ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

slave sleep~使い魔が来る-11

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匿名ユーザー

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時には昔の話を

トリステイン魔法学院女子寮、ルイズの部屋には奇妙な『穴』がある。
その穴は細長く、無理矢理こじ開けた感が否めない穴だった。
だが、そんな穴なのに辺りに割ってできたような破片や瓦礫などは見つからない。
そのかわり淵はジッパーのような細やかにギザギザした穴になっていた。
まるで『突然そこにジッパーが現われたように』。
これを作ったのはゼロのルイズの使い魔。話は彼が召還されてから決闘を行って、
5日後の事だった。

「すまないが寝床を提供してくれ。」
ブチャラティは召還された日は座りながら考え込んでいるうちに寝てしまったので
寝床の事を考えてなかった。(5日間は医務室で気絶していたのでこれも除外。)
「何言ってんの?あんたはもちろん床。」
――――――時が一瞬止まる。
「えと・・・その、今なんて言ったんだ?聞き間違いかな?
今「床」と言ったように聞こえたが・・?」
「言葉どおりよ。『もちろん床』と言ったの。アンタね。使い魔の、それも平民の分際で
まともな寝床なんてもらえるわけないでしょ?スペースがもらえるだけマシだと思いなさい。」
ブチャラティは無表情で、しかし明らかに怒りの心境をオーラとして出しながら言う。
「お前・・。呼び出しておいてコレはないんじゃあないか?」
「しかたないでしょ!?まさか人が呼ばれるなんて思わなかったんだから!
アンタ自分の立場がどれだけ特殊かわかってる!?人間の使い魔なんて多分学校始まって以来よ!対応しようにも私がついていけないんだから!!」
「・・確かに!もっともな意見だ・・・。」
あっさり納得する。彼は割り切った考え方ができるのだ。

「まあ、どーしてもって言うなら毛布の一つくらい貸してやっても・・。」
ジィーーーーッ。
「床にジッパーをつけましょう。この中はとくに寝心地が悪いわけでもないし、
野宿とか非常時の仮眠をするときは大抵コレを使う・・。」
ブチャラティの能力がルイズの自尊心をみごとに打ち砕いたッ!!
もっともこれは本編ではココ・ジャンボのミスター・プレジデントのおかげで
必要なかったのは言わずもがな。
「というわけで…。『コイツを寝袋代わりに使って睡眠をとる。』これで寝床は
確保した…。ということになるかな。」
ルイズは赤くなって言い放つ。
「あっそう!!もういい!わかった!じゃもう寝るから!おやすみ!」
「ああ。ゆっくり休んでくれ。」
ブチャラティは結構マイペースであった。いや、ほんのちょっとズレているのかもしれない。彼はまじめで頭もいい奴だが。

とまあこんな経緯でブチャラティは『床寝袋』を確保したのだが、実はここまでの話
全くの無駄無駄である。だからここで本編に戻らせていただく。

キュルケの部屋から一本足にされたルイズが壁を伝って、ニーソックスの線のところで
切り離された足を肩にかついだブチャラティの後を追う。
「そろそろ戻しなさいったら!!」
「部屋に戻ったらな。で、ガミガミ言う前にオレの言い分を聞いてもらってからだ。
でないとお前、足取り戻した途端殴りかかってきそうだからな。」
ルイズは特に意識してなかったが、本能はやろうとしてたので言われてギクッとしていた。
「う、うるさい!アンタが原因でしょ!!」

