ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

タバサの大冒険 プロローグ

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匿名ユーザー

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『参ったねえ、こりゃ実に参った』
 手に握り締めた知恵ある剣、デルフリンガーが何度目とも知れぬ愚痴を漏らす。
 ここはハルケギニアと呼ばれる世界。
 トリステイン魔法学院に在学する学生達に、遺跡調査の依頼が舞い込んで来た。
 それ自体は、決して珍しい話では無い。
 魔法学院に通うメイジ達とは例外なく貴族の家系であり、彼らはいざともなれば習得した魔法を駆使して、他国との戦争の為に激しい戦場に立たねばならない。
 学問や魔法の研究、そして武者修行の為に、魔法学院の学生達は日々の授業以外にも命の危険を伴う冒険に挑む必要があるのだ。
 今回もそうした――危険ではある物の、ありふれた冒険の一つのはずだった。
『よお、これからどうする。先に進んじまうか、連中を探すか、どっちだい』
 遺跡を守護するガーディアンとの戦いに気を取られ、仕掛けられていたトラップを見抜けなかったのは自分のミスだった。結果として、一緒に遺跡までやって来た仲間達と離れ離れになってしまい、今この場にいるのは自分と、そしてデルフリンガーの一人と一本。
 一刻も早く仲間達と合流し、任務を終えてこの遺跡を脱出する。
 果たさねばならない目的の数はたった3つ。口で言うのは簡単だが、かなり困難な話である。
 今、自分は何処にいるのか?仲間達の位置は?遺跡を守るガーディアンやトラップの存在は?
 目的に対して問題は山積み。
 もし一人でこの遺跡に訪れていたとしたら、気にする事は無かっただろう。
 だが、仲間達を放っておくわけにはいかない。彼らは、孤独だった自分に出来た初めての友達。
 死と隣り合わせの戦場でも、笑って肩を並べてくれる、かけがえの無い人達。
 父を殺され、母を狂わされ、自らもまたトリステイン魔法学院での過酷な任務の中で惨死することを望まれた、あの可愛そうなシャルロットは、もういないのだから。

『なあ、タバサ――』
「皆と合流する」
 タバサはいつも通りのか細い声で――しかしはっきりと意思を込めて声に出した。
『んぉ?お、おう、わかった。しっかしおどれーたぜ、あんたがちゃんと返事をしてくれるなんてよぉ?』
 それっきり返事は返さない。決してデルフリンガーのことが嫌いな訳では無かったが、必要の無いこと以外は、あまり喋りたくは無かった。
 それは、誰に対しても変わらない、他人へのタバサの接し方。
 ――しかし何故、自分はこのインテリジェンスソードを持っているのだろう?
 これは彼女のクラスメイト、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエール――
 通称「ゼロのルイズ」の使い魔が使っている筈の剣なのに。やはりこの剣は異世界から来たというその使い魔の青年、平賀才人の手に握られているのが良く似合う。
 まあ、いい。武器を失う羽目になった才人のことは気になるが、
 彼やルイズの側にはタバサの頼れる親友キュルケや、少々お調子者だけど召喚魔法の技術は確かなギーシュと言った仲間達がいるはず。
 自分は彼らの無事を信じて、「早くデルフリンガーを返したいなあ」と考えていればいいのだ。
『んじゃ、合流すると決めたからにゃ、どっちに行くよ?右か?左か?上かい下かい?』
「……………」
 タバサは黙って歩き始める。途中途中で、魔法を使って自分が通ったというサインも残しておく。
 他に良い考えがある訳じゃなかったが、向こうもこちらを探しているなら、きっと大丈夫。
 例えすぐには会えなくても、互いに強く「探そう」「会いたい」という意志を持って
歩いているなら、いつかは必ず再会出来るはずなのだ。
 何故なら、自分達はお互いに向かっていっているのだから――。

『……おっ。こりゃどーも、順序が逆になったみてぇだな』
 デルフリンガーの言葉に、タバサもこくりと頷く。
 彼女達の目の前に立ち塞がる扉は、これまで散々遺跡の中で見続けて来た石造りの物とは違う、金属とも有機物とも付かぬ物質で作られている奇妙なデザインの扉だった。
 まるで扉自体が何かの生き物であるかのように、巨大で禍々しい力すら感じ取れる。
 この扉を開いたが最後、何が起こるのか――そうしたイメージすら封殺してしまう程の凄味があった。
 そう。間違いなく、この扉こそがこの遺跡に眠る最大の「何か」なのだろう。
『どうする、タバサ?』
「……………」
 一人でこの扉を開けてしまって大丈夫なのか?出来るなら、仲間達と合流したい。
 この扉の先に何があるのかわからない以上、迷いはある。
 ――だが、逆に。
 逆に考えるなら、今ここで自分一人で扉を開いてしまえば、皆を巻き込まなくて済むのかもしれない。
 その為に例え自分が命を落としたとしても、仲間達だけは助けられるかもしれない。
 今まで歩いて来た中で、別の道は無かった。後戻りか、扉を開いて先に進むか。二つに一つ。
「………開ける」
 決然とした口調で、タバサは言う。デルフリンガーを鞘に収め、自分の杖と一緒に脇へ置いておく。
 そして、その小さな手を目の前の扉に掛け、精一杯の力を込めて開こうとする。

 ゴトリ

 ――扉は、あっけない程簡単に開いた。
 そしてその刹那、タバサは何か目に見えぬ圧倒的な力によって、凄まじい勢いで扉の中に引き摺り込まれようとしていた。
『――タバサ!』
「…………!!」
 なけなしの力を振り絞って、タバサは声を頼りにデルフリンガーを掴む。杖は、間に合わない。
 そして一人と一本は、扉の中へと吸い込まれて行く。
 やがて意識を失うその直前、タバサは確かに誰かの声を聞いた気がした。


「――大迷宮へ……そして君の試練へ……ようこそ……――」




 ゼロの奇妙な使い魔「タバサの大冒険」 To be continued…



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