ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

偽愛! 素直クールに萌えろ! その①

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偽愛! 素直クールに萌えろ! その①

ギーシュ・ド・グラモン、最近彼は調子に乗っていた。
なぜなら土くれのフーケを自力で倒したからだ。
酔っ払ってキュルケにボコられはしたが、フーケを追い払った事実は変わらない。
タルブの村では英雄視されているし、承太郎にも一目置かれている(はずだ)し、何より土くれのフーケを倒した自慢話をしまくっているからだ。
あまり事に関わりたがらなかったキュルケとタバサも、ギーシュがしつこく証人になってくれと言うから、一応本当だと言ってくれた。
おかげでギーシュ・パラダイスが完成しつつあった。
彼の友人達はギーシュを褒め、新しい女の子のファンもできた。
これで後はモンモランシーと仲直りできたら完璧なのに。
と思っていたら、モンモランシーから夜のデートに誘われた。
その日、ギーシュは幸福の絶頂だったかもしれない。

「思い出した! そーいや『虚無』がどうとか言ってたね。
 それだわ。俺、虚無の事を何か忘れてる。いやぁ~、何せ昔の事だしなぁ」
唐突にデルフリンガーは喋り出した。が、それを聞いてるのはルイズ一人だった。
「それ、思い出したって言わないんじゃない?」
「まー固い事言いなさんな。これをきっかけに色々思い出せるかもしれねーぜ」
いっそ姫様に事情を話して預けてしまった方が楽なのでは、なんて事をルイズはぼんやりと考えていた。
「ところでおめーさんの使い魔、遅いねぇ」
「ん……そうね」
「多分あのメイドの娘っ子と仲良くやって……ぎゃー、踏むな!」
「探してくる」
ルイズはデルフリンガーを鞘に押し込んで黙らせると、ベッドの下に放り込んで承太郎を探しに外に出て行った。
承太郎は、コルベールの所に行っていたはずだ。

中庭には竜の羽衣の機影と、ふたつの人影があった。
そのうちの一方は頭のあたりが輝いていたり。
「どうだい、完璧だろう」
燃料タンクの穴がすっかり綺麗にふさがっているのを見て承太郎は感心した。
コルベールは竜の羽衣を再び飛ばすため、ガソリンの錬金だけではなく機体の修理も行っていたのだ。
「さすがだな。あんたは天才だよ」
「ははは、褒めても何も出んよ? ……あ、そうそう、あれがあった」
コルベールは懐から水筒を取り出す。
「一杯やらんかね? 実は紅茶の差し入れをもらってね」
「紅茶か、悪くないな」
さっそく水筒のふたに紅茶を注ぐコルベール。
暗くて色はよく見えないが、花のような香りは心地よかった。
「冷めてもおいしく飲める紅茶だそうだ。自信作だと言っていたよ」
「シエスタが淹れたのか? 茶を淹れるのがうまいからな、あいつは」
微笑を漏らしながら、承太郎は紅茶を一口。
「いや、ミス・タバサだよ。彼女が里帰りする時、丁度会ってね。
 よかったら飲んでくれと渡されて……いやあ、私もまだまだ捨てたもんじゃないな。
 ……おや? ジョータロー君、どうしたね? ジョータロー君!」
紅茶を口に含んだまま承太郎は固まっていた。
何事かと思ってコルベールが彼の肩を揺すると、ふたを落として咳き込みだす。
「ゴホッ、ゴホ! こ、今度は……紅茶なのか……!」
「え? こ、この紅茶がどうかしたのかね?」
恐る恐る紅茶の匂いを嗅いでみるコルベールだが、匂いに異常は感じられない。
「コル、ベール……この紅茶は、飲んだのか?」
「いや、私はまだ飲んでおらんよ。竜の羽衣の修理に集中していたからね。
 この紅茶に何か問題が? ミス・タバサの淹れてくれたものなのだが……はて?」
はしばみ草の騒動を知らないらしいコルベールは、
タバサがはしばみ草を使ったお茶を研究してるなんて知る由も無かった。

「うっ……み、水でも飲んでくる。それと、それは飲まずに捨てろ」
そう言い残し、承太郎は立ち去ってしまった。
一人残されたコルベールは、いったいこの紅茶は何なのだろうと不審に思い、ほんの一口だけ味見してみようとしてみた。
翌朝、竜の羽衣の側で気絶しているコルベールが見つかったらしい。
彼は何者かと戦っていたかのように杖を握りしめていた。
そして焼き尽くされ中身を蒸発させられた水筒も転がっていたとかいないとか。