「…だからオレはフレイムがつけてくるのが気になって行動をしていただけだ。」
「それがどう転んだらあんないかがわしい展開になるのよ!」
部屋の中で今なお論争は続く。
「なぜ監視していたか聞きに言っただけだ。口を封じたのも色々めんどくさくなったんで
封じただけだ。本当だ。」
だがルイズは全然信じない。
「そそそんな、そんな都合のいい言い訳を!」
頭に血が上っていて冷静さが微塵もない。よほど怒っているようだ。
「言い訳じゃあないさ。誓ってもいい。」
「ウソつくんじゃあないわよ!!このサカリのついた犬!!」
ブチャラティは疲れた顔を見せる。
(ウソを見破るのは得意だが自分がウソをついてないと証明するのはむずかしいもんだ。)
「私が今まで間違ってたわ…。アンタを人間扱いすること自体がそもそもおかしかったのよ・・。」
そして引き出しの中から鞭を出した。
「ののの、野良犬ならそれらしく扱わなきゃね! 今まで甘かったわ…!」
ふと、ブチャラティも真顔に戻る。
「おい。まさかその鞭でオレを叩くのか?」
「ええ・・!ご主人様をおいてツェルプストーの女に尻尾を振るようなダメ犬にはッ!
躾をしなくっちゃ・・!」
(こいつ目がイッてるぞ・・。そんなにキュルケと一緒にいたのが気に入らないのか・・?)
怒りの炎をまとったかのごとく鞭を振るうッ!!
「この夜遅くまで遊んでる堕落した野良犬がァーッ!!」

バシンッ!!

「アッ!!」

その一言を放ったのはなぜかブチャラティではなくルイズだった。
「いたい!すごくいたい・・・!」
「そりゃあ本気で鞭で叩けば痛いだろうさ。本気で『自分』を叩きゃあな。」
鞭打ちの痛みでルイズの怒りはすっかり冷め、表情が歪み、泣きべそをかき始める。
「いたい・・。いたいよぉ・・・・。」
ルイズの痛みは足にある。だがさすろうにも『その足はブチャラティが持っているのだ』。
何をしたのか?ブチャラティは叩かれる寸前さっきルイズから切り離したルイズの右足を
盾にしたのだ。
スティッキィ・フィンガースで切り離した物はまだ『切断』した状態ではない。
体のパーツなら叩けば無論持ち主にダメージが及ぶ。
だからルイズが鞭打ちのダメージを喰らい、今に至っているわけである。
「痛いか?痛いよな。お前はオレにそれを味あわせようと叩いたんだからな。
だが自分で嫌だと思うような事は人にやらせるモンじゃあない。」
ブチャラティがルイズに近づき目を見る。
「もう一度言う。オレは『無実』だ。なのにお前は罪があるか確かめもせず鞭で
たたくつもりだったのか?その『痛み』もわからなかったのに?」
ブチャラティが足をルイズに投げてやる。
「もうこんな事するんじゃないぜ。…頭は冷めたか?今度はオレが聞く番だな。
なんでキュルケと一緒にいてそんなに怒ったんだ?」

ルイズが涙を拭いながら言う。
「…キュルケと私の因縁は個人的な因縁に加え、一族からの因縁があるのよ。」
ルイズの話を詳しく聞くと、キュルケたちツェルプストー一族は隣国ゲルマニアに属し、領地を隣り合うトリステイン所属のルイズの一族と長年にわたり、領地や恋人を巡って殺したり殺されたりした仲らしい。
「今でこそ血みどろの仲とまではいかないけど、それでも因縁って奴は消えてない。
私自身もキュルケは気に入らないしね。隙あらば私が『ゼロ』なのをバカにしてくるし、
なにかと自分が優秀なのを鼻にかけるし、それに・・。」
ルイズは明らかに自分の貧弱な胸をみている。
「それで、悔しかったと言うわけか?」
「だって!キュルケにこれ以上何か弱みを見せたらヴァリエール家の恥だし私が黙ってられないもの!
これ以上水一滴、砂一粒だって取られてたまるもんですか! ご先祖様に申し訳がたたないわ!」
ルイズは足を繋ぎ合わせながら言う。
「怒りで周りが見えなくなってたのは認めるわよ・・。でも私はキュルケにだけは絶対
負けたくない!だからアンタも・・・・キュルケの物なんかになっちゃダメ!いいわね!?」
ルイズの顔がどこか赤くなった。今の自分のセリフが言ってから恥ずかしくなったらしい。
ブチャラティが言う。
「さあ?どうしようとそれはオレの自由のはずだ。じゃあ寝るぞ。」
『床寝袋』の中に入ろうとする。
「ってその前に!まず着替え手伝なさいよ!」
「一人でやれッ!!」

