ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

味も見ておく使い魔-5

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匿名ユーザー

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本日、学院の講義は無い。休日である。
タバサは自分の部屋にいた。
虚無の曜日に、『サイレント』の魔法をかけた自室で読書にふける。
一人で自分の世界に浸るのが彼女の最大の楽しみであった。

だが、本日のそれは突然の侵入者によって破られることになった。
先程からキュルケがタバサの目の前で何かを話しかけている。
大げさな身振り手振りも交えている。
『サイレント』の魔法により、何も聞こえることは無いが、
よほど何か重大なことを伝えたいのだろう。

3分ほど彼女の奇妙なダンスを満喫した後、『サイレント』の魔法を解除する。
とたんに騒がしくなった。

「だからね!私のダーリンがルイズと一緒にどこかに行っちゃったの!」
「虚無の曜日」
そう答えて、迷惑だといういことを表現する。
「私ダーリンに恋しちゃったの!それなのにあのヴァリエールなんかと一緒に馬に乗って行っちゃったわ!」
「だから行き先を突き止めるのにあなたの使い魔が必要なのよ!」
仕方が無い。これが他の人であれば、『エア・ハンマー』か何かを食らわせるのだが、無二の親友が、わざわざ自分の使い魔を頼りに来たのだ。

「分かった。…シルフィード」


「まったく、ロハンはいったいどこに行っちゃったのかしら?」
「俺に聞かれてもな…」
トリステインの城下町を、
ルイズとブチャラティはもう2時間も岸辺露伴を探し回っていた。
どちらとも徒歩である。
馬は門のそばにある駅に預けている。

事の起こりは、岸辺露伴が「画材を買ってくる」と、ルイズがまだ寝ている早朝のうちに街に出て行ってしまったことに始まる。

「ふぁぁぁ。あれ、ロハンは?」
ブチャラティは、起きて来たルイズにうっかり簡潔に答えてしまった。
「ロハンは(学院を)出て行った」
使い魔にすら見捨てられたと泣き出すルイズ。
ブチャラティがなだめるのに1時間。
「使い魔の癖に!勝手になにやってるのよ!」
やっと泣き止んだと思ったら、「使い魔の心得」とやらを1時間。
ロハンに対し猛烈に怒っているようだ。
「私もトリステインの街に行くわよ!準備して!」
「ひょっとして俺も行くのか?」
「当然でしょ!」
着替えながらルイズが叫ぶ。
ブチャラティは、主人に背を向けながらため息をつくのであった。

「あとはこの道ね…」
トリステイン城下町の主な道路を探しつくしたルイズたちは、とある路地裏を目の前にしていた。
ごみが散乱している。どこからか腐敗臭が立ち上っている。
ルイズは、「できれば一生立ち入りたくない」という表情をしている。
「大丈夫か?ルイズ?」
「使い魔の管理は貴族として当然の義務よ!
それにロハンがブルドンネ通り沿いの画材屋で買い物した事は確実だし、この街にロハンがいるのは間違いないわ」

ブチャラティは先ほど聞き込みをした店を思い出していた。
道幅5メートルほどの道路に面したこぎれいな雑貨屋であった。
そこの店主によると、
「やたらそこらじゅうをスケッチして回る客が、大量に画材を買っていった。
その客はインクの『味』も確かめていた。」とのことである。

「まったく…こんなところをご主人様に探させるなんて…」
ブチャラティが、今日3回目の
「そんなに言うのならやめればいいじゃないか」のセリフを言おうとしたとき、
「あ!いた!ロハン!」
武器屋の看板をスケッチしている露伴の姿があった。
露伴自身はスケッチ道具以外何も持っていない。
かわりに、大人の身長ほどの高さになる、
袋いっぱいの画材を抱えている少年メイジが隣に立っていた。

「おや、ルイズとブチャラティ。奇遇だね。こんなところで会うとは」
「わざわざあなたを探していたのよ!ロハン!
どのくらい時間をかけてと思っているの?
あなた、出かけるときはご主人様に直接言いなさいよね!」
「悪かった。スマン」
「へ?」
あまりにもあっさり謝られる露伴にかえってびっくりしているようだ。
「それよりも僕はこの世界の武器に興味があるんだ。
よかったら案内してくれ」
ルイズにかまわずに武器屋に入っていく。
「ち、ちょっと待ちなさい」
「そうだ。待ってくれ。もう僕に荷物持ちをさせるのはカンベンしてくれ」
少年メイジが露伴に話しかける。
「まあいいじゃないか。ギーシュ君。
荷物が大きいから君は武器屋の外で待機していてくれ。
これは僕の『お願い』だ」

