ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

戦勝! 城下町でお買い物 その②

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戦勝! 城下町でお買い物 その②

前回のあらすじ。某武器屋にてこんな会話が発生した。
「あっ! 今、俺を買ってくれる人が近くにいる! 心が通じ合った感じがしたぜ!」
「寝言は寝てからほざきな、デル公よぉ~」
一秒後。
武器屋のドアをぶち破ってお客様ご来店。
どうやら傭兵さんらしいが酔っ払っていて、なぜか仰向けにぶっ倒れてる。
「おでれーた。こんなのと心が通じ合ってたなんて、もう最悪だね」
「いらっしゃいませお客様。壊れたドアを弁償しやがってくださいますね?」
二人の会話を無視して、傭兵はよろよろと立ち上がり、壁にかけてあったきらびやかな大剣を掴んだ。
「お客様それを鍛えたのは有名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿ですぜ。
 エキュー金貨で二千。新金貨なら三千。使うなら払ってから――」
「うるせえ! ぶち殺されてえかこのピザ野郎!」
「ごめんなさい許して命ばかりはお助けを」
店主のあまりの変わり身の早さにデル公と呼ばれたそいつは呆れ返った。
そして、あらたなお客様のご来店である。
学帽、学ラン、黒ずくめ。身長195サントという体格で、怖い顔。
「てめぇっ! もう容赦しねー。素手ゴロなら勝てると思うなやコラァッ!」
「やれやれ……チャリオッツやアヌビス神に比べたらまるでヌケサクだな」
承太郎も呆れた様子で、しかしぶちのめそうという気満々で店内に入場する。
「いらっしゃいませお客様。そちらの方のお連れ様でしたら、彼の持ってる剣の代金と壊れたドアの弁償代をしっかり払っておくんなまし」
「やかましい! 引っ込んでろ!」
「はぁ~い」
百戦錬磨の承太郎の迫力にビビって縮こまる店主。
ああ、もうこのおっさん駄目だわ、とデル公は思った。

それにしてもどうやらこの傭兵と珍妙な服の男、喧嘩中らしい。
だとすると傭兵の乱暴なご来店は、あっちの黒服に殴り飛ばされたか、蹴り飛ばされたか、投げ飛ばされたかでもしたのだろう。哀れ。
「頭蓋骨叩き割って脳味噌ぶちまけなァー!」
「ケッ。メイジでもないてめー相手に全力を出すのはフェアじゃねーな」
ものすっごい勢いで振り下ろされた一撃を、承太郎は半身を引いて回避し、そのまま右拳を男の鼻っ柱に打ち込んで鼻血を噴出させる。
「ゴッゲェー! こここ、この野郎ォ。いい気になってんでねーど!」
「ひとつ忠告しておく。俺は今、機嫌が悪い。
 帰れるもんが帰れなくなっちまったせいだし、てめーがタルブの村を見捨てて逃げたって事も原因のひとつだ。
 だから……カワイソーだが憂さ晴らしをさせてもらうぜ」
「上ッ等ーだッ! ぬおんどりゃあっ!」
傭兵が大剣を斜めに振り下ろし、承太郎は横へと屈んで避けた。
武器屋の隅の、ボロ剣が収められている箱のすぐ前だ。
「よー。おめえさん、いい動きするねー」
突然した声に承太郎は振り向く、安そうな剣がたくさん入った箱があるだけだ。
「まさか、剣か?」
アヌビス神の存在を思い出し、喋る剣がいてもおかしくないと承太郎は即座に思い至る。
「おうっ、お目が高いね。俺だよ俺、いやー、最近ろくな使い手がいなくてさー。
 でもあんたは結構いいセンスしてるよ、俺が保障する。
 でさ、俺を買わない? 今ならお買い得だぜ。相手も剣を持ってる事だし……」
「死ねええええい!」
「オラオラーッ!」
大剣を振り回す傭兵を、素手で普通に殴りまくる承太郎。
全身から『武器? 必要ねーな』というオーラを漲らせていた。
「おでれーた。こりゃ、俺の出番は無いかもしれんね。退場ッ! デルフリンガー完!」
こうして承太郎は傭兵をボコボコにして勝利したのだった。素手で。