ベッドの中でルイズが考える。
(人の『痛み』・・か。この話をした時ブチャラティ真剣に怒ってたみたい・・。
      • 何かあったのかな?)
ルイズがブチャラティのほうを向く。
(前々からアイツのことは気になってた。おとなしいだけのただの平民かと思ってたら
メイジとも対等に戦うし、戦いを通じて改心させるし。…たまに優しいし。
なんか妙に人から好かれるし。)
「ねえ。起きてるブチャラティ?」
ブチャラティはまだ起きていた。
「なんだ?」
「ブチャラティ・・・私と会うまではどうしてたの・・?」
ブチャラティが少し体を起こして言う。
「何の話だ?」
「ちょっと興味が沸いたの!アンタどうもわからない所があるから!
ほら!アンタのご主人様として知っておく権利があるんじゃないかと考えたのよ!
ちょっとくらい話してくれたっていいじゃない!故郷とかの話でもいいし、
      • んもう!なんでもいいわよ!なんか話しなさい!」
ブチャラティが遠い目で天井を見て口を開く。
「話すことか・・・?」
ブチャラティは言葉に詰まった。12で殺人を犯し、その後ずっとギャングとして生きてきて、
血なまぐさい話しか持ち合わせていないので何も話せないのだ。
「…何もない。」
「ケチケチしないでよ!ホント何でもいいの!仲のよかった人の話とかでも!!」
フッと思い浮かんだのは仲間の顔。

「イタリアにいた頃の仲間の話でよければ・・・。」
ブチャラティは語り始める。明るくてムードメーカーだが『4』と言う数字が駄目なミスタの話。
頭がいいのだが一度キレだすと手に負えないフーゴの話。
気難しくて、会ったばかりの人間をなかなか信じようとしないが、
心が通じればとても心強いアバッキオの話。
頭が悪いのを気にしていたが、それでもガムシャラにがんばって自分を支えたナランチャの話。
出会って間もなかったがとても心から頼りになったジョルノやトリッシュの話もした。無論ギャングだの
生々しい殺し合いだのは極力避けた。
(今思えばジョルノのおかげでチーム全体がどれほど助かった事か・・。)
ブチャラティは思い出話をしながらそんな事を考えていた。
「それでフーゴがナランチャとよく喧嘩したもんだ・・。本人に言っちゃ悪いがナランチャのほうが
17で年上なのによくチーム最年少に間違えられたもんだ。背も低かったしな。」
「そんな子供っぽかったの?」
「ああ。お前と比べれば同い年くらいに・・。」
ルイズが疑問そうに首を傾げる。
「・・・・?それじゃあ一つしか違わないじゃない。私16だから。」
「・・・えっ!?お前・・16だったのか・・?」
「なっ!!いくつだと思ってたのよ!?」
(16だったのか・・。ジョルノやトリッシュより年下だと思ってた・・。)
ルイズが顔を真っ赤にして怒る。
「失礼ね!!どうせ私は背が低いわよ!胸がないわよッ!よく実年齢より年下に見られるわよッ!
悪かったわね!!」
「すまなかった・・・。」
「フンッ!その年齢より小さく見られる私と同い年に見られるなんてそのナランチャとかいう奴
一度みてみたいものねッ!!」
そう言うとブチャラティの顔が陰った。

「それは無理だ・・。死んだんだ。いろいろあってな・・。」
「え・・・?」

「だから・・・。死んだんだ。・・・もう聞かないでくれ。」
「死んだ・・・?」

ルイズは突然のショッキングな事実に少しドキリとした。
「な、何で死んだの・・?病気・・?事故・・?」
「聞くなと言ってるだろ。もう寝ろ。」
「だって・・・。」
「やかましいッ!話したくないと言ってるだろッ!!・・・もう遅いんだ。早く寝ろ。」
ブチャラティは背を向け、眠りについた。
「ブチャラティ・・・。」
ルイズは今、ブチャラティの知らなかった、弱い一面を知った気がした。
(ブチャラティって、あんな悲しそうな顔もするんだ・・・。何があったのかな・・?
私はまだブチャラティを全然知らない。まだ・・全然・・。)
ルイズもまた、いつしか眠りについた。


「きゅるきゅる(以上会話終了でありますッ!!)」
「んーッ!んーッ!(実況はいいから戻ってジッパー開くの手伝いなさいよ!)」

夜はふける・・・。

第11話『時には昔の話を』

to be continued……

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