「…分かりました。露伴さん」

「貴族のダンナ。うちはまっとうな商売をしてまさあ。」
「ただの冷やかしよ」
「ああ、さいでっか」
(客ですらねーのかよッ!)
ルイズと武器屋の親父のやり取りを尻目に、
岸辺露伴は手近な武器を手にとり、スケッチを開始していた。
「なるほどレイピアがあるぞ。
 それにグラディウスやスクラマサクスもある。基本的になんでもありだな…」

この場においていかれた感のあるブチャラティは、ふと一本の片刃剣に目が行った。
「この剣…
 近くでよく見るとすごく美しいな…」
「抜いてみるか…」

「その剣をぬくんじゃぁねーぜ!心をとられちまわあ」
突然、誰もいない方向から声がした。
「誰だ!」
ブチャラティは剣から手を離し、すかさず周りを警戒する。
が、誰もいない。

「うるせーぞデル公!」
店長が怒鳴る。
「今のはなんだ?」
「インテリジェンスソードってやつでさ。誰が考えたか知りやせんが、しゃべる剣なんです」

「これが『デル公』か」
ボロボロの剣をロハンが取り上げる。
「気安く触んじゃねーぞ!このやろう」

「面白いな、これ。買おう。いくらだ」
「新金貨百で結構でさ」

「ロハン、お前は『それが危ないかも』とか思わないのか?」
「いや全然。これはなかなか面白いぞ。ほれッ」

一振りの剣が、放物線を描いて宙を舞う。

「俺様はもっと繊細に扱えこのボケ!」
「裸身の剣を投げてよこすやつがあるか。
 まあ、錆びてるから怪我はしないだろーがな…」

「…おでれーた。おまえ『使い手』か」

「『使い手』?」
「ふん?自分の実力も知らんのか。まあいい。お前らに買われるのならいいか」

「そのことなんだが…」ロハンが口を濁す。
「僕は先に画材を買ってしまってね。いま手持ちが百ないんだ」
「マヂで!俺様死亡フラグ?」

「ならばこうしよう。ルイズ?」
ブチャラティが口を続ける。
「君はこの前、決闘に善戦したご褒美を買ってくれると約束した。そのときの約束として、ロハンの手持ちに足りない分を足してくれ」
「いいの?あなた自身の希望は無いの?」
ルイズは不満そうだ。
「俺はいい。あえて言うなら毎朝カフェオレがほしいが…」
「…無理ね」

岸辺露伴が新金貨67を、ルイズが33を支払った。
「毎度」
ヴチャラティは店を後にし、露伴に『デルフリンガー』を手渡した。
「ほれ」
「ありがとう」
「先にいっとくがな!俺はテメーが…」
「なるほど、鞘に収めれば黙るのか」

店の外には、先ほどの少年メイジが忠犬ハチ公のように露伴を待ち構えていた。
「そうそう、この剣も君が持ってね。学院のルイズの部屋まで決して落とさずに持ってくるんだ。
これは僕の『お願い』だ。」

「…分かりました。露伴さん」


この珍妙な面々が武器屋から出て行くと、後をつけていたキュルケとタバサは武器屋のなかに入っていった。


「おや!珍しい。また貴族だ」
「ねえ御主人。先ほどのおかっぱ頭の方が何していたかご存知?」
「そういえば一振りの剣に興味を持っていたようですぜ?
たしか、こいつ…」




夜。
トリステイン学院にて

「結局今日一日は露伴を探すだけだったわね」
ルイズたちの目の前をキュルケたちが無言で通り過ぎようとしていた。
「どうしたの、タバサ、それにキュルケ。ボロボロじゃない」
「…武器屋とキュルケを退治してた」
「?あんた達ケンカしてたの?仲良さそうに見えたのに…」
「…何も言いたくない…」



アヌビス神 → タバサのマジックアイテム『デグチ=ホソナール(Sサイズ)』にて捕獲。永久封印。
武器屋   → 営業中。店長の親父に『ミス・タバサの紹介』といえば、二割引してもらえる。
        倉庫の奥から「えッ!俺もう出番ないの?」との声が時々聞こえる。


To Be Continued...

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