ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

奇妙なルイズ-26

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匿名ユーザー

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ルイズは学院の自室で、ベッドの上に寝ころんでいた。

トリスティンの城でアンリエッタに抱きつかれてわんわん泣かれ、ウェールズからはアルビオン王家に伝わる『風のルビー』を渡され、マザリーニ枢機卿からは王室御用達の馬車で「魔法学院視察のついでに」送ってもらい、至れり尽くせりだった。
ウェールズ皇太子を連れて帰った事で、何か怒られやしないかとビクビクしていたが、マザリーニ枢機卿は馬車の中でルイズに礼を言ってきた。
「アンリエッタ姫殿下がこの度のことでご成長なされたのは、ミス・ヴァリエールのおかげです」と。
「そそそそそんな!わわ私は迷惑をおかけするばかりで」
ルイズは緊張と驚きのあまり、どもってしまったらしい。

ルイズの希望で学院の門内まで馬車を入れず、門の前で降りることになった。
あまり目立ちたくないと思ったからだ。
まだ授業の時間中だったせいか、学院の生徒には見られなかったので、ルイズはほっと胸をなで下ろした。
不思議なことに、ルイズは騒がれなかったことに安堵していた。
以前の自分なら、キュルケほどではないにしろ、皆から注目されることを喜んだだろう。
魔法の失敗ではなく、純粋な功績を賞讃しろと言いたくもなっただろう。
だが、それがとても野暮なものに感じたのだ。

右手を挙げる。
意識を集中させると、半透明の腕が現れる。
しかしそこには何かが足りない。
自分を安心させてくれる、何かが…

「ミス・ヴァリエール」
コンコン、と扉が叩かれ、名前を呼ばれた。
ロングビルの声だ、そう言えば桟橋で助けてくれたのに、ロングビルにお礼も言ってない。
ルイズはベッドから飛び起き、慌てて扉を開けた。
「ミス・ロングビル!」
「ミス・ヴァリエール、オールド・オスマンがお呼びですわ」
「あ…報告するのすっかり忘れてた。それと、ミス・ロングビル、あの時は…」
「役目を全うしただけですわ、さ、オールド・オスマンは今か今かと待ちわびています」
ロングビルに促され、ルイズは、学院長室へと移動した。
学院長室の重厚な扉をロングビルがノックすると、扉の向こうから「入りたまえ」と聞こえる。
扉を開けると、いつもと変わらない飄々とした表情のオールド・オスマンが待ちかまえていた。

「ふむ、で、任務はバッチリじゃった訳じゃな」
オールド・オスマンがひげを撫でながら言う。
「はい、ただ…」
ルイズはウェールズ皇太子のことを報告すべきかと、一瞬悩んだが、それをオスマンが制止する。
「おっと、それ以上言わんでいいぞ、何せこれは密命じゃからな、ワシも余計なことまで知る気はない」
「ありがとうございます」
「授業に関しては補習をもうけることも出来るが…まあ、それは追って伝えようかの、とりあえず今日はもう休みなさい」
「はい」
ルイズが学院長室を退室すると、オスマンは背もたれに身体をあずけ、うーむとうなって背伸びをした。
ふとロングビルを見ると、書類を書く手を止めて、なにやら考え込んでいる。
「ミス・ロングビル、どうしたんじゃ? もしかして『せっかくアタシも手伝ったのに全部教えてくれないなんてズルイ!』なーんて拗ねとるのか?」
「もうろくも大概にして下さい、…確かにその通りですが」
「ほっほっほ、まあ予想はつくわい、ミス・ヴァリエールの指にはめられていたのはアルビオン王家の象徴、風のルビーじゃよ、彼女は大物になるかもしれんのう」
「…!」
風のルビーの話で、ロングビルの目つきが一瞬だけ鋭くなったのを、オスマンは見逃さなかった。

ルイズは部屋に戻る前に、あることを試すことにした。

ヴェストリの広場に行くと、丁度授業の終わりを告げる鐘の音が聞こえてくる。

ギーシュと決闘したこの場所で、ルイズは杖を振り上げた。



胸に去来する喪失感を埋めるように。

「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ…」

任務を成功させた自分の実力を確かめるかのように。

「神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ」

自分の心を満たしてくれる存在を欲するように。

「私は心より求め、訴えるわ」

そしてこれから始まる運命に導かれるように。

「我が導きに…答えなさいッ!!」

…爆発は、起きなかった。


タバサは、空から不思議な光景を目撃した。
ガリアからシルフィードに乗って魔法学院に帰ってきたタバサは、ヴェストリの広場にいるルイズを目撃したのだ。
ルイズの隣には見慣れぬ人物が佇んでいるのを見て、タバサは首をかしげた。

キュルケは、窓の外に見えるタバサとシルフィードを見て、タバサを迎えに行こうと部屋を出た。
しかし、廊下で何人かの生徒が、ルイズのうわさ話に興じていたので、思わず聞き耳を立ててしまう。
そして話の内容を聞き、腹を抱えて笑い出した。

ギーシュは、廊下をどたばたと走り回るマリコルヌを制止していたた。
「風上のマリコルヌ!そんなに走り回っては痩せてしまうよ、…そうか、ダイエットかい?」
「ちちち、違うよ!さっき廊下から中庭を見たら、ゼロのルイズがサモン・サーヴァントを!」
それを聞いた他の生徒が、呆れたように言う。
「なあんだ、ゼロのルイズがまた失敗したのか」
「違うって!成功したんだよ!」
これにはギーシュも驚く。
「何だって!?」
周囲で聞いていた他の生徒達も驚いたが、マリコルヌは更に言葉を続けた。
「もっと驚いたのはさ、召喚されたのが………」




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