ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

亜空の使い魔-10

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匿名ユーザー

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翌日、キュルケは昼近くに目を覚ました
寝ぼけた頭で先ず今日が虚無の日であることを思い出し、次に今や焼け焦げた風穴と
化した窓を見て昨夜の事を思い出した
「そうだわ、ふぁ・・・・。色んな連中が顔出すからふっ飛ばしたんだっけ」
そして壊れた窓のことなど毛ほども気にかけず、起き上がると先ず化粧を始めた
今日はどうやってヴァニラを口説こうかと考えるとやる気がムンムン湧いてくる
キュルケは生まれついてのスタンド使・・・・もとい狩人なのだ

化粧を終え、ルイズの部屋の扉を叩く
その後キュルケは顎に手を置いてにっこりと微笑む
ヴァニラが出てきたら抱きついてキスをする
ルイズが出てきたらどうしようかしら、少しだけ考えるが
(そのときは、そうね・・・)
椅子に座っているであろうヴァニラに流し目を送って中庭でもブラブラしていれば向
うからアプローチしてくるだろう
キュルケはよもや自分の求愛が拒まれるとは露ほども思っていないのであった(昨夜
のはノーカウントらしい
しかしノックの返事は無い
構わず開けようとするが鍵がかかっていた
キュルケは禁止されているにも関わらず、『愛の情熱はすべてのルールに優越する』
というツェルプトー家の家訓に従いなんの躊躇いも無くドアに『アンロック』の呪文
をかけた
鍵が開く音がすると勢いよくドアを開けるが
「あら?」
部屋はもぬけの殻だった

「相変わらず色気のない部屋ね・・・・」
キュルケは部屋を見回し、ルイズの鞄が無い事に気づいた
虚無の曜日なのに鞄が無いという事はどかかに出かけたのであろうか、
そう思い今度は窓から外を見回した
門から馬に乗って出て行く二人の人間が見える
目を凝らせば果たして、それはヴァニラとルイズであった
「なによー、出かけるの?」
キュルケはつまらなそうに呟き、それからちょっと考えるとルイズの部屋を飛び出した

ヴァニラを伴ったルイズはトリスティンの城下町を歩いていた
学院からここまで乗ってきた馬は町の門のそばにある駅に預けてある
「狭いな」
物珍しそうに辺りを見回したヴァニラが呟いた
白い石造りの街はまるで話に聞くテーマパークのようだ
魔法学院に比べると質素ななりの人間が多い、皆平民なのだろう
道端で大声を張り上げて果物や肉、籠などを売る商人たちの姿が
ヴァニラに何処と無くエジプトの情景を思い起こさせた
「狭いってこれでも大通りなんだけど」
「これで?」
道幅は5メイルもない
そこを大勢の人が行き来するものだから歩くのも一苦労である
「ブルドンネ街。トリスティンで一番大きな通りよ、この先にトリスティンの宮殿があるわ」
「ああ、有事の時の備えという訳か」
確かに道が広いと街中が戦場になれば守るべき箇所が増え敵の侵攻が容易になる、
もっともこの場合は技術レベルの問題もあるのだろう
「ほら、さっさと行くわよ」
一人納得するヴァニラを引っ張るようにしてルイズは狭い路地裏に入っていく
悪臭が鼻を突き、ごみや汚物が道端に転がっている
「・・・・不潔な」
「だからあまり来たくないのよ」
ルイズは四辻に出ると立ち止まり、辺りをきょろきょろと見回す
「ピエモンの秘薬屋の近くだったからこの辺りなんだけど・・・・」
それから一枚の銅看板を見つけ嬉しそうに呟いた
「あ、あった」
ヴァニラが見上げると剣の形をした看板が下がっていた
どうやらそこが武器屋であるらしい

店の中は昼間だというのに薄暗く、ランプの灯りが燈っていた
壁や棚に所狭しと剣や槍が並べられ、立派な甲冑が飾ってある
二人の客に気づいた五十がらみの店主が店の奥から胡散臭そうに見つめ、
ルイズの紐タイ留めに描かれた五芒星に気づくとドスの利いた声をだす
「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさぁ。お上に目をつけられるよう
なことなんかこれっぽっちもありませんや」
「客よ」
ルイズは腕を組み、その台詞を一蹴するように言った
「こりゃおったまげた、貴族が剣を!おったまげた!」
「どうして?」
「いえ若奥さま。坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖をふる、そして陛下
はバルコニーから手をおふりになる、と相場は決まっておりますんで」
「使うのは私じゃないわ。使い魔よ」
「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も剣をふるようで」
主人は商売っ気たっぷりにお世辞をいい、それからヴァニラを見上げるように眺め、
ごくりと息を飲んだ
「・・・・剣をお使いになるのはこの方で?」
ルイズは頷き肯定する
二人のやりとりを他所に店内へ品定めするように鋭い視線を巡らすヴァニラには
相当な威圧感があった
「私は剣のことなんかわからないから適当に選んでちょうだい」
主人はいそいそと奥の倉庫へ消えるがその背中は心なし煤けていた気がするが、
多分気のせい
「おっかねぇ客だ。適当にふっかけてとっとと帰らせるとしよう。
それに売れりゃ儲けものだ」
僅かに身震いすると出来るだけ見栄えのする剣を選んで店に戻る

「これなんかいかがです?」
見事な剣だった
1,5メイルはあろうかという大剣
柄は両手で扱えるように長く、立派な拵えである
鏡のように諸刃の刀身が光り、見るからに切れそうである
大剣としての本来の目的からは外れているようだが戦争に行く訳ではないのだ、
あまり関係ないだろう
「店一番の業物で、かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿の傑作で。魔法が
かかってるから鉄だって一刀両断でさ。使い魔の旦那なら腰から下げれやしょう」
勿論嘘なのだが店で一番立派という点では偽りは無い
店主はチラチラとヴァニラの顔色を窺うが興味が無さそうに一瞥をくれただけだった
しかしルイズ乗り気だった、店一番と店主が太鼓判を押したのが気に入ったらしい
貴族はなんでも一番でないと気がすまないのである
「おいくら?」
「エキュー金貨で二千、新金貨なら三千」
「立派な家と森つきの庭が買えるじゃないの」
ルイズは呆れていった
ヴァニラが生徒から巻き上げた金でも足りそうにない
ルイズが店主に何か文句を言おうとするがそれは叶わなかった
「帰りな素人さんどもよ!」
突然誰かの声がし、弾かれたようにヴァニラが店内を見回すが店の中には三人しかいない

「誰だ?」
ヴァニラが眉間に皺を寄せ警戒していると店主が怒鳴り声を上げた
「やいデル公!お客様に失礼なことを言うんじゃねぇ!」
「デル公?」
見れば乱雑に積まれた剣の山の一本が、錆の浮いたボロボロの剣が喋っている
「それってインテリジェンスソード?」
ルイズが当惑した声をあげる
「そうでさ若奥さま。意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。
こいつはやたらと口は悪いは客にケンカ売るわで閉口してまして・・・・」
「まるでアヌビスだな・・・・」
ヴァニラは今頃ナイルの川底に沈んでいるだろう、或いは平行世界で虐げられている
スタンドの名を呟くとその剣を手に取る
「おでれーた、てめ『使い手』か」
「『使い手』?」
「ふん、自分の実力も知らんのか。まあいい、てめ俺を買え」
偉そうにいう剣にどうしたものかと暫し悩んでいたが
「おい、こいつでいい」
ルイズに向き直り錆だらけの切っ先を向ける
「え~~~~~~~~?もっと綺麗で喋らないのにしなさいよ」
ルイズは心底嫌そうである
「こいつは何か知っているようだ。帰るための方法を探す役に立つかも知れん」
「立たなかったら?」
汚いものでも見るような目で剣を見るとヴァニラの顔を見上げる

「消し飛ばす」
「ならいいわ」
流れるような一連の遣り取りにデル公と呼ばれた剣は凍りついたように黙り込み
「店主、これにするわ」
「ちょ、ちょっと待った!やっぱ無し今の無しぃぃぃぃぃぃッ!」
盛大な悲鳴を上げた
「それなら百で結構でさ」
「安いじゃない」
「こっちにしてみりゃ厄介払いみたいなもんでさ」
店主はひらひらと手を振りながら言った
支払いを済ます間じゅう剣は騒いでいたがヴァニラ、ルイズ、店主の三人は奇妙な連帯感で無視していた
「毎度」
剣を取り、鞘に収めるとヴァニラに手渡した
「こいつの名前はデルフブリンガー、名前だけは一人前でさ。どうしても煩いと思っ
たらこうやって鞘に入れれば大人しくなりまさぁ」
ヴァニラは頷いて剣を受け取ると腰から下げる
斯くしてインテリジェンスソード、デルフブリンガーは無事ヴァニラ・アイスのもの
となり、デルフブリンガーは騒いでも聞き入れてもらえないので、考えるのを止めた



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