ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

影の中の使い魔-4

最終更新:

familiar_spirit

- view
だれでも歓迎! 編集
半壊になった教室をルイズは一人で掃除していた。
姿をくらました使い魔をどう叱ろうか授業中ぼんやり考えていたら
教師に目を付けられ、錬金の魔法を前に出て実践することになったのだ。
結果を一言で表すなら、惨劇が起きた。自分で言うのもなんだが日々破壊力に磨きがかかっている気がする。

実はキュルケが掃除を手伝おうかと言ってきたのだが断っておいた。
どうせ裏があるに違いないと思ったからなのだが
よく考えたらキュルケは、ルイズに使い魔がいないのは自分のせいだといまだに思っているようなのだ。
そう考えると無下に断ったのは逆に悪かったかもしれない。実際はルイズの使い魔はピンピンしているのだから。
まぁもう少し黙っとこう。そのほうがおもしろい。
そう、それよりも問題はブラック・サバスのほうだ。

もし他の生徒が同じ事を言いつけられたら、使い魔にでも手伝ってもらうのだろうが
ブラック・サバスは朝ルイズの下着入りの洗濯カゴを持って(というか食べて)どこかへ消えてしまった。
まさか本当に洗濯に行ったとは思えない。もし本当に洗濯してたらはしばみ草でもアバ茶でも食べてやる。
(帰ってきたらエサ抜きね!)
そんなことを考えながら机の破片を拾い集める。
いや、でもあれ何食べるんだろう。まさか下着を口の中に入れたのは本当に食べるために…
(もしそんなことしてみなさいよ…エサ一週間抜きにしてやるんだから!)
いや、でもあれ何食べるんだろう。

ルイズはポケットから『箱』を取り出す。
壁の一部が無くなり、日の光がいつもよりずっと多く入る教室には影になる部分も多い。
それを確認すると『再点火』してみる。
だが使い魔は現れなかった。
呼ぶためには他の条件がいるのか、はたまたもう呼ぶことさえできない遥か遠くに行ってしまったのか。
ルイズは嘆息で火を消すと、どこで何をやっているのか分からない使い魔のことは一旦諦め、掃除を再開した。

学院の中庭にあるベンチにキュルケは一人で座っていた。
雲ひとつ無い空を眺め、ひとつ嘆息。
それは自分の美貌の為にはよくないことだし、自分のキャラじゃないとは思っているのだが、つい出てしまう。
自分の格好のおもちゃであるゼロのルイズ。それに大きな貸しを作ってしまった。
ツェルプストー家とヴァリエール家の伝統とも言える因縁も含めて、キュルケはルイズをある意味特別視していた。
ルイズとは会えば口げんかするし、しょっちゅうからかってはおちょくる犬猿の仲。
だけど本当に馬鹿にしたことは決してなかった。
特にルイズの日頃の努力を最も知っている自分にそんなことはできない。

だからサモン・サーヴァントへ向けて気合を高めるルイズを心の中では応援してたし
最初ルイズが箱を召喚した時は、またおちょくるネタができたとニヤニヤしつつも
とりあえず成功させたことにほっとしていた。
ルイズだってうれしかったはずだ。何度も何度も失敗してとうとう現れた使い魔。
だがそれがあっさり死んでしまった。いや、殺されてしまったのだ…。

気配を感じて視線を空から前方に移す。
ああダメだ。あまりにも悩みすぎて幻覚を見ているようだ。
昨日自分が殺したルイズの使い魔が、キュルケの使い魔のフレイムの尻尾を握ってこっちを見ていたのだ。
(幽……霊?こういうのはあの子のポジションでしょ)
一瞬、無表情な青い髪の親友の姿を思い浮かべる。
そこでキュルケの意識は途絶える。

学院の中にある図書館でタバサは一人本の世界に入り込んでいる……はずだった。
タバサは嘆息する。本当に小さく、本で隠すように。
ここは図書館で自分以外誰もいない。司書の先生すら用事で抜けているようだ。
いつもこの時間帯はこんなものだ。
なのにさっきからずっとこっちに向かって声をかけてくる存在がいる。
基本的にタバサは読書に没頭しはじめると、周りのことなど眼中になくなる。
だが、さすがに同じ事を30分間近く話しかけられ続けると、いいかげんうっとおしくなる。そこで。
「チャンスをや…………」
タバサは本から目をそらさず、手だけ動かし前にいる存在にサイレンスの魔法をかけ音を消した。
一時間後、本を読み終えたときにはすでに声の主も消えていた。