双月の下、中庭に一組のカップルがあった。
テーブルの上にはワインと薔薇の花が飾られている。
しかしその薔薇の美しさですら、君の前ではかすむ――とギーシュは口説いていた。
相手はもちろんモンモランシー。
浮気旅行だ何だと喧嘩の耐えなかった二人だが、今日からは仲直り。
「君の前では薔薇どころか『水の精霊』でさえもその美しさがかすむだろう。
 なぜならばモンモランシー! 君より美しい女性など、この世に存在しない!
 だから僕は幸せ者さ、君とこうして夜のデートをできるだなんて。
 僕は君以外の女性なんて目に入らない、本当だよモンモランシー!」
よく言うわ、とモンモランシーは笑顔の裏で毒づいた。
土くれのフーケを一人で倒したなどという『デマ』を流して、新しい女の子達と仲良くやっているのはどこのどいつだ。
しかも時々お昼はわざわざ厨房に行って平民のメイドの手料理を食べてるとか。
そんな怒りをこらえつつモンモランシーはグラスを持った。
「せっかくだから、ワインで乾杯しましょうよ。仲直りの印に」
「ああ! それは素敵だね、そうしよう」
ギーシュはモンモランシーのグラスにワインを注ぎ、続いて自分の分も入れた。
直後。
「あっ! 下着姿のお姫様が夜道を歩いている!」
「なんだってー!? どどどどどどこ! どこに!? いずこ! 姫殿下の下着は!」

うわー、何こいつ。目ん玉引ん剥いて、何も無い夜道を食い入るように見つめてるよ。
何が『僕は君以外の女性なんて目に入らない』だ。このスケコマシ。
でも、許して上げよう寛大な精神で。
モンモランシーはニヤリと笑みを浮かべると、ギーシュのワインに小瓶を開けた。
透明の液体が溶け込む。よし、完璧! これでギーシュは私の虜!
「冗談よ。さ、飲みましょう」
「へ? じょ、冗談? じゃああれは姫殿下じゃないのか……」
「え?」
ギーシュが見つめる前方の夜道を見て、モンモランシーはそこを歩く人影に気づいた。
やけに体格のいい人影だが、まさかあれを女王アンリエッタと見間違えたのか?
その人影はギーシュ達に気がつくと、少々ふらつきながら近づいてきた。
「ギーシュ……か?」
「うん? その声はジョータロー。どうしたんだい?」
一度は決闘騒ぎを起こしたのになぜか仲良くなっている二人を見て、モンモランシーは何だか雲行きが怪しくなってきたのを感じた。
案の定、ギーシュは友人を心配して歩み寄る。ワインを持ったまま。
慌ててギーシュの後を追いかけるモンモランシーだが、後ろから呼び止められた。
「ねえ、ちょっと! ジョータロー見なかった?」
振り向くと、ルイズの姿。何でここに。
今の声は男二人にも聞こえており、承太郎とギーシュの視線も集めた。
「あら、ジョータローったらこんな所にいたの? 何してんのよ」
「いや……ちょっと、気分が悪くてな」
「はぁ? またなの?」
ルイズはまだはしばみ草の件を知らないため、なぜ承太郎がたびたび体調を崩しているのか知らないままだった。
しかしギーシュはすぐに承太郎の身に起こった出来事を察する。
「大丈夫かい? レビテーションで寮まで運ぼうか?」
「ああ……すまないが世話になるぜ。それと、そのワインをくれないか?」
「ほら、グッと飲んで口直しをしたまえ」

ギーシュの手から、承太郎の手にグラスが移る。
モンモランシーが「あっ!」と低い声を上げたが、もう遅い。
砂漠で遭難しかけた旅人の如く、承太郎はひたすらにまともな飲み物を求めていたのだ。
一気にワインをあおった承太郎は、軽いめまいを起こしてその場にうずくまる。
「しっかりしたまえ」
「ちょっと、どうしちゃったのよ?」
心配してルイズも駆け寄る。モンモランシーはコソコソと後ずさりをしていた。
「ジョータロー?」
ルイズは承太郎の肩に手を置いた。
承太郎は顔を上げてルイズを見た。
その瞳がカッと見開かれる。
そして承太郎の手が、自分の肩に置かれたルイズの手を握る。
「……ほえ?」
ルイズもギーシュも、まだ事態をよく理解していなかった。
しかし構わず承太郎は立ち上がると、優しい口調でルイズに語りかけた。
「すまないな……心配をかけちまって。だがもう大丈夫だ、楽になった」
「そ、そう? ならよかったんだけど……」
何か様子が変よ? と続けようとしたら、突然承太郎はルイズを抱き寄せた。
「なっ!? ななな、なに、何するのよいきなり!」
「今日のおめーは……一際美しく見えるぜ」
「……はっ?」
ここにきてようやくルイズとギーシュは事態を把握した。
理由は解らないがこの承太郎、頭がおかしい!
だって承太郎ですよ? あの承太郎がですよ?
「いつもぶっきらぼうな態度を取って悪かったな。なぜか素直になれなかった」
とか言いながら、愛しげにルイズの髪を撫でるだなんて、おかしいですよ!
「ちょ、ギーシュ! これ何? これいったい何なのよ!?」
「ぼ、僕が知るか! 僕はただ、ワインを渡しただけで……もう酔ったのか!?」
「ルイズ、ギーシュを見るなとは言わねー。だが俺の事は見るんじゃなく観てくれ」
あきらかに頭のおかしい承太郎を前に、ルイズとギーシュは大混乱に陥った。
モンモランシーはというと、すでにその場から逃げ去っていたり。

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