ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔の鎮魂歌~前奏曲~

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匿名ユーザー

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春の麗らかな風景に爆発音が響いていた。
爆発音の発信源はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
彼女は他のクラスメート達や教師が見守る中、サモン・サーヴァントの儀式を行っていたが、爆発ばかり繰り返していた。
その数も既に20を裕に越えており、始めは冷やかしていたクラスメート達も、流石に飽き飽きしていた。
いつまでたっても成功しないのを見て、U字禿の教師コルベールは「次で成功しなかったら良くて留年、最悪の場合退学になりますぞ」とルイズに脅すように言った。

「五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし使い魔を召喚せよ。」
ルイズはありったけの魔力をこめ、いつになく真剣な面持ちで唱えた。
しかし、ルイズの思いも虚しくまた杖を向けた先で爆発が起こった。

それを見た全員がまた失敗かと思った。が、もくもくと土煙が立ち込める中に爆発する前には無かったはずの『何か』があった。

ルイズはそれに気が付くとゆっくりと警戒しながらその何かに近づいていき、それを手にとってみた。
「これは…『矢』?」
爆発の跡にあったのは一本の古びた矢だった。鏃は金属でなく石で作られ刃の部分は鋭く出来ていたが、その装飾からして実戦で使うものではないようだ。
だが、彼女にとって生物でない物に用はない。サモン・サーヴァントは使い魔となる生物を呼び出す儀式。明らかに無機質な矢などお呼びでないのだ。

ルイズは溜め息をついた。爆発ばかり繰り返し、簡単なコモンマジックどころかまともに使い魔すら召喚出来ない『ゼロ』…自分の将来を憂え今すぐ泣き出したくなったその時、
サクサクと草原を誰かが歩く音がした。
クラスメートの誰かが自分を慰めに来たのか、それともコルベールが退学を宣告しに来たのか。ルイズはいずれにせよ振り向く気になれなかった。
だが、その音の正体がどちらとも違う事がクラスメートが次々にしゃべった事で明らかになった。
「おい、何か黒いのがいるぞ!」
「遂に成功したの!?やったじゃないルイズ!」
えっ!?と驚きルイズが振り向くと黒い人らしき「物」がこちらに背を向け歩いていた。
カウボーイハットの様な帽子を被り、肩にはドーナッツ形の飾りを幾つも付けている。
腰にはゆるゆるとしたベルト、更に乗馬用のブーツみたいな靴を履いている。
だがその姿はどこまでも漆黒であり、生物と非生物の間のような存在感を出していた。

ルイズは成功してこれを呼び出したのにこれに対し何とも言えない不気味さを感じた。
こいつは何かヤバイ気がする…契約をすべきなんだろうか…
そう思った時、既に異変は始まっていた。
いきなり周りにいたクラスメート達が何の前触れも無くその場で倒れると眠りだしたのだ。彼らの使い魔達も、である。
その異常な光景にルイズは呆然としたが、ふと気付いた。自分の手からいつの間にか矢が地面に落ちていたのだ。
そして矢は斜面でもないのにその漆黒の『何か』の元まで転がって行った。漆黒の『何か』は立ち止まり矢を拾いあげると再び歩き出した。
「ちょ、ちょっと!これはあんたの…」
そこまで言うといきなり足に力が入らなくなり、ストンと地面に腰を落としてしまった。
「な…た…立てな……」
そして意識が朦朧とし、他のクラスメートやコルベール同様地面に横たわり、眠ってしまった。
それでも漆黒の『何か』…前の世界で『鎮魂歌』と呼ばれたそれは城の方へとゆっくり歩いて行った…



シトシト…
気付いたら夕方になり小雨が降り出していた。
ルイズはいつの間にか自分が寝てしまった事を思い出し、起き上がろうとした。
しかし、地面に手を付けた瞬間グラリとした。なにかおかしい…身体が『重い』…いやサイズに『合わない』感じがする。
「何が起きたの」
自分の周りを取り囲んでいた中にいたはずのキュルケがいつの間にか近くにいた。
「分からない…いつの間にか寝ちゃって…」
ルイズが答える。視覚がまだぼんやりしていた。
「ルイズの使い魔のせい?」
キュルケが淡々とした感情の起伏の無いしゃべり方をしているのにルイズは違和感を覚えた。キュルケの普段のしゃべり方はこんなのじゃない…
「し、しし知らないわよ!私だって何がなんだか…」
「私?」
キュルケが首を傾げた。ルイズはますます違和感を覚え、尋ねてみた。
「あんた…本当にキュルケ?」
その問いにキュルケは首を横に振ることで答えた。
「冗談はよしてよ!あなた、どう見たって…」
そこではっとした。自分の背が明らかに延びていたのだ。手もよく見てみたら成人男性のような…
もしかして!と思い、頭に手をやるとそこには無かった。自分のトレードマークとも言えるものが!
「無い!あたしの髪が無い!」
「元々」
キュルケが突っ込んだ時、「うぅ…」
また近くでうめき声が上がった。キュルケの隣で寝ていたタバサだった。
「何なのよ…いきなり眠くなって…」
タバサが起き上がってキュルケを見た。キュルケも起きたタバサを見た。
「「………」」
二人は五秒ほど沈黙した後、
「きゃああああああああ!」
タバサ、いやタバサの中のキュルケが絶叫した。キュルケの中のタバサも驚いて目を丸くしている。
だが、彼女達よりショックを受けた人達がいた。

ルイズは頭に髪が無いので気付いた。辺りを見渡すとすぐに見つけた。今にも起き上がろうとしている自分の身体を!
その自分の身体も自分を見た。
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
「うぉぉぉぉ何事ぉぉぉ!?」
両者共にキュルケより遥かに大きな声で絶叫した。


しばらくして心と状況の整理が出来た。
まず、どういう訳か分からないが、魂が入れ代わったということ。
しかもほとんどが使い魔と入れ代わったらしく、話しかけても全然通じなかった。例外は四人の他、ギーシュとマリコルヌだけであった。
次に、これは仮説だが、この現象はルイズが呼び出した使い魔が引き起こした物だということ。
そして最後に、得意魔法等は魂と一緒についてきた。
ということである。
「困りましたぞぉぉ」
ルイズの中のコルベールが頭を抱える。頭の上が豊かなことや若返ったのは嬉しいらしいが、そんなことを言っている場合では無い。
これがもしハルキゲニア中に広まったら大変な事になる。
しかしその元凶がどこに行ったのかも、どうやれば元に戻るかも分からなかった。
焦ってばかりで役に立たない教師を尻目にキュルケとタバサはいち早く動き出した。
「黒い人のようなのよ。捜して来て!」
キュルケはシルフィードと入れ代わったフレイムに命令した。
「きゅるきゅる」
フレイムは慣れない様子で飛び上がり、辺りを旋回しだした。
「森の中。」
タバサもシルフィードに探索するよう命じた。
「きゅい!」
シルフィードは森の中に入って行った。

10分ぐらいしてフレイムが本塔の近くでレクイエムを発見した。
キュルケはフレイムに足止めを頼みつつ、六人はレクイエムの元へと急いだ。(当然だが、マリコルヌと入れ代わったギーシュはおいてけぼりだった。)


To Be Continued...

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