ、それ名前を逆さまに呼んでるだけだから」
「しかしだね、他に呼びようがないじゃないか」
 トリッシュの疑問に四人揃って頭を悩ますが結局答えは出ず、質問自体をなかった事にして決着となった。

「あら、楽しそうね。私も混ぜてくれないかしら?」
「モンモランシー!勿論だとも!ささ、僕の隣が空いてるよ」
 ギーシュの隣にモンモランシーが座り、紅茶とケーキを用意する為にシエスタが厨房へ向かおうと歩き出すが
 その背中をギーシュが呼び止めて立ち止まらせた。
 そしてギーシュは皆を見つめて突然頭を下げ、テーブルに額を擦り付ける。
「ちょっと!どうしたのよギーシュ?!」
 モンモランシーがギーシュの肩を掴み身体を起こすと、その顔はいつになく真剣な表情を浮かべていた。
「実はみんなに頼みがあるんだ。とりあえずこれを見て欲しい」
 そう言ってギーシュは懐から何枚かの紙片を取り出し、シエスタを含めたテーブルに着いている者たちに
 その紙片を配り始める。皆が一様に怪訝な顔をして紙片を見ると、そこには数行の文字が書かれていた。
「マリコルヌ。これなんて書いてあるの?私、字が読めないのよ」
 マリコルヌはトリッシュから紙片を受け取りそれを読み上げる。
「ええと…ギーシュ様と言って眼に涙を浮かべ……って何だよこれ?!」
「ちょっとギーシュ!なんで私がワインをあなたの頭にかけなきゃいけないのよ!?」
「あの……私、何か粗相を致しましたでしょうか?」
 口々に疑問と叫びを上げながらギーシュに詰め寄るが、その反応を予想していたのか詰め寄るマリコルヌたちを
 手で制すると真面目な顔で皆を見渡し語りだした。
「みんなの疑問は当然だ。しかし!ここは僕の言う通りに行動して欲しい!このギーシュ・ド・グラモンの
 一生に一度のお願いだ。どうかこの通りだ!是非!!僕に力を貸してくれ!!」
 ギーシュが今度は地面に額を擦りつけ土下座する。その心の奥底から出る叫びに一同は静まり返り
 それぞれが了承したとばかりに頷き返し、ギーシュは涙を流しながら皆に感謝の言葉を述べた。

「サイトさんか私が、ミスタ・グラモンが落とした香水の壜を拾えば良いのですね?」
「それで僕が冷やかすと……」
 判らない箇所をギーシュに質問しながらそれぞれが役割を把握し、打ち合わせが終わると
 それを待っていたかの様なタイミングでターゲットが現れた。ルイズとその使い魔である平賀才人である。
「よーっす、シエスター!」
「あ、さいとさん。こんにちは」
 呼びかけられたシエスタが台詞を読む様にぎこちなく挨拶を交わす。物凄く不自然なシエスタの態度を
 サイトは不思議に思いながらも、ルイズと共にギーシュたちの座るテーブルに近づいて行くと、
 太陽光を反射して光る小壜がギーシュのポケットから転がり落ちた。
「ギーシュ。なんか落としたわよ」
「「「あーーーーーーっ!!!」」」
 ギーシュのポケットから転がり落ちた小壜をルイズが拾おうとし、一同、顔を蒼白にしながら叫びを上げる。
 その声に驚いたルイズが身体を竦ませると、その隙にシエスタがサイトの方へ小壜を蹴る。
 ギーシュ以下も役者たちがシエスタのファインプレーに心の中でガッツポーズを取るが、ルイズは蹴られた小壜を
 あっさりと拾いギーシュに差し出す。
「ハイこれ。大丈夫よ割れてないから」
 ルイズとしては、自分が小壜を渡すことでギーシュからシエスタを守ろうとしたのだろうが、それはこのテーブルに
 着く者たちにとって要らぬ気遣いであった。
「どうしたのよ?受け取りなさいよ」
 ギーシュは石の様に固まった。ここで香水の壜を受け取ってしまっては全てが終わりである。
 如何したものかとマリコルヌに視線を送るが、マリコルヌは黙って首を振る。
 全てはサイトかシエスタが香水の壜を拾う所から始まるのである。ここで冷やかせばルイズと決闘になる。
 それではダメなのだ。
「ほら!ギーシュッ!……あれ?」
(スパイス・ガール……香水の壜を柔らかくした。壜はルイズの手を貫通するみたいに通り抜ける)
 ルイズの手から逃げる様に壜が地面に落ちる。それをルイズは拾おうとするが、手から滑り落ちて拾えない。
 ギーシュたちは何が起こったのか理解できなかったが、ルイズが壜に触れないことを見て胸を撫で下ろす。

「なんでよ~ど~して拾えないの~?」 
「なにやってんだよルイズ。ほら、俺に任せろ」
 サイトがルイズの隣から手を伸ばし香水の壜を拾おうとする。それを見てトリッシュが能力を解除した。 
 ギーシュ、演出、脚本の舞台が始まった。
「ほら、お前のだろ」
 ルイズがジト眼でサイトを睨むが、サイトはその視線に気付かずに香水の壜をギーシュに渡そうとする。
「おお?そのあざやかなむらさきいろのこうすいはもしや、もんもらんしーのこうすいじゃないのか?」
「え?本当なの?モンモランシー」
 マリコルヌは大根役者の様に抑揚のない声でギーシュを囃し立て、ルイズがモンモランシーに尋ねるも
 それを黙殺し、舞台は続く。
「違う。いいかい?彼女の名誉の為に言っておくが……」
 トリッシュが突然立ち上がり、眼に涙を浮かべながらギーシュの前に立つ。
「ギーシュ様……」
「ちょ、ちょっとどうしたのよ?!」
 眼に涙を溜めて、今にも泣き出しそうな顔でギーシュを見るトリッシュ。
 自分の指をヘシ折り、顔を蹴り飛ばしたトリッシュの泣き顔を見てルイズは混乱した。
「やはり、ミス・モンモランシーと……」
「いや、これは誤解だよ。僕の心の中には君への想いだけ……」
「え?え?なになにどゆこと?」
 混乱の度合いを増すルイズを置いてきぼりにして、二股かけられた女の子になりきったトリッシュは
 思いっきりギーシュを殴り飛ばし、泣きながら何処かに走り去っていった。
「やっぱり、あの一年生に、手を出してたのね?」
「え?一年生って?マリコルヌの使い魔じゃなかったの?ひょっとしてメイジ?」
「お願いだよ。モンモランシー。咲き誇る……」
 モンモランシーは、シエスタから受け取ったワインの中身を満身創痍のギーシュの頭にブチ撒けると
 トリッシュと同じく走り去ってしまった。

「なんだお前、二股かけてたのか?」
「あのレディたちは薔薇の存在の意味を理解してないようだ。そう言う訳で決闘だ!使い魔君!!」
「ちょっと!どういうこと!ぐえ…」
 戻ってきたトリッシュにルイズは絞め落とされ、気絶したルイズを担ぎ上げて大急ぎで姿を消した。
「なんなんだ……?」
「さ、さいとさん、ころされちゃう。きぞくをほんきでおこらせたら……」
 精一杯に怯えた顔を見せながらシエスタも何処かに走って行ってしまった。
「ギーシュなら昨日の広場で待ってるから、行ってあげなよ」
 マリコルヌはサイトに決闘の場所を教えて中庭から立ち去った。
 一人残されたサイトは何が何だか訳が判らないが、無視すると色々とマズそうなので仕方ないと言った様子で
 ギーシュの待つ広場へと歩き始めた。


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