「ジョータロー! やりすぎだってば!」
三人目のお客様ご来店。しかし店主は怯えて出てこなかった!
だって、あの小さいお嬢さん、マントつけてるもの。貴族だもの。
ヤバイヤバイ。超ヤバイ。どないするべ、ってなもんよ店主の胸中は。
傭兵は完璧に目を回している。店主自慢の大剣は一応無事だ。
「騒がせてすまなかったな。ドアの修理代はそいつからもらってくれ」
と、承太郎は指差した。
傭兵を。
コクコクとうなずく店主はまさに顔面蒼白だったとさ。
「あら? ここ武器屋?」
が、場の空気を変える一言をルイズが言った。
それが起爆剤となり店主は商売人魂を燃やす。
「そうでさあ、貴族のお嬢様。トリスタニアで一番の武器屋と評判なんで!
 どうです? あんな名剣からこんな名剣まで選り取りみどりですよ!」
「私、メイジだから武器なんて必要ないわよ」
「はい、そうですよね! ごめんなさい」
店主敗北。
が、場の空気を変える一言をルイズが再び。
「……じょ、ジョータローは何か欲しい物ある?」
それが起爆剤となり店主は商売人魂が再び。
「いや、無い」
店主再び敗北。
「そうよね。ジョータローに武器なんて必要ないか」
「……どういう風の吹き回しだ? おめーが俺に買い物をしてやろうなんて」
「普段がんばってるから、何か買って上げようかなーって思っただけよ」
そっぽを向くルイズを見て、承太郎はしばし黙考する。
ここはルイズの顔を立ててやるのもいいか。
しかし武器と言われても、正直何もいらない。

破壊の杖や竜の羽衣のような物があれば別だが、店内を見回しても剣や槍といった武器ばかりだ。
いかにあらゆる武器を使いこなすガンダールヴといえど、その能力を使いすぎれば消耗するし、スタープラチナだけで戦った方がやりやすい。
それでもあえて何か武器を選ぶとすれば……。
「投げナイフ……」
「へい毎度あり! 今当店ご自慢の投げナイフをお持ちします!」
「……は、どうにも印象が悪い。使う気になれねーな」
「どこまで! あんた等はどこまで私をおちょくれば気がすむんだぁぁぁっ!!」
とうとう店主は泣いてしまった。男の子なのに、っていうかおっさんなのに。
「買い物なら他の店がいい。何かうまそうな物でも食って帰ろう」
「そうね、それいいわね。クックベリーパイなんかどう?」
「うまそうだな」
こうして承太郎とルイズは武器屋を後にしましたとさ。
めでたしめでたし。

「ちょっと待ってえええええええっ!」

魂からの叫びに承太郎とルイズは呼び止められた。
声は武器屋の隅の剣からしていた。
「インテリジェンスソード?」
「そう、それよそれ! お買い得だぜ! そこの黒服の旦那、俺を買わねーかい!?」
「いや……いい……」
「まあそう言うなよ。あんた『使い手』だろ?」

その一言でデルフリンガーの運命は変わった。
しけた武器屋で放置プレイを受け続けるだけだったデルフリンガーは……。
「ルイズ」
「ジョータロー」
二人はうなずき合い、ひそひそ話開始。
(どうする? もしこいつが虚無の力に気づいているとしたら……)
(虚無は極秘事項なのよ! ……壊した方がいいかしら?)
(むしろ王宮に渡して分析でもさせるか? 知ってる事をすべて吐かせる)
(でも姫様以外に虚無を知られる訳には……やっぱ壊しましょうよ)
(売り物だから買ってからぶち壊して、川か池にでも沈めてやるか)
(それいいわね、そうしましょう)
「お二人さぁぁぁん! 聞こえてるから! メッチャ聞こえてるからッ!
 頭が頭痛で痛くなるくらい危険が危ない相談が聞こえてるからぁぁぁっ!」
デルフリンガーはものっそい絶叫を上げた、恐怖のあまり言葉の意味を重複させて。
ツッコミどころ満載のデル公を無視してルイズは店主に訊ねた。
「ねえあのボロ剣いくら?」
「へ、へえ! 100エキューで結構でさあ!」
「100エキュー? あんなゴミみたいなボロ剣が?」
「でしたら53エキューで結構で! ゴミだけに53エキュー、なぁ~んちゃって」
営業スマイル全開の店長を見て、ルイズは顔をしかめた。何か不気味。
そこで空条承太郎が絶好のフォローを天然で入れる。
「ルイズ。オメーこーゆーダジャレ言う奴ってよーっ。
 ムショーにハラが立ってこねーか!」
「30エキューで結構です! ナマ言ってすいませんでしたぁぁぁっ!」
もはや何が何だか解らない状態に陥っている店主。実に無様である。
こうして商談成立したかと思いきや、デルフリンガーが抗議の声を上げた。
「冗談じゃねー! 誰か、助けて!」
「あ、その剣は鞘にしっかりと入れれば喋りませんので」
「ゲェーッ! てめー余計な事を……ガブッ」
こうしてデルフリンガーはルイズに買われた。バンザーイ。

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