シエスタには嘆息をするような余裕はなかった。今は夕食の準備の真っ最中。
厨房は戦場と化していた。自分の仕事をテキパキとこなしていかないと間に合わなくなる。
(あ、お皿用意しなくちゃ)
頭をクルクルと回転させ、やるべきことを次々とこなしていく。
これは普段のシエスタの仕事ではないのだが、今日は他の使用人に病欠が多いため回ってきたのだ。
なんでも真昼間から幽霊と遭遇して、気分を悪くし寝込んでいるらしい。
マルトーさんは何を馬鹿げたことをと笑っていたが。

(幽霊……そういえば結局朝の使い魔はなんだったんだろう)
作業する手を休めず、朝の出来事を回想する。
唐突に現れた使い魔は、唐突に消えた。なぜかシエスタの洗濯物といっしょに。
使い魔も主人の……確かミス・ヴァリエール……の洗濯に来ていたようだったから
間違えていっしょに持って帰ってしまったのかもしれないが……
できれば返してもらいたかったのだが、あまりあの使い魔にもその主人にも関わりたくないというのが本音だった。
あの使い魔の不気味さは言わずもがなだし、その主人であるミス・ヴァリエールの噂も知っていたからだ。
つまり『ゼロ』のルイズは魔法が使えないくせに、やたらプライドは高いと。

「お前にチャンスをやろう」
後ろから声が聞こえヒッと悲鳴をあげてしまう。あわてて後ろを振り向く。
そこには黒い帽子に黒いマント、人間とはとうてい思えない顔と体、そしてその右手にはなぜかエプロン。
今度は見詰め合うこと数十秒。
「あ、あの…お返しに来てくださったんですか?」
使い魔はシエスタの問いに、エプロンを持つ手を差し出すことで答えた。

「あ、えと、わざわざありがとうございます」
「…………」
「ちゃんと乾いてる。干してくださったんですね」
「…………」
「あ、あの。本当にわざわざお越しいただいたのにスイマセン。今から夕食の準備に取り掛からないといけないんです。本当にありがとうございました」
やっぱKOEEEEEEEEEEEEE。思わず下唇を歯でかみそうになりながら、逃げるようにシエスタは食器棚に向かった。

皿を何枚も重ねて、お盆に乗せる。
一枚、一枚は大した事なくても、生徒の数だけそろえると相当の重さとなった。
両手に力を入れ、よいしょっと持ち上げる。なんとか持てそうだ。
しかしそこで使い魔が道を塞ぐように立っていることに気づく。
「あ、あの……」
不安になりながら尋ねる。すると使い魔は無言でシエスタに両手を差し出したのだ。

(これは手伝ってくれるって事?)
使い魔の差し出された両手の位置からは「お盆を持ちますよ」という意味にしか取れない。
「あの大丈夫です。これは私の仕事ですから」
やんわり断るが使い魔は全く反応しない。きっとお盆を渡すまでその場からテコでも動かないだろう。そんな『凄み』を感じる。
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えさせていただきます。向こうの机まで運んで下さいませんか」
そう言うと使い魔はお盆を掴もうとさらに手を伸ばしてきた。
二人の手が触れ合う。予想と違って普通の人間と同じような温かさをその奇妙な手から感じる。
「じゃあ、あの、手を離しますよ?ちゃんと持ってくださいね?」
シエスタは何度か使い魔に確認し、手を離した。
そして使い魔の手に渡ったお盆は、そのまま下へ落下していく。

「どらあ!」
それに即座に反応したシエスタは気合の叫びとともにお盆を空中でキャッチする!
「つつつつつつ使い魔さん!ちゃんと持って下さいっていったじゃないですか!」
半腰に皿の乗ったお盆を両手で抱えるという、かなり無理のある体制のため
足をプルプル震わせながら、上目遣いで使い魔に非難の声を上げる。
「つかんだ!」
使い魔はそれだけ言うと、再びお盆に手を掛けて持ち上げようとするが…全く持ち上がらなかった。
思わず貧弱、貧弱ゥ!と叫びたくなる。どうやらこの使い魔はシエスタより力が弱いらしい。
(やれやれだわ…………)
シエスタは思わず心の中で嘆息した。


To Be Continued 。。。。?

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー