ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-11

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匿名ユーザー

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ウォオオオオオオオオオオオオーーーーーーーム!!!!!

『動物は危険を感じたり、怪我などをすると副腎髄質という内臓器からアドレナリン
 という物質を分泌し、体を緊張させるッ!
 このアドレナリンの量を脳に寄生する「バオー」が感知し…………………………
 「寄生虫バオー」は宿主である橋沢育郎を、生命の危険から守るべく
 無敵の肉体に変身させるのだッ!』
              こ れ が ッ !
              アームド・フェノメノン
     『 バ オ ー 武 装 現 象 』 だ ッ !!


異形の咆哮が終わり、呆然としていた回りの生徒達が騒ぎ出す。
「あいつ、亜人だったのか!」
「傷がふさがってるぞ?」
「ひょっとして先住魔法か!?」

『視覚も、聴覚も、嗅覚も「バオー」には関係ない!
 感覚はすべて頭部の触覚でまかなう!
 「バオー」はギーシュの発する敵意のにおいを触覚で感じ……
   そ の に お い が 大 嫌 い だ っ た !
 「バオー」は思った………
  こ い つ の に お い を 消 し て や る ッ !』



「あーあ、せっかく黙ってたってのによー」
「なななななななななななな!?」
「落ち着けよ、娘っ子」
「なんなのあれ!?あいつ亜人だったの?何で人間の真似してたの?傷治ってない?」
取り乱したルイズがデルフリンガーに次々と質問をぶつける。
「安心しな娘っ子、相棒は人間だよ」
「じゃあの姿は!?あれだけの変身魔法なんて、先住魔法でもなきゃ…」
「魔法じゃねーって」
「魔法じゃないなら何なのよ!?」
「そう言われてもなー、なんつえば良いんだろ?」
何か良い言い方は無いかと、デルフリンガーが考え込む。
「おーそうだ!あれだ蝶々も元は芋虫だろ?相棒があんな格好になっても不思議じゃ」
「不思議にきまってるじゃない!?」
「まーあれだ、娘っ子はあっちの相棒は初めてだろ?俺もだけどさ。
 こうなったらしゃ-ねー。せっかくだからじっくり見とこうじゃねーか」
「………あっちの?」


「ぼ、僕のゴーレムが…」
背後に立つ、己に槍の一撃を放ったワルキューレの顔を、バオーは無造作に掴んだ。
「と…溶けてるぅぅぅぅぅ!!!」
ギーシュが叫んだ通りだった。
青銅で出来たゴーレムが、見る見るうちに溶けていく。

『バオー・メルティッディン・パルム・フェノメノン
 手のひらからでる特別な液で物質を溶かす、「バオー」が持つ武装現象の一つ』

「あ…あぁ…」
僅か数秒の間、ワルキューレが青銅の塊になるのをギーシュは呆然と見ていた。
そしてバオーがギーシュに向かって一歩踏み出した時、あまりの出来事に
思考を止めていた彼の脳が、やっと動き出す。
「わ、ワルキューレぇ!」
後ずさりながら、目の前の異形に向かって、震える声で青銅の戦乙女達に攻撃の
指令を出す。
まず近くにいたワルキューレ二体が、バオーに向かって槍を持って突撃した。
バオーは近づいてくるワルキューレの方を向いただけで、避けようともしない。
そして両者が交差したと見えた次の瞬間、ワルキューレは無残に両断されていた。
見ればバオーの腕には、いつの間にか刃のような物が生えている。

『バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン
 手首の皮膚を鋭く硬質化させ、刃となし敵を切り裂く』

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
残るゴーレム、先程の四体そろっての突撃を避けられ、マリコルヌを押しつぶしていた
ワルキューレ達に武装をさせ、再びバオーに向かって突進させる。

         バルバルバルバルバルバル!!!

バオーの咆哮と共に、凄まじい音と光がその体から発せられた。
そして、轟音と共に雷撃がワルキューレ達に襲い掛かかる。

『バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノン
 細胞間を流れる微弱な電流を直列につなぐ事で、体内に高圧電流が生まれる現象』

崩れ落ちるワルキューレ達、もうギーシュにはワルキューレを作り出す魔力は無い。
それを知っている彼の友人達は、根は怖がりであるギーシュが、すぐに降参すると
思っていた。
「く、来るな………ッ!」
しかしギーシュは後ろにさがりこそすれ、バオーから目をそらさず、降参するような
そぶりを見せない。あまつさえ、なけなしの精神力で、まだ呪文を唱えようとしている。
ギーシュだけが理解していたのだ。
この生き物に降伏も、そして逃走すら無意味だという事を。

ギーシュが魔法を唱え終ったのと、バオーの髪が蠢いたのは同時だった。
魔法の効果によって、瞬時にギーシュの目の前に土の壁が作り出され、そして
「ヒィッ!」
土の壁を貫いて、ギーシュの目前に針のようなものが現れる。

『バオー・シューティング・ビースス・スティンガー・フェノメノン
 髪の毛が針のように硬質化する現象。刺さった髪がぬけると体温により自然発火する』


からくも目前で止まったものの、後一瞬魔法の発動が遅れていれば自分はこの針に
貫かれていただろう。その事実に恐怖すると共に、一瞬の安堵が生まれる。
だが次の瞬間、ギーシュは胸に何かの衝撃を感じた。
「え?…あ………れ?」
胸が焼け付くように熱い、ふと目の前の、自分の作り出した壁を見ると穴が開いている。
「ああああああああああッ!!」
土の壁が崩れてバオーが姿を見せる、その片方の腕に生えていた刃がなくなっている。
ギーシュは自分の胸を恐る恐る見た、そこにはバオーの腕から無くなった刃が
深々と突き刺さっている。
「ウソ……だろ?」
その言葉と共に血が勢いよく噴出し、それと共に視界がどんどん暗くなっていく。
「…………シュ!!!」
誰かが自分を呼んでいる。
その声は涙で震えているような気がした。
「…モンモランシー?」
その言葉は、もう口から発する事ができなかった。
混乱し、薄れていく意識の中、最後にギーシュが思ったのは、
『モンモランシーが泣いているのは悲しいな』
そんな事だった…



ギーシュが倒れるのと同時に、観戦していた生徒達から悲鳴が上がる。
決闘に命を懸けたのは昔の時代である。今や決闘で死ぬ事など、事故以外そうはない。
学生ならなおさらだ。貴族といってもまだまだ子供である。ほとんどが親の庇護の元、
何一つ苦労も無く育ってきた者達なのだ。目の前の『殺人』という異常事態に
対応できるわけも無かった。
しかも殺したのは先住魔法を操る得体の知れない亜人…いや、化け物だ。
何人かの生徒は逃げ出したが、ほとんどは呆然と倒れたギーシュとバオーを何もせずに
眺めている。それは橋沢育郎の主であるルイズも同じだった。
「ギーシュ!」
そんな中、真っ先に動いたのはモンモランシーだった。
倒れたギーシュに駆け寄り、治癒の魔法をかける。だが触媒の秘薬も無しに、いや、
例え秘薬があろうとも、これ程の重症ではもう助からないだろう。
それでも彼女は魔法を止めない。
「ギーシュ、お願い目を開けて!ギーシュ!」
泣きながらギーシュの名前を呼ぶが、目覚めるはずも無い。
それでもモンモランシーは精神力がきれ、気絶するまでギーシュの名を呼び、
治癒の魔法をかけ続けた。

『闘い終えた「バオー」は、変身から少年へ戻っていった』

「これは!?」
育郎の意識が覚醒し、最初に目に入ったのは、倒れるギーシュにすがりつき、
涙を流しながら魔法をかけているモンモランシーの姿だった。
その光景に、自分が何をしてしまったのか悟る。

あの『力」が!
僕の中の化け物の『力』が彼を!?
あの時は自分の意思でコントロールできたのに!
ドレスとの最後の闘いの時、自分はあの力を制御していた。
だからこそ、最悪あの姿になっても誰かを傷つける事はないと思っていた。

「僕のせいだ…ッ!」
自分に対する怒りがわいてくる。
しかし次の瞬間、ギーシュから、あの『におい』が発せられている事に気付いた。

感じる!かすかだが、まだ彼の生命の『におい』を!
今ならバオーの血で助ける事が出来る、だがコントロールできるのか!?

一瞬の戸惑い。
だが魔法をかけていたモンモランシーが倒れこむのを見たとき、
育郎は決心した。

迷っている暇は無い、コントロールするのだ!
でなければ彼が死んでしまう!
目覚めるんだ、僕の中に眠る『力』よ!

『脳に寄生する「バオー」が、橋沢育郎の意思を感知した………
 「バオー」はその意思に従い、宿主である育郎を再び変化させる!』

      ウォォォォォォォォム!バルバルバルバル!!!

『宿主の命に危険があるわけではない、だが「バオー」は育郎の意思に従う。
 それは宿主のための行動であり、そして「バオー」の意思でもあるのだ!』

「あれ?」
ギーシュが目を覚まして考えたのは、何故自分が地面に寝ているのだろう?
という事だった。そしてその自分に、誰かが倒れこんでいることに気付く。
「…モンモランシー?」
一瞬モンモランシーに何かあったのかと思ったが、ただ寝ているだけだと気付き、
安心すると、倒れこんでいる事によって、モンモランシーの胸の感触を味わえている
という事実をギーシュは発見した。

こ、これは……なんだかわかんないけどラッキー!

「う…うん……ギーシュ?」
そんなことを考えていると、モンモランシーが目を覚ました。
身持ちの硬いモンモランシーの性格を思い出し、顔が青くなる。
「いや、違うんだモンモランシー!これはその」
「ギーシュ!!!」
「へ?」
モンモランシーがギーシュに抱きついて泣き出した。
「ギーシュ、生きてるのね!?良かった、本当に良かった!ああ、ギーシュ……」

おおおおおお!さらに胸が!おっぱいがいっぱいであります!
って『生きてる』?

「あああああッ!!!!」
思い出した。
自分はあのルイズの使い魔に…
傷のあった場所を見てみると、服は汚れているがもう血は止まっている。
それにモンモランシーの胸が当たっているのに、全然痛くない。
というか気持ちいい。
「おお、愛しのモンモランシー!君が治してくれたのかい?」
涙をぬぐったモンモランシーが、ギーシュを見て首を振る。
「わからない…治癒の魔法は懸けてたけど、秘薬もないのにあんな傷…」
「『彼』が君に何かを飲ませたんだ…そしたら君が生き返った」
何故かボロボロになっているマリコルヌが、いつの間にか傍に来ていた。
「『彼』って…ルイズの使い魔の?ど、どうして?」
「わからない……けど、すまなさそうしてたよ、彼は…」
「そうか…教えてくれてありがとう、マリーベル」
「マリコルヌ!風上のマリコルヌだよ!?」
マリコルヌの抗議の声を聞きながしながら、モンモランシーを見ていると
ふと、思い出すことがあった。
「も、モンモランシー…」
「なぁに、ギーシュ?」
非常に心苦しいが言わなければならない。
「負けちゃってごめん…いや、その…僕が代わりにあのメイドに謝ってこようか?」
それを聞いたモンモランシーは呆れた顔をした後、笑顔になり
「本当に…馬鹿なんだから…」
もう一度ギーシュに抱きついて、泣いた。

ギーシュは泣いているモンモランシーをなだめながら思った。

それにしても…良いにおいだな

モンモランシーの二つ名を思い出す
『香水』のモンモランシー

やっぱりモンモランシーの香水はいいな…
いや、モンモランシーがつけてるから良いのかな?

なんだか幸せな気分になってくる。

でも、やっぱりモンモランシーは笑ってるほうがいいや。

そう思ったが、ギーシュは、なんだか世界で一番自分が幸福のような、
そんな気分になっていた。

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